飲食店で働いている方の中には、
「長時間働いているのに残業代が支払われない」
「店長だから残業代は出ないと言われた」
「固定残業代があるから追加の残業代はないと言われた」
といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、飲食店で働いている場合でも、法律上は残業代を請求できるケースが多くあります。
たとえば、開店前の準備や閉店後の片づけ、休憩時間中の業務なども、実態によっては労働時間として扱われ、残業代の対象になる可能性があります。また、店長であっても「名ばかり店長」にすぎない場合には、残業代請求が認められることがあります。
さらに、固定残業代制度がある場合でも、その制度が無効と判断されたり、設定時間を超える残業について追加の残業代を請求できたりするケースもあります。
グラディアトル法律事務所では、飲食店を含むさまざまな業界の未払い残業代請求について多数の相談・解決実績があります。固定残業代の問題や、店長・管理監督者の判断が争点となるケースにも対応しており、状況に応じた適切な解決方法をご提案していますので、まずは当事務所にご相談ください。
・残業代が支払われない飲食店でよくある誤解
・店長や固定残業代をめぐる問題
・飲食店での残業代の計算方法
・残業代請求の流れや必要な証拠
などについてわかりやすく解説します。
「飲食店では残業代を請求できないのでは?」と悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
飲食店でも残業代は請求できる|法律上の基本ルール
「飲食店では残業代が出ないのが当たり前」と思っている方もいるかもしれません。しかし、飲食店であっても労働基準法のルールは他の業界と同様に適用されます。
労働基準法では、原則として1日8時間・週40時間を超えて働いた場合、会社は、労働者に対して残業代(割増賃金)を支払わなければならないと定められています。そのため、飲食店で働く正社員・契約社員・アルバイトなどであっても、法定労働時間を超えて働いていれば残業代の支払い対象となります。
もっとも、飲食店では開店前の仕込みや閉店後の片づけ、長時間のシフト勤務など、労働時間の扱いが問題になりやすい働き方が多く見られます。また、店長や固定残業代制度などを理由に、残業代が支払われないケースも少なくありません。
しかし、これらの場合でも、法律上は残業代を請求できる可能性があります。
次章では、飲食店で残業代が支払われない場合によくある誤解について解説します。
残業代が支払われない飲食店でのよくある7つの誤解
飲食店では、長時間働いていても「残業代は出ない」と説明されるケースが少なくありません。
しかし、その理由の多くは法律上必ずしも正しいとは限りません。以下では、飲食店で特によく見られる残業代に関する誤解について説明します。

休憩時間中に業務をしても残業代は出ない?
休憩時間中であっても、実際に業務を行っている場合には、その時間が労働時間として扱われる可能性があります。
労働基準法では、休憩時間とは「労働から完全に解放されている時間」であることが必要とされています。
・電話対応や予約対応をする必要がある
・店内で待機するよう指示されている
飲食店では人手不足などの理由から、休憩時間中でも実質的に働いているケースがあります。このような場合には、その時間が労働時間と評価され、残業代の対象になる可能性があります。
開店前の準備や閉店後の片づけは残業代の対象外?
開店前の仕込みや閉店後の片づけについて、「営業していない時間だから残業ではない」と説明されることがあります。しかし、業務として行っている作業であれば労働時間に含まれます。
たとえば、以下のような作業は労働時間に該当する可能性が高いでしょう。
・店内の清掃
・レジ締め
・在庫確認
・翌日の営業準備
これらは店舗運営に必要な業務であるため、勤務時間として扱われるのが原則です。その結果、法定労働時間を超えていれば残業代の対象になります。
ランチとディナーの間の中休みは飲食店の残業代に含まれる?
飲食店では、ランチ営業とディナー営業の間に「中休み」が設けられていることがあります。この時間が労働時間に当たるかどうかは、実際の働き方によって判断されます。
たとえば、以下のような場合は労働時間とみなされる可能性があります。
・電話対応や予約対応が必要
・自由に外出できない
このように、労働から完全に解放されていない場合には、労働時間として扱われる可能性があります。
見習いや研修期間中は残業代が支払われない?
「研修中だから残業代は出ない」と言われることがありますが、研修期間中であっても労働者として働いている以上、残業代の支払い義務は発生します。
具体的には、次のような業務を行っている場合です。
・調理補助
・店舗運営業務
このように実際の店舗業務に従事している場合には労働時間として扱われるため、法定労働時間を超えれば残業代の対象になります。
30分未満の残業は残業代の対象外?
