残業代請求の労働審判とは?流れ・期間・費用・解決事例を徹底解説

労働審判で残業代請求をする流れ・費用・期間などをわかりやすく解説

「会社との交渉では解決できなかったため、労働審判で残業代請求をしようと考えている」

「労働審判で残業代請求をする場合、どのような流れになるのだろうか?」

「労働審判で残業代請求をすべきケースは、どのようなケース?」

会社との交渉で残業代の問題が解決しないときは、裁判所に労働審判を申し立てるという方法があります。

労働審判は、裁判とは異なり迅速かつ柔軟に残業代の問題を解決することができますので、早期解決を希望する方にとってはメリットの大きい方法といえるでしょう。

ただし、労働審判は、相手から異議が出されると訴訟に移行するなどのデメリットもありますので、ご自身のケースが労働審判に適しているかどうかについて、残業代請求に詳しい弁護士に相談してアドバイスしてもらうとよいでしょう。

グラディアトル法律事務所では、これまで未払い残業代請求や労働審判に関するご相談を数多く取り扱っており、交渉段階から労働審判、訴訟まで見据えた対応を行ってきました。

事案ごとの証拠状況や会社側の姿勢を踏まえ、「労働審判が適しているかどうか」から丁寧に見極め、依頼者にとって最適な解決方法をご提案しています。

本記事では、

・残業代請求における労働審判の基本的な仕組み
・メリット・デメリット
・労働審判が向いているケース
・労働審判の具体的な流れ
・当事務所の解決事例
・期間や費用の目安

などをわかりやすく解説します。

労働審判を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

労働審判とは

労働審判は、残業代請求を含む労働トラブルを比較的短期間で解決するための手続です。

まずは、その基本的な仕組みと裁判との違いを押さえておきましょう。

労働審判とは

労働審判とは、解雇や未払い賃金(残業代)など、労働者と会社との間で生じたトラブルを解決するための裁判所の手続です。裁判官1名と労働審判員2名で構成される「労働審判委員会」が審理を行います。

特徴的なのは、単に法律論だけで判断するのではなく、労働の実情や現場の感覚を踏まえた解決が図られる点です。労働審判員には、企業実務や労務管理に詳しい専門家が選ばれるため、実態に即した判断や調整が期待できます。

また、労働審判は「原則3回以内の期日」で審理を終える運用とされており、通常の裁判に比べてスピーディーに進むのが大きな特徴です。

期日ごとに主張と証拠を整理しながら、まずは話し合い(調停)による解決が試みられ、それでもまとまらない場合には、労働審判委員会が一定の結論(審判)を示します。

残業代請求の場面でも、証拠がそろっているケースであれば、短期間で解決に至る可能性があることから、多くの方に利用されている手続です。

労働審判と裁判の違い

労働審判と通常の裁判(訴訟)には、手続の性質や進み方にいくつかの違いがあります。主なポイントを整理すると、以下のとおりです。

労働審判裁判
平均審理期間90.3日17.2か月
費用印紙代が裁判の半額例:300万円の残業代請求なら印紙代1万円印紙代が労働審判の2倍例:300万円の残業代請求なら印紙代2万円
解決方法調停+審判判決
審理を担当する人裁判官1名+労働審判員2名裁判官
公開・非公開非公開公開

【解決までのスピード】」

労働審判は原則3回以内の期日で終結する手続であり、平均でも約3か月程度と、比較的短期間で解決に至るケースが多く見られます。一方、裁判は1年以上かかることも珍しくなく、長期化しやすい傾向があります。

【解決方法】

裁判では最終的に判決によって結論が示されますが、労働審判ではまず話し合い(調停)による解決が試みられ、それでもまとまらない場合に審判が出されます。そのため、当事者双方が納得できる柔軟な解決に至る可能性がある点が特徴です。

