爆サイの発信者情報開示請求は難しい?手続きの流れと費用・期間を解説

弁護士 若林翔
2023年03月19日更新

爆サイに誹謗中傷・悪口を書き込まれてしまった。

爆サイに住所・氏名などの個人情報を晒されてしまった。

ネットで誹謗中傷をする人たちは、安易な気持ちで書き込みをすることがありますが、被害者にとっては大きな問題で、その精神的な苦痛は計り知れません。

 

月間PV数が10億を超えることもある(※1)人気掲示板サイト「爆サイ.com(以下、爆サイ)」。

地域密着型の匿名掲示板として知られており、多種多様なカテゴリーで日々活発な意見交換がなされていますが、実名を伏せて書き込めるのをいいことに、他人の権利を侵害するような悪質な投稿をする人も一部存在します。現に誹謗中傷やプライバシーの侵害にあたるような書き込みをされてしまい、頭を悩ませている人もいるのではないでしょうか。

爆サイで誹謗中傷等のトラブルに巻き込まれた場合、「発信者情報開示請求」と呼ばれる手続きを行うことで、悪質な書き込みをした犯人を特定できる可能性があります。

そのまま放置してしまうと、さらに深刻なトラブルへと発展してしまう恐れがあるため、被害を最小限に抑えるためには、早めの対処が欠かせません。

具体的にどのような手順で進めればいいのか、本記事では、爆サイにおける発信者情報開示請求の基本的な流れとその際にかかる費用や期間の目安について詳しく解説していきます。

※1 参照:爆サイ.com「爆サイ.comとは?」

 

早急に爆サイの書き込みを削除したいという方は、以下の記事をご参照ください。

【爆サイ削除依頼】最短即日・高確率で削除する手法を弁護士が徹底解説!

 

爆サイの投稿者を特定するための発信者情報開示請求とは

発信者情報開示請求とは、インターネット上で自身の権利(名誉権やプライバシー権など)を侵害された場合に、プロバイダ(サイト運営者や通信事業者など)に対して、問題となる投稿の発信者に関する情報を開示するよう求める手続きのことです。

爆サイに限らず、匿名掲示板で誹謗中傷を受けたり、個人情報を晒されたりした場合、一刻も早く当該投稿を削除したいと考える人が多いと思いますが、ただ削除するだけでは根本的な解決にはなりません。再度、同様の投稿をされるリスクがあるからです。

再発を防止するためには、法的責任を追及するなどして相手に事の重大さを認識させることが重要であり、そのためにはまず加害者を特定する必要があります。

発信者情報開示請求は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称:プロバイダ責任制限法)」第5条に基づき定められた手続きになります。そのため、同条の要件を満たしていない場合は開示請求が認められません。

「プロバイダ責任制限法」第5条に書かれている内容を簡単にまとめると、以下の要件を満たす場合に開示請求が認められるとされています。

(1)権利侵害が明らかであること
(2)発信者情報の開示を受けるべき正当な理由が存在すること
(3)以下いずれかの要件を満たしていること
(3-1)プロバイダが特定発信者情報以外の発信者情報を保有していない
(3-2)プロバイダの保有している特定発信者情報以外の発信者情報が限られている
(3-3)特定発信者情報の開示がなければ発信者を特定することができない

第五条 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対し、当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報のうち、特定発信者情報(発信者情報であって専ら侵害関連通信に係るものとして総務省令で定めるものをいう。以下この項及び第十五条第二項において同じ。)以外の発信者情報については第一号及び第二号のいずれにも該当するとき、特定発信者情報については次の各号のいずれにも該当するときは、それぞれその開示を請求することができる。

一 当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。

二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他当該発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。

三 次のイからハまでのいずれかに該当するとき。

イ 当該特定電気通信役務提供者が当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報を保有していないと認めるとき。

ロ 当該特定電気通信役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る特定発信者情報以外の発信者情報が次に掲げる発信者情報以外の発信者情報であって総務省令で定めるもののみであると認めるとき。

(1) 当該開示の請求に係る侵害情報の発信者の氏名及び住所

(2) 当該権利の侵害に係る他の開示関係役務提供者を特定するために用いることができる発信者情報

ハ 当該開示の請求をする者がこの項の規定により開示を受けた発信者情報(特定発信者情報を除く。)によっては当該開示の請求に係る侵害情報の発信者を特定することができないと認めるとき。

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(第5条第1項)

