SNSの誹謗中傷で警察は動く?対応してくれるケースと相談手順を解説

SNSの誹謗中傷で警察は動く?対応してくれるケースと相談手順を解説
弁護士 若林翔
2025年11月17日更新

「SNSの誹謗中傷では警察が動いてくれないという噂は本当なの?」

「SNSの誹謗中傷で警察に動いてもらうにはどうしたらいい?」

「警察が動いてくれないときの対処法を知りたい」

SNSは便利な一方で、匿名性の高さから誹謗中傷や悪質な書き込みが横行しています。「事実無根の噂を広められた」「根拠のない中傷で名誉を傷つけられた」など、深刻な被害に悩まされる人も少なくありません。なかには警察に相談したのに思ったように対応してもらえなかったという方もいるようです。

警察がSNSの誹謗中傷に積極的に動いてくれない背景には、民事不介入の原則や証拠が不十分な場合には立件が難しいといった理由があります。しかし一方で、名誉毀損罪や侮辱罪、脅迫罪など明確に刑事事件として扱える場合には、警察も捜査に乗り出してくれる可能性があります。

本記事では、

・SNSの誹謗中傷で警察が動いてくれるケースと動いてくれないケース
・SNSの誹謗中傷で実際に警察へ相談する際の手順
・弁護士に依頼することで得られる解決策

などについて詳しく解説します。

SNSの誹謗中傷に悩んでいる方が「どこに相談すべきか」「何から始めるべきか」を理解できる内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。

SNSの誹謗中傷があっても警察がなかなか動いてくれない理由

SNSで誹謗中傷を受けたとき、警察に相談しても思ったように動いてもらえないケースも少なくありません。以下では、SNSでの誹謗中傷で警察がなかなか動いてくれない理由を説明します。

「民事不介入の原則」により犯罪にあたらないような事案だと対応してくれない

警察の基本的な立場として「民事不介入の原則」があります。これは、当事者間の金銭トラブルや名誉感情の問題など、民事的に解決すべき紛争には警察は介入しないという考え方です。

たとえば「悪口を言われて傷ついた」「人格を否定するような発言を受けた」というケースであっても、それが犯罪として成立するレベルに至らない限り、警察は動くことができません。

名誉毀損罪や侮辱罪として立件するには、「特定の個人を対象に社会的評価を下げるような表現があったか」「公然性があったか」など法律上の要件を満たす必要があり、被害者が感じた精神的苦痛だけでは足りないのです。

担当の警察官にwebの知識がないと面倒くさがる

SNSや掲示板などインターネット上でのトラブルは、専門的な知識を要します。

しかし、現場の警察官の中にはサイバー犯罪に詳しくない人も多く、被害相談を受けても「どう扱えばよいのかわからない」と対応が後回しにされることがあります。

特に、地方の交番や小規模な警察署では、サイバー犯罪専門の部署が設置されていないこともあり、相談をしても「被害届は受理できない」「まずは弁護士に相談してほしい」といった対応で終わるケースが目立ちます。

被害者からすれば軽視されているように感じ、不満や不安を抱きやすい部分です。

開示請求が必要な場合には警察がそれを嫌がる

SNSでの誹謗中傷は匿名で行われることが多く、投稿者を特定するには「発信者情報開示請求」という手続きが必要になる場合があります。ところが、開示請求は裁判所を通じて行う民事的な手続きであり、警察が直接進めるものではありません。そのため、警察としては「加害者がわからなければ捜査を進めにくい」と判断し、被害届の受理自体を渋るケースがあります。

もっとも、弁護士を通じて開示請求を行い、加害者の身元が特定できれば、その後に告訴を受理して警察が動き出すこともあります。つまり、警察に相談する前に弁護士に依頼し、証拠を固めてから動いた方がスムーズな対応が期待できます。

SNSの誹謗中傷で警察が対応してくれるケース

SNSの誹謗中傷で警察が対応してくれるケース

SNSでの誹謗中傷は、すべてが警察の捜査対象となるわけではありません。しかし、投稿内容が明らかに刑法上の犯罪に該当する場合には、警察が捜査に乗り出してくれる可能性が高いといえます。以下では、SNSの誹謗中傷で警察が対応してくれる代表的な4つのケースを紹介します。

名誉毀損罪に該当するケース

名誉毀損罪は、公然と事実を摘示し、人の社会的評価を下げる行為をした場合に成立します(刑法230条)。SNSの投稿は、多くの人が閲覧可能で「公然性」があるため、特定の個人について「不倫をしている」「横領をした」など、事実を示して評価を傷つける内容であれば名誉毀損罪にあたる可能性があります。

したがって、根拠のないデマの拡散や事実と異なる書き込み、真実であっても人の社会的評価を低下させる投稿は、警察が動いてくれる可能性があるでしょう。

侮辱罪に該当するケース

侮辱罪は、事実を示さずに相手を侮辱する行為をした場合に成立します(刑法231条)。「バカ」「クズ」「死ね」といった人格を否定するような暴言は、典型的な侮辱罪にあたる行為です。

