ネット誹謗中傷と被害届|提出できるケース・流れ・他の対処法を解説

ネット誹謗中傷と被害届|提出できるケース・流れ・他の対処法を解説

「ネット誹謗中傷の被害に遭ったため、警察に被害届の提出を検討している」

「ネット誹謗中傷で被害届を提出しても、警察が受理してくれないことがあるって本当?」

「ネット誹謗中傷で被害届の提出以外にとり得る手段を知りたい」

インターネット上での誹謗中傷は、匿名性の高さもあって深刻化しやすく、被害者の名誉や生活に大きな影響を与えます。

このような状況に直面したときの対処法の1つが警察に「被害届」を提出するという方法です。被害届を出すことで警察が事件として把握し、必要に応じて捜査が行われる可能性が高まります。しかし、実際には「どんな場合に受理してもらえるのか」「証拠が不十分でも受け取ってもらえるのか」「受理されなかったら違法なのか」といった不安や疑問を持つ方も多いでしょう。

本記事では、

・ネット誹謗中傷で被害届を出した方がよいケースや受理されにくいケース
・警察が被害届を拒否することが違法かどうか
・被害届を出すメリットと限界、提出までの手順

などをわかりやすく解説します。

ネット誹謗中傷の被害に苦しんでいる方が、適切に権利を守り、加害者に対して然るべき対応をとるための指針となる内容ですので、ぜひ最後までお読みください。

ネット誹謗中傷で被害届を出した方がよいケース

ネット誹謗中傷で被害届を出した方がよいケース

ネット誹謗中傷の被害を受けたとしても、そのすべてのケースで被害届の提出ができるわけではありません。警察への被害届の提出を検討されている方は、まずはご自身の被害内容が以下のようなケースに該当するかどうかを確認してみましょう。

名誉毀損罪・侮辱罪にあたる書き込みをされたケース

誹謗中傷の代表例は、刑法230条で規定される名誉毀損罪や、刑法231条で規定される侮辱罪にあたる投稿です。たとえば、根拠なく「詐欺をしている」「犯罪者だ」と書かれる、あるいは社会的評価を下げるような虚偽の事実を拡散される場合です。

また、侮辱罪は、事実の摘示がなくても「バカ」「無能」などの抽象的な悪口で成立する可能性があり、そのような投稿に対しては刑事責任を問える余地があります。

脅迫や業務妨害につながる書き込みを受けたケース

「殺すぞ」「家に火をつける」といった具体的な危害を加える趣旨の投稿は、脅迫罪(刑法222条)にあたります。また、虚偽の情報を拡散して業務の信用を失墜させたり、業務を妨害する内容を広める行為は、偽計業務妨害罪(刑法233条)や威力業務妨害罪(刑法234条)に該当する可能性があります。

このような投稿は、悪質性が高いものといえますので、警察が捜査に着手しやすい典型的な事例です。

社会的評価や仕事に深刻な影響を及ぼしているケース

誹謗中傷の内容が拡散され、会社の取引停止や顧客離れ、解雇・内定取消しといった重大な社会的影響が生じている場合には、警察への被害届の提出が強く推奨されます。

被害の規模が大きいと警察も重大な事件であると認識し、早期に事件の捜査に着手してくれる可能性があります。

繰り返し同じ人物から執拗に誹謗中傷を受けているケース

一度きりの誹謗中傷であれば警察も「単なるトラブル」と判断することがありますが、同一人物がアカウントを変えて何度も中傷を繰り返すような場合は、悪質性が高くなります。

継続的な被害は、被害者の生活の平穏を著しく損ない、社会的評価にも深刻な影響を及ぼすことがあります。そのため、証拠を継続的に記録・保存したうえで警察に提出すれば、刑事事件として取り扱われる可能性が高まります。

ネット誹謗中傷で被害届が受理されにくいケース

ネット上での誹謗中傷は、深刻な被害を生むことがありますが、必ずしも警察がすぐに被害届を受理するとは限りません。実務上は「証拠が弱い」「被害が軽微」と判断されると、相談扱いにとどまることも多いのが実情です。以下では、ネット誹謗中傷で被害届が受理されにくい典型的なケースを説明します。

誹謗中傷の証拠が不十分なケース

被害届を提出するには、まず「誹謗中傷があった」という事実を証明する必要があります。具体的には、投稿の画面をスクリーンショットで保存したり、URLや投稿日時を記録したりすることが重要です。

