ネット・SNSでの誹謗中傷の慰謝料請求|示談金相場や損害賠償の流れを解説

ネット・SNSでの誹謗中傷の慰謝料請求|示談金相場や損害賠償の流れを解説
弁護士 若林翔
2025年11月24日更新

「誹謗中傷の慰謝料や示談金の相場はいくらくらいなのか?」

「どのような場合に高額な損害賠償が認められるのか?」

「誹謗中傷の証拠があればすぐに請求できるのか?」

インターネットやSNSの普及により、誰もが気軽に情報を発信できるようになりました。しかしその一方で、匿名性を背景に心ない誹謗中傷やデマが拡散されるケースが後を絶ちません。根拠のない書き込みや悪質なコメントによって、名誉やプライバシーが侵害され、仕事上の信用や人間関係に深刻な影響を受けてしまう方も少なくありません。

このような誹謗中傷の被害に遭った場合、投稿者に対して慰謝料(損害賠償)を請求することが可能です。もっとも、慰謝料請求には一定の条件があり、また実際に認められる金額も状況によって大きく異なります。

本記事では、

・ネットやSNSでの誹謗中傷に対する慰謝料請求が認められる条件や典型的な類型
・誹謗中傷の慰謝料・示談金の相場
・損害賠償請求の流れや注意点

などについてわかりやすく解説します。

「どのくらいの金額を請求できるのか」「実際にどう行動すればよいのか」を把握することで、適切な対応をとり、被害回復へとつなげることができます。誹謗中傷の被害に悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

ネット・SNSの誹謗中傷で慰謝料請求が認められる条件|主な権利侵害の類型

ネット・SNSの誹謗中傷で慰謝料請求が認められる条件

インターネットやSNSでの誹謗中傷が直ちに慰謝料請求の対象となるわけではありません。法的に損害賠償が認められるためには、投稿によって被害者の権利が侵害されていることが必要です。以下では、代表的な権利侵害の類型である「名誉毀損」「侮辱」「プライバシー侵害」について説明します。

名誉毀損

名誉毀損とは、具体的な事実を摘示して社会的評価を低下させる行為を指します。刑法230条に規定されており、違法な投稿の典型例です。

たとえば、「会社の金を横領している」「不倫をしている」といった投稿が名誉毀損に該当します。ネット記事やSNS投稿、動画コメント欄などで公開されることで、不特定多数の人が閲覧できる状態になり、被害が拡大する傾向があります。

侮辱

侮辱は、事実を摘示せずに相手を抽象的に貶める行為をいいます。2022年の刑法改正によって侮辱罪の法定刑が引き上げられたことからも、社会的に問題視されている行為です。

たとえば「バカ」「無能」「気持ち悪い」など、根拠のない悪口や罵倒が典型例です。名誉毀損ほどの金額には至らないことが多いですが、それでも精神的苦痛を与えたことが認められれば、慰謝料(示談金)を請求できる可能性があります。

相場は低めでも、繰り返し投稿された場合や社会的影響が大きい場合は増額されることもあります。

プライバシー侵害

プライバシー侵害とは、本人の承諾なく私生活上の事実を公開する行為を指します。住所や電話番号、勤務先、家族構成、過去の交際関係など、他人に知られたくない情報をネット上に晒すことは重大な権利侵害です。

特に、SNSでは「晒し行為」として拡散されやすく、被害者の生活が脅かされるケースが増えています。裁判でもプライバシー侵害が認められれば、名誉毀損と同等レベルの慰謝料が認められることがあります。

ネット・SNSの誹謗中傷の慰謝料(示談金)の相場

ネットやSNSで誹謗中傷を受けた場合に慰謝料を請求できるといっても、その金額は一律ではなく、侵害された権利の内容や被害の程度によって大きく異なります。実務上は、過去の裁判例などを参考にしながら算定されることが多く、一般的な相場感を知っておくことが重要です。以下では、代表的な3つの類型ごとの慰謝料(示談金)の相場を説明します。

