肖像権侵害で慰謝料請求はできる?相場・請求方法を弁護士が解説

肖像権侵害で慰謝料請求はできる?相場・請求方法を弁護士が解説

「肖像権侵害を理由に慰謝料請求ができるケースとは?」

「肖像権侵害を理由とする慰謝料相場はどのくらい?」

「肖像権を侵害された場合、どのような方法で慰謝料を請求すればいい?」

スマートフォンやSNSが普及した現代では、誰もが手軽に写真や動画を撮影・投稿できるようになりました。しかしその一方で、「許可なくSNSに自分の写真を載せられた」「学校や更衣室など私生活の場を無断で撮影された」といった肖像権侵害の相談が当事務所にも数多く寄せられています。

肖像権侵害は、他人に顔や姿を勝手に利用されない権利を守るための法的な仕組みです。侵害が認められれば、精神的苦痛に対する慰謝料を請求できるケースがあります。もっとも、報道目的など公益性がある場合や、後ろ姿で個人の特定が難しい場合には慰謝料が認められないこともあるため、判断は容易ではありません。

当事務所の経験上、慰謝料の相場は10〜50万円程度にとどまることが多いものの、被害者の社会的地位や画像の内容、加害者の悪質性によってはより高額の慰謝料を獲得できたケースもあります。

本記事では、

・慰謝料を認めた判例と金額の傾向
・慰謝料請求が可能なケースと難しいケース
・慰謝料の相場と増減の要素
・請求の具体的な流れと注意点

などを弁護士の視点から解説します。

肖像権侵害の被害にあわれた方が、自分のケースで慰謝料請求できるのか、どのように進めればよいのかを理解できる内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

肖像権侵害で慰謝料を認めた判例と金額まとめ

肖像権侵害による慰謝料は、事案の内容によって大きく変動します。以下の表は、最近の裁判例や傾向を整理したものです。

判決日事案の概要慰謝料額判決のポイント
東京地裁令和4年12月20日判決短文投稿サイトに合成等の侮辱的画像+連続投稿(計18回)。ゲーム会社代表の顔写真を加工・掲載30万円肖像権・名誉感情侵害を一体として評価。投稿は多数回だが反応は少数で閲覧層は限定的と推認
東京地裁令和4年11月16日判決小学生YouTuber(当時11歳・登録者約12万人)の顔写真付きツイート「包茎」などの侮辱表現5万円自ら公表した画像でも、嘲笑文言を重ねた無断利用は受忍限度超える。他方、投稿は一度で影響力も限定的
東京地裁令和4年10月28日判決路上での逮捕場面をモザイクなしでYouTubeに投稿(タイトルやテロップで面白可笑しく編集)30万円公共の場面でも、逮捕・手錠等の映像を無断公表することは受忍限度を超え肖像権侵害。名誉権侵害も認定。報道・公益目的の主張は、専ら公益目的とはいえず違法性阻却を否定。YouTubeでの公表態様・編集の嘲笑性を重視。
東京地裁令和3年3月26日判決繁華街で無断撮影・愚弄の様子をYouTube公開。「ヤンキーの彼氏にブチギレ」等のタイトル/サムネで原告を強調60万円路上でも一般私人の私的場面を中心的に撮影・公表した点を重視し肖像権侵害を認定。嘲笑的演出で名誉感情侵害、タイトル等で名誉毀損も成立。動画の拡散力と「ハイライト」扱いを斟酌
東京地裁平成30年9月27日判決緊縛写真を無断転載してTwitter投稿(被写体は一般人女性)30万円プライバシー権・人格的利益(肖像)侵害を認定。フォロワー関係や過去のプロフィール画像等から同定可能性を肯定。元投稿が他者アカで公開済みでも転載で同定可能化した点を重視(違法性は消えない)

【判例から読み取れる傾向】

・慰謝料の目安は10〜50万円程度が中心
・プライベート空間や未成年に関わる場合は高額化しやすい
・芸能人・著名人は社会的影響が加わり100万円を超える場合もある

