Wikipediaは世界中で利用されているサービスですが、自由度が高いゆえに、誹謗中傷やプライバシー侵害などのトラブルが発生することも珍しくありません。
実際に「Wikipediaに事実と異なる情報を書かれてしまった」「プライバシーに関わる内容が掲載されているので削除したい」といった悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
Wikipediaの記事を削除するには、独自の手順に基づき、どのような権利侵害が生じているのかを明確に伝える必要があります。
法的な知識・経験がないと判断に迷うケースも多いので、迅速に記事を削除したい方は弁護士に相談することも検討してください。
本記事では、Wikipediaで削除依頼が認められるケースや具体的な手続きの流れ、削除依頼が認められなかった場合の対処法などをわかりやすく解説します。
Wikipediaの投稿者を特定し、損害賠償請求や刑事告訴をおこなう方法も詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
Wikipediaで削除依頼できる主なケース
Wikipediaでは、すべての記事が削除依頼の対象になるわけではありません。
削除が認められるのは、法的な権利侵害や百科事典的でない記述がある場合に限られます。
ここでは、Wikipediaで削除依頼が認められやすい3つのケースをみていきましょう。

プライバシー侵害がある場合
本人の同意なく個人情報が掲載されている場合は、プライバシー侵害を理由に削除依頼が可能です。
たとえば、以下のような記事は削除対象になる可能性があります。
- 氏名・住所・電話番号・生年月日など、個人を特定できる情報
- 家族構成や交際関係など、本人が公開を望まない私生活に関する情報
- 病歴や障害の有無など、センシティブな個人情報
また、前科・前歴や裁判記録などがほかの媒体ですでに公開されていても、それらを集約して掲載している場合はプライバシー侵害として削除依頼ができます。
プライバシー侵害は二次被害につながるケースも多く、削除依頼を出すと即座に対応してもらえることもあるので、被害に気付いた時点で速やかに手続きを進めてください。
名誉毀損や侮辱をともなう誹謗中傷がある場合
特定の個人・企業に対する名誉毀損や侮辱がWikipediaに記載されている場合は、削除依頼をおこなうことができます。
以下のような記載は、名誉毀損や侮辱に該当し得る典型例です。
- 「〇〇には前科がある」「違法薬物を常習している」など根拠のない犯罪歴や違法行為に関する記述
- 「無能」「詐欺師」などの人格を否定する侮辱的な表現
- 「不倫をしている」「離婚原因は本人の暴力だった」など、私生活に関する真偽不明の記述
ただし、本人にとって不都合な内容であっても、すべてが削除対象になるわけではありません。
公共の利害に関する事実であり、信頼できる情報源によって裏付けられた批評や論評である場合には、正当な表現活動として認められることもあります。
著作権侵害がある場合
著作物が無断で転載されている場合は、著作権侵害を理由に削除依頼を出すことが可能です。
具体的には、以下のようなケースが著作権侵害に該当します。
- 書籍や論文の文章をそのままコピーして記事に掲載しているケース
- 新聞記事やニュースサイトの本文を無断で転載しているケース
- 他者のWebサイトやブログの文章を、出典を明示せずに流用しているケース
- 著作権者の許諾を得ていない写真・イラスト・図表を掲載しているケース
自身の著作物が無断掲載されていることを確認した場合は、どの部分が、どの著作物の権利を侵害しているのかを明確に示す必要があります。
引用のルールに従った適正な表現であれば、著作権侵害とはいえず、削除の対象にはならない点に注意してください。
なお、著作権侵害が明白なケースは、通常の審議プロセスを経ずに管理者が速やかに記事を削除することもあります。
Wikipediaで削除依頼する際の基本的な流れ
Wikipediaの削除依頼は、独自の手順に従って進める必要があります。
ここでは、削除依頼から実際に削除が実行されるまでの基本的な流れを3つのステップに分けて解説します。

