SEが残業代請求する際の4つのポイントをモデルケースで弁護士が解説

裁量労働制のSEも残業代請求可能!違法な5つの手口を弁護士が解説

「SEだから残業代は出ない」
「契約で裁量労働制が適用されるから請求できない」
「SEは業務委託扱いだから残業代請求は無理だと言われた」

このように会社から説明され、残業代請求を諦めている方もいるのではないでしょうか。

しかし、SE(システムエンジニア)だからといって、残業代請求ができないとは限りません。

たとえば、「業務委託契約」とされていても実態が会社員に近い働き方だったケースや裁量労働制が正しく運用されていなかったケースでは、未払い残業代が認められることがあります。

また、「主任」「リーダー」といった肩書があっても、実際には管理職とはいえず、残業代を請求できるケースも少なくありません。

特にSEは、納期前の長時間労働や夜間対応、客先常駐などで労働時間が長くなりやすい職種です。

高額な残業代が認められるケースもありますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

本記事では、SEが残業代請求をするときに確認したい4つのポイントを、モデルケースや裁判例も交えながらわかりやすく解説します。

自分が請求できる立場なのか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

「SEだから残業代は出ない」と言われたときに確認すべき4つのポイント

「SEだから残業代は出ない」と言われたときに確認すべき4つのポイント

「SEだから残業代は出ない」「裁量労働制だから請求できない」会社からそのように言われ、請求を諦めている方もいるかもしれません。

しかし、SEでも残業代請求が認められるケースは少なくありません。

まずは、自分が請求できる可能性があるかを確認するために、以下の4つのポイントをチェックしてみましょう。

⬜︎  業務委託を理由に残業代が支払われていない
⬜︎  裁量労働制を悪用している
⬜︎  固定残業代制度の運用が不適切である
⬜︎  名ばかり管理職にさせられている

業務委託を理由に残業代が支払われていない

「業務委託契約だから残業代は出ない」と言われていても、実際の働き方によっては請求できる可能性があります。

特に、勤務時間や仕事内容を会社に細かく管理されていた方は、残業代を請求できる可能性が高いです。

裁量労働制を理由に残業代が支払われていない

SEに裁量労働制を適用している会社もあります。

ただ、制度が正しく運用されていない場合は、裁量労働制でも残業代を請求できるケースがあります。

固定残業代制度の運用が不適切である

給与に固定残業代(みなし残業代)が含まれていても安心はできません。

みなし時間を超えた残業分が支払われていないケースや制度自体に問題があるケースがあるからです。

このようなケースであれば残業代を請求できる可能性があります。

名ばかり管理職にさせられている

「主任」「チームリーダー」などの肩書があるだけで、残業代が出ていない方もいるでしょう。

しかし、肩書だけで管理職扱いされている「名ばかり管理職」なら、残業代請求できる可能性があります。

次章からは、それぞれのポイントについて、「どのようなケースなら請求できるのか」を詳しく解説します。

ポイント①|SEが労働者かどうかは業務委託契約という名称ではなく実態で判断する

ポイント①|SEが労働者かどうかは業務委託契約という名称ではなく実態で判断する

会社から「業務委託だから残業代は出ない」と説明されていても、必ずしもその説明が正しいとは限りません。

SE業界では、契約上は業務委託でも、実際には社員のように働いているケースがあります。

ここでは、どのような場合に残業代請求が認められる可能性があるのかを解説します。

業務委託契約でも実態が労働者なら残業代請求できる

会社から「あなたは業務委託だから残業代は出ない」と言われている方もいるでしょう。

たしかに、法律上、業務委託(請負・準委任)の場合、原則として残業代は発生しません。

ただ、ここで重要なのは、契約書の名前ではなく、実際の働き方です。

たとえば、契約上は「業務委託」とされていても、会社から働き方を細かく管理され、実態として会社員に近い状態なら、法律上の「労働者」と判断される可能性があります。

SE業界では、SES(システムエンジニアリングサービス)や客先常駐などで、名目だけ業務委託になっているケースも少なくありません。

たとえば、次のような働き方をしていた場合です。

・出勤時間や退勤時間が決められている
・作業場所を会社や常駐先に指定されている
・上司や担当者から具体的な指示を受けている
・Slackやチャットで常に進捗報告を求められる
・他社案件を自由に受けられない