【当事務所の見解】

当事務所の経験上、SNSでの無断投稿は「拡散性」が強いため、裁判例以上に被害感情が大きいケースが多いです。そのため、交渉次第では判例の目安を超える金額で解決できる余地もあります。被害を軽く見積もらず、専門家のサポートを受けて主張していくことが重要です。

肖像権侵害で慰謝料請求ができる基準|受忍限度論と判例紹介

肖像権侵害による慰謝料請求が認められるかどうかは、「受忍限度論(じゅにんげんどろん)」と呼ばれる考え方によって判断されます。以下では、受忍限度論の考え方と実際の判例を紹介します。

受忍限度論とは

受忍限度論とは、社会生活上、ある程度の撮影や公表はやむを得ないものとして受け入れる一方で、その範囲を超える行為は違法となる、という基準です。

裁判所は、肖像権侵害を判断する際、以下のような要素を総合的に考慮しています。

・被写体の属性(一般人か、公的立場か)
・撮影の場所(公共の場か、私的空間か)
・撮影・公表の目的と態様(報道・公益目的か、娯楽・営利目的か)
・編集・加工の有無(嘲笑・侮辱的な演出があるか)
・拡散範囲(SNS・動画サイトなどの影響力)

これらを踏まえ、一般人が「社会生活上受忍すべき限度を超えている」と判断された場合に肖像権侵害による慰謝料が認められます。

代表的な判例の傾向

肖像権侵害の受忍限度論について、判断した判例としては、以下のようなものがあります。

人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する。もっとも、人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって、ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。(最高裁平成17年11月10日判決|和歌山毒入りカレー事件)

肖像権侵害を理由とする慰謝料請求ができるケース

肖像権侵害と認められ、慰謝料請求が可能となるのは「本人の意思に反して撮影・利用された」場合です。以下では、代表的なケースを紹介します。

肖像権侵害を理由とする慰謝料請求ができるケース

無断で写真や動画をSNS・インターネットに投稿された場合

もっとも多いのが、知人や友人が許可なく写真や動画をSNSに投稿するケースです。特にX(旧Twitter)やInstagram、TikTokのように拡散力の強い媒体では、短時間で多数の人の目に触れるため、精神的苦痛が大きいと評価されます。

判例でも、無断で飲み会の写真を週刊誌やネット記事に掲載されたケースで、20〜30万円の慰謝料が認められた例があります。顔が明確に映っており、個人が特定できる状態であれば、慰謝料請求が認められる可能性は高いといえます。

同意なく私生活領域(自宅・学校・更衣室など)を撮影された場合

自宅や更衣室、学校といったプライベート空間で無断撮影が行われた場合は、侵害性が非常に強く、肖像権侵害が認められる可能性が高くなります。

裁判例では、自宅を無断で撮影されたケースで50万円の慰謝料が認められた事例があります。特に、更衣室や浴室といった極めて私的な空間での撮影は、精神的苦痛の度合いが重く評価されやすく、慰謝料額が高額化する傾向にあります。

撮影拒絶の意思表示をしたのに撮影された場合

本人が「撮影はやめてください」と明確に意思表示したにもかかわらず撮影を続けた場合も、慰謝料が認められるケースです。

裁判例でも、被害者が撮影を拒否していたにもかかわらず無断で写真を撮影・公開したケースで、20万円前後の慰謝料が認められた例があります。このように、意思を無視して強行された撮影は、「悪質性」が高いと評価されるため、慰謝料が相場より高額になる場合があります。

