「誹謗中傷と批判の違いがわからない」
「誹謗中傷となる言葉と批判にあたる言葉の具体例を知りたい」
「誹謗中傷と批判の違いを判断するポイントとは?」
インターネットやSNSが生活の一部となった今、誰もが気軽に意見や感想を発信できる時代になりました。政治や社会問題、芸能人の行動、会社やサービスに対する評価など、多種多様な意見が飛び交っています。しかしその一方で、「批判」と「誹謗中傷」の境界線が曖昧になり、発言がトラブルに発展するケースも少なくありません。
「これは正当な批判のつもりで書いたのに、相手から誹謗中傷だと訴えられたらどうしよう」「表現の自由の範囲だと思って発信したが、実は違法になるのでは?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。特に、SNSでは一度投稿すると拡散が止められず、意図せず相手の名誉を傷つけてしまう危険性があります。
本記事では、
・誹謗中傷と批判の定義や特徴
・誹謗中傷と批判の具体的な表現例
・ネットで誹謗中傷を受けてしまったときの対処法
などについて詳しく解説します。
誹謗中傷と批判の違いを正しく理解することは、健全な意見交換を行うための第一歩です。ぜひ本記事を最後までお読みいただき、トラブルを避けながら安心して情報発信・コミュニケーションを行うための知識を身につけてください。
| 誹謗中傷 | 批判 | |
|---|---|---|
| 定義 | 根拠なく相手を傷つける発言 | 事実や意見に基づく評価 |
| 特徴 | 人格攻撃・虚偽・侮辱的表現 | 論理的・客観的な根拠に基づく表現 |
| 法的評価 | 名誉毀損罪・侮辱罪などの刑事事件や損害賠償請求などの民事事件に発展する可能性 | 表現の自由として保護されやすい |
| 目的 | 相手を貶める・攻撃する | 社会的議論や改善の提起 |
どこからが誹謗中傷?誹謗中傷と批判の違い
インターネット上では、相手の発言や行動について否定的な意見を述べる場面が少なくありません。このような表現の中には「正当な批判」といえるものもあれば、行き過ぎて「誹謗中傷」と評価されるものもあります。両者を正しく区別することは、違法なトラブルを避けるために重要です。以下では、誹謗中傷と批判それぞれの定義や特徴、その違いを説明します。
誹謗中傷の定義と特徴
誹謗中傷とは、相手を根拠なく悪く言ったり、事実を歪めて人格や名誉を傷つけたりする行為を指します。誹謗中傷は、以下のような特徴を持ちます。
| ・侮辱的、攻撃的な言葉を用いる |
| ・根拠のない事実をでっち上げる、または誇張する |
| ・相手の社会的評価を低下させる意図がある |
| ・個人の尊厳を傷つける |
たとえば、「〇〇は犯罪者だ」「無能で役立たず」といった表現は、意見や批判を超えて相手の人格を否定しているため、誹謗中傷に該当する可能性があります。法律上も、名誉毀損罪や侮辱罪といった刑事責任や、不法行為に基づく損害賠償責任を問われるケースがあります。
批判の定義と特徴
批判とは、対象となる人物や行為、考え方について、自分の意見や評価を論理的に述べることです。社会的に認められた表現の自由の範囲内に収まるものであり、民主主義社会において欠かせない役割を果たします。批判の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
| ・事実に基づいた意見や評価を示す |
| ・論理的・客観的な根拠を伴う |
| ・相手の人格否定ではなく、行為や考え方に焦点を当てる |
| ・社会的議論の一環として正当化されやすい |
たとえば、「この政策は経済的な効果が乏しいと思う」「この商品の品質は改善すべき点がある」といった表現は、意見や評価にとどまるため批判に分類されます。
誹謗中傷と批判の違いまとめ
誹謗中傷と批判の大きな違いは、「人格攻撃の有無」「根拠の有無」「悪意の有無」にあります。批判は、事実に基づいた正当な表現ですが、誹謗中傷は根拠を欠き、相手の名誉などを侵害する行為です。
誹謗中傷と批判の違いをまとめると以下のようになります。
| 誹謗中傷 | 批判 | |
|---|---|---|