【手続きの進行に関与するメンバー】

裁判は、裁判官のみで審理されるのに対し、労働審判では裁判官に加えて、労務管理や企業実務に詳しい労働審判員が関与します。これにより、法律論だけでなく、実務感覚を踏まえた判断が期待できます。

【公開・非公開】

裁判は、原則として公開の法廷で行われるのに対し、労働審判は非公開で進められます。そのため、会社とのトラブルを周囲に知られたくない場合でも利用しやすい手続といえます。

このように、労働審判は「迅速さ」「柔軟性」「非公開性」に強みがある一方で、最終的に異議が出れば訴訟へ移行する可能性もあります。自分のケースにどちらの手続が適しているかを見極めることが重要です。

労働審判で残業代請求をするメリットとデメリット

労働審判は、残業代請求において有力な手段の一つですが、すべてのケースに適しているわけではありません。

ここでは、メリットとデメリットの双方を整理し、どのような特徴があるのかを確認していきましょう。

労働審判で残業代請求をするメリットとデメリット

労働審判で残業代請求をするメリット

【早期解決が期待できる】

労働審判の最大のメリットは、解決までのスピードです。

労働審判は原則として3回以内の期日で審理を終える運用とされており、裁判と比べて短期間で結論に至るケースが多くなっています。

実際に、平均審理期間は約90.3日とされている一方で、労働事件の裁判(賃金請求など)では平均17.2か月程度かかるとされており、両者の差は明らかです。

退職後に早く生活を立て直したい方や長期間の手続負担を避けたい方にとっては、大きなメリットといえるでしょう。

【実態に即した柔軟な解決が期待できる】

労働審判では、裁判官だけでなく、労務や企業実務に詳しい労働審判員が審理に加わります。

そのため、単なる法律論だけでなく、実際の働き方や職場の実情を踏まえた判断がなされやすいのが特徴です。

また、手続の中ではまず当事者同士の話し合い(調停)が試みられます。

裁判のように「勝ち・負け」を明確に決めるだけでなく、支払額や支払方法などについて柔軟に調整できるため、現実的な解決に至る可能性があります。

【裁判よりも費用を安く抑えることができる】

費用面でも、労働審判にはメリットがあります。

申立ての際に裁判所へ納める手数料(印紙代)は、裁判の手数料の半額とされており、初期費用を抑えやすいのが特徴です。

残業代請求では、請求額が高額になることもあるため、手続にかかるコストは無視できません。

その点で、労働審判は費用面の負担を抑えつつ、裁判所を通じた解決を目指せる手続といえます。

労働審判で残業代請求をするデメリット

【裁判所に出向く必要がある】

労働審判では、当事者本人の関与が重視されるため、原則として本人が裁判所に出向く必要があります。

弁護士に依頼していても、期日に出頭して事情を説明するのが一般的です。

一方、裁判であれば弁護士に依頼することで本人の出頭が不要となるケースも多いため、仕事や家庭の都合で時間を取りにくい方にとっては、やや負担に感じる可能性があります。

