ネット誹謗中傷の裁判費用ガイド|手数料・担保金の相場を徹底解説

ネット誹謗中傷の裁判費用ガイド|手数料・担保金の相場を徹底解説
弁護士 若林翔
2025年11月23日更新

「ネット誹謗中傷の被害に遭ったため裁判を検討しているが、どのくらい費用がかかるかわからず不安…」

「ネット誹謗中傷の裁判費用の目安を知りたい」

「裁判費用と弁護士費用は何が違うの?」

インターネット上での誹謗中傷は、被害者の名誉や社会的信用を大きく損なう深刻な問題です。実際に被害に遭ってしまった場合には、投稿削除の仮処分や発信者情報開示請求、さらには損害賠償請求といった裁判手続きにより、被害回復を図ることができます。

しかし、裁判を検討すると必ず気になるのが「どのくらいの裁判費用がかかるのか」という点です。裁判を起こすためには、収入印紙代や郵便切手代といった手数料、さらには担保金などが必要になります。また、裁判費用と弁護士費用は別物であり、それぞれの違いや負担の仕組みを理解しておくことが大切です。

本記事では、

・ネット誹謗中傷に関する裁判にかかる費用の種類と相場
・裁判費用を誰が負担するのか
・削除仮処分・発信者情報開示請求・損害賠償請求といった主要な手続ごとの費用目安

などをわかりやすく解説します。

誹謗中傷被害への法的対応を考えている方はもちろん、裁判を起こすか迷っている方も本記事を参考にして裁判費用の全体像を把握し、今後の判断に役立ててください。

ネット誹謗中傷の民事裁判にかかる裁判費用の種類

ネット誹謗中傷の民事裁判にかかる裁判費用の種類

インターネット上の誹謗中傷について民事裁判を起こす場合、まず知っておくべきなのが「裁判費用にはどのような種類があるのか」という点です。裁判を始めるためには、弁護士費用とは別に一定の手数料や担保金を納めなければなりません。以下では、代表的な3つの裁判費用を解説します。

訴訟手数料|収入印紙代

裁判所に訴訟を提起する際には、「訴訟手数料」として収入印紙を納める必要があります。収入印紙の金額は、請求する金額(訴額)によって決まります。

たとえば、損害賠償請求で100万円を請求する場合には1万円300万円であれば2万円の収入印紙が必要となります。削除仮処分や発信者情報開示請求などの場合も、申立て内容に応じて2000円の印紙代が必要となるのが一般的です。

この収入印紙代は、裁判を起こす際に必ずかかる費用であり、裁判費用の基本となる部分です。

予納郵券|郵便切手代

次に必要となるのが、「予納郵券」と呼ばれる郵便切手代です。これは、裁判所が訴訟に関する書類(訴状や決定書、呼出状など)を当事者や関係者に送付するために使われます。

金額は、裁判所や事件の内容によって異なりますが、数千円から1万円程度が目安となります。

予納郵券はあくまで郵便代ですが、裁判を進める上で欠かせないため、訴状提出時などにまとめて裁判所に納めることになります。

担保金

削除仮処分や発信者情報開示の仮処分を申し立てる場合には、「担保金」の納付を裁判所から命じられます。担保金とは、申立てが不当であった場合に相手方が被る損害を補償するための保証金のようなものです。

金額は、裁判所の判断によりますが、10万円~30万円程度を納めるケースが多いとされています。担保金は、事件が終了すれば返還されることが一般的ですが、一時的にはまとまった額を用意する必要があります。

ネット誹謗中傷の民事裁判における裁判費用と弁護士費用の違い

ネット誹謗中傷に関する裁判を検討する際、多くの方が混同しがちなのが「裁判費用」と「弁護士費用」の違いです。両者は全く性質が異なるため、正しく区別して理解しておくことが重要です。

裁判費用とは?

裁判費用とは、裁判手続を進めるために裁判所へ支払う費用を指します。具体的には、前章で解説した収入印紙代(訴訟手数料)・予納郵券(郵便切手代)・担保金などがこれにあたります。

これらは法律で定められており、支払いを免れることはできません。請求金額や申立内容によって金額が変わりますが、比較的明確に算出できるのが特徴です。

弁護士費用とは?