「プロバイダ責任制限法」が改正され、新たな開示請求の手続きが新設されました。新しい制度による爆サイの開示請求の詳細は、後述します。

 

爆サイの開示請求が可能な書き込み内容とは

爆サイで発信者情報の開示請求が認められる書き込み内容とはどのような内容でしょうか。

具体的に書き込みを種類別に区分しながらお伝えします。

名誉棄損にあたる書き込み

名誉毀損とは、公然の場、不特定多数の人々に伝わる可能性のある場で、特定人物の社会的評価を落とす事実を発言・発信する行為のこと。なお、「事実」というのは実際に起きたこと以外もふくみます。

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

(引用:e-Gov 法令検索刑法

たとえば爆サイへの書き込みで考えると、「(特定の人物名)は詐欺をしてる」「(特定の人物名)は顧客である既婚者と不倫をしている」といった誹謗中傷をされた場合、名誉毀損にあたり、発信者情報開示請求ができます。

どのような内容の書き込みが名誉毀損に該当するか、以下の記事でご確認ください。

名誉感情侵害・侮辱にあたる書き込み

誹謗中傷には名誉毀損罪以外に侮辱罪にあたるケースも考えられます。侮辱とは、やはり公然の場で特定人物の評価を低下させる行為のこと。名誉毀損ととても似ていますが、違いは、それが事実かどうかという点です。

名誉毀損は「犯罪者である」「不倫をしている」など、それが虚偽であったとしても事実を摘示することで社会的評価を貶めます。一方、侮辱は「(特定の人物名)はバカ」「(特定の人物名)はキモイ」など、具体的事実を挙げずに相手の評価を低下させるのです。

第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

(引用:e-Gov 法令検索刑法

刑事事件においては「侮辱」といいますが、発信者情報開示請求の場面においては「名誉感情侵害」が問題となります。

名誉感情とは、人が自分自身の人格的価値について有する主観的な価値のことをいいます。

主観的名誉などと表現されることもあります。

簡単にいうと、自分の価値についての意識や感情、プライド、自尊心のことといえるでしょう。

名誉感情侵害の詳細は、以下の記事を参照ください。

 

肖像権侵害にあたる書き込み

肖像権とは、無断で写真や動画を撮影されたり、不特定多数の人が見る可能性のある場にそれらを公開されたりすることを禁止する権利のこと。スマホの普及により盗撮事件が増えたことは社会的にも特に問題視されていますが、友人間で本人への掲載許可の確認を怠って、SNS上に他意なく相手の写真を投稿してしまったという経験のある人も少なくないかもしれません。

爆サイにおいて考えてみると、「隠し撮りされた写真を公開された」「撮影許可はしたけれど、その写真を無断で公開された」といった例が考えられるでしょう。

家族や恋人と一緒にいるところを隠し撮りされた。

客にホテルや家での寝顔を隠し撮りされた。というケースも多いです。

この場合、先の名誉毀損や侮辱などと異なり、投稿者には悪意のない場合も考えられますが、目的はどうあれ正当な理由なく無断で公開されれば肖像権侵害にあたる可能性があることは間違いありません。

 

プライバシー侵害にあたる書き込み

プライバシーの侵害とは、その名のとおり、プライバシーに関する情報をみだりに公開されない権利(プライバシー権)を侵害する行為のこと。家族や親しい関係性の人にしか明かしていなかった個人的な情報を本人の許可なく言いふらされるようなことがあれば、該当する可能性は高いでしょう。

たとえば下記のような事柄が考えられます。

・住所

・私生活での行動

・病歴

・結婚・離婚歴

・犯罪歴

本人が公表するつもりもなかった事実が、第三者の手によって多くの人に知られてしまったとなれば、その人の今後の生活を脅かす事態に発展することも考えられ、著しく深刻です。弁護士に相談することで、慰謝料を請求できる可能性もあります。

顧客が離れてしまう、勤務先を解雇される、恋人や友人との関係性が悪くなる、といったトラブルが起きる前に早急に対応しましょう。

爆サイへの書き込みにおいては、病歴や犯罪歴を無断で公表されたことで指名が減少してしまったり、普段源氏名で活動している方の本名や住所などが無断で公表されたことでストーキング行為されるようになってしまったり、といった事案が考えられます。

特に後者は二次災害が深刻ですが、当然ながらそういった事態に発展しなくても個人情報や私生活の情報は、正当な理由なく公表されることのないようしっかり守られるべきです。