Wikipediaに削除依頼を出す
Wikipediaで記事の削除を求める際は、既定の流れに従って手続きを進める必要があります。
権利侵害を受けている場合の具体的な手順は以下のとおりです。
- 削除対象のページに「削除依頼テンプレート」と呼ばれる専用の書式を貼り付ける
- 審議がおこわれる場所となる「依頼サブページ」を作成する
- 「Wikipedia:削除依頼」に「依頼サブページ」を掲載する
手順を誤ると依頼が受理されないおそれがあるため、事前にWikipediaのガイドラインをよく確認しておきましょう。
不特定利用者による審議がおこなわれる
削除依頼が提出されると、Wikipediaのコミュニティメンバーによる審議が開始されます。
審議では、依頼内容が削除の方針に合致しているかどうかを複数の利用者が検討し、削除すべきか存続させるべきかについて意見を表明していきます。
審議に参加できるのは、編集回数が50回以上の登録利用者に限られており、意思決定に一定の信頼性が担保されています。
ただし、Wikipediaは多数決主義を採用していないため、単純に賛成票が多ければ削除されるというわけではありません。
各利用者が示した意見を踏まえたうえで、総合的な判断がなされます。
Wikipediaの管理者・削除者が削除を実行する
審議が終了すると、Wikipediaの管理者・削除者が記事を削除するかどうかを決定します。
管理者・削除者とは、コミュニティの合意によって信任され、記事の削除や保護といった特別な権限を与えられた人物のことです。
管理者・削除者は審議の内容を精査し、Wikipediaの削除方針に照らして削除が妥当であると判断した場合に、削除を実行します。
一方で審議の結果、削除の必要性が認められないと判断されたときは依頼が却下され、記事は存続することになります。
詳しくは後述しますが、削除依頼が認められなかった場合は、裁判手続きへの移行も検討しなければなりません。
Wikipediaの削除にかかる期間
Wikipediaの削除依頼を出しても、すぐに対応してもらえるわけではありません。
原則として、最低1週間の審議期間が設けられているからです。
賛否が分かれている場合や高度な法的判断が必要な場合などは、審議が長引くこともあるでしょう。
一方で、権利侵害が明白で緊急性が高い場合は、優先的に審議が進められたり、審議を経ずに即時削除されたりすることもあります。
Wikipediaの削除依頼が認められない場合の対処法
Wikipediaの削除依頼を出しても、削除が認められないケースは少なくありません。
ここでは、削除依頼が認められなかった場合に検討すべき2つの対処法を解説します。

自分で直接編集して不都合な記載を削除する
Wikipediaの削除依頼が認められなかった場合は、問題のある記述部分を自ら修正・削除するのもひとつの方法です。
Wikipediaは誰でも記事を編集できる仕組みになっているため、すぐにでも不都合な記載を消すことができます。
ただし、この方法はあくまで記述の一部を修正するものであり、ページそのものが削除されるわけではない点に注意が必要です。
また、他者に再び上書きされ、編集合戦になる可能性もゼロではありません。
裁判所に削除の仮処分を申し立てる
Wikipediaの削除依頼が認められなかった場合は、裁判所に削除の仮処分を申し立てることも検討しましょう。
仮処分とは、正式な裁判の判決を待たずに、裁判所が暫定的な措置を命じる手続きのことです。
通常の裁判では解決までに1年以上かかるケースも多いですが、仮処分であれば1ヵ月〜3ヵ月程で削除が決定します。
そして、裁判所からWikipediaの運営元に対して、削除命令が出されます。
ただし、仮処分の申立て手続きは複雑で、専門的な知識が求められるため、自力での対応は現実的ではないでしょう。
削除の仮処分を検討する場合は、インターネットトラブルが得意な弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
Wikipediaで権利侵害された場合は開示請求も検討しよう!
Wikipediaの記事を削除できたとしても、それだけでは根本的な解決につながらない場合があります。
投稿者に対して何の制裁も課されなければ、再び同様の書き込みがなされ、いたちごっこになるおそれがあるためです。
ここでは、開示請求による投稿者の特定方法と、特定後の法的措置について解説します。

