新型コロナをばらまく・感染させる場合の威力業務妨害罪・傷害罪・暴行罪について

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弁護士 若林翔
2020年03月14日更新

新型コロナウイルスの話題ばかりの昨今

毎日のように感染者が出たとの報道がされる今日

新型コロナウイルスに感染していることを知った男性が,「菌をばらまく」などと話し,飲食店を利用し,威力業務妨害容疑などを視野に捜査を進めるとのニュースがありました。

本記事では,新型コロナウイルスをばらまく・感染させる行為と,威力業務妨害罪・傷害罪・暴行罪について解説します。

なお,新型コロナウイルスによる内定取り消しなどの労働問題については,以下のページを参考にしてください。

リンク:新型コロナウイルスを理由とする内定取り消しは違法か!?

 

新型コロナに感染し飲食店を利用したニュース

コロナ「ばらまく」男性捜査へ 飲食店の従業員感染―愛知県警

愛知県蒲郡市の男性(57)が、新型コロナウイルス感染を知り、自宅待機を求められながら複数の飲食店を利用していたことが12日、関係者への取材で分かった。男性は「菌をばらまく」などと話し、立ち寄った飲食店の従業員1人の感染が同日判明した。飲食店は店内を消毒し、営業自粛に追い込まれており、事態を重く見た県警は、威力業務妨害容疑などを視野に捜査を進める方針。

同市や関係者によると、男性は4日夕、検査でウイルス陽性が判明し、保健所が自宅待機を要請したのに外出。午後6時前後、市内の居酒屋とパブの2店に立ち寄った。パブでは従業員の女性と密着し、肩を組んで歌うなどしたという。

その際、パブ店主は知人から「男性が『パチンコ店や飲食店で菌をばらまいてやる』と言っている」と連絡を受け、男性が従業員に「陽性だ」と認めたため、約30分で退店させた。男性は同居の両親から感染したとみられ、5日から入院している。

一方、パブ従業員で30代のフィリピン人女性のウイルス陽性が12日確認され、同県豊田市によると、医療機関に入院予定。女性は、男性に接客した従業員とは別だが、店内に居合わせていた。

パブ店主は取材に対し「迷惑で被害届を出す」と話している。

Jiji.comニュース(2020年03月13日07時18分)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020031201529&g=soc

記事によると,男性は,自分が新型コロナウイルスに感染していることをしり,自宅待機を求められたにもかかわらず,「菌をばらまく」などと話し複数の飲食店を利用し,その飲食店の従業員1人の新型コロナウイルスの感染が認められた,というものです。

このことにより,当該飲食店は消毒,営業自粛の対応に追われたとのことです。

新型コロナウイルスと威力業務妨害罪

県警は,威力業務妨害容疑などを視野に捜査を進める方針。

とのことですが,そもそも「威力業務妨害」とはどのような罪なのでしょうか。

まずは条文をみてみましょう。

(威力業務妨害)
刑法第234条

威力を用いて人の業務を妨害した者も,前条の例(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)による。

 

「威力」とは??

ここでいう「威力」とは,人の意思を制圧するような勢力をいう,と考えられています(最判昭32・2・21,最決平4・11・27)

ここでポイントとなるのが,暴行や脅迫に限られないという点です。

「人の意思を制圧するような勢力」であれば,「威力」に該当すると考えられますので,暴行や脅迫でなくても,社会的,経済的地位などを利用した威迫や多衆・団体の力の誇示,騒音喧騒,物の損壊等の行為も含まれることとなります。

なお,「威力」に該当するかどうかは,実際に被害者が意思を制圧されたかどうかではなく,当該行為が,諸事情を考慮し,客観的に意思を制圧するに足りるものなのかどうかによって判断することとなります。

記事のようなケースですと,飲食店の業務を妨害しようと,自分が新型コロナウイルスに感染していることを示して飲食店を利用する行為は,人から人への感染が騒がれている新型コロナウイルスに感染しており,他者への感染させるおそれがあるという社会的地位を利用するものとして「威力」に該当する可能性があります。

もっとも,自分が新型コロナウイルスに感染していることを黙って飲食店を利用していたような場合,「威力」にはあたらず,偽計業務妨害罪(刑法第233条)の問題となります。

今後,警察は,男性がどのような言動を店で取っていたのかや,どういう目的で飲食店を利用していたのかといった事について捜査を進めていくこととなるでしょう。

 

新型コロナウイルスと傷害罪

新型コロナウイルスを意図的に従業員や店に来ていた客に感染させようと飲食店を利用し,実際,その行為によって従業員や客に新型コロナウイルスが感染した場合,傷害罪(刑法204条)に問われる可能性があります。

(傷害)
刑法第204条

人の身体を傷害した者は,15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪というと,例えば殴られて怪我をしたとか,刃物で切りつけられて出血したなどといったケースが典型かと思います。

しかし,病気をうつすようなケースも傷害罪に該当する可能性があるのです。

少し古い判例にはなりますが,姦淫行為によって性病を感染させたという事案において,

「傷害罪は他人の身体の生理的機能を毀損するものである以上,その手段が何であるかを問はないのであり,本件のごとく暴行によらずに病毒を他人に感染させる場合にも成立する」

との判断をして傷害罪の成立を認めています最判昭27・6・6)。

そのため,上記のように,意図的に新型コロナウイルスを感染させようと飲食店を利用し,それにより従業員や客に感染させたといった場合,傷害罪に問われる可能性があるのです。

 

新型コロナウイルスと暴行罪

傷害罪が成立するためには,実際に傷害結果(上記のケースで言えば新型コロナウイルスの感染)が発生する必要があります。

もし,新型コロナウイルスを感染させようと飲食店を利用したが,結果的に従業員や客に感染はしなかった場合,考え方にもよりますが,暴行罪(刑法208条)に問われる可能性があります。

(暴行)
刑法第208条

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

 

新型コロナウイルスと業務妨害・傷害・暴行のまとめ

今回の記事について,男性が利用した飲食店の従業員(男性に接客した従業員とは別)への感染が判明したという限りのものですが,今後の捜査によっては,業務妨害罪だけでなく,傷害罪や暴行罪に問われる可能性が出てくるでしょう。

 

また,他の新型コロナウイルス関連の法律問題について,以下の記事でまとめておりますので,ご参照ください。

https://www.gladiator.jp/covid-19/

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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