デリヘル本番トラブルで合意書に署名してしまった事案の解決事例

弁護士 若林翔
2019年09月26日更新

今回の相談は札幌のすすきのでデリヘル嬢と本番を行ってしまった結果,その場で合意書に署名したが不安になって当事務所まで相談にきてくれた事例。

デリヘル嬢と生で本番行為をし,すぐさま店長が駆けつけてきて示談金60万の支払いと合意書への署名を強要されてしまった。

しかし,その合意書には清算条項がなかった。

相手方がトラブルを蒸し返してきて,さらに賠償金を支払えと言われかねない状況の中で,すぐに当事務所の弁護士が代替の合意書を作成し,相談者に不利な状況での合意を覆し,合意書を作成し直すことができたという事案。

デリヘル本番トラブルの事件概要

相談者は札幌近郊で働くどこにでもいる20代男性。

彼女はいたが,これまでに何度もデリヘルを利用しており,本番も何回かヤッたことがある。そのさいも特に問題となったことはなく,相談者としても罪の意識など感じることは難しいような風俗歴だった。

そもそもデリヘルの本番トラブルとは何か,大きく分けると2パターンに分かれる。

デリヘル嬢との同意がある本番行為でトラブルに発展するパターン

今回の相談者は,デリヘル嬢との同意があったためこちらのパターンに当てはまる。

デリヘル嬢と同意があったうえで本番行為をすることに関しては,刑法上はほとんど問題がないと言っていいかと思う。

というのもソープにも言えることではあるが,同意がある=自由恋愛として警察や検察が入る余地がないからだ。

客とデリヘル嬢のどちらが本番行為を持ちかけたかということも特に問題にはならない。

サービスを受けている客と,提供しているキャストがお互いに気分が高まって本番行為に至ったとしても,それは男女間ではそうなってしまうのも無理はなく,特段問題がある行為とはいえない。

同意があるうえでの本番行為がトラブルに発展するのは,デリヘル店側に本番行為がバレた時ときと,デリヘル嬢が意図的に本番行為をしたときだ。

どちらも一般的なデリヘル店では罰金が発生する状況として利用規約などに記載がある。
風俗店が規約で掲げている罰金の相場としては,100200万といったところだろう。

仮にデリヘル嬢が罰金(から得られる自身への慰謝料など)を目的に本番行為を提案して,男性客がそれを承諾し実際に本番行為を行ったとしても,それを覆す証拠がないため言い逃れは難しいだろう。

デリヘル嬢との同意がない本番強要でのトラブル

今回のケースには当てはまらないが,このデリヘル嬢との同意がなかったというパターンは極めて緊急性が高い。

同意がないということは,強制的にデリヘル嬢と本番行為を行ったということが多いだろう。

その場合に問題となるのは,刑法の強制性交等罪(旧:強姦罪)の適用だ。もし,本番行為が強制性交等罪と認定されて逮捕されてしまった場合には,5年以上の懲役に科される可能性がある。

(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
(準強制わいせつ及び準強制性交等)
第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

引用|e-gov法令検索:刑法

今回は本番行為=性交について解説しているが,口腔性交=フェラチオを強要しても強制性交等罪が適用されることに注意が必要だ。
さらに,強制性交等罪についても罪名自体は「準」となっていて刑罰が軽そうなイメージがあるが,強制性交等罪と同じく5年以下の懲役に科される。
強制性交等罪が適用されるのは,相手がお酒に酔っている状態などに適用されるがここでは詳述を避ける。

また,デリヘルの利用ではあまり摘発事例を見たことがないが,強制わいせつ罪という類型もある。

関連記事:逮捕されたらどうなる?

 

今回の本番トラブルでは同意があった

話を戻すと,今回は同意があったパターンということになり警察のお世話になる可能性は低い。

この場合でも,店長やデリヘル嬢がいきなり警察に被害届を出すケースも想定できなくはないが,合意書があれば警察の介入を防げることが多い。

警察としても民事不介入という原則があるからか,合意書がある場合などには犯罪発生のおそれがないという判断で被害届を受理しない方向に働きかけたりするという。

しかし,疑わしい客には,署に出向いてもらって別室で反省文を書かされたりもすることもあるようだ。

また,警察が女性側の話だけを聞いて捜査を始めてしまった例もあり,注意は必要だ。

関連記事:被害届って何?出されたらどうなる?

 

デリヘル本番トラブルでの弁護士の対応

当事務所はデリヘルでの本番トラブルを含む数多くの風俗案件に対応している。

トラブルが深夜に発生することもあり,土日含む24時間で電話対応ができることも強みだ。

当事務所には東京と大阪にオフィスがあるが,今回の相談者が札幌在住ということもあり電話にて担当弁護士が法律相談を行った。
相談者としても,会社の名刺免許証を写真に取られてしまい,彼女バレ・家族バレ会社バレはなんとしても避けたい事情があり,すぐに当事務所まで電話をしてきてくれたことで早期に解決することができた。

関連記事:風俗トラブルは家族や職場にバレてしまうのか?

本番トラブル自体は既に合意書の締結によって終結しており,今回問題となっているのは「清算条項」の有無だ。

相談者と店長だけで合意書が交わされ法律の専門家が介入していない状況もあって,不完全な合意書を締結してしまったらしい。

ただし,なにも全ての合意書を弁護士が作成する必要はなく,当事者間で作成した合意書でも必要事項さえ記載されていれば効力にはなんら問題ない。

弁護士が合意書や示談書を作成するときのポイントを解説した記事はこちらから。

清算条項とはなにか?

簡単に言えば,事件の「蒸し返し」を防ぐために合意書に記載する条項だ。

読者が気になる清算条項の内容としては以下のような記載になる。

「◯◯と△△は,◯◯と△△との間には,本件に関し,本合意書に定めるものの他,何らの債権債務がないことを相互に確認する。

どうしても法律的に間違いないのない書面を作成しようとすると,硬派な文面になってしまうがこればかりはしょうがない。
◯◯と△△には,当事者の名前を入れるなりして適宜修正していくことになる。

風俗トラブルにおいては入れるケースや,そもそも清算条項を入れないケースもあり一概には言えないが,入れるケースの方が多いのではないかと思う。

清算条項を含んだ合意書の作成

また,デリヘルの本番トラブルにおいては,清算条項もそうだが,口外禁止条項や,店側に個人情報を削除させる条項も大事なように思う。

それらの点も踏まえた合意書をすぐに作成して相談者に郵送した。

今回は示談金について減額するなどの交渉を行わないため弁護士費用も安く済み,相手のデリヘル店側も合意書の再締結に文句をつけるようなこともなかったと相談者から聞いている。
依頼者がすでに示談金を支払っているということで,実際に確認はとっていないが名刺免許証の写真も無事に削除されたようだ。

ことデリヘルの本番トラブルに関しては,初動対応がなにより重要であるためすぐに当事務所に相談しにきてもらえて非常に良い形で事件を終結することができた。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

お悩み別相談方法

弁護プラン一覧

よく読まれるキーワード