会社によっては「30分未満の残業は切り捨てる」といったルールが設けられていることがあります。しかし、実際に働いた時間を一方的に切り捨てることは原則として認められていません。
・29分までは残業扱いにしない
このような処理は違法ですので、切り捨てられた時間も含めて残業代を請求することができます。
アルバイトには残業代は支払われない?
飲食店では、アルバイトを雇って営業しているところも多いと思います。正社員に比べて人件費を低く抑えることができるというメリットがありますが、残業代を支払わなくてもよいというわけではありません。
アルバイトも労働者であることには変わりありませんので、残業時間に応じた残業代が支払われます。
変形労働時間制だと残業代を請求できない?
変形労働時間制とは、月単位・年単位の法定労働時間に合わせて、1日の労働時間を設定することができる制度です。飲食店では、繁忙日と閑散日があるため、変形労働時間制が導入されていることがあります。
このような変形労働時間制では、1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えたとしても、直ちに残業代が発生するわけではありません。しかし、変形労働時間制により残業代の支払いが不要になるわけではありませんので、一定期間における労働時間が法定労働時間を超えている場合には、会社に対して残業代を請求することができます。
店長でも飲食店の残業代は請求できる?管理監督者の判断基準
飲食店では、「店長は管理職だから残業代は出ない」と説明されるケースがよくあります。かし、店長であるという理由だけで残業代が支払われないとは限りません。
労働基準法上、残業代の支払い義務がないのは「管理監督者」に該当する場合です。飲食店の店長でも、この管理監督者に当たらない場合には、残業代を請求できる可能性があります。以下では、管理監督者の意味や判断基準について解説します。
労働基準法上の管理監督者とは?
労働基準法では、経営者と一体的な立場にある管理監督者については、労働時間・休憩・休日の規制が適用されないとされています(労働基準法41条)。
ここでいう管理監督者とは、一般的な「管理職」とは必ずしも同じ意味ではありません。企業の経営に近い立場にあり、労働時間の管理を受けないような立場の人を指します。
たとえば、次のような特徴がある場合には管理監督者と判断される可能性があります。
・人事や労務管理について大きな権限がある
・出退勤の時間について大きな裁量がある
このように、会社の経営に近い立場で重要な権限を持っているかどうかが重要な判断要素になります。
店長=管理監督者ではない|管理監督者かどうかを判断する3つの要素

飲食店では、店長という役職が付いているだけで「管理職扱い」とされることがあります。しかし、役職名だけで管理監督者と判断されるわけではありません。
実務では、主に以下の3つの要素を総合的に考慮して、経営者と一体的な立場にあるかどうかが判断されます。
①職務内容や権限
店舗運営に関する重要な決定権を持っているかどうかがポイントです。
たとえば、人事や採用、労働条件の決定などについて大きな権限がある場合には、管理監督者と判断される可能性があります。
②勤務時間の裁量
自分の判断で出退勤時間を決められるかどうかも重要なポイントです。
会社から厳格にシフトを決められている場合には、管理監督者とは認められにくい傾向があります。
③待遇(賃金)
管理監督者として扱われるためには、その責任に見合った待遇が与えられている必要があります。一般社員とほとんど変わらない給与である場合には、管理監督者と認められない可能性があります。
名ばかり店長であれば残業代請求ができる
飲食業界では、実際には一般社員と同じように働いているにもかかわらず、店長という肩書だけで残業代が支払われない「名ばかり店長」問題が指摘されています。
たとえば、以下のようなケースです。
・人事や経営に関する権限がほとんどない
・給与が一般社員と大きく変わらない
・本部の指示どおりに業務を行うだけ
このような場合には、労働基準法上の管理監督者には当たらないと判断される可能性があります。その結果、店長であっても未払い残業代を請求することが可能です。
実際に、飲食チェーン店などでは、店長の残業代請求が裁判で認められた事例もありますので、店長だからといって諦めるのではなく、まずは弁護士に相談してみましょう。
固定残業代がある場合でも飲食店の残業代は請求できる?
飲食店では、「固定残業代(みなし残業代)」という制度が導入されていることがありますが、固定残業代制度がある場合でも、残業代を請求できる可能性があります。以下では、固定残業代制度の基本と残業代請求との関係について説明します。
固定残業代とは?