特に、SNSは、投稿が拡散されやすいため、一度の侮辱的発言であっても大勢の目に触れることになり、被害が拡大することから、深刻な社会問題になっています。2022年の刑法改正により侮辱罪の法定刑が引き上げられたこともあり、侮辱罪に該当する誹謗中傷であれば、警察が積極的に捜査してくれる可能性があります。

業務妨害罪に該当するケース

SNSを使った誹謗中傷により業務を妨害した場合には、偽計業務妨害罪や威力業務妨害罪が成立することがあります(刑法233条・234条)。

たとえば、飲食店に対して「食中毒が出た」「不衛生だ」など虚偽の情報をSNSで拡散した場合、来客が減少して業務に支障が生じますので、偽計業務妨害罪にあたる可能性があります。また、集中的な誹謗中傷により企業が通常の業務を行えなくなるような場合も、威力業務妨害罪として警察が動いてくれる可能性があります。

脅迫罪に該当するケース

SNSで「殺す」「家族に危害を加える」など生命や身体、自由、名誉、財産に対して害を加える旨を伝えた場合には脅迫罪(刑法222条)が成立します。脅迫は、一般人が恐怖する程度の害悪の告知があれば成立し、実際に行動に移されなくても犯罪として扱われます。

特に、繰り返し脅すようなメッセージや住所・勤務先など個人情報と結びつけて脅迫する投稿は、警察が緊急性を認めて動く可能性が高いです。

警察にSNSの誹謗中傷事件として捜査してもらうための手順

警察にSNSの誹謗中傷事件として捜査してもらうための手順

SNSでの誹謗中傷が犯罪にあたる可能性があるとき、ただ漠然と「警察に相談する」だけでは十分ではありません。警察に事件の捜査に着手してもらうためには、一定の準備と手続きが必要です。以下では、SNSの誹謗中傷で実際に警察に動いてもらうための3つのステップを説明します。

誹謗中傷が犯罪に該当する証拠を集める

まずは、誹謗中傷の投稿を証拠として残しておくことが重要です。

SNSの投稿は、削除されやすいため、被害を受けた時点で速やかにスクリーンショットにより保存しておきましょう。その際には、投稿日時やアカウント名、URLなども記録しておくようにしてください。

また、長期間にわたって継続的に誹謗中傷が行われている場合は、複数の投稿を時系列で整理し、被害の経緯を説明できる資料を作成すると警察も判断しやすくなります。

証拠が不十分だと「刑事事件としては扱えない」とされてしまうこともあるため、できるだけ多くの証拠を残しておくことが大切です。

警察のサイバー犯罪相談窓口で相談する

証拠が集まったら、警察のサイバー犯罪相談窓口を利用しましょう。各都道府県警察にはサイバー犯罪を専門に扱う部署が設置されており、インターネット上のトラブルに対応しています。

交番や地域の警察署でも相談は可能ですが、担当者によってはネット犯罪に詳しくない場合もあります。そのため、サイバー犯罪相談窓口に直接連絡するのがおすすめです。

相談の際には、保存した証拠資料を提示しながら「どのような被害を受けているのか」「生活や業務にどのような支障が出ているのか」を具体的に説明することが重要です。

被害届や告訴状の提出

警察が誹謗中傷を犯罪として捜査可能と判断すれば、被害届や告訴状の提出へと進みます。

被害届は、「被害を受けた事実を警察に伝える書類」で、提出によって事件が記録され、必要に応じて捜査が行われます。一方、告訴状は「加害者を処罰してほしい」という意思を示す正式な書類で、受理されれば警察は捜査を開始しなければなりません。

特に、名誉毀損罪や侮辱罪は「親告罪」と呼ばれ、被害者が告訴をしなければ起訴されない仕組みです。そのため、警察に確実に動いてもらうには告訴状の提出が必要になります。

告訴状は、形式や内容に不備があると受理されにくいため、弁護士に依頼して作成してもらうことも検討すべきです。

SNSの誹謗中傷を警察に相談するメリットと限界

SNSの誹謗中傷に悩んだとき、警察に相談することは被害を解決するための有力な手段のひとつです。しかし、警察に相談したからといってすべての問題が解決するわけではなく、刑事手続の特性上、限界があることも理解しておく必要があります。以下では、警察に相談するメリットと限界を説明します。

加害者を特定して刑事責任を問うことができる

警察に相談する大きなメリットは、匿名で誹謗中傷を行った加害者を特定し、刑事責任を問える可能性があることです。警察は、捜査権限を持っているため、強制捜査や任意捜査を通じて、SNS運営会社やプロバイダから発信者情報を入手し、加害者を割り出すことができます。