プライバシー権侵害が認められた裁判例については、以下の記事を参照ください。

 

爆サイでの開示請求が難しい場合とは

投稿内容から個人を特定できない

爆サイでは、実名を出さずにイニシャルや伏字で悪質な書き込みが行われることも少なくありませんが、投稿内容から個人を特定できない場合は、開示請求が認められない可能性があります。

たとえば、「歌舞伎町のホストAは借金で首が回らない」という投稿があったとしましょう。

一見すると名誉棄損にあたるようにも見えますが、大まかな場所以外に「ホストA」を特定できる情報は記載されていないため、この書き込みだけでは権利侵害にあたらない可能性が高いです。

ただ、イニシャルや伏字を使っていたとしても、断片的な情報から個人を特定できる場合は、話は別です。たとえば、先ほど例に挙げた投稿が「歌舞伎町にあるホストクラブ(店名)のホストAは借金で首がまらない」だった場合、具体的な店名から「ホストA」がだれなのかを推測できるため、権利侵害にあたるものとして開示が認められる可能性があります。

このように、第三者から見て対象者がだれなのかを判別できるかどうかで開示の可否が変わってくるため、イニシャルや伏字が用いられている場合は、弁護士に相談するなどして、より慎重に対応するようにしましょう。

なお、源氏名を使って社会活動を行なっており、社会に一定程度定着している場合には、源氏名に関連づけられた被害者の人格的利益等が侵害されたとして開示請求ができます。

源氏名に同定可能性を認めた裁判例(東京地判平成28年5月9日)

原告は,××(風俗店名)において,通算で約5年間にわたり,Aとの通称で業務に従事しており,同じ通称で同店に勤務する者は原告のほかにはいないと認められる。そして,上記認定事実によれば,上記通称は,原告の呼称として社会的に一定程度定着しているとみることができるから,前後の文脈も踏まえると,本件情報179は,原告についての投稿であると認めるのが相当である。
これに対し,被告は,上記通称と原告の本名とが全く異なっており,本件スレッドには,そのタイトルとは無関係な投稿がされることもあり得ることなどを考慮すると,本件各情報が原告を対象とするものとはいえない旨主張する。しかしながら,通称が本名と全く異なるものであったとしても,それが社会的に一定程度定着していれば,通称に関連づけられた投稿によって当該通称を用いる者の人格的利益等が侵害され得るとみるべきであるから,上記認定事実も考え併せると,被告の上記主張は採用できない。

投稿から3カ月以上経過している

次の章で詳しく説明しますが、投稿者を突き止めるためには、問題となる書き込みが投稿された際の通信記録(ログ)を調べる必要があります。

ただ、プロバイダのログ保存期間は一般的に3~6カ月程度といわれているため、投稿から3カ月以上が経過している場合は、すでにログが消えてしまっているかもしれません。プロバイダのログが消えた後では投稿者を特定できないため、悪質な書き込みを見つけたら早急に取り掛かるようにしましょう。

もし、当該投稿が上記のいずれかに当てはまる場合は、犯人を特定できる可能性が低いため、爆サイへの削除依頼でいったん手を打つのが現実的です。手続きの流れについては以下の記事で解説しているので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

【爆サイ削除依頼】最短即日・高確率で削除する手法を弁護士が徹底解説!

 

爆サイの開示請求の方法と手続きの流れ(従来からの手続き)

ここからは、爆サイにおける発信者情報開示請求の基本的な流れをお伝えしていきます。

爆サイへの発信者情報開示請求の流れ

Step1.書き込みの証拠保全を行う

Step2.爆サイのログ照会依頼フォームからログの保存申請を行う

Step3.爆サイ運営者にIPアドレス・タイムスタンプの開示請求を行う

Step4.IPアドレスから投稿者のプロバイダを特定する

Step5.  プロバイダに契約者情報の開示とアクセスログの保存を求める

上から順に詳しく確認していきましょう。

Step1.書き込みの証拠保全を行う

一連の手続きをスムーズに行うためには、まず悪質な書き込みの証拠をそろえる必要があります。

証拠を押さえる前に当該投稿を削除されてしまうと、権利侵害を主張する際にその事実を提示することができず、開示請求や損害賠償請求といった法的措置が取りづらくなってしまうため、必ず手元に証拠を残しておきましょう。