| 定義 | 根拠なく相手を傷つける発言 | 事実や意見に基づく評価 |
| 特徴 | 人格攻撃・虚偽・侮辱的表現 | 論理的・客観的な根拠に基づく表現 |
| 法的評価 | 名誉毀損罪・侮辱罪などの刑事事件や損害賠償請求などの民事事件に発展する可能性 | 表現の自由として保護されやすい |
| 目的 | 相手を貶める・攻撃する | 社会的議論や改善の提起 |
【誹謗中傷と批判の違い】誹謗中傷の具体例

誹謗中傷は、単に否定的な意見を述べることとは異なり、相手の名誉や社会的評価を傷つける表現を伴います。以下では、典型的な誹謗中傷の具体例を挙げて、批判とどのように異なるのかを見ていきましょう。
人格攻撃にあたる表現
誹謗中傷の代表的な例は、相手の人格や人間性を否定する発言です。たとえば、以下のような表現は、意見や事実の評価を超えて、個人への攻撃となります。
・「あいつは人間として最低だ」
・「頭がおかしい」「無能すぎて存在価値がない」
・「見た目が気持ち悪い」「生きている価値がない」
このような表現は、発言の自由として正当化されにくく、侮辱罪などの法的責任を問われる可能性が高くなります。
虚偽の事実を含む表現
根拠のない事実をでっち上げたり、事実を歪めて発信することも誹謗中傷にあたります。
・「〇〇は過去に逮捕されたことがある」
・「あの店は食中毒を出した」
・「彼は会社のお金を横領している」
これらは他人の社会的評価を低下させる内容であることから名誉毀損罪の典型例です。とりわけSNS上では、情報が瞬時に拡散され、訂正が困難になるため、虚偽の誹謗中傷は深刻な被害を生みます。
過度に侮辱的な言葉の使用
意見としての体裁をとっていても、侮辱的な表現を用いると誹謗中傷に該当することがあります。
・「〇〇はバカすぎて話にならない」
・「この人はゴミだ」
・「常識がなさすぎて社会不適合者」
対象の考えや行動を批判するのではなく、人格や存在そのものを侮蔑しているため、批判ではなく誹謗中傷と評価されやすいです。
【誹謗中傷と批判の違い】批判の具体例
批判は、対象となる人物や行為、考え方に対して、自分の意見や評価を示す行為です。論理や事実に基づいていれば、たとえ厳しい内容であっても「誹謗中傷」ではなく「正当な批判」として表現の自由の範囲に含まれます。以下では、批判の具体例を紹介し、誹謗中傷とどう違うのかをみていきましょう。
政策や社会的行動への批判
社会的な問題や政策について意見を述べることは、民主主義社会において不可欠な活動です。
| ・「この政策は財源の裏付けがなく、実現可能性に疑問がある」 ・「この発言は一部の人々を傷つけるおそれがあり、配慮に欠けるのではないか」 |
これらは根拠や理由を示して行為を評価しているため、誹謗中傷ではなく正当な批判にあたります。
商品やサービスに対する批判
企業やサービスを利用した経験に基づき、改善点や不満を述べることも批判にあたります。
| ・「この商品の耐久性は価格に比べて低いと感じる」 ・「対応が遅かったので、改善を望みたい」 |
体験事実に基づく意見であり、虚偽や侮辱を含まないため、正当な批判と評価されます。
個人の行為や発言に対する批判
特定の人物に対する否定的な意見でも、事実に基づいて行為や発言を対象にしていれば批判とされます。
| ・「このプレゼンの説明は不十分で、理解しにくかった」 ・「先日の発言は誤解を招く表現で、適切ではなかったと思う」 |
ここでは人格や存在そのものを攻撃するのではなく、具体的な行為・発言を評価している点がポイントです。
論理的根拠に基づく意見の提示
批判には、客観的な根拠や論理性が伴うことが求められます。
| ・「統計データを踏まえると、この取り組みは効果が限定的だと考える」 ・「法律上の要件を満たしていないため、この判断は妥当ではない」 |
こうした意見は建設的な議論につながりやすく、社会的に有益な表現として評価されます。
誹謗中傷と批判の違いを判断するポイント
「これは正当な批判のつもりだったが、相手から誹謗中傷だと受け取られたらどうしよう」と不安になる方も少なくありません。誹謗中傷と批判の境界線は、一見あいまいですが、いくつかの判断ポイントを押さえておくと見極めやすくなります。以下では、誹謗中傷と批判の違いを判断する3つのポイントを説明します。
