ビットトレント(BitTorrent)の仕組みと違法性

2021年9月5日現在、ビットトレント(BitTorrent)というファイル共有ソフトを利用して、呪術廻戦などの人気漫画・アニメや、AV(アダルトビデオ)を違法アップロード(違法ダウンロード)をしてしまうという著作権法違反の事例が相次いでおります

ビットトレント(BitTorrent)では、違法ダウンロードをすると、自動的に違法アップロードもしてしまう仕組みになっておりますので、自分がアップロードをしている認識のない方もいます。

ビットトレント(BitTorrent)での著作権侵害では逮捕者が出ていることなどから、不安な方も多いでしょう。

著作権者たちは、違法アップロード者について、P2P Finderと呼ばれるファイル共有ソフトの監視システムを使用してそのIPアドレス等を特定し、プロバイダに対して、数多くの発信者情報開示請求を行なっております。

そのため、ビットトレント(BitTorrent)で著作権侵害をして発信者情報開示に係る意見照会書が届いたという弁護士への相談が増えております。

このように社会問題化しているビットトレント(BitTorrent)ですが、その仕組みについて、詳しく知っている人は多くありません。

そこで、今回の記事では、ビットトレント(BitTorrent)の仕組みと違法性について解説をします。

発信者情報開示に係る意見照会書が届いたときの対処法、ファイル共有ソフトと著作権侵害、損害賠償の金額などについては、以下の記事をご参照ください。

BitTorrent(ビットトレント)などファイル共有ソフト(P2P)での違法アップロードをめぐる発信者情報開示請求やその対処法

 

ビットトレント(BitTorrent)とは

ビットトレント(BitTorrent)とは、2001年にアメリカ人のプログラマー、ブラム・コーエン氏によって開発され、2003年に公開されたPeer to Peer(P2P)方式の通信プロトコルです。

現在の開発元はBitTorrent,Incで、全世界に20億人以上のユーザー、1億人の月間アクティブユーザー(当該サービスを1か月に1回以上利用したユーザー)がいるとされています。

ビットトレント(BitTorrent)は、従来の通信と異なり、ファイルの共有者・アップロード者の負荷を分散させることにより、ダウンロード速度を早くすることができる点に特徴があります。

リンク:ビットトレント(BitTorrent)のウェブサイト

ビットトレント(BitTorrent)の仕組み

ビットトレント(BitTorrent)は、Peer to Peer(P2P)方式によりファイルを共有します。

従来の通信でのダウンロードとPeer to Peer(P2P)方式によるファイル共有の仕組み、ビットトレント(BitTorrent)の仕組みについて解説します。

従来の通信でのダウンロードの仕組み

従来の通信では、あるファイルをダウンロードしようと思ったときに、そのファイルが存在するコンピューターからファイルの全てをダウンロードすることになります。

従来の通信でのダウンロードの仕組み図

この場合、両者の端末の関係は対等ではありません。すなわち、一方はダウンロードのみ、他方はアップロードのみを行うことになります。そういう意味で、両者の機能には違いがあるといえます。

このような通信では、ダウンロードを一つのコンピューターに頼ることになります。そのため、アクセスが集中した場合に極度に通信速度が遅くなるという弱点があります。

また、大元のコンピューターが壊れてしまったなど、障害が発生した場合には、そのファイルをダウンロードすることはできなくなるという弱点もあります。

従来の通信でのダウンロードの問題点

P2Pによるファイル共有の仕組み

P2PとはPeer to Peerの略で、ネットワーク上での接続・通信の方式の一つです。

Peerとは英語で同輩といったような意味ですから、P2Pは、「同輩から同輩へ」すなわち機能に違いのない端末同士が対等な関係で直に接続してデータをやり取りする仕組みということになります。

P2Pを利用したファイル共有ソフトには、BitTorrentのほかにWinnyなどがあります。

P2Pによるファイル共有図

ビットトレント(BitTorrent)でのファイル共有の仕組み

ビットトレント(BitTorrent)は、従来の通信にあった、アクセスが集中すると極端に通信速度が遅くなる、大元のサーバーに障害が発生した場合に、ダウンロードが不可能になるという弱点を補うために生まれました。

P2Pを利用してダウンロードを行う際は、一つのコンピューターからファイルをダウンロードするのではなく、それぞれのコンピューターからファイルを断片的にダウンロードすることになります。

このようにデータをやり取りするコンピューターのことをピアといいます。

一つのピアには、断片のファイルをダウンロードするためだけにアクセスすることになるので、一つのピアに対する負荷は小さくなります

また、一つのピアに障害が発生したとしても、他から断片をダウンロードすれば済むため、サーバ―の障害によりダウンロードが不可能になるというリスクも回避することができます。