なお、証拠を押さえる際は、問題の投稿があるWebページをPDFで保存するのがおすすめです。スクリーンショットで画面を撮影してもいいのですが、URLが写っていなかったり、保存日時がわからなかったりすると証拠として不十分になってしまう恐れがあるため、URLと保存日時を確実に残せるPDFで保管するようにしましょう。

もし、スクリーンショットしか利用できない場合は、必ず該当ページのURLを控えておいてください。

Step2.爆サイのログ照会依頼フォームからログの保存申請を行う

証拠を押さえたら、悪質な書き込みを行った投稿者のログが消えてしまわないよう、爆サイに設けられた以下のフォームからログの保存申請を行います。

捜査関係事項の照会・ログ照会依頼フォーム

警察関係者向けのフォームになるので、「所属機関名」「部署名」「担当者名」といった項目が設けられていますが、個人で申請する場合は、すべて個人名を入力してしまって問題ありません。必須項目を入力し終えたら、任意の備考欄で詳細を説明し、フォームを送信しましょう。

Step3.爆サイ運営者にIPアドレス・タイムスタンプの開示請求を行う

フォーム送信後、2~3日以内(土日祝日を除く)に爆サイからメールが届きます。ログの保存が完了した旨と開示請求を行う場合の流れについて記載されているため、メールに記載された指示に従って、指定された住所に必要書類を送付してください。

開示請求が認められると、爆サイから投稿者のログ情報(IPアドレス・タイムスタンプ)が開示されます。権利侵害行為が明らかな場合は、爆サイ側も開示に応じる可能性が高いですが、開示に応じてもらえない場合は、爆サイ運営者に対して発信者情報の開示を求める仮処分を裁判所に申し立てることになるため、開示請求が認められなかった場合は弁護士に相談してみてください。

爆サイの削除依頼に精通した弁護士であれば、最短即日〜3日程度でIPアドレス等の開示ができることがあります。

 

Step4.IPアドレスから投稿者のプロバイダを特定する

爆サイからログ情報(IPアドレス・タイムスタンプ)が開示されたら、そのIPアドレスをもとに投稿者の利用しているプロバイダ(通信事業者など)を特定します。爆サイの場合、ユーザーの80%以上(※3)がスマートフォンを利用しているため、携帯電話事業者(NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクなど)がヒットするケースが比較的多いかもしれません。

なお、プロバイダは「Whois検索」と呼ばれるインターネット上のサービスで調べることが可能です。

※3 参照:爆サイ.com「爆サイ.comとは?」

Step5.  プロバイダに契約者情報の開示とアクセスログの保存を求める

プロバイダを特定できたら、そのプロバイダに対して契約者に関する情報の開示を求めます。

ただ、プロバイダは爆サイと違って任意での開示請求に応じることがほとんどないため、最終的には裁判所を通して開示請求を行うことになると思ってほうがいいかもしれません。プロバイダが争ってきて裁判が長引くケースも考えられるため、投稿者に関するログ情報が消えてしまわないよう、あわせてアクセスログの保存も請求しておきましょう。

その後、裁判によってこちら側の要求が認められると、裁判所から発信者情報開示命令が出され、プロバイダからIPアドレスの保有者に関する情報が開示されます

 

プロバイダ責任制限法改正後の爆サイ開示請求の流れ

ここまで、発信者情報開示請求の基本的な流れについて解説してきましたが、2021年4月28日に「プロバイダ責任制限法の一部を改正する法律」が成立・公布され(2022年10月1日施行)、よりスムーズに開示請求ができるようになりました(※4)。

プロバイダ責任制限法改正後の開示請求の3つの特徴

まず1つ目は、「開示請求が可能な範囲の見直し」です。改正前の「プロバイダ責任制限法」では、SNSをはじめとしたログイン型サービス(投稿時のIPアドレスやタイムスタンプは記録・保有せずに、ログイン時の情報のみを保有しているサービス)の開示請求が想定されていなかったため、ログイン時の情報が開示の対象になるか否かについては不明確でしたが、今回の改正により、ログイン時の情報も開示対象となることが規定されました。

これまではログイン時の情報を得られないことから発信者の特定が滞るケースも多く、状況によっては請求が棄却されることもあったため、泣き寝入りせざるを得ない場面も多々見られましたが、これが認められたことにより、ログイン情報から通信経路をたどって発信者を特定できるようになるため、SNSによる誹謗中傷などのトラブルに対応しやすくなります。