事実か意見か
まず注目すべきは、当該内容が「事実」なのか「意見・評価」なのかという点です。事実は、客観的な証拠に基づいて誰でも真偽を確かめることができるのに対して、意見・評価は、個人の主観的な考えや感情に依存するため、真偽の証明ができない点に違いがあります。
| ・事実→「〇〇は不倫している」「〇〇は過去に逮捕された」といった表現は、証拠に基づいて真偽を確かめることができますので「事実」にあたります。 根拠がなければ虚偽による名誉毀損に直結します。真実であっても、プライバシーを侵害すれば違法となる可能性があります。 ・意見や評価→「この行為は社会的に問題があると思う」「説明がわかりにくいと感じた」といった表現は、個人の主観的考えにすぎませんので、誹謗中傷にはあたりません。 |
裁判例でも、事実の摘示なのか意見・論評なのかは、争われることが多いため、両者の区別を意識しておくことが大切です。
悪意の有無
同じテーマを扱う場合でも、発言の意図や表現方法によって、批判か誹謗中傷かの評価が変わります。
| ・悪意が強い場合→「あいつは社会のゴミだ」「生きている価値がない」など、改善や議論の余地がなく、相手を貶めることそのものが目的と見られる発言は誹謗中傷にあたります。このような表現は、法的責任が問われる可能性が極めて高いです。 ・建設的な意図がある場合→「この説明は不十分なので改善してほしい」「この対応は利用者に誤解を与えるおそれがある」といった表現は、相手への攻撃ではなく改善を求める姿勢がうかがえるため、正当な批判として評価されやすいです。 |
つまり、同じ不満を述べる場合でも、「相手を傷つけるための言葉」なのか「改善を促すための意見」なのかで大きく評価が変わります。
虚偽の有無
虚偽の事実を含むかどうかも、誹謗中傷か批判かを区別する大きなポイントです。
| ・虚偽を含む場合→「〇〇は不倫している」「あの会社は脱税している」など、根拠のない事実を流布すれば、名誉毀損罪や信用毀損罪に該当します。SNSでは「噂で聞いた」「ネットで見た」といった不確かな情報を広めてしまうケースが多く、投稿者に刑事責任や損害賠償責任が生じる可能性もあります。 ・虚偽を含まない場合→「この商品は使いにくいと思う」「この発言は誤解を招くのではないか」といった表現は、体験や主観に基づいているため、虚偽にはあたりません。このような意見は批判として表現の自由に守られる範囲です。 |
虚偽の有無は、誹謗中傷かどうかを判断するうえで特に重要な視点であり、後に法的トラブルとなった際にも大きな争点となります。
ネットで誹謗中傷をされたときの対処法

SNSや掲示板などで誹謗中傷の被害を受けると、精神的に大きな苦痛を感じるだけでなく、社会的評価や信用にも深刻な影響を与える可能性があります。放置してしまうと被害が拡大し、取り返しがつかなくなるケースもあるため、早めの対応が重要です。以下では、実際に誹謗中傷を受けたときの対処法を説明します。
誹謗中傷の投稿に対する削除請求
誹謗中傷の被害を受けた場合、ま検討すべきなのは問題となる投稿の削除です。
X(旧Twitter)やInstagram、YouTubeといった大手SNSには、利用規約に違反する投稿を通報し、削除を要請できる仕組みが整っています。また、掲示板やブログであれば管理者に直接削除を求めることが可能です。
しかし、誹謗中傷の投稿であってもプラットフォームが自主的に対応してくれないことも少なくありません。そのような場合には裁判所に仮処分を申し立て、強制的に削除を実現する方法があります。特に、ネット上の誹謗中傷は、短時間で情報が拡散してしまうため、早急な削除が被害を最小限にとどめるために不可欠です。
関連コラム:
X(Twitter)で削除依頼する方法を弁護士が解説【成功事例あり】
【弁護士YouTuber直伝!】悪質な動画やコメントを削除依頼する方法
投稿者を特定するための発信者情報開示請求
ネット上で誹謗中傷を行う投稿者に法的責任を追及するには、投稿者の身元を特定する必要があります。その際に利用されるのが発信者情報開示請求です。
