住居侵入罪の法定刑とは?量刑に影響する7つの事情を弁護士が解説

住居侵入罪の法定刑とは?量刑に影響する7つの事情を弁護士が解説
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弁護士 若林翔
2025年07月24日更新

「住居侵入罪の法定刑はどのくらい?」

「住居侵入罪に関連する犯罪の法定刑も知りたい」

「住居侵入罪の量刑に影響する事情にはどのようなものがある?」

住居や建物に正当な理由なく立ち入った場合、住居侵入罪に問われる可能性があります。

この罪は比較的軽微な犯罪と見られがちですが、他の犯罪の手段として利用されることが多く、窃盗罪や強盗罪、撮影罪などの別の犯罪も同時に成立するケースが多いです。単純な住居侵入罪だけであれば不起訴処分や罰金刑で済む可能性がありますが、複数の罪が成立するようなケースでは、実刑判決が言い渡される可能性もありますので注意が必要です。

本記事では、

・住居侵入罪の法定刑
・住居侵入罪に関連して成立する犯罪の法定刑
・住居侵入罪の量刑に影響する7つの事情

有利な処分を獲得するには刑事事件に強い弁護士のサポートが不可欠ですので、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

住居侵入罪の法定刑|3年以下の懲役または10万円以下の罰金

住居侵入罪の法定刑

住居侵入罪は、刑法130条前段で定められている犯罪で、その法定刑は、3年以下の懲役(拘禁刑)または10万円以下の罰金と定められています。

刑罰としては、比較的軽い部類に入るものの、逮捕・起訴されれば、前科がつく可能性もあるため、決して軽視できる罪ではありません。

※「拘禁刑(こうきんけい)」とは、従来の刑罰である懲役と禁錮を一本化した刑罰です。改正刑法に基づき、2025年6月1日から、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。

関連コラム:住居侵入罪とは?成立要件や刑罰、逮捕されたときの対処法を解説

住居侵入罪の他にも犯罪が成立する場合に適用される法定刑とは?

住居侵入罪は他の犯罪(窃盗、強盗など)の手段として利用される犯罪であるため、住居侵入罪が成立する事案では同時に他の犯罪も成立する場合が多いです。

この場合、法律上は「牽連犯(けんれんはん)」として処理され、もっとも重い罪の刑罰で処罰されることになります。

たとえば、他人の家に無断で侵入し、窃盗をした場合、住居侵入罪と窃盗罪の両方が成立しますが、処罰されるのはより重い窃盗罪の法定刑になります。

そのため、住居侵入罪の事案については、単純に住居侵入罪の法定刑だけを把握するだけでは足りず、関連する犯罪の法定刑についても知っておかなければなりません。

住居侵入罪に関連して成立する犯罪の法定刑

住居侵入罪に関連して成立する犯罪の法定刑

住居侵入罪は、他の犯罪の手段として利用されるため、同時に別の犯罪も成立するケースが多いです。以下では、住居侵入罪に関連して成立する犯罪の法定刑を紹介します。

住居侵入罪+窃盗罪|10年以下の懲役または50万円以下の罰金

住居に侵入して金品を盗んだ場合、住居侵入罪と窃盗罪が成立し、より重い窃盗罪の法定刑が適用されます。

窃盗罪の法定刑……10年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金

この場合、住居侵入罪単独よりも重い刑罰を受けることになります。

関連コラム:住居侵入窃盗は初犯でも逮捕される?逮捕・起訴の可能性や対処法

住居侵入罪+強盗|5年以上の有期懲役

住居に侵入した後に、住人に対して殴る蹴るなどの暴行を加えて金品を奪った場合、住居侵入罪と強盗罪が成立し、より重い強盗罪の法定刑が適用されます。

強盗罪の法定刑……5年以上の有期懲役(有期拘禁刑)

強盗罪は、法定刑の短期が5年以上の懲役(拘禁刑)ですので、減刑されない限りは執行猶予が付かない非常に重い犯罪です。

住居侵入罪+強盗致傷|無期または6年以上の懲役

住居に侵入し、強盗をする際に被害者に怪我をさせてしまった場合、住居侵入罪と強盗致傷罪が成立し、より重い強盗致傷罪の法定刑が適用されます。

強盗致傷罪の法定刑……無期懲役(無期拘禁刑)または6年以上の懲役(拘禁刑)

たとえ軽微な怪我であっても被害者が負傷すれば強盗致傷罪として扱われてしまいます。強盗致傷罪の法定刑は、非常に重いため、初犯であっても実刑の可能性が高くなります。

単純な住居侵入罪の量刑はどのくらい?