2つ目は、「新たな裁判手続き(非訟手続き※5)の創設」です。前の章でお伝えしたように、現行の手続きでは「サイト運営者」と「プロバイダ(通信事業者など)」のそれぞれに対して2段階に分けて開示請求を行う必要がありましたが、新たな裁判手続きでは、1つの裁判で発信者の特定に至ることができます

詳しくは後述しますが、一連の流れが以下の3ステップに短縮されるため、被害者側にかかる負担が大幅に軽減されるでしょう。

3つ目は、「発信者が開示に応じない場合に理由を聴取することの義務化」です。改正前の「プロバイダ責任制限法」では、被害者から開示請求があった場合、プロバイダは権利侵害行為を行ったと思われる発信者に対して、開示に応じるかどうかについて意見を聴かなければならないと定められていました。

改正後もこの意見聴取義務は維持されていますが、今回は意見聴取において発信者が開示を拒否した場合、その理由も聴取すべきと規定されています。これにより、プロバイダは発信者が開示に同意しない理由を把握したうえで、適切な対応をとれるようになりました。

以上が、主な改正ポイントとなりますが、爆サイの開示請求に関わってくるのは、主に2つ目と3つ目です。特に2つ目は、改正前の「プロバイダ責任制限法」と比べて手続きの流れが大きく異なるため、詳しく確認していきましょう。

※4 参照:総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)」

※5 非訟手続き:訴訟以外の裁判手続きのこと。訴訟手続きよりも簡易な手続きで処理できるのが特徴。

プロバイダ責任制限法改正後の発信者情報開示請求の流れ

Step1.爆サイ管理者に開示命令・提供命令の申し立てを行う

Step2.開示されたプロバイダに対して投稿者の開示命令・消去禁止命令を申し立て

Step3.プロバイダから爆サイ投稿者の住所、氏名が開示される

Step1.爆サイ管理者に開示命令・提供命令の申し立てを行う

まずは、悪質な書き込みの証拠を押さえたうえで、裁判所に爆サイに対する「発信者情報開示命令の申し立て」と「提供命令の申し立て」を行います。

ちなみに、2つ目に挙げた「提供命令」とは、裁判所がサイト運営者(爆サイ)に対して、プロバイダ(通信事業者など)の名称などを申立人(被害者)に提供するよう命じること。実際は、爆サイからプロバイダに対して、発信者の特定に必要なログ情報(IPアドレスやタイムスタンプなど)が提供されるため、こちら側からプロバイダに対して何か情報を提供する必要はありません

Step2.開示されたプロバイダに対して投稿者の開示命令・消去禁止命令を申し立て

「提供命令」によって投稿者の利用しているプロバイダが判明したら、裁判所にそのプロバイダに対する「発信者情報開示命令の申し立て」と「消去禁止命令の申し立て」を行います。

なお、「消去禁止命令」とは、発信者情報の保全を目的としたもので、この申し立てを行うことにより、裁判所からプロバイダに対して、発信者情報の消去禁止が命じられます。繰り返しになりますが、プロバイダのログ情報には保存期間があり、これを超過してしまうと、投稿者を特定するために必要な情報が消えてしまうため、新たな裁判手続きで開示請求を行う場合は、この申し立てが欠かせません。

Step3.プロバイダから爆サイ投稿者の住所、氏名が開示される

裁判によって開示命令の申し立てが認められると、プロバイダから投稿者に関する情報が開示されます。

なお、改正後は、既存の手続きと新たな裁判手続きが併存しているため、必ずしも後者で手続きを行う必要はありません。状況に応じて適切な手段を選択することが可能です。

 

爆サイに開示請求する際の弁護士費用

爆サイでの誹謗中傷等の犯人を特定するための発信者情報開示請求の弁護士費用相場は、30万円〜100万円程度です。

弁護士費用は、以下の数字に影響されます。

・開示請求をする対象となるレス数

・開示請求対象のプロバイダ数

まず、爆サイに対するIPアドレス等の開示請求についての弁護士費用は、開示したい対象のレス数が影響してきます。

次に、爆サイから開示されたIPアドレス等からプロバイダが判明した場合、判明したプロバイダの数が弁護士費用に影響していきます。複数のプロバイダに対して開示請求をする場合には、複数の裁判手続きが必要になるからです。