名誉毀損による慰謝料の相場|10~1050万円

名誉毀損の場合、慰謝料の相場は10~1050万円程度とされることが多いです。

「不倫」「横領」「犯罪歴」といった具体的事実を摘示し、社会的評価を低下させる投稿は、精神的苦痛だけでなく、仕事や生活に直接的な悪影響を及ぼす可能性があるため、誹謗中傷の事案の中では、比較的高めの金額が認められる傾向にあります。

ただし、被害が全国的に拡散した場合や社会的地位に大きな打撃を与えた場合には、100万円を超える慰謝料が認められる事例も存在します。

侮辱による慰謝料の相場|1~310万円

侮辱は、名誉毀損と比べると慰謝料額が低めに設定されるのが一般的です。相場は1~10万円程度とされ、根拠のない悪口や抽象的な中傷が対象になります。

たとえば「バカ」「無能」といった罵倒だけでは、社会的評価を著しく低下させるほどの影響はないと判断されるため、低額にとどまる傾向があります。

ただし、侮辱的な投稿が繰り返される、あるいは多くの人が閲覧可能な状態で拡散された場合には、金額が増額される可能性があります。

プライバシー侵害による慰謝料の相場|10~50万円

プライバシー侵害に該当する投稿に対しては、慰謝料の相場は10~50万円程度です。住所や勤務先、電話番号といった個人情報を晒されると、日常生活の安全や平穏が脅かされるため、裁判所も比較的重く評価します。

ストーカー被害や嫌がらせの対象になるなど、被害者の生活に実害が出た場合は、さらに高額の慰謝料が認められることもあります。

誹謗中傷の慰謝料額についての具体的事例

誹謗中傷による慰謝料の額は、被害の内容や加害者の行為態様によって大きく変わります。実際の裁判例を参照すると、同じ名誉毀損であっても10万円程度にとどまるケースもあれば、200万円が認められたケースもあります。裁判所は「発言の悪質性」「社会的地位や影響力」「拡散の範囲」「被害者が受けた精神的苦痛の程度」などを総合的に考慮して金額を判断します。

以下の表では、過去の判決をもとに、慰謝料額がどのように決定されたのかを具体的にまとめています。ご自身のケースと照らし合わせることで、請求の目安をイメージしやすくなるでしょう。

判決年月日事案考慮要素認容額(慰謝料)
東京地裁平成30年6月25日判決確定判決により削除を命じられた記事を、その後も掲載し続けたことにより名誉が毀損された事案行為態様の悪質性は比較的高いが掲載期間は比較的短期間にとどまる原告A:10万円原告
B:15万円
千葉地裁松戸支部平成21年9月11日判決県議会議員のホームページ上に市議会議員の名誉を毀損する記事が掲載されていた事案市議会議員として一定の批判を甘受しなければならない地位にあり、記事内容も信用性に乏しい20万円
大阪地裁令和元年9月12日判決Twitterにおける投稿が名誉棄損に当たるとして損害賠償を求めた事案社会的影響力のある者による投稿は拡散力・信用力が大きく、インターネット上の表現の特性として完全に削除するのは事実上不可能30万円
東京地裁平成28年7月26日判決国会議員が新聞の政治部の編集委員のFacebookの投稿記事で名誉を毀損された事案誰でも閲覧可能なFacebookの個人ページに投稿されたものであり、削除されない限り名誉侵害が継続する100万円
名古屋地裁令和2年10月1日判決ネット掲示板に歯科医院に関する名誉毀損の投稿がなされた事案歯科医院が患者に虚偽の説明をし、必要性のない高額な治療を受けるよう勧めているとの印象を与えるなど悪質な内容200万円

ネット・SNSの誹謗中傷の慰謝料が高額になるケースとは?

ネットやSNSでの誹謗中傷による慰謝料は、一般的には数万円から数十万円程度にとどまることが多いですが、場合によっては100万円を超える高額な慰謝料や損害賠償が認められることもあります。以下では、慰謝料が高額化する可能性のあるケースを説明します。

誹謗中傷が広く拡散された場合

インターネットの特徴は、情報が一度投稿されると短時間で拡散され、被害が拡大しやすい点にあります。フォロワー数の多いSNSアカウントや、閲覧者数の多い掲示板・動画配信サービスなどで誹謗中傷が拡散された場合、被害者の社会的評価への影響が大きくなるため、慰謝料が高額化する傾向があります。