住居侵入罪が単独で成立する場合の量刑は、不起訴または略式命令(罰金5~10万円)が相場となります。

たとえば、「部屋を間違えて入ってしまった」「知人宅に無断で入ったが悪質性が低い」などの場合、不起訴や略式罰金で終わるケースが多いでしょう。

ただし、「嫌がらせ目的での侵入」「深夜に女性宅へ侵入」「警察沙汰を起こしている常習者」などの場合、公判請求となる可能性もあります。

実際の量刑は、具体的な事情によって左右されますので、ご自身のケースでどのような刑罰が科されるのか気になる方は弁護士に相談してみるとよいでしょう。

住居侵入罪の量刑に影響する7つの事情

住居侵入罪の量刑に影響する7つの事情

住居侵入罪に問われた場合、起訴されるかどうか、また有罪となった際の刑罰(量刑)は、さまざまな事情によって左右されます。ここでは、実際の裁判実務において特に重要とされる7つのポイントについて詳しく解説します。

住居侵入罪以外の犯罪の成否

住居侵入罪の量刑判断でもっとも影響が大きいのは、住居侵入罪以外の罪が成立しているかどうかです。

たとえば、

・侵入先での窃盗→窃盗罪
・侵入先で被害者に暴行→強盗罪、強盗致傷罪

など、侵入後の行動によって複数の犯罪が成立する場合、量刑は当然重くなります。

また、単に複数の罪が成立するというだけでなく、牽連犯として重い罪の法定刑で裁かれるため、住居侵入単独よりも処分が重くなる傾向があります。

住居侵入罪を犯した目的

「なぜ侵入したのか」という動機・目的は、犯罪の悪質性を測るうえで非常に重要な要素です。

【軽微な目的の例】

・知人と喧嘩して感情的に部屋に押しかけた
・アルコールの影響下での侵入
・空き家を無断で休憩場所として使用

このような場合、状況によっては不起訴や略式罰金で終わることもあります。

【悪質な目的の例】

・ストーカー目的で女性宅に侵入
・盗撮や窃盗、性犯罪目的での侵入
・被害者に対する嫌がらせ・報復

こうしたケースでは、強い処罰感情を伴うことが多く、刑事裁判で実刑判決が出される可能性も高まります。

前科の有無

前科の有無も、量刑判断で極めて重要です。特に、同種前科がある場合には、再犯とみなされて実刑判決の可能性が高まります。

たとえば、

・過去に住居侵入で罰金刑や執行猶予を受けたことがある

・窃盗や性犯罪での前科がある

このような場合、裁判所は「再犯のおそれが高い」と判断し、執行猶予の付かない実刑判決が言い渡される可能性が高くなります。

一方で、前科がない初犯の場合には、不起訴処分や略式命令(罰金刑)で済む可能があります。

被害の有無・程度

被害の内容や程度も、量刑に直結する要素です。

被害が軽微であったり、物的被害・人的被害が生じていない場合には、量刑上有利な事情として扱われますので、不起訴処分や略式命令(罰金刑)が期待できます。

しかし、以下のようなケースは、重い処分が下される可能性があるため注意が必要です。

・被害者が精神的ショックを受けてPTSDと診断された
・部屋の中を荒らされた、家具を破壊された
・被害者が引っ越しを余儀なくされた

このように、物理的・精神的損害の有無とその程度は、量刑判断において非常に重要視されます。

余罪の有無(常習性)

たった一度の侵入と、何度も繰り返された侵入行為とでは、評価が大きく異なります。

たとえば、

・過去に複数回の住居侵入を犯している
・近隣でも同様の手口が複数報告されている
・被疑者のスマホやメモ帳から他のターゲット情報が見つかる

このような場合には、裁判所から常習性や計画性があるとみなされ、刑罰は当然重くなります。

示談の成否

刑事事件では、被害者との示談の有無が量刑に大きな影響を与えます。住居侵入罪でもそれは同様です。

被害者との示談が成立していれば、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなり、仮に起訴されてしまったとしても罰金刑で済む可能性があります。そのため、住居侵入罪を犯してしまったときは、起訴されるまでに被害者と示談をすることが重要です。