肖像権侵害を理由とする慰謝料請求が難しいケース

肖像権侵害が認められるかどうかは、ケースごとに状況を丁寧に検討する必要があります。以下のような場合は、慰謝料請求が難しいと判断される傾向があります。

公共性・報道目的が認められる場合

新聞・テレビなどの報道で、社会的に重要な事件や出来事の一環として人物の映像や写真が使用された場合は、肖像権よりも公共性や表現の自由が優先されることがあります。

たとえば、事件現場や選挙活動の様子を報道する際に、通行人や参加者が映り込んだ場合などは、公益目的が強く評価され、慰謝料請求が認められにくい傾向にあります。

撮影・利用について黙示の同意があったとみなされる場合

本人が明確に同意していなくても、状況によっては黙示の同意が推定されることがあります。

たとえば、観光地やイベント会場などで多数の人が撮影している状況で、特に、拒否の意思表示をせずに写り込んだ場合は「許容した」と判断されることがあります。このようなケースでは、肖像権侵害を主張するのは難しいといえます。

後ろ姿・マスク姿などで個人特定が困難な場合

肖像権は「個人が特定されること」によって侵害が成立します。そのため、後ろ姿やマスク姿など、誰であるか特定できない状態の写真は、侵害と認められないことが多いです。

裁判例でも、個人が特定できない映像については精神的苦痛が生じたとまではいえないとして、慰謝料請求が否定された事例があります。

肖像権侵害の慰謝料相場|10~50万円程度

肖像権侵害で認められる慰謝料は、一般的に10~50万円程度に収まるケースが多いといわれています。ただし、被害の内容や社会的影響によっては、これを上回る金額が認められることもあります。

慰謝料相場の目安

ケース慰謝料額の目安備考
SNSへの無断投稿10~30万円程度拡散性が高い場合は増額の可能性あり
雑誌・テレビでの無断使用20~40万円程度公開範囲が広いことが重視される
自宅や更衣室などプライベート空間の撮影30~50万円程度私生活領域の侵害は慰謝料が高くなりやすい
芸能人・著名人の無断利用50~100万円程度社会的評価・職業上の影響を考慮して高額化する傾向あり

慰謝料が相場を超えるケース

【社会的影響が大きい場合】

芸能人や経営者など、職業上の信用に直結する場合は高額化しやすいです。

【悪質性が高い場合】

撮影を拒否したにもかかわらず執拗に撮影したケース、ネット上で拡散を狙ったケースでは、慰謝料が上乗せされる傾向にあります。

【画像内容が重大な場合】

子どもや裸体、私生活の深い部分に関わる写真は精神的苦痛が強く、相場を超える慰謝料が認められることがあります。

肖像権侵害の慰謝料額の主な考慮要素

肖像権侵害による慰謝料は、単に「無断で撮られたかどうか」だけで決まるわけではありません。裁判所は、被害の状況を総合的に判断し、慰謝料額を算定します。以下では、特に重視される要素を説明します。

公開範囲(SNS・テレビ・広告など)

慰謝料額に大きな影響を与えるのが、写真や映像がどの程度公開されたかという点です。

友人のみに限定した小規模な公開であれば慰謝料は比較的低額にとどまりますが、SNSや動画投稿サイトのように拡散性の高い媒体に投稿された場合には、被害の広がりが重く評価されます。

テレビや全国紙で取り上げられたケースでは、全国的に影響が及ぶため、相場の上限に近づく傾向があります。

被害者の社会的地位(芸能人・一般人)

被害者の立場も慰謝料額を左右します。

芸能人や著名人の場合、無断利用が職業上の信用やイメージに直接的な打撃を与えるため、慰謝料は高めに認定されやすいです。一般人でも、学校や職場での人間関係や社会生活に支障をきたすおそれがあると判断されれば、社会的地位を考慮して慰謝料額が上乗せされることがあります。

画像の内容(私生活・裸体・子どもなど)

写真や動画の内容も重要な要素です。

日常的な場面での自然な撮影であれば、慰謝料は、比較的低額にとどまる傾向があります。しかし、自宅や家族との時間など私生活が強く反映された内容や、裸体を含む写真、子どもが対象となる映像は、精神的苦痛が大きいと判断され、相場を超える金額が認められることもあります。

加害者の故意・悪質性

加害者の態度や行為の悪質性も、慰謝料額に直結します。

たとえば「撮影しないでほしい」と明確に伝えられたにもかかわらず撮影を続けた場合や、嫌がらせ目的で投稿した場合は、故意性が強く評価されます。また、拡散を狙って複数のサイトに転載したケースでは、被害が拡大するため慰謝料が増額される可能性があります。