弁護士費用とは、弁護士に依頼した場合に発生する費用のことをいいます。弁護士費用には以下のような種類があります。

・着手金:依頼時に支払う費用。結果にかかわらず返還されません。
・報酬金:裁判に勝訴したり削除・開示が認められた場合に発生する成果報酬。
・日当・実費:弁護士が出廷する際の交通費や宿泊費などの必要経費。

弁護士費用は、法律事務所ごとに基準が異なり、裁判所に支払う裁判費用のように一律に決まっているわけではありません。

両者の違いを整理

裁判費用と弁護士費用の大きな違いは、「誰に支払うのか」と「誰が負担するのか」にあります。

・裁判費用→裁判所に支払う費用。原則として裁判で敗訴した側が負担する。

・弁護士費用→弁護士に支払う費用。原則として依頼者本人が負担する。

誹謗中傷の裁判を弁護士に依頼して進める際には、「裁判費用」+「弁護士費用」の両方が必要になることを理解しておきましょう。

ネット誹謗中傷の民事裁判における裁判費用の相場

ネット誹謗中傷の民事裁判における裁判費用の相場

ネット誹謗中傷の被害に対応するための裁判といっても、目的や手続によって必要となる費用は大きく異なります。以下では、代表的な手続である「削除仮処分の申立て」「発信者情報開示請求」「損害賠償請求訴訟」の3つに分けて、裁判費用の相場を説明します。なお、これらの一連のすべての手続きを行った場合のトータルの裁判費用の相場としては、10万円程度(+担保金20~60万円程度)となります。

誹謗中傷の投稿の削除仮処分の申立て|1万円程度(+担保金10~30万円程度)

誹謗中傷の投稿を迅速に削除するためには、裁判所に仮処分を申し立てる方法が一般的です。

・収入印紙代(申立手数料):2000円程度
・予納郵券(郵便切手代):数千円から1万円程度
・担保金:10万円~30万円程度

担保金は、裁判所の判断によって異なりますが、相手方に与える影響を考慮して設定されます。事件終了後に返還されることが多いものの、一時的にまとまった額を預ける必要があります。

発信者情報開示請求(仮処分・訴訟)|3万円程度(+担保金10~30万円程度)

誹謗中傷の投稿者を特定するには、まず発信者情報の開示を請求する必要があります。この手続きには「仮処分」と「訴訟」の2種類があります。

①仮処分の場合
・収入印紙代:2000円
・予納郵券(郵便切手代):数千円から1万円程度
・担保金:10万円~30万円程度
②訴訟の場合
・収入印紙代:1万3000円
・予納郵券(郵便切手代):数千円から1万円程度

IPアドレスや契約者情報は、任意に開示してもらえるケースはほとんどありませんので、通常は、仮処分・訴訟といった法的手続きが必要になります。

損害賠償請求訴訟|数万円程度

加害者に対して慰謝料などの損害賠償を請求する場合は、通常の民事訴訟を提起することになります。

・収入印紙代:請求金額に応じて変動
・予納郵券(郵便切手代):数千円から1万円程度

たとえば、

・100万円を請求→1万円

・200万円を請求→1万5000円

・300万円を請求→2万円

といった収入印紙代がかかります。

ネット誹謗中傷の裁判費用は誰が負担する?

裁判費用は、原則として「敗訴者が負担する」と定められています(民事訴訟法61条)。つまり、ネット誹謗中傷の裁判においても、最終的には訴えた側が勝訴すれば費用を相手方に請求できるのが基本的なルールです。ただし、勝敗がはっきり分かれるとは限らず、一部勝訴・一部敗訴といった場合には、裁判所が勝敗の割合に応じて費用を分担させることもあります。

また、仮処分で納める担保金は、手続が終了すれば返還されるのが一般的ですが、不当な申立てであったと判断されると没収される可能性もあります。

いずれにしても、裁判費用は最終的に相手に負担させられる可能性があるとしても、訴訟を提起する際にはまず原告側が立て替えて支払わなければなりません。特に、印紙代や郵便切手代、担保金などは手続きの段階で前払いが必要になるため、裁判を検討する場合にはあらかじめ必要額を準備しておくことが重要です。

ネットの誹謗中傷の弁護士費用相場

ネットの誹謗中傷の弁護士費用相場

ネット誹謗中傷の対応にかかる弁護士費用は、依頼内容によって大きく異なります。以下では、グラディアトル法律事務所の費用体系をもとに、削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求の費用を紹介します。なお、これらの一連のすべての手続きを行った場合のトータルの弁護士費用の相場としては、20~100万円程度となります。