被害者の社会的立場や職業に重大な影響を与えた場合

被害者が芸能人やインフルエンサー、会社経営者など社会的に注目される立場にある場合は、誹謗中傷による信用失墜の影響が甚大です。また、会社員であっても取引先や顧客との関係に支障が出た場合には、経済的損失と結びつきやすく、慰謝料額が増加する可能性があります。

虚偽の内容や悪質な内容が繰り返し投稿された場合

事実無根の虚偽の投稿や人格を否定するような悪質な内容が長期間にわたって繰り返された場合には、被害者の精神的苦痛が大きいと判断され、慰謝料が高額化します。特に、複数のSNSや掲示板にわたって執拗に書き込まれた場合は、悪質性が高いと評価されやすくなります。

被害者に実際の生活被害が生じた場合

プライバシー侵害の投稿により住所や勤務先が晒され、ストーカー被害や嫌がらせにつながった場合には、被害者の生活の安全が侵害された重大事案として扱われ、慰謝料が大きく跳ね上がる傾向があります。

加害者の対応が不誠実な場合

被害発覚後に加害者が速やかに謝罪や投稿削除を行わず、逆に挑発的な態度をとったり、さらに誹謗中傷を続けたりした場合には、その不誠実さが考慮され、慰謝料額が上乗せされるケースがあります。

ネット・SNSの誹謗中傷の慰謝料として裁判で200万円獲得した事例

グラディアトル法律事務所が実際に取り扱った事例の中に、誹謗中傷被害を受けた依頼者が200万円の慰謝料を獲得したケースがあります。依頼者は、YouTuberとして活動していた男性で、ある取引先との間でトラブルになったことをきっかけに、相手方から誹謗中傷を繰り返し受けるようになりました。投稿は、YouTubeのコメント欄にとどまらず、TwitterやInstagramといった複数のSNSにも及んでいました。

当事務所は依頼を受け、まず問題の投稿を証拠として保存しました。そのうえで刑事告訴を行ったところ、加害者は、名誉毀損罪で有罪判決を受けました。

さらに、損害賠償請求訴訟を提起し、裁判では誹謗中傷の拡散範囲や内容の悪質性、依頼者の社会的信用への影響の大きさが重視され、最終的に200万円の慰謝料で和解が成立しました。

この事例は、複数のSNSにわたって悪質な虚偽の投稿が繰り返され、社会的信用に深刻な影響を与えたこと、そして刑事告訴によって加害者が有罪判決を受けたことが決め手となり、通常の相場を超える高額な慰謝料が認められたケースです。ネットやSNSでの誹謗中傷は泣き寝入りするしかないと考えてしまう方も多いですが、証拠を確実に残し、刑事と民事の両面から適切に対応することで、被害回復につなげられる可能性があることを示しています。

ネット・SNSの誹謗中傷の加害者に対する損害賠償請求の進め方

ネット・SNSの誹謗中傷の加害者に対する損害賠償請求の進め方

誹謗中傷の被害を受けたとき、慰謝料や損害賠償を請求するためには、ただ感情的に抗議するのではなく、法的な手順を踏んで対応することが重要です。以下では、一般的な損賠償請求の進め方を説明します。

誹謗中傷の証拠を保全

最初に行うべきことは、誹謗中傷の証拠を残すことです。投稿のスクリーンショットを撮影し、投稿日時やURLを記録しておきましょう。証拠が不十分だと、加害者を特定できず、損害賠償請求が困難になる可能性がありますので、誹謗中傷の投稿が削除される前に、早めに証拠を残しておくことが大切です。

投稿者を特定するための発信者情報開示請求

匿名の投稿であっても、SNS運営会社やプロバイダに対して「発信者情報開示請求」を行うことで、IPアドレスや投稿者の氏名、住所などを特定できる場合があります。裁判所を通じた仮処分・訴訟手続が必要になることも多いため、弁護士に依頼して進めるのがおすすめです。

投稿者に対して内容証明郵便を送付

投稿者が特定できたら、内容証明郵便を送り、誹謗中傷による慰謝料の支払いを求めます。裁判に至る前の段階で加害者にプレッシャーを与えることで、任意に示談交渉に応じるケースも少なくありません。