このような場合、実態としては「労働者」に該当し、残業代を請求できます。

SEが「労働者」と判断されるポイント

では、契約書が「業務委託」だったとしても、どのような場合に「労働者」と判断されるのでしょうか。

裁判では、実際に会社の指示を受けて働いていたかが重視されます。特にSEの場合は、次のポイントが重要です。

⬜︎ 仕事を断る自由があったか
⬜︎ 仕事の進め方を会社に管理されていたか
⬜︎ 勤務場所や勤務時間が決められていたか
⬜︎ 自分の代わりに他の人を働かせられたか
⬜︎ 報酬が給与に近かったか

【仕事を断る自由があったか】

「この案件に入ってください」
「来月から別現場に移ってください」

と会社から言われたとき、断ることができなかった場合、会社とのつながりが強く、労働者に近いと判断されやすくなります。一方、

「案件を受けるかは自由」
「自分で仕事を選べた」

という場合は、業務委託と評価される方向に傾きます。

【仕事の進め方を会社に管理されていたか】

仕事の内容や進め方について、会社から細かく指示を受けているなら、「労働者」と判断されやすくなります。

たとえば、

・作業内容を上司が決めていた
・朝会や定例会議への参加が必須だった
・Slackやチャットで進捗報告を求められていた
・急な仕様変更や別業務の対応を指示されていた