反対に、悪意がなく偶発的な撮影と評価される場合には、慰謝料は低く抑えられる傾向にあります。

肖像権侵害による慰謝料請求の流れ

肖像権侵害で慰謝料を請求するには、いきなり裁判を起こすのではなく、段階を踏んで進めていくのが一般的です。以下では、肖像権侵害による慰謝料請求の一般的な流れを紹介します。

肖像権侵害による慰謝料請求の流れ

投稿者の特定|発信者情報開示請求

SNSや掲示板に写真や動画が投稿された場合、まずは投稿者を特定することが必要です。匿名アカウントであっても、プロバイダやプラットフォームに対して「発信者情報開示請求」を行うことで、IPアドレスや契約者情報を明らかにできる場合があります。

これは誰に請求すべきかを確定するための重要な第一歩です。

投稿者に対して内容証明郵便を送付

投稿者が特定できたら、次は内容証明郵便で慰謝料の支払いを正式に求めていきます。

口頭やSNS上でのやり取りでは証拠が残らず、後に「請求を受けていない」と主張されるおそれがあるため、法的に確実な形で通知することが大切です。

加害者が反省し、支払いに応じる態度を示せば、この段階で解決に至るケースも少なくありません。

投稿者との示談交渉

内容証明の送付後、相手が応じれば示談交渉に移ります。

示談交渉では慰謝料の金額だけでなく、写真や動画の削除、今後の利用禁止なども含めて話し合うのが一般的です。

交渉がまとまれば裁判に進まずに済むため、時間や費用を抑えることができます。

交渉がまとまらないときは訴訟提起

もし示談で解決できない場合は、裁判で慰謝料請求を行うことになります。

裁判では、投稿の事実や拡散範囲、被害の程度などを証拠に基づいて肖像権侵害を具体的に主張・立証する必要があります。

訴訟は、時間も労力もかかりますが、相手が強硬な態度をとる場合には最終的な解決手段となります。

肖像権侵害を理由とする慰謝料請求はグラディアトル法律事務所にお任せください

肖像権侵害を理由とする慰謝料請求はグラディアトル法律事務所にお任せください

肖像権侵害による慰謝料請求は、単に「勝手に撮られた」「ネットに投稿された」というだけで簡単に認められるものではありません。裁判所は、公開範囲や写真の内容、被害者の社会的立場、加害者の意図など複数の要素を総合的に判断して権利侵害の有無や金額を決めます。そのため、法的知識や経験がないまま交渉や訴訟を進めても、思ったような結果が得られないことが多いのです。

グラディアトル法律事務所では、インターネット上の権利侵害案件に豊富な実績があり、肖像権侵害に関する相談も数多く対応してきました。匿名のSNS投稿者を特定する「発信者情報開示請求」や相手に対して慰謝料支払いと削除を求める「内容証明郵便の送付」など被害者が一人では対応しにくい手続きを代行し、スムーズな解決に導きます。

また、多くのケースでは訴訟に至る前に示談交渉で解決することが可能です。当事務所が代理人として交渉することで、相手に対して法的な重みを持った請求ができ、有利な条件での合意が期待できます。もし交渉が難航した場合でも、訴訟での主張・立証を一貫してサポートいたします。

肖像権侵害は、放置すれば被害が拡散し、精神的苦痛も大きくなります。被害を最小限に抑えるには、できるだけ早い段階で専門家に相談することが重要です。当事務所では依頼者の状況に応じた最適な解決方法を提示し、安心してお任せいただける体制を整えています。お悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

肖像権侵害で慰謝料請求が認められるかどうかは、公開範囲や画像内容、加害者の悪質性などの要素によって判断されます。一般的な相場は10〜50万円程度ですが、ケースによってはより高額となることもあります。

被害を放置すれば拡散しやすいため、できるだけ早期に弁護士へ相談し、適切な対応をとることが大切です。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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