なお、開示請求にかかった弁護士費用については、相手に対する損害賠償請求において、その分の加えて請求することができます。弁護士費用の全額を認めた裁判例もありますが、一定程度しか認めない裁判例もあるところです。

発信者情報開示請求の弁護士費用を相手に請求できるかについての詳細は、以下の記事を参照ください。

弁護士費用について

 

爆サイの開示請求で犯人が特定されるまでの期間

開示請求にかかる期間についてですが、犯人を特定するまでには、4ヶ月から8ヶ月程度を要する傾向にあります。

ただ、これは「プロバイダ責任制限法」が改正される前の話です。改正後はこの期間が短縮され、一般的には3カ月程度で開示に至るとされています。

とはいえ、こちらもケースバイケースなので、一概にはいえません。裁判が長期化することも考えられるので、爆サイ上で権利侵害行為を受けたら、加害者の特定に向けて早めに動きだしましょう。

 

開示請求で犯人特定後の慰謝料請求・刑事告訴

無事、発信者情報開示請求が認められ、書き込んだ人間の氏名や住所等を特定できた場合、慰謝料請求や刑事告訴といった対応をとることが多いです。

民事事件として、お金を請求するのが慰謝料請求の手続きです。

他方で、刑事事件として、犯人の逮捕や刑事処罰を求めるのが刑事告訴です。

慰謝料請求について

民法709条による、不法行為に基づく損害賠償責任にしたがって、慰謝料を請求することになります。

民法

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

請求の仕方については、通常の民事裁判となりますので、訴えを提起し、裁判所に対して主にどのような損害を被ったかを説明していくことになります。

また、その訴訟提起の前後に、和解交渉をしていくことも考えられるでしょう。

誹謗中傷の被害にあった場合の慰謝料額や損害賠償額はいくらとれるのでしょうか?相場はあるのでしょうか?

損害賠償としては、慰謝料のほかに、犯人特定・発信者情報開示をするためにかかった弁護士費用などの調査費用、損害賠償請求をするための弁護士費用などが認められる可能性があります。

総額で数10万円程度のこともあれば、100万円を超えてくるような事案もあります。

具体的な金額については、事案によっても異なってきます。詳細については、以下の記事をご参照ください。

 

刑事告訴について

犯人を特定したのち、犯人に対して社会的な制裁を受けてほしい。

自分のおこなった犯行の罪を償ってほしいと考える人も多いです。

爆サイでの誹謗中傷の被害の場合には、名誉毀損罪や侮辱罪に該当する可能性があります。

名誉毀損罪(刑法230条1項 3年以下、50万円以下)は、公然と事実を摘示して社会的評価を低下させる犯罪です。

(名誉毀き損)刑法230条
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

侮辱罪(刑法231条 拘留30日未満・科料1万円未満)は、公然と人を侮辱(軽蔑の表示)をする犯罪です。

(侮辱)刑法231条
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

これらの罪での刑事処罰を求めていくため被害届や刑事告訴をしていくということが考えられます。

これによって、爆サイで誹謗中傷をした犯人側が逮捕や刑事処罰を恐れ、示談という形で慰謝料等の損害賠償請求の交渉が有利になることがあります。

もっとも、侮辱罪については、SNS上で度重なる誹謗中傷を受けたプロレスラーの木村花さんの事件において、犯人が侮辱罪で処罰されたものの、科料9000円という軽い罪に終わったことから、侮辱罪の法定刑を引き上げ、重くすべきだと議論がなされ、法改正により厳罰化されました。

侮辱罪の厳罰化で訴えやすくなる?弁護士が教える本気の誹謗中傷対策

 

爆サイの発信者情報開示請求は弁護士に依頼をすべき!

爆サイでは、名誉毀損や名誉感情侵害に該当するような誹謗中傷や、プライバシー権侵害に該当するような個人情報の晒しが横行しています。

その対応策として、犯人を特定して損害賠償請求や刑事告訴をするための発信者情報開示請求が有効です。

しかし、ここまで見てきたように、発信者情報開示請求は複雑な裁判手続きが必要になります。

また、ログの保存期間との関係で、短期間にその手続きを行う必要があります。

そのため、発信者情報開示請求の手続きに精通した弁護士に依頼をして対応をすべきでしょう。

グラディアトル法律事務所では、多数の発信者情報開示請求のご依頼を受けています。爆サイについてのご依頼も多く、実績も豊富です。

LINEでの相談も受け付けていますので、是非一度、ご相談ください。

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弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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