誹謗中傷の投稿の削除請求|5~30万円程度

掲示板やSNSに書き込まれた誹謗中傷の削除を求める手続きです。

【任意請求】
・着手金:0円~
・報酬金:5万円~
【仮処分申立て】
・着手金:20万円~
・報酬金:10万円~

比較的短期間で解決できるケースが多く、まずは被害の拡大を防ぎたい方が利用しやすい手続きです。

投稿者を特定するための発信者情報開示請求|5~50万円程度

投稿者の身元を明らかにするために、サイト運営者やプロバイダに対して行う手続きです。裁判所を通じて行うケースが多く、専門的な対応が必要となります。

【任意請求】・着手金:0円~ ・報酬金:5万円~
【仮処分申立】・着手金:20万円~ ・報酬金:10万円~
【訴訟提起】・着手金:10万円~ ・報酬金:10万円~

開示請求には複数の段階があり、対象となる投稿数やプロバイダの数が増えると追加費用が発生する場合もあります。

投稿者に対する損害賠償請求|10万円~

投稿者を特定した後に、慰謝料や営業上の損害について賠償を求める手続きです。交渉による解決か、裁判による解決かによって費用が異なります。

着手金・報酬金:要見積もり

このように、削除請求は比較的低額から対応可能ですが、発信者情報開示請求や損害賠償請求は裁判を伴うため費用も高くなります。被害の程度や解決したい範囲に応じて、どの手続を選ぶか検討することが重要です。

弁護士費用は各自負担が原則だが調査費用として一部請求できる可能性がある

裁判費用とは異なり、弁護士費用は、原則として依頼者自身が負担する必要があります。

ただし、ネット誹謗中傷の事件では、発信者情報開示請求に要した弁護士費用の全部または一部を「調査費用」として請求できるほか、損害賠償請求では認容額の1割程度が弁護士費用として認められるという運用がなされています。

誹謗中傷の刑事事件化(刑事告訴など)にかかる費用

ネット上の誹謗中傷は、名誉毀損罪や侮辱罪といった刑事事件として告訴することも可能です。刑事事件化することで、加害者に刑罰が科されるだけでなく、捜査機関を通じて発信者を特定できる可能性が高まるというメリットがあります。

このような刑事告訴自体には費用はかかりません。しかし、被害者自身による対応では告訴が受理されないケースも多いため、弁護士に依頼するのが一般的です。

刑事告訴の弁護士費用も、法律事務所ごとに異なるため、以下では、グラディアトル法律事務所の弁護士費用をお示しします。

・着手金:33万円~
・報酬金:33万円~(告訴が受理された時点で報酬金発生)
・日当・実費:出廷や捜査機関との対応にかかる費用

弁護士に依頼することで費用はかかりますが、告訴状の作成から警察・検察との交渉、被害届や証拠資料の準備までを任せることができるため、告訴が受理される可能性が格段に高まります。

ネット誹謗中傷の被害に遭った方はグラディアトル法律事務所に相談を

ネット誹謗中傷の被害に遭った方はグラディアトル法律事務所に相談を

ネット上の誹謗中傷は、放置すれば被害が拡大し、名誉や社会的信用だけでなく精神的な負担も深刻化してしまいます。裁判を通じて削除や発信者特定、損害賠償請求を行うことは可能ですが、そのためには専門的な知識や経験が必要になります。個人で対応するには限界があるため、早い段階で弁護士に相談することが被害回復の近道です。

グラディアトル法律事務所では、これまで数多くのネット誹謗中傷案件を取り扱ってきた実績があり、削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求といった一連の手続を一括でサポートしています。さらに、刑事告訴のサポートにも対応しているため、民事と刑事の両面から加害者に責任を追及することが可能です。

「裁判費用や弁護士費用がどれくらいかかるのか知りたい」「そもそも自分のケースで裁判を起こすべきなのか判断に迷っている」といった段階でも、弁護士が丁寧に状況をヒアリングし、最適な解決方法を提案します。まずは当事務所までお気軽にご相談ください。

まとめ

ネット誹謗中傷の裁判では、収入印紙代や郵便切手代、担保金といった裁判費用に加え、弁護士費用も必要になります。裁判費用は、手続の内容や請求額によって変動し、最終的には敗訴者が負担するのが原則です。ただし、実際には依頼者が一時的に立て替える必要があるため、事前に全体像を把握しておくことが重要です。

グラディアトル法律事務所では、削除請求から損害賠償請求、刑事告訴まで経験豊富な弁護士が幅広くサポートしています。裁判費用や弁護士費用に不安がある方も、まずはお気軽にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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