【訴訟移行のリスクがある】

労働審判は、迅速な解決を目指す手続ですが、最終的な結論が必ずしも確定するとは限りません。

労働審判の内容に不服がある場合、当事者は異議申立てをすることができ、その場合には労働審判の効力が失われ、通常の訴訟へと移行します。

そのため、会社側が最初から強く争う姿勢を示している場合には、労働審判を経ても結局は裁判に進む可能性があります。

このようなケースでは、最初から訴訟を選択したほうが、結果的に解決までの期間が短くなる可能性もあるため、事前の見極めが重要です。

労働審判で残業代請求をすべきケース

労働審判には、スピードや柔軟性といったメリットがある一方で、すべての事案に適しているわけではありません。

ここでは、どのようなケースで労働審判を選択すべきか、代表的な4つの場面を解説します。

・当事者同士の交渉では話し合いが進まないケース
・客観的証拠がそろっているケース
・早期解決を希望するケース
・柔軟な解決を希望するケース

当事者同士の交渉では話し合いが進まないケース

残業代請求は、まず会社との任意交渉から始めるのが一般的です。

しかし、会社側が「残業は認めない」「管理職だから対象外だ」などと主張し、話し合いが平行線になるケースも少なくありません。

このような場合、当事者同士で交渉を続けても状況が変わらないことが多く、かえって時間だけが経過してしまうおそれがあります。

労働審判では、裁判所の関与のもとで中立的な立場の労働審判員が間に入り、争点を整理しながら話し合いが進められます。

そのため、当事者だけではまとまらなかった問題でも、解決に向けて前進する可能性が高まります。

客観的証拠がそろっているケース

労働審判は、短期間で結論を出すことを前提とした手続であるため、証拠の有無が結果に大きく影響します。

たとえば、以下のような資料がそろっている場合には、残業の事実や未払いの状況を客観的に立証しやすくなります。

・タイムカードや勤怠システムの記録
・業務日報やシフト表
・パソコンのログイン・ログアウト履歴
・メールやチャットの送信履歴
・入退館記録 など

これらの証拠がそろっていれば、会社側が争ったとしても、労働審判において未払い残業代の支払いを認める判断が出される可能性が高くなります。

逆に、証拠が不十分な場合は主張の裏付けが難しくなるため、労働審判の前に証拠収集の方針を検討することが重要です。

早期解決を希望するケース

会社との交渉で解決できない場合、選択肢としては「労働審判」と「裁判(訴訟)」があります。

しかし、裁判は事案によっては1年以上かかることも珍しくなく、精神的・時間的な負担が大きくなりがちです。

これに対して、労働審判は原則3回以内の期日で終結する手続であり、平均でも数か月程度で結論に至るケースが多いとされています。

そのため、「できるだけ早く解決したい」「長期間争い続けるのは避けたい」と考えている方にとっては、労働審判は非常に有効な選択肢となります。

もっとも、会社側が強く争う場合には、異議申立てによって訴訟へ移行する可能性もあるため、相手の態度を踏まえた判断が必要です。

柔軟な解決を希望するケース

裁判では、最終的に法律に基づいて「請求が認められるか否か」という形で結論が示されるのが原則です。

そのため、白か黒かの判断になりやすく、必ずしも当事者双方にとって納得のいく結果になるとは限りません。

一方、労働審判では、まず話し合い(調停)による解決が試みられるため、以下のような柔軟な対応が可能です。

・請求額の一部での合意・分割払いでの解決
・支払時期の調整・その他条件を含めた合意

「満額でなくてもよいので早く回収したい」「現実的な落としどころで解決したい」といった希望がある場合には、労働審判のほうが適しているケースも多いでしょう。

このように、労働審判は、スピードと柔軟性を重視したい場面で特に有効な手続です。自身の状況に照らして適しているかどうかを見極めることが重要です。

残業代請求で労働審判が向いていないケース

残業代請求で労働審判が向いていないケース

労働審判は、スピーディーかつ柔軟な解決が期待できる手続ですが、すべての事案に適しているわけではありません。

ケースによっては、最初から訴訟を選択したほうが適切な場合もあります。

ここでは、労働審判が向いていない代表的なケースを説明します。

・事実関係が複雑なケース
・証拠が十分にそろっていないケース
・会社が強く争う姿勢を示しているケース
・悪質な未払いで付加金の支払い命令が予想されるケース

事実関係が複雑なケース

労働審判は、原則3回以内の期日で審理を終えることを前提とした手続です。

そのため、争点が多く、事実関係が複雑な事案では、十分な審理を行う時間が足りない可能性があります。

たとえば、以下のような争点が複数絡むケースです。

・管理監督者に該当するかどうか
・固定残業代制度が有効かどうか
・労働時間の認定に争いがある
・複数の勤務形態が混在している

このような事案では、詳細な主張立証や証人尋問が必要になることもあり、短期間で結論を出す労働審判よりも、時間をかけて審理できる訴訟のほうが適している場合があります。