開示請求で投稿者を特定する方法
Wikipediaの投稿者を特定する際は、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示の手続きを利用します。
現在、広く利用されているのが、2022年10月施行の改正プロバイダ責任制限法で創設された「発信者情報開示命令」の制度です。
従来型の「発信者情報開示請求」では、サイト管理者に対してIPアドレス開示の仮処分を申し立てたうえで、プロバイダに情報開示訴訟を提起する必要がありました。
一方、発信者情報開示命令では、サイト管理者とプロバイダへの請求をまとめておこなうことができます。
手続きが簡易化されており、早ければ3ヵ月~4ヵ月程度で発信者の特定が可能です。
ただし、従来型の手続きのほうが結果的に早く解決できるケースもあるので、弁護士とも相談しながら最適な方法を選択しましょう。
開示請求したあとの流れ
開示請求によって投稿者を特定したあとは、法的措置を講じて責任を追及することになります。
具体的には、民事上の損害賠償請求と刑事告訴の選択肢があるので、それぞれ詳しくみていきましょう。
【損害賠償を請求する】
Wikipediaの記事によって名誉毀損やプライバシー侵害などを受けた場合は、不法行為に基づく損害賠償請求が認められます。
一般的な損害賠償項目は以下のとおりです。
- 慰謝料:精神的な苦痛に対する補償
- 逸失利益:加害行為がなければ手に入れられていたはずの利益
- 開示請求にかかった費用:弁護士費用や調査に要した実費など
損害賠償請求にあたっては、相手方に内容証明郵便を送り、任意の示談交渉から始めるケースが一般的です。
示談交渉がまとまらない場合は、民事訴訟を提起し、裁判上で争うことになります。
【刑事告訴する】
Wikipediaへの書き込みが犯罪にあたる場合は、刑事告訴によって刑事責任を追及することもできます。
刑事告訴とは、被害者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、処罰を求める意思表示のことです。
具体的には、以下のような犯罪に該当するものとして、刑事告訴することになります。
| 犯罪名 | 要件 | 例 |
|---|---|---|
| 名誉毀損罪 | 公然と事実を摘示し、他者の社会的評価を低下させていること | 「〇〇氏は過去に横領事件を起こしている」と虚偽の事実を記載する |
| 侮辱罪 | 具体的な事実を摘示せずに、公然と他人を侮辱していること | 「〇〇氏は無能で社会のお荷物だ」と侮辱的な表現を記載する |
| 信用毀損罪 | 虚偽の風説または偽計を用いて、他者の経済的信用を毀損していること | 「〇〇社は資金繰りが悪化しており、取引先への支払いが滞っている」と虚偽の情報を記載する |
| 偽計業務妨害罪 | 虚偽の風説の流布または偽計を用いて、他者の業務を妨害していること | 「〇〇店では食中毒が多発している」と虚偽の情報を記載する |
| 著作権法違反 | 著作権者の許諾なく、著作物を複製・公衆送信するなどして著作権を侵害していること | 他者の書籍やWebサイトの文章を無断でコピーし、Wikipedia記事として掲載する |
告訴が受理されると警察による捜査が始まり、加害者は逮捕されたり、起訴されたりする可能性があります。
また、「刑事責任を負うことになるかもしれない」というプレッシャーを与えることで、相手が示談に応じやすくなる点も刑事告訴のメリットです。
なお、名誉毀損罪・侮辱罪・著作権法違反は親告罪と呼ばれ、加害者を起訴するには告訴が必要とされています。
そして、親告罪の告訴には「犯罪行為を知った日から6ヵ月以内」という期限が設けられているので、早めに行動を起こすようにしましょう。
Wikipediaの削除依頼は弁護士に任せるのがおすすめ
Wikipediaの削除依頼は自力でおこなうことも可能ですが、成功率を高め、迅速に解決したいのであれば弁護士に依頼するのがおすすめです。
ここでは、弁護士に依頼する2つのメリットを解説します。

法的な根拠に基づく削除依頼が可能になる
弁護士に依頼する最大のメリットは、法的な根拠に基づいた削除依頼が可能になることです。
Wikipediaの削除依頼では、どの部分が、どのような権利侵害にあたるのかを具体的に示す必要があります。
感情論をぶつけたところで、根拠のない主張は認めてもらえません。
その点、弁護士であれば、判例や関係法律を踏まえて説得力のある主張を組み立てることが可能です。
裁判所を通じた手続きも選択肢に入れられる
弁護士に依頼していれば、裁判所を通じた法的手続きも選択肢に入れることができます。
前述のとおり、Wikipediaの削除依頼はコミュニティの審議を経る必要があり、必ずしも認められるとは限りません。
しかし、削除依頼が却下された場合でも、弁護士であれば、裁判所に対する削除の仮処分申立てにスムーズに移行できます。
仮処分の申立てには、権利侵害の事実を整理した書面の作成や証拠の準備など、専門性の高い作業がともないます。
これらを自力でおこなうのは現実的に難しく、遅滞なく手続きを進めるには弁護士のサポートが不可欠です。
加えて、開示請求や損害賠償請求・刑事告訴といった法的措置も、弁護士に一括して依頼することができます。
Wikipediaの削除依頼はグラディアトル法律事務所にお任せを!
本記事のポイントは以下のとおりです。
- Wikipediaでは、プライバシー侵害や名誉毀損などの権利侵害が生じている場合に削除依頼ができる
- Wikipedia独自の手順に従って削除依頼をおこない、コミュニティの審議を経る必要がある
- 削除には原則1週間以上の審議期間が必要だが、緊急を要する案件は審議が短縮されたり、即時削除されたりすることもある
- 削除依頼が認められない場合は、裁判所への仮処分申立てなどが選択肢に入ってくる
- 悪質な記事を投稿した相手は開示請求で特定し、損害賠償請求・刑事告訴できる場合がある
Wikipediaに掲載された不当な記述は、放置すればするほど被害が拡大していきます。
記事の削除依頼から法的措置まで最短ルートで進めるためにも、できるだけ早い段階で弁護士に相談することが大切です。
グラディアトル法律事務所は、インターネットトラブルを得意とする法律事務所です。
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