固定残業代とは、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度のことです。たとえば、以下のような形で導入されることがあります。
・基本給20万円+固定残業代5万円
このような制度では、設定された時間以内の残業については、追加の残業代が支払われない仕組みになっています。
もっとも、固定残業代制度が有効と認められるためには、一定の条件を満たしている必要があります。
固定残業代が無効になるケース
固定残業代制度は、どのような場合でも有効になるわけではありません。固定残業代制度が有効になるには、以下のような要件を満たす必要があります。
| ・固定残業代と基本給の区別がされていない |
| ・何時間分の残業代なのか明確でない |
| ・実際の残業時間に関係なく一定額しか支払われない |
| ・就業規則や雇用契約書に内容が記載されていない |
このような場合には、固定残業代制度そのものが無効と判断される可能性があります。その結果、給与の中に含まれているとされていた残業代が認められず、未払い残業代を請求できるケースがあります。
固定残業代が有効でも設定時間を超えた分は追加で残業代を請求できる
固定残業代制度が有効と判断された場合でも、設定された時間を超える残業については、追加の残業代を支払う必要があります。
たとえば、固定残業代として30時間分が支払われているものの、実際の残業が50時間である場合には、超過する20時間分について残業代を請求することができます。
しかし、実際には飲食店でこのルールが守られていないケースも多く見られます。そのため、「固定残業代があるから残業代は請求できない」と思い込まず、実際の労働時間や給与の内容を確認することが重要です。
飲食店への残業代請求に関する裁判例の紹介
飲食業界では、長時間労働や名ばかり店長、固定残業代などをめぐり、残業代の支払いが争われるケースが少なくありません。実際に、飲食店の従業員が未払い残業代を請求し、裁判で認められた事例も多数あります。以下では、飲食店の残業代請求に関して問題となりやすい争点ごとに、代表的な裁判例を紹介します。
店長・課長級でも管理監督者とは限らないとされた裁判例|東京地裁令和5年3月3日判決(日本レストランシステム事件)
【事案の概要】
この事案は、飲食店チェーンを運営する会社で勤務していた課長級の労働者が、未払い残業代などを請求したものです。
原告は、戦略本部に所属し、新業態・新メニューの開発や店舗管理などを担当していました。会社側は、原告がブランド運営や複数店舗の統括に関わり、重要な職責を担っていたことから、労働基準法上の「管理監督者」に当たり、残業代の支払い義務はないと主張しました。
これに対し、原告は、実際には経営上の重要事項を自ら決定する立場にはなく、人員不足のため店舗での開店作業、キッチン業務、ホール業務、閉店作業など現場業務にも多く従事していたと主張しました。また、タイムカードで労働時間を管理されており、出退勤の自由もなかったとして、未払い残業代の支払いを求めました。
【裁判所の判断】
裁判所は、原告が一定の重要な業務を担当していたことは認めつつも、管理監督者には当たらないと判断しました。
その理由として、まず、原告には一定の企画業務や店舗統括業務があったものの、経営上の重要事項の最終決定権は会長側にあり、原告の権限は限定的であったことを挙げています。人事権限についても、アルバイトの採用権限はあった一方で、社員の採用・解雇などの権限はなく、経営者と一体的な立場にあったとはいえないとされました。
また、勤務態様についても、原告はタイムカードで労働時間を管理されており、各店舗の開店・閉店時間について自由な裁量はありませんでした。加えて、慢性的な人員不足により、実際には月100時間を超える時間外労働をしながら、現場業務に多く従事していた実態がありました。
さらに、待遇面についても、一定の高い給与は受けていたものの、長時間労働の実態に照らすと、管理監督者として扱うに足りるほど十分に優遇されていたとはいえないと判断されました。
その結果、裁判所は、会社に対して未払割増賃金約860万円と付加金約649万円の支払いを命じました。
【ポイント】
この裁判例のポイントは、店長や課長といった役職名だけでは、管理監督者にはならないという点です。
管理監督者に当たるかどうかは、肩書ではなく、実際にどのような権限を持っていたか、勤務時間にどれだけ裁量があったか、待遇が責任に見合っていたかといった実態に基づいて判断されます。
特に飲食店では、店長や役職者であっても、人手不足のため現場業務に追われ、タイムカードで勤怠管理されているケースが少なくありません。そのような場合には、会社から「管理職だから残業代は出ない」と言われていても、実際には未払い残業代を請求できる可能性があります。