投稿者と示談交渉

示談交渉では、被害の程度や拡散範囲、投稿内容の悪質性を根拠に慰謝料額を提示し、加害者と合意を目指します。示談で解決できれば、比較的短期間で慰謝料を得られるだけでなく、精神的負担や訴訟コストも抑えることができます。

交渉が決裂したときは損害賠償請求訴訟の提起

示談が成立しない場合には、最終的に損害賠償請求訴訟を提起することになります。裁判では、被害者が受けた精神的苦痛の大きさや社会的影響を具体的に立証することが重要です。適切に主張・立証できれば、相場を超える高額な慰謝料が認められる可能性もあります。

ネット・SNSの誹謗中傷で慰謝料請求をする際の注意点

誹謗中傷の被害に遭った場合、慰謝料などの損害賠償請求をすることで被害回復を図ることができます。しかし、実際に請求を進めるにあたっては、いくつか注意すべき点があります。手続きを誤ると、加害者の特定ができなかったり、請求権が消滅してしまう可能性もあるため、事前に把握しておくことが大切です。

ログ保存期間経過後だと投稿者の特定は困難

SNS運営会社やプロバイダが保持しているIPアドレスやアクセスログの保存期間は限られており、数か月程度で消去されてしまうこともあります。保存期間を過ぎてしまうと、加害者の特定が極めて困難になります。そのため、誹謗中傷を発見したらできるだけ早く証拠を保全し、発信者情報開示の手続に着手することが重要です。

慰謝料請求には3年の時効がある

民法上、損害賠償請求権には原則として3年の消滅時効があります。誹謗中傷の投稿者を知った(特定した)ときから3年が経過すると、慰謝料請求が認められなくなるおそれがあります。長期間放置すると権利行使ができなくなるため、早期に専門家へ相談し、必要な手続きを進めることが望まれます。

被害拡大を防ぐには投稿の削除も検討する

慰謝料請求を進めることに加えて、問題の投稿を削除することも被害回復には不可欠です。削除を求めず放置してしまうと、投稿が拡散され、被害がさらに拡大する危険があります。誹謗中傷の投稿に気付いたときは、SNS運営会社や掲示板の管理者に削除請求を行うことも併せて検討すべきです。

ネット・SNSの誹謗中傷による慰謝料請求はグラディアトル法律事務所にお任せください

ネット・SNSの誹謗中傷による慰謝料請求はグラディアトル法律事務所にお任せください

ネットやSNSでの誹謗中傷は、放置すればするほど被害が拡大し、精神的にも経済的にも大きな負担となります。しかし、被害者自身で証拠保全や加害者の特定、損害賠償請求までを進めるのは非常に困難です。このようなケースでは、専門的な知識と経験を有する弁護士のサポートが欠かせません。

グラディアトル法律事務所では、これまでに数多くの誹謗中傷案件を取り扱い、発信者情報開示請求や削除請求、慰謝料請求訴訟まで一貫して対応してきました。実際に、複数のSNSで悪質な中傷を受けた依頼者が200万円の慰謝料を獲得した事例もあり、ネット上の権利侵害に強みを持つ事務所として信頼をいただいています。

当事務所にご相談いただければ、

・迅速な証拠保全のアドバイス
・発信者特定のための手続き代行
・投稿削除の請求と拡散防止策の実施
・示談交渉や訴訟による適正な慰謝料の獲得

といった法的サポートを提供可能です。

「どのくらいの慰謝料が認められるのか知りたい」「投稿者を特定したいが方法が分からない」といった段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。被害の深刻化を防ぎ、適切な解決へと導くために、グラディアトル法律事務所が全力でサポートいたします。

まとめ

ネットやSNSでの誹謗中傷は、名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害などの権利侵害に当たり、慰謝料を請求できる場合があります。慰謝料の相場は、数万円から数十万円ですが、拡散範囲や悪質性によっては100万円を超えるケースもあります。被害を放置すれば拡大し、加害者の特定も難しくなるため、早期の対応が重要です。

グラディアトル法律事務所では、証拠保全から発信者情報開示、削除請求、慰謝料請求まで一貫してサポートしています。誹謗中傷でお悩みの方は、ぜひ当事務所へご相談ください。

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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