証拠が曖昧で、削除されてしまったので確認できないという状況だと、警察としても犯罪の立証が困難であるため、被害届を受理してもらえない可能性があります。

被害が軽微なケース

投稿内容が単なる一度きりの悪口や軽い揶揄である場合、警察が「刑事事件として取り上げる必要性は低い」と判断することがあります。たとえば、「バカ」「下手だ」などの軽い表現は社会的評価を大きく下げるものとは評価されにくく、刑事事件化に至らないことも多いです。

被害者としては深刻な被害かもしれませんが、法的には「刑罰に値するかどうか」が重視されるため、被害が軽微なケースでは被害届が受理されにくい傾向があります。

犯罪の成立が微妙なケース

誹謗中傷の中には、刑事事件としては扱いにくい類型もあります。たとえば、個人のプライベートな情報を暴露するプライバシー侵害や、他人の写真を無断掲載する肖像権侵害などは、刑法上の犯罪には該当しません。

このような場合、民事上の削除請求や損害賠償請求で対応すべきと判断され、被害届は受理してもらえません。

警察が被害届を受理しないのは違法?

ネット誹謗中傷の被害に遭い警察に相談しても、「これは受理できない」と言われてしまうことがあります。そこで気になるのが「警察が被害届を受理しないのは違法なのか」という点です。結論からいえば、警察が被害届を受理しないのは、違法となる可能性があります。

刑事訴訟法では、被害届の受理義務を定めた規定は存在しませんが、警察官の行動基準を示す犯罪捜査規範61条では、以下のような定めがあります。

(被害届の受理)第61条 警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。(犯罪捜査規範

また、警察庁からの通達でも「被害の届出の迅速・確実な受理」を要請しています。

このように犯罪捜査規範や通達では、警察に被害届の受理義務を課していますので、「証拠が弱いから」とか「事件になるかわからないから」などの理由で被害届の受理を拒むのは、本来であれば認められない行為です。

そのため、どうしても被害届を受理してもらえない場合は、犯罪捜査規範や通達を示しながら警察官に相談する、または弁護士に依頼して対応を求めることが有効です。

ネット誹謗中傷で被害届を出すメリットと限界

ネット誹謗中傷の被害に直面したとき、警察に被害届を出すことで状況が改善されることがあります。しかし、被害届にはメリットがある一方で限界もあるため、過度な期待を抱いてはいけません。

加害者の特定につながる可能性がある

被害届を提出すると、警察が必要に応じて捜査に着手する可能性があります。捜査の過程で投稿者のIPアドレスを照会したり、通信事業者に照会をかけたりすることで、加害者を特定できる場合があります。

匿名での誹謗中傷は特定が難しいと考えられがちですが、警察が関与することで費用をかけずに加害者を特定できる点は大きなメリットです。

警察が介入することで被害拡大を防止できる

被害届が受理されると、警察は、加害者に事情を聞いたり、注意を与えたりすることがあります。加害者にとって「警察にマークされている」という事実は大きなプレッシャーとなり、多くの場合、それ以上の書き込みを控えるようになります。

被害者側にとっても、警察が正式に関与していることで「これ以上被害が広がりにくい」という安心感を得られるのが大きな利点です。

被害届だけでは損害の回復はできない

被害届は、あくまでも「警察に犯罪事実を伝えるための手続き」であり、慰謝料や損害賠償といった金銭的な補償を受ける制度ではありません。刑事事件化され加害者が処罰されたとしても、被害者が受けた精神的・経済的損害が直接回復するわけではないのです。

そのため、実際に損害の補填を求める場合には、示談交渉や民事訴訟といった別の手段を併用する必要があります。

ネット誹謗中傷で被害届を出す場合の手順・流れ

ネット誹謗中傷で被害届を出す場合の手順・流れ

ネット上で誹謗中傷の被害を受けたとき、警察に被害届を出すには一定の準備と手順が必要です。流れを理解しておけば、スムーズに対応できるでしょう。以下では、ネット誹謗中傷で被害届を出す場合の手順と流れを説明します。

誹謗中傷の証拠を保全する

まずは証拠を残すことが何より大切です。投稿画面をスクリーンショットで保存し、URL・投稿日時・投稿者IDなども控えておきましょう。削除されてしまう前に確実に保存することが重要です。プリントアウトして紙で残す方法や、信頼性を高めるためにタイムスタンプサービスを利用するのも有効です。

警察に誹謗中傷の相談をする

証拠をそろえたら、まずは最寄りの警察署に相談しましょう。ここでは「どのような被害を受けたのか」「生活や仕事にどんな影響があるのか」を具体的に伝えることがポイントです。相談の段階で「被害届として正式に提出するべき」と判断されれば、次のステップに進むことができます。