固定残業代の一部は有効でも、追加の未払い残業代が認められた裁判例|東京地裁平成29年9月26日判決(泉レストラン事件)
【事案の概要】
この事案は、飲食店等を運営する会社の元従業員が、時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金が支払われていないとして、未払い残業代などを請求したものです。
原告は、平成24年12月から平成26年3月までの期間については、月給35万円のうち10万0500円が「時間外手当」とされていた一方、平成26年4月以降は月給40万円となり、新たに「管理職手当」5万円が支給されるようになっていました。
会社側は、前半の期間については雇用契約書に記載された時間外手当が固定残業代として有効であると主張しました。また、後半の期間については、原告は副部長として管理監督者に当たり残業代は不要である、仮に管理監督者でないとしても管理職手当5万円が固定残業代に当たると主張しました。
これに対し、原告は、実際には会社の経営に関する重要な決定権限はなく、長時間労働をしていたとして、未払い残業代の支払いを求めました。
【裁判所の判断】
裁判所は、まず平成24年12月から平成26年3月までの「時間外手当10万0500円」については、固定残業代として有効と判断しました。
その理由として、雇用契約書に月額給与のうち時間外手当としていくらが含まれているかが明記されており、通常の賃金部分と固定残業代部分が明確に区別されていたことを挙げています。そのため、この期間については、固定残業代分を既払いとして控除した上で、未払い残業代の有無が判断されました。
一方で、平成26年4月以降の「管理職手当5万円」については、固定残業代として認めませんでした。
裁判所は、雇用契約書や給与規程に、管理職手当が割増賃金の支払いに充てられることが記載されていないこと、管理職手当という名称からして職責に対する対価と理解するのが自然であり、通常の賃金部分と残業代部分の区別が明確ではないことを指摘しました。
また、会社側は原告が管理監督者に当たるとも主張していましたが、裁判所はこれも否定しました。原告には一定の管理業務はあったものの、社員の採用・人事考課・昇給などの重要な人事権限は社長が握っており、原告自身が経営上の重要事項に決定権限を持っていたとはいえないと判断したのです。さらに、原告より高い賃金を得ている店長も存在していたことや、長時間労働の実態に照らして、管理監督者にふさわしい待遇ともいえないとされました。
その結果、裁判所は会社に対し、未払割増賃金約163万円と、これに対する遅延損害金、さらに付加金約81万円の支払いを命じました。
【ポイント】
この裁判例のポイントは、固定残業代とされている手当でも、すべてが当然に有効になるわけではないという点です。
雇用契約書などに、固定残業代としていくらが支払われているのかが明確に記載され、通常の賃金部分と明確に区別されていれば、有効と判断される可能性があります。他方で、管理職手当のように、残業代として支払う趣旨が明示されておらず、通常賃金との区別も不明確な場合には、固定残業代として認められない可能性があります。
また、役職名が副部長などであっても、それだけで管理監督者になるわけではありません。実際の権限、勤務実態、待遇などを踏まえて判断されるため、会社から「管理職だから残業代は出ない」と説明されていても、その扱いが認められないことがあります。
飲食店で働く人の残業代の計算方法
飲食店で未払い残業代を請求するには、実際にいくら請求できるのかを把握することが重要です。残業代は、基本的に「1時間あたりの基礎賃金」×「割増率」×「残業時間」で計算します。以下では、飲食店で働く人の残業代計算の基本を説明します。

1時間あたりの基礎賃金
残業代を計算するには、まず1時間あたりの基礎賃金を算出する必要があります。
月給制の場合は、原則として以下のように計算します。
24万円÷173時間≒1387円
となります。
もっとも、月給のすべてが基礎賃金に含まれるわけではありません。家族手当、通勤手当、別居手当など、法律上一定の手当は残業代計算の基礎から除外される点に注意が必要です。
そのため、給与明細や雇用契約書を確認し、どの手当が基礎賃金に含まれるのかを見極めることが重要です。
割増賃金率
次に、残業の種類に応じて割増率を掛けます。主な割増率は、以下のとおりです。
・深夜労働(午後10時から午前5時までの労働):25%以上
・法定休日労働:35%以上