被害者個人では困難な特定作業も、警察の捜査によって進めてもらえるのは大きなメリットといえます。また、刑事事件として処罰されれば、再発防止や社会的制裁の効果も期待できます。

捜査の結果、不起訴になるケースも多い

警察が捜査して加害者を特定できたとしても、必ずしも起訴されるとは限りません。名誉毀損罪や侮辱罪は、比較的軽微な犯罪としての位置づけですので、検察官が「刑事罰を科すほどではない」と判断すれば、不起訴処分になるケースも少なくありません。

特に、初犯で悪質性が低いとみなされる場合や、加害者が謝罪・反省している場合には不起訴とされることが多いのが実情です。

したがって「警察に相談すれば必ず処罰される」と期待しすぎるのは危険です。

慰謝料請求は被害者自身で対応しなければならない

警察の役割はあくまで刑事事件の捜査ですので、被害者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料の請求までは行ってくれません。慰謝料や損害賠償を求めたい場合には、民事手続を自ら進める必要があります。

つまり、警察に相談すれば加害者を刑事責任に問える可能性はありますが、金銭的な補償を受けるには別途、弁護士を通じて損害賠償請求を行うのが現実的な解決策です。

SNSの誹謗中傷を警察以外にも弁護士に相談すべき理由

SNSの誹謗中傷を警察以外にも弁護士に相談すべき理由

SNSによる誹謗中傷は、警察への相談だけでは解決できない部分もあります。特に、投稿削除や慰謝料請求といった被害回復のための手続きは、警察の対応範囲外になります。そこで重要になるのが、弁護士への相談です。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。

誹謗中傷の投稿を迅速に削除できる

弁護士は、SNS運営会社やプラットフォームに対して、投稿削除の申し立てを行うことができます。被害者本人が直接削除依頼をしても対応が遅れることがありますが、弁護士が代理人として手続を行うことで、迅速かつ確実に削除されやすくなります。

また、仮処分という裁判所の手続きを活用すれば、法的強制力をもって投稿を削除させることも可能です。これにより、二次被害や情報拡散を最小限に抑えることができます。

匿名の投稿であっても投稿者を特定できる

SNSの誹謗中傷は匿名で行われるケースが多く、加害者の特定が大きなハードルとなります。しかし、弁護士であれば「発信者情報開示請求」という手続きを通じて、加害者の氏名や住所を特定することができます。

この手続きは、裁判所を経由する必要があり、専門的な知識が不可欠です。被害者本人では難しい手続きも、弁護士に依頼すればスムーズに進めることが可能です。加害者を特定できれば、その後の刑事告訴や民事訴訟にもつなげやすくなります。

損害賠償請求の手続きを任せられる

精神的苦痛を受けた場合、加害者に対して慰謝料を請求することができます。もっとも、損害賠償請求は、加害者との示談交渉や民事訴訟の手続きが必要となるため、被害者自身で進めるのは負担が大きいといえます。

弁護士に依頼すれば、示談交渉や訴訟手続きを代理して進めてもらえるため、被害者は精神的な負担を軽減できます。加えて、相場に基づいた適正な金額を請求できる点も弁護士に依頼する大きなメリットです。

SNSで誹謗中傷されたときは警察だけなくグラディアトル法律事務所にも相談を

SNSで誹謗中傷されたときは警察だけなくグラディアトル法律事務所にも相談を

SNSでの誹謗中傷は、心身に大きな負担を与える深刻な問題です。警察に相談することで刑事責任を問える可能性はありますが、被害回復まで含めた解決を目指すなら、弁護士に相談することが欠かせません。

グラディアトル法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷問題に豊富な対応実績があります。匿名での投稿者特定、削除請求、慰謝料請求まで一貫して対応できるため、依頼者の方が抱える不安を軽減し、最適な解決へ導くことが可能です。

また、弁護士が介入することで、警察に提出する告訴状の作成や証拠の整理もスムーズに進み、警察が動きやすい形でのサポートを受けることができます。「警察に相談したけれど動いてもらえなかった」という方でも、弁護士を通じて改めて対応を求めることで状況が好転することも少なくありません。

当事務所は。全国からのご相談に対応しており、初回相談は無料で受け付けています。SNSでの誹謗中傷に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。弁護士が、迅速かつ的確に解決へ向けたアドバイスを提供いたします。

まとめ

SNSでの誹謗中傷は、精神的な負担だけでなく、社会的信用や生活にも深刻な影響を及ぼします。警察に相談することで加害者を刑事責任に問える可能性はありますが、必ずしも起訴に至るとは限らず、慰謝料請求など被害回復は警察の範囲外です。

根本的な解決を目指すには、弁護士による投稿削除・発信者特定・損害賠償請求が有効です。

グラディアトル法律事務所では誹謗中傷問題に関する豊富な経験があり、初回相談は無料です。SNSでの被害に悩んでいる方は、警察だけでなく当事務所へもぜひご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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