このような状況なら、会社の指揮監督下で働いていたと判断される可能性があります。

【勤務場所や勤務時間が決められていたか】

どこで、何時から何時まで働くかを会社に決められていたかも労働者性を判断するポイントです。

たとえば、

・毎日9時出社が必要だった
・客先常駐で勤務場所が固定されていた
・勤怠システムで打刻を求められていた
・遅刻や早退で注意を受けていた

という場合、会社員に近い働き方と判断されやすくなります。

【自分の代わりに他の人を働かせられたか】

業務委託なら、原則として自分以外の人に仕事を任せる自由があります。

たとえば、

「今日は別のエンジニアに対応してもらいます」
ということが自由にできるなら、業務委託に近いと判断されやすくなります。

一方、本人しか作業できず、無断欠勤も許されないケースであれば、労働者といえる可能性が高いです。

【報酬が給与に近かったか】

会社から支払われる報酬が一定時間働いた対価といえるようなケースでは、労働者に近いと判断されます。

たとえば、

・毎月ほぼ同じ額が支払われていた
・欠勤すると報酬が減額された
・残業時に別途手当が支払われていた
・成果物の出来ではなく、働いた時間に応じて支払われていた

というようなケースです。

反対に、

・「システム完成で〇万円」
・「案件単位で報酬が決まる」

という形なら、業務委託と判断される可能性が高くなります。

「契約書には業務委託と書いてあるから無理」と思っている方でも、実は残業代請求できるケースがあります。

少しでも当てはまる点があるなら、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

ポイント②|契約で裁量労働制が定められているSEでも残業代を請求できる可能性がある

ポイント②|契約で裁量労働制が定められているSEでも残業代を請求できる可能性がある

「うちは裁量労働制だから残業代は出ない」と会社から説明され、請求を諦めているSEの方もいるでしょう。

しかし、裁量労働制だからといって、残業代請求ができないわけではありません。

制度そのものに問題があるケースや実際の運用が適切でないケースでは、未払い残業代を請求できる可能性があります。

まずは、自社の制度が適切に運用されているか確認してみましょう。

SEに適用される「専門業務型裁量労働制」とは

裁量労働制とは、実際に何時間働いたかではなく、「一定時間働いたもの」とみなす制度です。

たとえば、

「1日8時間働いたものとみなす」

というルールなら、実際には10時間働いていても、原則として8時間働いた扱いになります。

つまり、裁量労働制が正しく適用されているSEだと、いくら残業をしても残業代を請求できないということになります。

なお、SEに関係するのは、主に「専門業務型裁量労働制」です。

これは、仕事の性質上、働く人の裁量(自分の判断)に任せる必要がある業務に認められる制度です。

対象業務は、法律上限定されていますので、SEなら誰でも適用されるわけではないという点が重要なポイントです。

裁量労働制でもSEが残業代請求できる4つのケース

裁量労働制が導入されていても、次のようなケースでは残業代請求が認められる可能性があります。

・裁量労働制の対象業務に該当しない
・労使協定の締結・届出がない
・実労働時間とみなし労働時間がかけ離れている
・みなし労働時間が法定労働時間を上回っている

【裁量労働制の対象業務に該当しない】

裁量労働制は、すべてのSEに使える制度ではありません。

専門業務型裁量労働制の対象になるのは、法律上、「情報処理システムの分析又は設計の業務」に限られています。

簡単にいうと、顧客の要望を整理したり、システム全体の設計を考えたりする上流工程の仕事が中心です。

たとえば、次のような業務は対象になりやすいでしょう。

・顧客の要求分析
・システムの基本設計・詳細設計
・システム構成の検討

一方で、次のような業務は対象外となる可能性があります。

・指示された仕様書どおりのプログラミング・コーディング
・システムの運用・保守
・監視業務やデータ入力作業

会社から裁量労働制と言われていても、実際の仕事内容が対象外なら、残業代を請求することが可能です。

【労使協定の締結・届出がない】

専門業務型裁量労働制を導入するには、労使協定の締結や労働基準監督署への届出が必要です。

しかし、実際には、必要な届出をせずに、裁量労働制を適用している会社もあります。

手続きに不備があれば、裁量労働制そのものが無効です。

つまり、契約で「裁量労働制が適用される」と決められていても、残業代を請求することができます。

【実労働時間とみなし労働時間がかけ離れている】

裁量労働制を導入しているからといって、会社がSEを無制限に残業させてよいわけではありません。

実際の労働時間と「みなし労働時間」があまりにもかけ離れている場合は、制度の運用自体に問題がある可能性があります。

たとえば、

・「1日8時間働いたものとみなす」とされているのに、実際は毎日12時間近く働いていた
・リリース前は深夜残業が続き、月100時間近い残業が常態化していた

というケースです。

このようなケースでは、裁量労働制の運用が違法となり、残業代を請求することができます。

【みなし労働時間が法定労働時間を上回っている】

会社が定めた「みなし労働時間」が1日8時間を超える場合、その超過分については残業代が発生します。

たとえば、「1日10時間働いたものとみなす」という制度なら、8時間を超える2時間分について残業代を請求できます。

ポイント③|固定残業代が支払われているSEでもみなし残業時間を超える部分については残業代を請求できる

ポイント③|固定残業代が支払われているSEでもみなし残業時間を超える部分については残業代を請求できる

SEの中には、

「固定残業代込みの給料だから残業代は出ない」

「みなし残業が含まれているので追加支給はない」

と会社から説明されている方もいるでしょう。

しかし、固定残業代制度があるからといって、残業代請求ができないわけではありません。

制度が適切に運用されていないケースや会社側の説明が不十分なケースでは、追加の残業代を請求できる可能性があります。

みなし残業時間を超えた部分には追加の残業代が発生する

固定残業代制度とは、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度です。

たとえば、

「月45時間分の固定残業代込み」

という給与条件なら、会社は45時間分までの残業代を先払いしている形になります。

ただ、ここで注意したいのは、固定残業代は、上限なしの働かせ放題ではないという点です。

たとえば、

・固定残業45時間込み
・実際の残業時間は月80時間

という場合、みなし残業時間を超えた35時間分については別途残業代が支払われなければなりません。

みなし残業時間内でも基本給と固定残業代が明確に区別されていなければ残業代制を請求できる

固定残業代制度では、みなし残業時間を超えていなくても、制度の運用に問題があれば残業代請求できる可能性があります。

なぜなら、固定残業代制度が有効になるには、会社側が一定のルールを守る必要があるからです。

特に重要なのが、基本給と固定残業代が明確に区別されているかという点です。

たとえば、

基本給:30万円
固定残業代(45時間分):8万円

というように、給与明細や雇用契約書で明確に分かれていれば、制度が有効と判断されやすくなります。

一方、「月給38万円(固定残業代込み)」としか書かれていないようなケースでは、基本給と固定残業代部分が区別されていませんので、制度自体が無効になる可能性があります。