被害届を作成し、署名押印をして提出する

被害届は、警察署で所定の書式に記入します。被害の内容や時期、相手の情報がわかればその内容も記載します。内容を確認したうえで署名押印すれば、被害届の提出が完了します。

通常は、警察官が事情聴取を行いながら作成を補助してくれますのでご安心ください。

被害届を受理後、捜査を開始

被害届が正式に受理されると、警察が事件として扱い、必要に応じて捜査が始まります。投稿者の特定のために通信事業者へ照会が行われたり、関係者への事情聴取が行われることもあります。

ただし、捜査が開始したとしてもすべてのケースで事件として立件できるわけではなく、証拠や被害の程度によっては、不起訴処分となる可能性もあります。

ネット誹謗中傷の被害者が被害届以外にとれる法的手段

ネット誹謗中傷の被害者が被害届以外にとれる法的手段

ネット誹謗中傷に対しては、被害届を提出するだけでは十分な解決につながらないことがあります。被害届は、刑事事件化を目的とした制度であり、慰謝料や損害賠償といった経済的な補償までは含まれていないからです。以下では、ネット誹謗中傷の被害者が被害届以外にとれる法的手段について説明します。

誹謗中傷の削除請求

まずは誹謗中傷の投稿を削除してもらうことが大切です。SNSや掲示板には削除依頼の窓口が設けられていますので、一定の条件を満たせば投稿の削除を求めることができます。

また、運営者が削除に応じない場合でも、裁判所に投稿の削除仮処分を申し立てれば、強制的に削除が命じられるケースもあります。

誹謗中傷の投稿を放置すると、情報の拡散により被害が拡大しますので、誹謗中傷の投稿を見つけたときは一刻も早く行動することが重要です。

投稿者を特定するための発信者情報開示請求

匿名の投稿者を特定するためには「発信者情報開示請求」という手続きが必要です。

まずは、サイトの管理者にIPアドレスなどの情報を請求し、その後、プロバイダに対して契約者情報の開示を求める流れになります。

なお、2022年のプロバイダ責任制限法改正により、従来の二段階の手続きではなく裁判所を通じて一体的に請求できる新しい手続きも導入され、従来よりも迅速に加害者を特定できるようになりました。

投稿者に対する損害賠償請求

加害者が特定できた場合には、慰謝料や営業上の損害について賠償請求を行うことが可能です。まずは内容証明郵便で請求し、それでも支払われない場合には訴訟を提起することになります。

名誉毀損や侮辱による慰謝料の相場は、数十万円程度が相場ですが、被害の重大性によっては100万円以上になるケースもあります。

ネット誹謗中傷で被害届の提出をお考えの方はグラディアトル法律事務所に相談を

ネットの誹謗中傷で被害届の提出をお考えの方はグラディアトル法律事務祖にご相談を

ネット上での誹謗中傷は、精神的な苦痛だけでなく、仕事や人間関係にまで深刻な影響を及ぼすことがあります。被害届を出そうと思っても、「どんな証拠を集めればいいのか」「警察にどう説明すれば受理されやすいのか」と悩まれる方は少なくありません。

また、被害届を提出しても必ず捜査が進むわけではなく、削除請求や損害賠償請求といった民事手続きと併用しなければ、実際の被害回復にはつながらないケースも多いのが実情です。

グラディアトル法律事務所では、ネット誹謗中傷問題に精通した弁護士が証拠の集め方から被害届の提出方法、加害者の特定、削除請求や損害賠償請求までトータルでサポートしています。警察への対応だけでなく、裁判所への仮処分申立てや発信者情報開示請求にも豊富な実績があり、スピーディーかつ確実な解決を目指すことが可能です。

「この投稿は犯罪になるのか」「警察に行く前に準備すべきことは何か」など、初期のご相談も歓迎しています。誹謗中傷を放置すれば被害が拡大してしまうおそれがありますので、少しでも不安を感じたら、早めに弁護士へご相談ください。

まとめ

ネット誹謗中傷は、放置すれば被害が拡大し、名誉や生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。被害届を提出すれば、加害者特定や被害の抑止につながる一方、損害の回復には削除請求や損害賠償請求といった別の法的手段も必要です。

どの方法を選ぶべきかは状況によって異なるため、早い段階で専門家に相談することが解決への近道となります。

グラディアトル法律事務所では、被害届の準備から民事手続きまで一貫してサポートいたしますので、誹謗中傷でお悩みの方はぜひご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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