証拠が十分にそろっていないケース

労働審判では、短期間で判断が下されるため、初期段階でどれだけ証拠がそろっているかが非常に重要です。

しかし、タイムカードや勤怠記録が存在しない、メールやログもほとんど残っていないといった場合には、残業の事実を客観的に立証することが難しくなります。

このようなケースでは、労働審判に限らず、訴訟であっても請求が認められない可能性が高くなります。

そのため、いきなり裁判手続に進むのではなく、まずは会社との交渉を通じて、一定の解決を目指すことが現実的な選択となる場合もあります。

あわせて、手元にある資料の整理や、新たに証拠として使えるものがないかを検討したうえで、どの手続を選択するかを慎重に判断することが重要です。

会社が強く争う姿勢を示しているケース

会社側が最初から「一切支払わない」「徹底的に争う」といった姿勢を示している場合、労働審判での解決は難航する可能性があります。

労働審判では、調停による合意が重視されますが、会社に歩み寄る意思がない場合には、調停が成立しない可能性が高くなります。

さらに、審判が出たとしても、会社が異議申立てをすれば、そのまま訴訟へ移行してしまいます。

このような場合、労働審判を経由することでかえって手続が長引くおそれもあるため、最初から訴訟を選択したほうが早期解決が期待できるでしょう。

悪質な未払いで付加金の支払い命令が予想されるケース

会社による未払いが悪質である場合、裁判では未払い残業代に加えて「付加金」の支払いが命じられることがあります。

付加金は、会社の違法性や悪質性を踏まえて裁判所が判断するものであり、労働審判では、付加金の支払いが命じられることはありません。

そのため、付加金の請求を重視する場合には、労働審判よりも訴訟のほうが適していることがあります。

もちろん、労働審判でも一定の上乗せを含めた解決は可能ですが、会社の責任を厳しく追及したい場合や、法的な判断を明確に求めたい場合には、訴訟を視野に入れるべきでしょう。

残業代請求の労働審判の流れ

残業代請求の労働審判の流れ

労働審判は、申立てから結論まで比較的短期間で進む手続です。ただし、その分、各段階での準備や対応が結果に大きく影響します。

ここでは、残業代請求における労働審判の基本的な流れを順に説明します。

労働審判の申立て

労働審判を利用する場合、まずは管轄する地方裁判所に申立てを行います。

通常は、相手方である会社の所在地を管轄する裁判所に申し立てることになります。

申立てにあたっては、主に以下のような書類や資料が必要です。

・労働審判手続申立書
・資格証明書(会社の登記事項証明書など)
・証拠書類(雇用契約書、就業規則、給与明細、タイムカード、出勤簿など)
・申立手数料(印紙代)
・郵便切手