これらが重なる場合には、割増率も加算されます。たとえば、深夜に時間外労働をした場合は、時間外25%+深夜25%で合計50%以上の割増率になります。
飲食店では、閉店作業が深夜に及ぶことも多いため、時間外労働だけでなく深夜割増も発生しているケースが少なくありません。
残業時間
最後に、実際の残業時間を把握する必要があります。
飲食店では、単にシフト表どおりの時間ではなく、次のような時間も労働時間に含まれる可能性があります。
・閉店後の片づけや清掃
・休憩時間中の接客や電話対応
・ランチとディナーの間の待機時間
・シフト外のミーティングや教育
そのため、会社が記録している労働時間だけでなく、実際に働いていた時間をもとに残業時間を計算することが重要です。
たとえば、1日8時間勤務の契約であるにもかかわらず、実際には毎日2時間ずつ長く働いていた場合、単純計算でも月にかなりの未払い残業代が発生する可能性があります。
このように、残業代を正確に計算するには、基礎賃金・割増率・残業時間の3つを正しく把握する必要があります。
【モデルケース】飲食店で働く労働者の残業代請求の具体例を弁護士が解説
飲食店では長時間労働が常態化しているケースも多く、「残業代が出ないのが当たり前」と思い込んでいる人も少なくありません。しかし、実際には未払い残業代を請求できるケースも多くあります。以下では、飲食店で働く人が残業代請求を行った場合の流れやポイントをイメージしやすいよう、架空のモデルケースをもとに解説します。
事例①|店長として働いていたが「名ばかり店長」として残業代請求が認められたケース

【事案の概要】
Aさんは、居酒屋チェーンで店長として勤務していました。月給は30万円で、「店長は管理職なので残業代は支払われない」と会社から説明されていました。
しかし実際には、次のような勤務実態でした。
| ・毎日12時間以上働くことが多い ・開店準備や閉店作業を自ら行っていた ・シフトは本部が決めており、自由に調整できなかった ・人事権や経営判断の権限はほとんどなかった |
Aさんは、月80〜100時間ほどの残業をしていましたが、残業代は一切支払われていませんでした。
【残業代請求の経過】
Aさんは、弁護士に相談し、次のような証拠を集めて残業代請求を行いました。
| ・タイムカードの記録 |
| ・シフト表 |
| ・LINEの業務連絡 |
| ・店舗の日報 |
その結果、店長という肩書きがあっても管理監督者には当たらないと判断され、約300万円の未払い残業代の支払いが認められました。
【弁護士による解説】
店長であっても、次のような場合には「管理監督者」とは認められない可能性があります。
| ・労働時間の裁量がない ・経営に関する決定権限がない ・一般社員と大きく変わらない待遇 |
飲食店では「名ばかり店長」の問題が多く、肩書きだけで残業代を支払わないケースがあります。実際の権限や勤務実態が重要になりますので、まずは弁護士にご相談ください。
事例②|固定残業代制度があっても追加の残業代請求が認められたケース

【事案の概要】
Bさんはラーメン店で勤務しており、給与は「月給28万円(固定残業代40時間分を含む)」という条件でした。
しかし、実際の勤務時間は次のとおりでした。
| ・1日12時間勤務 ・月の残業時間は約80時間 ・固定残業代を超える残業代は支払われていない |
会社からは「固定残業代があるので残業代はこれ以上出ない」と説明されていました。
【残業代請求の経過】
Bさんは、次のような証拠をもとに残業代請求を行いました。
| ・タイムカード |
| ・シフト表 |
| ・給与明細 |
その結果、固定残業代40時間分は既払いとして扱われましたが、それを超える40時間分の残業代について未払いと認定されました。
そして裁判では、最終的に約180万円の未払い残業代の支払いが認められました。
【弁護士による解説】
固定残業代制度があっても、それが有効であるかは以下の点が重要になります。
| ・固定残業代の時間数が明確であるか |
| ・基本給と固定残業代が区別されているか |
| ・固定時間を超えた残業代が支払われているか |
このような要件を満たしていない場合、固定残業代制度は違法・無効となり、残業代を請求できる可能性があります。
事例③|タイムカードがなくても証拠から残業時間が認められたケース

【事案の概要】
Cさんはカフェチェーンで勤務しており、以下のような働き方をしていましたが、会社ではタイムカードがなく、労働時間の記録が残っていませんでした。
| ・開店準備のため毎日1時間早く出勤 |
| ・閉店後の清掃やレジ締めで1時間残業 |
| ・月の残業時間は約60時間 |