P2Pは、機器間が接続・通信する方式の一つで、機能に違いのない端末同士が対等な関係で直に接続する仕組みです。

ビットトレント(BitTorrent)では、あるファイルをダウンロードした場合には、同時にアップロードも行われることになります。

すなわち、受け手であると同時に送り手にもなるわけです。

そのため、あるファイルをダウンロードすると、それ以降は先ほどの例で挙げたファイルの断片を提供するサーバの役割も果たすようになります。

WinnyなどほかのP2Pファイル共有ソフトでは、自分がダウンロードしていないファイルのアップロードに協力してしまうことがあります。

しかし、ビットトレント(BitTorrent)では、自分がダウンロードしたファイルのみがアップロードされることになります。

 

BitTorrentでは、“.torrent”という拡張子がついたファイル(トレントファイル)をまず利用することになります。

トレントファイルを読み込むことによって、利用者は、目的となるデータを持っているピアから、データの断片を受け取ることにより、ファイルをダウンロードします。

このダウンロード中のコンピュータは、リーチャー (leecher)と呼ばれます。

リーチャーはダウンロードしたファイルデータの断片について、他のピアと共有(アップロード)をします。

そして、ダウンロードが完了し、完成したファイルを持つコンピューターは、シード(seed)シーダー(seeder)と呼ばれます。

シード(seed)・シーダー(seeder)になると、アップロードのみを行うようになります。

分かりづらいかと思いますので、以下の図を用いて説明いたします。

少し不自然な例ではありますが、ハンバーガーの完成品をビットトレント(BitTorrent)で共有すると考えてください。

実際には、ハンバーガーではなく、漫画・アニメやAVなどのファイルを共有することになります。

一番上の学ランの人は、BitTorrentでハンバーガーをダンロードしたいと考え、ダウンロード中のリーチャーです。

最初に、一番下の青い服の人、シーダー(最初の提供者)が、BitTorrent上にハンバーガーをアップロードします。この人は、一次放流者などと呼ばれます。

中断の左側の三人は、学ランの人と同じリーチャーです。

中断の右側の白衣だか白スーツだかを着ている人は、ダウンロードが完了し、完成したファイル(ハンバーガー)を持ち、シーダーになった人です。

一時放流者と、シーダーになった白衣の人は、完全なるハンバーガーを持っていて、これをアップロードしています

他方で、リーチャーは、ハンバーガーのバンズや、ハンバーグ、ピクルスなど、ハンバーガーの一部のみを持っていて、その一部を他のリーチャーに共有し、アップロードをしています。

学生服のリーチャーは、シーダーや他のリーチャーからハンバーガーの一部の共有を受け、ダウンロードをし、ハンバーガーを完成させるとシーダーになり、その後は、アップロードのみを行うようになります

 

なお、こうしたダウンロードは、クライアントソフトウェアと呼ばれる専用のソフトウェアを使用することになります。

主なクライアントソフトウェアには、BitTorrent、qBittorrent、μTorrent(uTorrent)などがあります。

 

ビットトレント(BitTorrent)は違法??

結論から言うと、ビットトレント(BitTorrent)そのものは違法ではありません

BitTorrentは、ファイル共有ソフトであり、それ自体はデータの断片をダウンロードするとともに、ダウンロードしたデータを他の利用者に提供するだけです。

この仕組み自体は、違法ではありません。

しかしながら、共有されるファイルの種類によっては違法となる場合があります。

具体的には、他者の著作権を侵害するファイルの共有や、児童ポルノなど違法なファイルの共有が違法になります。

呪術廻戦などの人気漫画・アニメや、AV(アダルトビデオ)をビットトレント(BitTorrent)で共有することは、著作権者の著作権を侵害する違法行為になります。

トレントの違法性についての詳細は、以下の記事もご参照ください。

トレントはダウンロードのみも違法!バレる仕組みやリスク回避法紹介

また、ビットトレント(BitTorrent)と著作権侵害・逮捕事例については、以下の記事をご参照ください。

リンク:BitTorrent(ビットトレント)・ファイル共有ソフト(P2P)使用などの著作権法違反の逮捕事例と罰則・量刑相場・判例について弁護士が解説!

 

ビットトレント(Bittorrent)の仕組みと違法性のまとめ

ビットトレント(Bittorrent)を利用することによって、通信速度を早くしたり、サーバー喪失のリスクを回避したりできるようになります。

そして、Bittorrent自体は違法ではなく、正当にも違法にも使うことができます。

もっとも、違法な利用を行うと、民事上は損害賠償請求を受ける可能性があり、加えて、逮捕され、刑事上の責任を問われる可能性すらあります。

万が一、Bittorrentを違法に利用してしまい、発信者情報開示に係る意見照会書が届いてしまった場合には、すぐに弁護士に相談し、示談交渉を開始すべきでしょう。

トレントの違法ダウンロードと開示請求、逮捕、示談金、裁判等については、以下の記事もご参照ください。

トレントの開示請求は絶対無視・拒否NG!正しい対応を弁護士が解説

トレントは逮捕されないはデマ!逮捕事例と逮捕を避ける方法を解説

トレントの示談金相場は10~150万円!解決・減額のポイント解説

時間もお金も失う!トレントの裁判を回避すべき理由と弁護士の選び方

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弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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