特に重要なのが、証拠書類の準備です。

労働審判は、短期決着を前提とするため、申立て段階でどこまで主張と証拠を整理できているかが、その後の流れを大きく左右します。

なお、必要な書類は事案の内容や争点によって異なるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

第1回審判期日

申立てが受理されると、通常は申立てから約40日以内に第1回審判期日が指定されます。

当事者は、その期日に裁判所へ出頭する必要があります。

第1回期日では、提出された書面や証拠をもとに、労働審判委員会が双方の主張を確認し、どこが争点になっているのかを整理します。

そのうえで、裁判所から「和解による解決が可能かどうか」について打診が行われるのが一般的です。

話し合いで解決できそうな場合には、そのまま調停に向けた協議が進みます。

ただし、1回目の期日で結論が出ることは多くありません。

双方が持ち帰って検討する場合や追加の主張・証拠提出が必要な場合には、次回期日が指定されます。

第2回・第3回審判期日

第2回以降の期日では、第1回期日で整理された争点について、さらに具体的な検討が進められます。

和解の可能性がある事案では、引き続き調停に向けた話し合いが中心となり、裁判所から具体的な解決案が提示されることもあります。

また、第1回期日で追加の主張や証拠提出を求められた場合には、第2回期日までに準備して提出する必要があります。

労働審判は原則として3回以内の期日で審理を終えるため、後出しで主張や証拠を出す余裕はあまりありません。

そのため、できるだけ早い段階で主張と証拠を出し切ることが重要です。

調停成立

当事者間の話し合いがまとまった場合は、調停成立により手続は終了します。

調停で合意した内容は「調停調書」に記載され、法的拘束力を持ちます。

会社が合意内容に従って残業代を支払わない場合には、この調停調書をもとに強制執行を申し立てることも可能です。

実務上は、この調停で解決するケースも多く、労働審判の重要な役割の一つといえます。

労働審判

3回までの期日で話し合いがまとまらなかった場合には、労働審判委員会が最終的な判断として「労働審判」を下します。

この労働審判に対して不服がある場合、当事者は2週間以内に異議申立てをすることができます。

異議が申し立てられると、労働審判は効力を失い、そのまま通常の訴訟手続へ移行します。

このように労働審判はあくまで「迅速な解決を目指す手続」であり、最終的には裁判に発展する可能性もある点は理解しておく必要があります。

残業代請求の労働審判にかかる期間|平均審理期間は90.3日

裁判所が公表している資料によると、労働審判事件の平均審理期間は約90.3日とされています。これはおよそ3か月程度であり、通常の裁判と比べて大幅に短い期間で解決していることがわかります。

さらに、審理期間ごとの内訳は以下のとおりです。

審理期間件数(割合)
1月以内72件(2.2%)
1月超2月以内722件(22.1%)
2月超3月以内1066件(32.6%)
3月超6月以内1311件(40.1%)
6月超102件(3.1%)

このデータを見ると、申立てから3か月以内に終了している事件が半数以上を占めていることがわかります。

つまり、比較的短期間で一定の結論に至っているケースが多いといえるでしょう。

残業代請求金額の平均額・解決金額

労働審判でどの程度の金額が請求され、実際にどのくらいで解決しているのかは、多くの方が気になるポイントです。

ここでは、統計データをもとに、残業代請求の平均額・解決金額を紹介します。

残業代の請求金額の傾向

厚生労働省の統計によると、労働審判における残業代の請求金額は以下のような分布となっています。

請求金額件数(割合)
50万円未満24件(29.8%)
50~100万円未満22件(19.3%)
100~200万円未満17件(14.9%)
200~300万円未満16件(14.0%)
300~500万円未満11件(9.6%)
500~1000万円未満10件(8.8%)
1000万円以上4件(3.5%)

このデータから、請求金額としては50万円未満から200万円程度のゾーンが比較的多いことがわかります。

また、平均値は約219万円、中央値は約102万円とされており、実務上も「100万円前後から200万円台」が一つの目安になるケースが多いといえるでしょう。

もっとも、残業時間が長期間にわたる場合や基本給が高い場合には、請求額が数百万円から1000万円を超えるケースも存在します。

解決金額の傾向

次に、実際にどの程度の金額で解決しているのかを見てみましょう。労働審判の解決金額の分布は以下のとおりです。

解決金額件数(割合)
5万円未満1件(0.1%)
5~10万円未満4件(0.5%)
10~20万円未満13件(1.7%)
20~30万円未満16件(2.1%)
30~40万円未満23件(3.0%)
40~50万円未満25件(3.3%)
50~100万円未満149件(19.6%)
100~200万円未満219件(28.9%)
200~300万円未満109件(14.4%)
300~500万円未満107件(14.1%)
500~1000万円未満62件(8.2%)
1000~2000万円未満19件(2.5%)
2000~3000万円未満7件(0.9%)
3000~5000万円未満3件(0.4%)
5000万円以上2件(0.3%)

