贈収賄罪の時効は何年?贈賄・収賄それぞれの時効期間と注意点を解説

贈収賄罪の時効は何年?贈賄・収賄それぞれの時効期間と注意点を解説
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弁護士 若林翔
2025年07月28日更新

「贈収賄罪は何年で時効になる?」

「贈収賄罪の時効で注意すべきポイントとは?」

「贈収賄罪を犯したときに時効待ち以外に何ができる?」

贈収賄罪とは、賄賂を贈る側に成立する「贈賄罪」と賄賂を受け取る側に成立する「収賄罪」の総称です。贈収賄罪と一括りにされることが多いですが、贈収賄罪の時効は、成立する罪の種類によって異なりますので、贈収賄罪の類型に応じて時効期間を考えなければなりません。

また、収賄側は、贈賄側に比べて長期間の時効が設定されていますので、贈賄側が時効になったとしても、収賄側は立件されるリスクがあるため注意が必要です。

本記事では、

・贈収賄罪の種類と各罪の公訴時効期間
・贈収賄罪の公訴時効で注意すべきポイント
・贈収賄罪を犯したときに時効待ち以外にできること

などについて詳しく解説します。

過去の行為について不安がある方や現在捜査を受けている方は、ぜひ参考にしてください。

贈収賄罪の時効とは?

贈収賄罪とは、金品などの不正な利益をやり取りすることで成立する犯罪で、「贈賄罪(贈る側)」と「収賄罪(受け取る側)」に分かれます。このような贈収賄に関する犯罪でも、他の刑事事件と同様に公訴時効が存在します。

公訴時効とは、一定期間が経過すると犯罪について刑事訴追ができなくなる制度です。贈収賄罪を犯したとしても時効が完成すれば、起訴することができませんので、処罰されるリスクは消滅します。

ただし、贈収賄罪は罪の類型によって法定刑が異なり、公訴時効の年数も変わります。したがって、「贈収賄罪の時効は何年か?」という問いに対しては、まずどの犯罪類型が問題となっているかを特定する必要があります。

収賄罪より贈賄罪の方が時効は短い?贈収賄罪の種類と各罪の公訴時効期間

贈収賄罪は一つの罪ではなく、複数の犯罪類型から構成されており、罪ごとに法定刑と公訴時効の期間が異なります。以下に主な罪の種類と、それぞれの時効期間を説明します。

 概要法定刑公訴時効期間
贈賄罪職務に関して賄賂を供与する、申し込みをする、約束をする3年以下の懲役(拘禁刑)または250万円以下の罰金3年
単純収賄罪職務に関して賄賂を受け取る、要求する、または約束する5年以下の懲役(拘禁刑)5年
受託収賄罪賄賂を受け取る約束をして請託を受け、職務を引き受ける7年以下の懲役(拘禁刑)5年
事前収賄罪将来の職務行為の見返りに、あらかじめ賄賂を受け取る5年以下の懲役(拘禁刑)5年
第三者供賄罪第三者に賄賂を提供させたり、第三者の収受を容認する5年以下の懲役(拘禁刑)5年
加重収賄罪賄賂を受け取った上で実際に不正な職務行為を行う1年以上の有期懲役(拘禁刑)10年
事後収賄罪公務員退職後、在職中の職務行為の見返りとして賄賂を受け取る5年以下の懲役(拘禁刑)5年
あっせん収賄罪他の公務員に不正行為をさせるよう働きかけ、その見返りとして賄賂を受け取る5年以下の懲役(拘禁刑)5年

贈賄罪|3年

贈賄罪とは、公務員に対して賄賂を渡したり、渡すことを申し出たり、渡す約束をした場合に成立する犯罪です。賄賂を受け取る側に成立する罪は、後述する7種類の罪がありますが、送る側に成立する犯罪は「贈賄罪」の1種類です。

贈賄罪の公訴時効期間は、3年です。贈収賄罪の中でも比較的短めの時効期間となっています。

単純収賄罪|5年

単純収賄罪は、最も基本的な収賄の形態です。公務員がその職務に関連して、金銭や物品、接待、その他の利益を収受、要求、約束した場合に成立します。

単純収賄罪の公訴時効期間は、5年です。

受託収賄罪|5年

受託収賄罪は、単純収賄罪が「請託を受けて」行われた場合に成立する犯罪です。「請託」とは、職務に関して依頼を受けて受諾することをいいます。

受託収賄罪の公訴時効期間は、5年です。

事前収賄罪|5年

事前収賄罪は、公務員が将来の職務行為に関して、あらかじめ賄賂を受け取った場合に成立する犯罪です。職務行為がまだ行われていない段階で、報酬を「前払い」でもらう点がこの犯罪のポイントです。