このような時間も労働時間に含まれると考えたCさんは、会社に残業代請求をしましたが、会社側は「勤務時間の証拠がない」として残業代の支払いを拒否しました。
【残業代請求の経過】
Cさんは弁護士と相談し、次のような証拠を集めました。
| ・スマートフォンの位置情報 |
| ・LINEの業務連絡 |
| ・同僚の証言 |
| ・自分で記録していた勤務メモ |
裁判では、これらの証拠をもとに実際の労働時間が推認され、約150万円の未払い残業代の支払いが認められました。
【弁護士による解説】
残業代請求では、必ずしもタイムカードが必要というわけではありません。タイムカードがなくても以下のような資料を証拠として使える場合があります。
・業務連絡(LINE・メールなど)
・勤務メモ
・スマートフォンの位置情報
・同僚の証言
飲食店では労働時間管理が不十分なケースも多いため、複数の証拠を組み合わせて労働時間を立証することが重要です。
残業代請求は証拠が重要!飲食店で残業代請求の証拠になるもの
飲食店で未払い残業代を請求する際に、特に重要になるのが労働時間を示す証拠です。
残業代請求では、「どれだけ働いたのか」を客観的に示す資料が必要になります。 もっとも、飲食店では労働時間の管理がずさんなケースも少なくありません。そのため、さまざまな資料を組み合わせて労働時間を立証していくことが重要になります。
以下では、飲食店の残業代請求で証拠として使われることが多い資料を紹介します。

タイムカード・勤怠記録
最も代表的な証拠が、タイムカードや勤怠システムの記録です。
・ICカード打刻記録
・勤怠管理システムのデータ
・出退勤記録
これらは会社が管理している客観的な記録であるため、労働時間の証拠として非常に有力です。
ただし、実際の労働時間より短く打刻するよう指示されていた場合などには、タイムカードだけでは実態を反映していない可能性もあります。その場合は、他の証拠と組み合わせて実際の労働時間を立証することになります。
シフト表・勤務表
飲食店ではシフト表も重要な証拠になります。
・勤務予定表
・店長が作成した勤務表
シフト表には勤務予定時間が記載されているため、実際の労働時間を推認する資料として使われることがあります。
また、シフト表と実際の退勤時間を比較することで、閉店作業などの残業時間を立証できる場合もあります。
業務連絡(LINE・メールなど)
飲食店では、業務連絡にLINEやメールが使われているケースも多くあります。
・業務報告
・シフト変更の連絡
・閉店後の連絡
これらのメッセージには送信時間が残るため、実際に働いていた時間帯を示す証拠になります。
日報・売上データ
店舗の日報や売上管理データも証拠として使われることがあります。
・売上報告書
・レジ締め記録
・POSデータ
これらの資料から、閉店時間や業務終了時間を推測できる場合があります。
自分でつけていた勤務メモ
会社の記録が残っていない場合でも、自分でつけていた勤務メモが証拠として認められることがあります。
・スマートフォンのメモアプリ
・日記や手帳
もちろん、客観的な資料より証拠力は弱くなる傾向がありますが、他の証拠と組み合わせることで労働時間を推認する資料として利用されることがあります。
証拠はできるだけ早く確保することが重要
飲食店で残業代請求を検討している場合は、できるだけ早く証拠を確保することが重要です。
たとえば、退職してから時間が経つと次のような問題が起こることがあります。
・勤怠データにアクセスできなくなる
・シフト表が残っていない
そのため、残業代請求を考えている場合は、給与明細やシフト表などをコピーや写真で保存しておくことが望ましいといえます。
飲食店の残業代請求の流れ|示談・労働審判・裁判まで
飲食店で未払い残業代がある場合、いきなり裁判になるわけではありません。一般的には、証拠収集や交渉を経て、必要に応じて労働審判や裁判に進むという流れになります。以下では、飲食店への残業代請求の基本的な流れを説明します。

証拠収集
まず最初に行うべきなのが、労働時間や賃金に関する証拠の収集です。
残業代請求では、「どれだけ働いたのか」「どれだけ残業代が支払われていないのか」を証明する必要があります。そのため、次のような資料を集めます。
・シフト表
・給与明細
・雇用契約書
・業務連絡(LINE・メールなど)
・勤務メモ
証拠が多いほど、実際の労働時間を立証しやすくなります。特に退職前であれば、勤怠データやシフト表などを保存しておくことが重要です。
内容証明郵便を送る
証拠が揃ったら、会社に対して未払い残業代を請求する通知を送ります。
このときよく使われるのが内容証明郵便です。内容証明郵便とは、「どのような内容の文書を、いつ送ったのか」を郵便局が証明してくれる郵便です。