この統計には残業代以外の請求も含まれていますが、全体としては100万円~200万円程度での解決が最も多いことがわかります。

平均解決金額は約285万円、中央値は150万円とされており、請求額よりもやや低い水準で合意に至るケースが多いのが実情です。

金額が変動するポイント

実際の請求額や解決金額は、以下のような事情によって大きく変わります。

・残業時間の長さ・期間
・基本給や各種手当の金額
・深夜労働・休日労働の有無
・固定残業代制度の有効性
・証拠の充実度
・会社側の対応姿勢

特に、証拠が十分にそろっている場合や会社側に明らかな違法性がある場合には、高額での解決につながる可能性があります。

このように、残業代請求の金額は個別事情による影響が大きいため、統計はあくまで目安としつつ、自身のケースではどの程度の金額が見込めるのかを専門家に確認することが重要です。

【解決事例】労働審判により未払い残業代のトラブルを解決した当事務所の事例を紹介

未払い残業代の問題は、交渉では解決に至らないケースも多く、労働審判を活用することで解決に進むことがあります。

ここでは、グラディアトル法律事務所が対応した残業代請求の解決事例をご紹介します。

事例①|労働審判により220万円で解決したケース

事例①|労働審判により220万円で解決したケース

飲食店で勤務していた正社員の方から、未払い残業代のご相談をいただいた事案です。依頼者は長時間勤務が常態化していたにもかかわらず、残業代が十分に支払われていないのではないかと疑問を持ち、退職を控えたタイミングでご相談に至りました。

本件では、タイムカードの写真やアプリによる自己記録、会社側の打刻データなど複数の証拠が存在しており、それぞれに差異が見られる状況でした。そこで、これらのデータを突き合わせながら勤務実態を丁寧に整理し、残業時間や休憩の扱いを精査したうえで、残業代の計算を行いました。

また、職務手当を残業代に充当する旨の記載についても、その有効性や説明状況が争点となり得たため、証拠関係を踏まえて主張を組み立てました。

その後、労働審判を申し立て、裁判所の手続の中で主張・証拠を整理しながら解決交渉を進めた結果、請求額約280万円に対し、220万円の解決金で合意し、労働審判手続内で解決に至りました。

事例②|和解により270万円+供託金返還で解決したケース

事例②|和解により270万円+供託金返還で解決したケース

当事者間で主張が対立し、交渉が進まない状況となっていた事案です。依頼者は相手方とのやり取りによる精神的・時間的負担が大きく、「このまま対応して問題ないのか」「法的に不利にならないか」という不安からご相談いただきました。

本件では、事実関係や法的評価に争いがあり、単純に勝ち負けを争うだけではなく、どのような条件で解決するのが現実的かを整理することが重要なポイントでした。

そこで、まずは争点を整理し、依頼者の希望(早期解決・金額・条件)を明確にしたうえで、交渉方針を構築しました。そのうえで、相手方の主張に対して法的観点から反論を行いながら、譲歩可能なラインと譲れないラインを切り分け、具体的な解決条件の調整を進めました。

その結果、最終的には和解金270万円の支払いが実現し、あわせて手続上の供託金170万円についても払渡しの手当てを行い、金銭関係を整理したうえで解決に至りました。

事例③|タイムカードなしでも300万円で解決したケース(労働審判)

事例③|タイムカードなしでも300万円で解決したケース(労働審判)

電気工事会社で約3年間勤務していた現場作業員の方からのご相談です。依頼者は長時間労働が常態化していたにもかかわらず残業代が支払われておらず、さらに勤務中の事故後の給与未払い、パワハラなど複数の問題を抱えていました。

本件の大きな特徴は、タイムカードなどの勤怠管理資料が存在しなかった点です。そのため、一般的には労働時間の立証が難しいケースといえます。

しかし、依頼者は以下のような証拠を保有していました。

・LINEでの業務報告
・上司とのやり取りの記録
・録音データ
・銀行口座の入出金履歴

これらを組み合わせて分析し、実際の労働時間や会社の対応を具体的に裏付ける主張を構築しました。

そのうえで未払い残業代および賃金の計算を行い会社に請求しましたが、交渉では解決に至らなかったため、労働審判を申立てました。

労働審判手続の中で、証拠と主張を整理しながら和解協議を進めた結果、解決金300万円での和解が成立しました。

本件は、タイムカードがなくても、複数の客観的資料を組み合わせることで労働時間の立証が可能であることを示す事例といえます。また、労働審判を活用することで、比較的短期間で現実的な解決に至った点も重要なポイントです。