まずは、雇用契約書・給与明細・就業規則を確認し、固定残業代のルールが守られているかどうかをチェックしてみましょう。

ポイント④|管理職の肩書が与えられているSEでも「名ばかり管理職」なら残業代を請求できる

ポイント④|管理職の肩書が与えられているSEでも「名ばかり管理職」なら残業代を請求できる

SEの中には、

「リーダーだから残業代は出ない」
「マネージャー職なので管理職扱いです」

と言われ、残業代が支払われていない方もいるでしょう。しかし、役職名があるだけで残業代が出なくなるわけではありません。

実際には、肩書だけ管理職にされ、一般社員とほとんど変わらない働き方をしているケースも少なくありません。

そのようなケースであれば「名ばかり管理職」として残業代請求が可能です。

名ばかり管理職とは

「名ばかり管理職」とは、役職名は管理職でも、実際には管理職といえる権限や待遇がない状態をいいます。

たとえば、

・「チームリーダー」という肩書があるが、部下の人事評価権限はない
・プロジェクト管理をしているが、出退勤時間は一般社員と同じ
・管理職と言われているのに給与はほとんど変わらない

というケースです。

SE業界では、プロジェクトをまとめる役割を担うだけで「マネージャー」「主任」とされることがあります。

しかし、残業代の支払いが不要な「管理監督者」とは、単に肩書だけで判断されるわけではありません。

権限や待遇などの実態を伴わない管理職であれば、「名ばかり管理職」として残業代請求が可能です。

SEが名ばかり管理職に該当するかどうかのポイント

SEが名ばかり管理職に当たるかは、主に次のような事情から判断されます。

・経営に関わる権限があったか
・勤務時間の自由があったか
・給与や待遇が管理職に見合っていたか

【経営に関わる権限があったか】

本当の管理職であれば、経営側に近い立場として、一定の権限があります。

たとえば、

・部下の採用や人事評価に関わる
・昇給や配置を決められる
・プロジェクト予算や組織運営に関与する

といった権限です。

一方、「現場をまとめていただけ」「技術的なリーダーだった」というケースは、管理監督者とはいえません。

【勤務時間の自由があったか】

管理監督者は、一般社員のように厳格な時間管理を受けないのが通常です。

つまり、自分で出退勤の時間を決められるかどうかがポイントになります。

たとえば、

・毎日決まった時間に出社していた
・遅刻や早退で注意を受けていた
・タイムカードや勤怠打刻が必須だった

というケースだと管理監督者とはいえません。

【給与や待遇が管理職に見合っていたか】

給与面も重要なポイントです。

たとえば、

・管理職なのに一般社員と給与差がほとんどない
・残業代がなくなった結果、むしろ年収が下がった

という場合、管理監督者とは認められにくくなります。

肩書だけ増え、責任だけ重くなっている状態なら、「名ばかり管理職」に当たる可能性があるでしょう。

【モデルケース】SEの残業代請求のポイントを事例に基づき弁護士が解説

【モデルケース】SEの残業代請求のポイントを事例に基づき弁護士が解説

ここまで、SEが残業代請求できる4つのポイントを解説してきました。

ただ、「自分のケースでも請求できるの?」「実際にはどんな流れで進むの?」と、まだ具体的にイメージできない方もいるでしょう。

そこで本章では、SEとして働いていた方の架空事例をもとに、残業代請求の流れや認められたポイントをわかりやすく解説します。

事案の概要

Aさん(30代男性)は、都内のIT企業でSEとして働いていました。

業務内容は、システム開発プロジェクトの設計補助やプログラミング、障害対応などです。

会社では「専門業務型裁量労働制」が導入されており、

「SEは裁量労働制だから残業代は出ない」

と説明されていました。

しかし実際には、毎朝9時から朝会があり、出社時刻も決まっていました。

納期前には終電近くまで働くことも多く、障害対応で深夜に呼び出されることも少なくありません。

月の残業時間は、多い月で80〜100時間ほど

それでも給与はほとんど変わらず、「IT業界では普通」と思いながら働いていたそうです。

退職後、友人から「その働き方なら残業代請求できるかもしれない」と言われ、弁護士へ相談しました。

残業代請求の経過

弁護士が状況を確認したところ、Aさんの仕事内容は、仕様書に沿ったプログラミングや保守対応が中心でした。

そのため、裁量労働制の対象業務に当たらない可能性があると判断しました。

また、勤務実態を確認すると、

・毎朝の朝会が必須だった
・Slackで出退勤報告を求められていた