これは情報理由通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)に基づく手続きで、まずSNSや掲示板の運営者に対してIPアドレスやタイムスタンプといった発信者情報の開示を請求し、次にその情報をもとに通信事業者(プロバイダ)に契約者情報の開示を求める流れとなります。
通常は、運営者やプロバイダは、任意の開示には応じない場ため、裁判所に仮処分の申立てや訴訟の提起をし、開示を命じてもらう必要があります。
匿名性の高いインターネット上で加害者を特定するには不可欠な手続きであり、専門的な法知識が必要とされるため、弁護士に依頼することが現実的な選択肢となります。
投稿者に対する損害賠償請求
投稿者の特定に成功した場合には、被害に応じて損害賠償を請求することが可能です。
誹謗中傷によって精神的苦痛を受けた場合には慰謝料を請求できます。金額は、発言内容や拡散の規模、被害者の社会的地位などを考慮して判断され、数十万円から100万円を超えるケースもあります。
また、企業や店舗であれば、悪質なレビューや虚偽の口コミによって顧客離れや売上減少といった経済的損害が発生することがあります。このような場合には、精神的苦痛に対する慰謝料に加えて営業上の損害についても賠償請求が認められる可能性があります。
悪質な投稿に対しては刑事告訴
誹謗中傷の内容が特に悪質な場合には、刑事告訴を行い、加害者を処罰することも検討できます。
| 名誉毀損罪(刑法230条)公然と事実を摘示して相手の社会的評価を下げた場合に成立します。内容が真実であっても罪に問われることがあります。 侮辱罪(刑法231条)事実を摘示せずとも、人格を否定するような発言で名誉を傷つけた場合に成立します。令和4年の法改正により、法定刑が厳罰化されています。 業務妨害罪(刑法233条、234条)企業や店舗に関して虚偽の風評を流すことで、営業活動を妨害した場合に適用されます。 |
刑事告訴は、加害者に刑事責任を負わせることで社会的制裁を加える手段であり、今後の再発防止にも有効な手段といえます。
誹謗中傷や批判をされたときはグラディアトル法律事務所に相談を

ネット上で誹謗中傷を受けたとき、被害者自身が一人で対応しようとしても限界があります。投稿の削除や発信者情報の開示、さらには損害賠償や刑事告訴に至るまで、どの手続きにも専門的な知識と迅速な判断が求められるからです
グラディアトル法律事務所では、SNSや掲示板での誹謗中傷案件に豊富な対応実績を有しており、状況に応じた最適な戦略を提案することができます。たとえば、被害が拡散している場合には早急に仮処分を申し立てて投稿を削除し、その後に発信者を特定して損害賠償や刑事告訴に進むといった流れをスムーズに進めることが可能です。
また、当事務所は、依頼者の心理的な負担を軽減することも重視しています。誹謗中傷の被害に遭うと、不安や怒りで冷静な判断ができなくなることもありますが、弁護士が介入することで法的手続きが明確になり、被害者は、安心して解決までのプロセスを進められます。
「これは批判なのか誹謗中傷なのか判断できない」「削除請求や損害賠償の手続きを進めたいが、どうすればいいかわからない」という方は、ぜひグラディアトル法律事務所にご相談ください。初期の段階で適切な対応を取ることが、被害を最小限に抑える最善策となります。
まとめ
批判と誹謗中傷の違いは非常に分かりにくく、発言の意図や表現の仕方によって評価が大きく変わります。自分では正当な批判のつもりでも、相手から誹謗中傷と受け取られ、法的トラブルにつながることも少なくありません。
逆に、明らかに名誉を傷つけられているのに「批判だから仕方ない」と思い込み、泣き寝入りしてしまうケースもあります。判断に迷ったときこそ、専門的な知識と経験を持つ弁護士に相談することが重要です。
グラディアトル法律事務所では、誹謗中傷や批判の境界に関する相談にも丁寧に対応し、依頼者にとって最善の解決策を提案します。ネット上のトラブルでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