労働審判の残業代請求では90.2%が弁護士つき

労働審判は弁護士なしでも利用できますが、実務上は多くの方が弁護士を選任しています。

裁判所の統計によると、申立人側の代理人選任状況は以下のとおりです。

申立人代理人の選任状況件数(割合)
申立人代理人あり2953件(90.2%)
申立人代理人なし320件(9.8%)

このように、約9割の事件で弁護士が関与していることから、労働審判における弁護士のニーズは非常に高いといえます。

労働審判は原則3回以内の期日で進むため、最初の段階から主張や証拠を整理しておくことが重要です。また、会社側も弁護士をつけて対応してくるケースが多く、個人で対応すると不利になる可能性もあります。

そのため、確実に結果を出したい場合には、弁護士への依頼を検討することが望ましいでしょう。

残業代請求の労働審判でかかる費用

労働審判を利用して残業代請求をする際には、どの程度の費用がかかるのか気になる方も多いでしょう。

大きく分けると、裁判所に支払う費用(申立て費用)と弁護士に依頼した場合の費用(弁護士費用)の2つがあります。

申立て費用

労働審判を申し立てる際に、裁判所へ支払う主な費用は以下のとおりです。

【手数料(印紙代)】

申立ての際には、収入印紙で手数料を納める必要があります。

金額は、請求する残業代の額によって異なりますが、たとえば100万円の請求であれば5000円程度が目安です。

労働審判の手数料は、通常の裁判の約半額に設定されているため、費用面の負担を抑えやすいのが特徴です。

【予納郵券(郵便切手代)】

申立て時には、裁判所が書面送付などに使用する郵便切手(予納郵券)も納める必要があります。

金額は裁判所ごとに異なりますが、数千円程度が一般的です。

弁護士費用

弁護士に依頼する場合には、申立て費用とは別に弁護士費用が発生します。主な内訳は以下のとおりです。

【相談料】

弁護士に相談する際にかかる費用です。

一般的には1時間あたり1万1000円(税込)が相場ですが、初回無料としている事務所もあります。

※グラディアトル法律事務所では、未払い残業代に関する法律相談は初回無料で対応しています。

【着手金】

着手金は、弁護士に正式に依頼した時点で発生する費用で、結果にかかわらず支払う必要があります。

計算方法は事務所ごとに異なりますが、主に以下のようなパターンがあります。

1つ目は、以下のように請求する未払い残業代の金額に応じて、計算する方法です。

経済的利益の額着手金
300万円以下経済的利益の8.8%
300万円を超え3000万円以下の場合経済的利益の5.5%+9万9000円
3000万円を超え3億円以下の場合経済的利益の3.3%+75万9000円
3億円を超える経済的利益の2.2%+405万9000円

2つ目は、未払い残業代の金額にかかわらず、着手金を定額で計算する方法です。この方法では、20~30万円程度が着手金の相場になります。

なお、当事務所では、タイムカードの有無により着手金の金額は変動しますが、着手金0円から対応しています。

【報酬金】

報酬金は、事件が終了し、実際に残業代を回収できた場合に発生する費用です。

回収できなかった場合には、原則として発生しません。

報酬金の相場は、以下のように回収額に応じた割合で算定されることが多いですが、計算方法は事務所によって異なります。

経済的利益の額着手金
300万円以下経済的利益の17.6%
300万円を超え3000万円以下の場合経済的利益の11%+19万8000円
3000万円を超え3億円以下の場合経済的利益の6.6%+151万8000円
3億円を超える経済的利益の4.4%+811万8000円