・勤怠システムによる打刻があった
・深夜帯のメッセージ履歴が多数残っていた

など、会社による時間管理が強かったことも判明しました。

そこで、弁護士が会社に対して未払い残業代を請求。

会社側は当初、「裁量労働制なので支払義務はない」と主張しました。

しかし、勤怠データやPCログ、Slack履歴などをもとに交渉を進めた結果、約280万円の解決金を受け取る形で和解に至りました。

請求が認められたポイント

このケースで重要だったのは、「裁量労働制」という会社の説明よりも、実際の働き方です。

特に、以下の事情が有利に働きました。

【仕事内容が裁量労働制の対象外だった】

Aさんの仕事は、設計というよりも、仕様書に沿った開発作業や保守対応が中心でした。

そのため、専門業務型裁量労働制の対象外と判断される余地がありました。

【勤務時間を会社が管理していた】

裁量労働制では、本来、働き方に一定の自由があるはずです。

しかしAさんは、
・朝会への参加必須
・勤怠打刻あり
・Slackで進捗報告

という状態でした。

この点から、「実態としては通常の労働者と変わらない」と評価されやすい状況でした。

【証拠を残していた】

Aさんは、

・Slackの業務履歴
・PCログイン・ログアウト履歴
・深夜対応時のチャット記録
・勤怠データ

を残していました。

このような証拠が残っていたため、会社もこれ以上反論ができず、残業代の支払いに応じてくれました。

弁護士からのコメント

SEの残業代請求では、

「裁量労働制だから無理」
「業務委託だから請求できない」

と誤解している方が少なくありません。

しかし、実際には、会社側の制度運用に問題があるケースは珍しくありません。

「自分も似た働き方かもしれない」と感じた方は、一度専門家に相談してみるとよいでしょう。

SEの残業代請求が認められた裁判例

実際の裁判でもSEの残業代請求が認められたケースが多く存在しています。

ここでは、SEの残業代請求に関する代表的な裁判例を紹介します。

裁量労働制・管理職扱いが否定され残業代請求が認められた事例|京都地裁平成23年10月31日判決

【事案の概要】

SEとしてシステム開発や分析、プログラミング業務を担当していたXさんは、勤務先で裁量労働制が適用され、課長職として扱われていました。

しかし、長時間労働が続いていたにもかかわらず、会社は

「裁量労働制だから残業代は出ない」
「課長なので管理職に当たる」

として支払いを拒否しました。

納得できなかったXさんは、未払い残業代を求めて裁判を起こしました。

【裁判所の判断】

裁判所は、会社側の主張を認めず、残業代の支払いを命じました。

まず、裁量労働制については、Xさんの仕事が本来対象となる「情報処理システムの分析又は設計の業務」とはいえないと判断しています。

理由の一つは、Xさんの業務にプログラミングなど裁量性の低い作業が多く含まれていたことです。

また、元請会社から厳しい納期が設定されており、仕事の進め方に十分な自由があったとはいえない点も重視されました。

さらに、課長職だった点についても、裁判所は管理監督者に当たらないと判断しました。

理由として、

・経営方針を決める立場ではなかった
・採用権限がなかった
・役職手当が月5000円程度だった

などが挙げられています。

部長職のSEでも管理監督者に当たらないと判断された事例|大阪地裁平成26年7月25日判決

【事案の概要】

Xさんは、システムの企画・分析・開発などを行う会社で、SEとして働いていました。
役職はITソリューション事業部の部長です。

会社は、「部長だから管理職」として残業代の支払いを拒否しました。
そこでXさんは、未払い残業代を請求する裁判を起こしました。

【裁判所の判断】

裁判所は、Xさんが労働基準法上の管理監督者には当たらないと判断し、会社に残業代の支払いを命じました。

たしかにXさんには、プロジェクトに必要な技術者の確保や、協力会社を手配する権限がありました。

しかし、裁判所は、「人事評価や採用について最終的な決定権はなかった」という点を重視し管理監督者性を否定しています。

また、実際の働き方についても、

・就業規則で勤務時間が決まっていた
・所定の勤務時間どおりに出勤していた
・SEとしてシステム開発業務を行っていた

という事情がありました。

つまり、役職名は部長でも、働き方は一般社員に近かったと判断されたのです。

SEの残業代請求は弁護士に依頼するのがおすすめ!弁護士が行う残業代請求の流れ

SEの残業代請求は弁護士に依頼するのがおすすめ!弁護士が行う残業代請求の流れ