内容証明郵便では、主に次のような内容を通知します。
・請求金額
・支払い期限
会社によっては、この段階で話し合いによる解決(示談)に応じることもあります。
店との交渉
内容証明郵便を送った後は、会社と交渉(示談)を行うことになります。
交渉では、次のような点が話し合われます。
・残業時間の認定 ・未払い残業代の金額 ・支払い方法
会社側が未払いを認めれば、示談によって解決することもあります。示談が成立すれば、裁判をせずに問題を解決することができます。
ただし、会社が残業代の支払いを拒否する場合や、提示額が大幅に低い場合には、次の手続きに進むことになります。
労働審判の申立て
交渉で解決しない場合、労働審判を申し立てることがあります。
労働審判は、裁判所で行われる労働トラブルの解決手続きで、通常の裁判よりも迅速に解決できる点が特徴です。原則として3回以内の期日で結論が出るとされています。
労働審判では、裁判官と労働審判員が双方の主張や証拠を確認し、調停による解決を試みます。調停が成立すれば、その内容に基づいて解決します。
訴訟の提起
労働審判で解決しない場合には、訴訟(裁判)に進むことになります。
裁判では、提出された証拠や主張をもとに、裁判所が残業代の有無や金額を判断します。裁判では、次のような点が争点になることが多いです。
・実際の労働時間 ・管理監督者に当たるか ・固定残業代制度の有効性
裁判の結果、未払い残業代が認められた場合には、残業代のほかに付加金の支払いが命じられることもあります。
このように、飲食店の残業代請求は、証拠収集から交渉、労働審判、裁判までいくつかの段階を経て進んでいきます。
飲食店の残業代請求の時効は3年|未払いに気づいたときは早めに行動を!
飲食店で未払い残業代がある場合でも、いつまでも請求できるわけではありません。残業代には時効(請求できる期限)があり、その期間は3年とされています。
時効は、残業をした日ではなく、給与の支払日の翌日から進行します。たとえば、ある月の給与が翌月25日に支払われる会社の場合、その月の残業代は支払日の翌日から3年間で時効になります。したがって、残業代請求では一般的に過去3年分の未払い残業代を請求することができます。
また、時効は一括で進むのではなく、毎月少しずつ進行していく点にも注意が必要です。長期間未払い残業代がある場合でも、何もしないでいると古い残業代から順番に時効で請求できなくなってしまいます。そのため、「退職してから請求しよう」と考えている間に、請求できる金額が減ってしまうケースもあります。
なお、内容証明郵便による請求や労働審判の申立てなどを行うことで、時効の進行を止めることができる場合もあります。未払い残業代がある可能性に気づいた場合は、時効で請求できなくなる前に、早めに弁護士へ相談することが重要です。
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飲食店では、長時間労働が常態化しているにもかかわらず、残業代が十分に支払われていないケースが少なくありません。特に、「店長だから残業代は出ない」「固定残業代があるから追加の残業代はない」といった理由で、本来支払われるべき残業代が支払われていないケースも多く見られます。
しかし、実際には店長であっても管理監督者に該当しない場合や、固定残業代制度が適切に運用されていない場合には、未払い残業代を請求できる可能性があります。もっとも、残業代請求では労働時間の立証や賃金計算など専門的な判断が必要になるため、適切に対応するためには法の専門家のサポートが重要です。
グラディアトル法律事務所は、労働問題に関する相談・解決実績が豊富な法律事務所です。これまでにも、飲食店を含むさまざまな業種の残業代請求案件を取り扱ってきました。証拠の整理から未払い残業代の計算、会社との交渉、労働審判や裁判まで、弁護士が一貫してサポートいたしますので、どうぞ安心してお任せください。
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まとめ
飲食店でも、1日8時間・週40時間を超える労働には残業代が発生します。店長や管理職と呼ばれていても、実際には管理監督者に該当しないケースも多く、固定残業代制度があっても追加の残業代を請求できる場合があります。
また、開店準備や閉店後の片づけ、休憩時間中の業務なども労働時間と認められる可能性があります。未払い残業代を請求するためには、タイムカードやシフト表などの証拠を集めることが重要です。
残業代請求には3年の時効があるため、未払いに気づいた場合は早めに行動することが大切です。飲食店での未払い残業代にお悩みの方は、弁護士への相談も検討するとよいでしょう。