なおグラディアトル法律事務所では、訴訟の場合の成功報酬は回収額の22%+33万円を基準としています。

※成功報酬については、会社から支払われる金額を上限とします。
※労働審判・訴訟の場合は、別途日当がかかります。

【実費】

実費とは、弁護士が事件処理のために実際に支出する費用です。

主な内容は以下のとおりです。

・印紙代・郵便切手代
・コピー代
・交通費 など

労働審判と時効との関係

残業代請求では、「いつまで請求できるのか」という時効の問題が非常に重要です。

労働審判を検討する際も、時効との関係を正しく理解しておく必要があります。

残業代請求の時効は原則3年

未払い残業代を含む賃金請求権の時効は、原則として3年とされています。

また、時効は、給与の支払日ごとに個別に進行します。

そのため、古い未払い分から順に時効で消滅していくことになり、「気づいたときには一部しか請求できない」というケースも少なくありません。

労働審判を申し立てることで時効はどうなるか

労働審判の申立ては、裁判所を通じた正式な権利行使にあたるため、時効の進行を止める効果が認められます。

そのため、時効が迫っている場合でも、労働審判を申し立てることで、それ以上時効が進行するのを防ぐことが可能です。

また、異議申し立てにより訴訟に移行したとしても、法律上は最初から訴訟を提起していたものとみなされますので、時効が止まった状態のまま引き継がれます。

時効が迫っている場合の対応方法

残業代請求では、1か月判断が遅れるだけで、その分の未払い賃金が時効で消滅してしまう可能性があります。

そのため、時効が近い場合には交渉に時間をかけるよりも、早めに法的手続に移ることが重要です。

「まだ大丈夫だろう」と判断するのではなく、少しでも不安がある場合には、できるだけ早い段階で専門家に相談し、時効を見据えた対応をとるようにしましょう。

労働審判で残業代請求をするならグラディアトル法律事務所に相談を

労働審判で残業代請求をするならグラディアトル法律事務所に相談を

労働審判で残業代請求を検討している方は、グラディアトル法律事務所までご相談ください。

未払い残業代の請求は、証拠の整理や手続の選択によって結果が大きく変わるため、早い段階で専門家に相談することが重要です。

相談料無料・着手金0円から対応可能

弁護士に依頼したほうがよいと分かっていても、「費用が不安で相談しづらい」と感じている方も多いのではないでしょうか。

グラディアトル法律事務所では、そのような不安を解消するため、初回相談料無料・着手金0円から対応しています。

費用面のハードルを抑えたうえで、現在の状況や見通しについて丁寧にご説明いたします。

「請求できるのか知りたい」「どの手続が適しているのか判断したい」といった段階でも問題ありません。まずはお気軽にご相談ください。

労働審判に関する豊富な実績

労働審判は、通常の交渉や訴訟とは異なる進め方が求められる手続です。

短期間で結論が出るため、初動の主張整理や証拠の出し方が結果に大きく影響します。

そのため、弁護士であれば誰でもよいというわけではなく、残業代請求や労働審判に精通した弁護士に依頼することが重要です。

グラディアトル法律事務所では、未払い残業代の請求や労働審判について多数の対応実績があり、交渉から労働審判、訴訟まで一貫したサポートが可能です。

事案ごとの状況に応じて、最適な解決方法をご提案いたしますので、安心してお任せください。

まとめ

残業代請求における労働審判は、比較的短期間で解決を目指せる有効な手続です。特に、証拠がそろっているケースや早期解決を希望する場合には、大きなメリットがあります。一方で、事案の内容や会社側の対応によっては訴訟に移行する可能性もあるため、手続の選択は慎重に行う必要があります。

また、残業代請求には時効の問題もあるため、早めに行動することが重要です。

自分のケースに労働審判が適しているか判断に迷う場合は、弁護士に相談し、適切な進め方を検討することをおすすめします。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTikTokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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