SEの残業代請求では、裁量労働制や業務委託、名ばかり管理職など、法律上の争点が問題になりやすい傾向があります。

また、会社側から「裁量労働制だから無理」「管理職だから対象外」と言われ、自分で交渉しても取り合ってもらえないケースも少なくありません。

そのため、SEの残業代請求では、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

ここでは、弁護士に依頼したときの一般的な残業代請求の流れを解説します。

内容証明郵便の送付

会社に対して未払い残業代を請求する通知を送ります。一般的には、内容証明郵便を利用します。

内容証明郵便とは、「いつ、どのような内容を会社へ送ったのか」を証明できる郵便です。

また、残業代請求には3年の時効(消滅時効)があります。

退職後に「もう少し落ち着いてから」と後回しにしていると、請求できる金額が減ってしまうため注意が必要です。
そのため、未払い残業代に気付いたときは早めに弁護士に相談するようにしてください。

会社との交渉

内容証明郵便を送った後は、会社との交渉に入ります。

基本的には会社とのやり取りはすべて弁護士が対応してくれます。

直接会社と話をしなくてもよいため、精神的負担は大幅に軽減されるでしょう。

また、会社も弁護士が窓口だと適当な反論をしてごまかすことができません。

それにより話し合いによる早期解決も期待できます。

労働審判の申立て

交渉で解決しない場合、労働審判を利用することがあります。

労働審判とは、残業代トラブルなどの労働問題を、裁判よりも早く解決するための手続きです。

裁判所で行われますが、一般的な裁判より短期間で終わることが多く、通常は3回ほどの話し合いや手続きで結論が出ます。

労働審判の期日には、本人も出席する必要があります。

ただ、弁護士も同席し、法律上の問題点については弁護士から話をしますので、安心して任せられるでしょう。

訴訟の提起

労働審判でも解決しない場合は、裁判(訴訟)へ進みます。

裁判では、

「裁量労働制が有効だったのか」
「本当に管理職だったのか」

などについて、証拠をもとに詳しく争うことになります。
時間はかかりますが、会社側が最後まで支払いを拒否するケースでは、有効な解決手段です。

SEの残業代請求はグラディアトル法律事務所にお任せください

会社に対する残業代請求をお考えのSEの方は、グラディアトル法律事務所までご相談ください。

経験豊富な弁護士が残業代請求をサポート

残業が長時間に及ぶSEは、残業代が高額になる傾向があります。
そのため、人件費を少しでも抑えたいと考える企業は、さまざまな手口を使って残業代の支払いを拒否してきます。

会社からもっともらしい言い分で残業代は支払われない旨伝えられると、納得してしまうSEの方もいるかもしれません。
しかし、法的には違法な手口であるケースも多いのが実情です。
このような会社側の違法な手口に対してしっかりと反論していくためには、残業代請求に関する知識や経験が不可欠となります。

グラディアトル法律事務所では、残業代請求を含む労働問題について多数の相談・解決実績があります。
SE特有の争点も踏まえながら、未払い残業代の回収に向けてしっかりサポートいたします。

「自分も請求できるのだろうか」と迷っている段階でも構いません。
まずはお気軽にご相談ください。

初回相談料無料、着手金0円から対応

「弁護士に相談したいけど費用が不安」という方もいるでしょう。

グラディアトル法律事務所では、残業代請求に関する初回相談は無料です。
相談したからといって、必ず依頼しなければならないわけではありません。また、実際に依頼いただく場合も、着手金0円から対応しています。

そのため、依頼時にまとまった費用を準備する必要はありません。

費用面が不安で相談をためらっている方も、まずは一度ご相談ください。

まとめ

SEだからといって、残業代請求ができないわけではありません。

「業務委託契約だから」
「裁量労働制だから」
「管理職だから」

と会社から説明されていても、実際の働き方によっては、未払い残業代を請求できるケースがあります。

大切なのは、会社の説明をそのまま信じて諦めないことです。

本コラムを読んで「自分も請求できるかもしれない」と感じた方は、早めにグラディアトル法律事務所までご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTikTokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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