なお、被害者が示談に応じない場合でも、誠意ある謝罪と補償の意思を示すことで有利な事情として評価されることもあります。

反省の有無

反省の意思をどれだけ示せているかは、裁判官や検察官の心証に大きく影響します。

具体的には、

・反省文の提出
・再発防止策の提示(引っ越し、通院、家族の監督など)
・弁護士を通じた謝罪や誠意ある対応

これらの行動を通じて、再犯のリスクが低いと認められれば、量刑が軽くなる傾向があります。

一方、黙秘や言い逃れ、捜査協力を拒否しているような場合には、「反省が見られない」として厳しい処分が下される可能性があります。

住居侵入罪の量刑を軽くするためにできること

住居侵入罪の量刑を軽くするためにできること

住居侵入罪で警察の捜査を受けたり、起訴されたりした場合でも、適切な対応を取ることで不起訴や執行猶予、あるいは略式命令での罰金処分で済むこともあります。ここでは、量刑を軽くするために本人や家族が取るべき3つの行動を説明します。

被害者との示談交渉

刑事事件において被害者との示談は、処分の軽減に大きな影響を及ぼします。特に、住居侵入罪では、被害者の処罰感情が処分の重さを左右することが多いため、早期の示談成立が極めて重要です。

示談には、損害賠償や慰謝料など金銭的な補償が伴うことが一般的ですが、被害者が謝罪や誠意ある対応を望むケースも少なくありません。弁護士を通じて冷静かつ丁寧な交渉を行うことで、感情的な対立を避け、前向きな解決を目指すことができます。

関連コラム:住居侵入罪における示談の効果とは?示談交渉の流れやポイントを解説

警察への自首

自首は、法律上、任意的な刑の減軽事由として定められています。そのため、捜査機関にまだ事件が発覚していない段階であれば、自ら警察署に出頭し、自首をすることで刑が軽くなる可能性があります。

また、自首をすることで逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示せますので、逮捕を回避できるという事実上の効果も期待できます。

弁護士への依頼

住居侵入罪の量刑を少しでも軽くしたいのであれば、できるだけ早い段階で弁護士に依頼することが重要です。

弁護士に依頼することで被害者との示談交渉を行ってもらえますので、当事者同士では拒否されてしまうようなケースでも弁護士が窓口になることで示談が成立する可能性が高くなります。

また、自首を検討しているケースでは、適切なタイミングや手続きについてのサポートを受けることでより有利な結果につながる可能性があります。

特に、住居侵入罪に加えて別の犯罪も成立するようなケースでは、重い処分が予想されますので、少しでも刑を軽くするためにも弁護士のサポートが欠かせません。刑事事件はスピード勝負と言われていますので、限られた時間の中でより効果的な弁護活動をしてもらうためにも、早めに弁護士に依頼するようにしましょう。

住居侵入罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せを

住居侵入罪の弁護はグラディアトル法律事務所にお任せを

住居侵入罪での処分を軽くしたいと考えている方、あるいはご家族が突然逮捕され不安を感じている方は、できる限り早い段階で弁護士に相談することが重要です。

グラディアトル法律事務所では、刑事事件に精通した弁護士が多数在籍しており、住居侵入罪のような身近で起こりうる犯罪にも迅速・的確に対応しています。初動対応が結果に大きく影響するため、警察への対応方法や供述内容、示談交渉の進め方などをすぐにアドバイス可能です。

また、平日・休日を問わずスピード対応を心がけており、突然の逮捕や任意同行といった緊急事態にも柔軟に対応可能です。

住居侵入罪は、対応を誤ると前科がつき、社会生活に大きな影響を与える可能性があります。だからこそ、経験と実績に裏打ちされたグラディアトル法律事務所にご相談ください。刑事弁護に強い弁護士が、あなたの立場を守るため全力を尽くします。

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まとめ

住居侵入罪は比較的軽い犯罪と思われがちですが、被害者の処罰感情や他の犯罪と関係によっては、重い処罰や前科につながる可能性もある重大な罪です。単純なケースでは罰金で済むこともありますが、強盗や窃盗などと併せて起訴されれば、実刑が視野に入るケースも少なくありません。

もし、ご自身やご家族が住居侵入の容疑をかけられた場合は、一人で悩まず、すぐに弁護士に相談することが大切です。住居侵入罪の弁護は、経験と実績豊富なグラディアトル法律事務所にお任せください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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