事前収賄罪の公訴時効期間は、5年です。

第三者供賄罪|5年

第三者供賄罪は、公務員自身が直接利益を受け取らなくても、他人に賄賂を提供させたり、第三者が受領することを了承した場合に成立します。

第三者供賄罪の公訴時効期間は、5年です。

加重収賄罪|10年

加重収賄罪は、賄賂を受け取っただけでなく、その見返りとして違法行為や不当な職務行為を行った場合に成立する犯罪です。

加重収賄罪の公訴時効期間は、10年です。加重収賄罪は、贈収賄罪の中でもっとも重い刑罰が定められている犯罪ですので、公訴時効期間も長めに設定されています。

事後収賄罪|5年

事後収賄罪は、公務員を退職した後に、在職中の業務に関連する謝礼等の名目で賄賂を受け取った場合に成立する犯罪です。

事後収賄罪の公訴時効期間は、5年です。

あっせん収賄罪|5年

あっせん収賄罪は、自らが行動するのではなく、他の公務員に働きかけを行い、その見返りとして賄賂を受け取る場合に成立します。

あっせん収賄罪の公訴時効期間は、5年です。

贈収賄罪の公訴時効で注意すべきポイント

贈収賄罪の公訴時効で注意すべきポイント

贈収賄罪の公訴時効は、単に時効期間だけを把握していればよいというわけではありません。以下では、贈収賄罪の公訴時効で注意すべきポイントを紹介します。

贈賄罪と収賄罪とで公訴時効期間が異なる

贈収賄罪は、基本的には贈賄罪と収賄罪がセットで成立する犯罪ですが、贈賄罪の時効が3年、収賄罪の時効は5年または10年と両罪の時効期間には差があります。

そのため、贈賄側の時効が成立しても、収賄側の時効が成立せずに立件される可能性が依然として残ります。収賄側としては、「相手も時効だから問題ないだろう」と誤認しないように注意が必要です。

贈賄側の時効完成後の捜査協力により収賄側が立件されることがある

贈賄罪と収賄罪の公訴時効期間が異なることで生じるリスクとして、贈賄側の時効完成後の捜査協力により収賄側が立件される可能性があるということです。

賄賂を贈ったのに収賄側が便宜を図ってくれなかったなど贈賄側が恨みを抱いているようなケースでは、贈賄側の時効完成後に捜査機関に密告されるというケースもあるようです。

贈賄側は、時効により罪に問われることがないため、積極的に捜査協力をしますので、不利な証拠が提出されてしまい、収賄罪を否定することができなくなってしまいます。

公訴時効が成立しても勤務先からの処分や制裁の可能性がある

公訴時効が完成すれば、刑事罰を科されるリスクがなくなりますが、勤務先に贈賄罪を犯したことがバレてしまうと懲戒処分などの制裁を受ける可能性があります。

特に、収賄側の公務員の場合、懲戒免職となり職を失うリスクがある点に注意が必要です。

刑事罰を回避できても社会的制裁を受けるリスクは依然として残っていますので、時効が成立すればすべてクリアになるというわけではありません。

贈収賄罪を犯したときに時効待ち以外にできること

贈収賄罪を犯したときに時効待ち以外にできること

時効が成立するまで逃げ切るという考え方は、非常にリスクが高く、現実的ではありません。贈収賄罪を犯したときは、時効待ちではなく以下のような対応を検討すべきです。

自首

贈収賄事件が捜査機関に発覚する前であれば、自首をすることが有効な手段となります。

自首とは、捜査機関に犯罪事実が発覚する前に自ら犯罪事実の申告をし、処分を求める行為を指します。自首の法的効果として、刑の任意的減軽が定められていますので、贈収賄罪で起訴されたとしても、刑事裁判で処罰が軽くなる可能性があります。

弁護士に相談

贈収賄事件に関与してしまった場合は、すぐに弁護士に相談するべきです。

過去に贈収賄事件に関与した方であれば、弁護士に相談することで時効の成立を見極めることができます。時効の起算点がいつか、捜査の進捗状況、証拠の有無などに応じて、今後の対応方針を冷静に判断することが可能です。

贈収賄罪は、被害者のいない犯罪ですので、被害者と示談をすることで逮捕や起訴を免れることはできません。このような犯罪で有利な処分を獲得するには、刑事事件に強い弁護士によるサポートが不可欠となりますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

贈収賄罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せを

贈収賄罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せを

贈収賄罪は、発覚したタイミングや関係者の供述次第で、事態が急激に動くことがあります。「もう時効だろう」と油断していたら、突然捜査が始まることも珍しくありません。

時効待ちという方針はリスクが高く、「逮捕されるかもしれない」という不安を抱えながら長期間生活するのは精神的な負担も大きいため、早めに弁護士に相談して、時効待ち以外の対策を検討していくべきでしょう。

グラディアトル法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が在籍し、贈収賄事件に関する豊富な弁護経験を有しています。

時効成立の有無を判断し、今後の事件の見通しを示すことができるのはもちろんですが、万が一逮捕されてしまったとしても、逮捕直後からの身柄解放に向けた対応、取り調べ時のアドバイス、早期釈放に向けた活動、執行猶予の獲得に向けたサポートなどを迅速かつ的確に行うことが可能です。

24時間365日相談を受け付けておりますので、贈収賄事件に関与してしまったという方はすぐにグラディアトル法律事務所までご相談ください。

まとめ

贈収賄罪には複数の類型があり、罪ごとに公訴時効の期間も異なります。贈賄罪は3年、収賄罪は5年または10年が時効期間になりますが、時効が過ぎても社会的制裁を受けるリスクは残るため注意が必要です。

万が一、贈収賄に関与してしまった場合や、過去の行為に不安がある場合は、できるだけ早く弁護士に相談することがリスク回避の第一歩となります。

贈収賄罪でお悩みの方は、グラディアトル法律事務所までご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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