質問箱『Peing』で誹謗中傷された際の対処方法と質問者特定のための開示請求について解説

弁護士 若林翔
2023年12月12日更新

SNS上などで見かける「質問箱」、特に「Peing(ペイング)」をご存じでしょうか。

匿名で質問できることから多くの方々に波及し、今では広く利用されているのですが、その気軽さゆえに陰湿なコメントが届いたり、誹謗中傷を受けたりするということもあるようです。

もしかしたらそういった被害に遭ってしまい、対策方法を知りたくて当記事をご覧になっている方もいるかもしれません。早速、解説してまいりたいと思います。

質問箱とは

「質問箱」とは、回答する者がSNS上などに設置すると、それを見たほかのユーザーが匿名で質問できるサービスのことです。

そこからコミュニケーションが生まれ、回答者はより多くの方々に自身のことを知ってもらえるチャンスを得られることから人気を集めています。

Instagramのストーリーズにも質問スタンプというものが存在し、著名人の方も頻繁に利用されているため、目にしたことがある方もいるかもしれません。この質問スタンプにおいては、自身が質問を公開し、それに対してフォロワーなどほかのユーザーが回答をするというものなのですが、「なにか質問のある方どうぞ」といった文言で回答欄に自身への質問を促すように使用する方も多いです。

その場合、寄せられた質問を集めてストーリーズ上で返答していくといったかたちで利用されるケースが多く、個人・企業のアカウント問わず、ファンやフォロワーと交流できる有意義な機能であるといえるでしょう。

ほかの質問箱についても、始めるのは実に簡単です。サイト上で自身の質問箱を開設し、そのURLをSNSなどに掲載して告知するだけ。そして質問がある程度集まったら、どれに答えるか選びながら回答していくという流れです。

匿名であることから質問する側は気軽に参加でき、サービスによっては、あらかじめ人を攻撃するようなワードを入力すると自動的にブロックされているようになっているため、開設する側のハードルも比較的低いのが特徴でしょう。

とはいえ注意点はもちろん存在します。残念ながらなかにはNGワードをかいくぐりながら誹謗中傷や嫌がらせの文章を送ってくるユーザーもいるかもしれないということ。また回答する際には個人情報をふくんだ情報を発信しないように注意する必要があるということ。利用の際にはそういった注意点をふまえ、なにかトラブルに巻き込まれてしまったときにどうするか具体的な対処法を決めておくとよいでしょう。

代表的な質問箱「Peing」



質問箱の中でも特に有名なのが「Peing(ペイング)」です。

X(旧Twitter)と連携して質問募集フォームを投稿でき、フォロワーなどほかのユーザーはそこから匿名で質問を送ることができます。回答をX上に公開できるのも特徴。

2017年に個人のサービスとして開発されると、あまりにも高い人気を得たため、株式会社ジラフという企業が買収。いまや「質問箱といえばPeing」といわれるほど利用者数は増加し、成長しつづけています。

匿名であることのメリットはやはりその気軽さでしょう。「ずっと気になっていた人に直接は質問できなかったけれど、匿名であれば聞きやすい」という気持ちは多かれ少なかれ、だれでも共感できるのではないでしょうか。

とはいえ、やはり質問したのがだれなのかバレないという観点から、残念ながら嫌がらせのようなコメントを送ってくるユーザーがいることも事例として存在するのは事実です。悪質なメッセージにはフィルターをかけることもできますが、それだけではフォローできないこともあるでしょう。

また、だれの目にも質問者がわからないということで、回答者がまるで他人が自身に好都合な質問を送ってきたかのように自作自演を行うケースもあるようです。こちらについては、だれかにとって迷惑行為になっていなければ特に問題はありませんが、閲覧者の目線になって情報の信憑性などを考えたときに、念頭に置いておくと参考になることもあるかもしれません。

質問箱Peingの質問者を特定するために開示請求はできない



悪質な質問が届いた場合、または誹謗中傷メッセージが届いた場合、質問者がだれなのか突き止めたいと思う方もいるでしょう。

インターネット上でのトラブルにおいて相手を特定するには、IPアドレスを開示してもらい、その情報をもとに接続されたプロバイダを特定し、そして今度はプロバイダに対して質問者の個人情報を開示するよう求めるというのが一般的な流れです。

Peingでは当然ながら相手のIPアドレスを見ることができないので、まずはプロバイダ責任制限法にしたがって、Peingの運営者に対して発信者情報開示請求を行い、相手のIPアドレスを開示してもらう必要があるのですが、Peingの質問は不特定多数に見られることが想定されておらず、発信者情報開示請求が認められません。

Peingでは送られた質問は回答者のみが確認できる仕様であるため、それが悪質なものかどうかを問わず、不特定の方が閲覧する可能性があると想定していません。

プロバイダ責任制限法5条では、発信者情報開示請求の要件について、「特定電気通信による情報の流通によって」自己の権利を侵害されたということが明らかであることと定められています。

「特定電気通信」とは、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信」といえ、つまり、インターネット上でだれもが閲覧可能な状態にある情報のことを指します。

したがって、現時点ではPeing上で不快なメッセージを送られても、プロバイダ責任制限法における発信者情報の開示請求の要件を満たさないため、開示請求が認められません。

かつては質問相手を特定できるアプリが存在したようですが、個人情報保護の観点からサービス終了となり、現在は配布されておりません。なんとかして質問者を特定する手段はないのでしょうか?

 

刑事事件に該当する場合は質問箱Peingでも特定できる可能性がある



実は、過去にはPeing上で誹謗中傷を繰り返し、複数のユーザーからブロックされた質問者のIPアドレスが開示された事例もあります。ブロック機能を利用するのは、回答者の自衛目的であると考えるのが妥当でしょう。つまり、回答者を被害から守るために質問者のIPアドレスが開示されたことがあるのです。

(参考)https://x.com/Peing_net/status/941541889131474945?s=20

また、あまりにも悪質な誹謗中傷や脅迫が続いた場合、刑事事件として取り扱ってもらうことができれば、IPアドレスが開示される可能性も高まります。

 

質問箱Peing上の誹謗中傷は罪に問える?



さてそれでは、Peing上で誹謗中傷を受けたとき、罪に問うことはできるのでしょうか。なにかしらの罪に該当するようであれば、IPアドレスの開示、ひいては質問者の特定につながる可能性は高まります。

質問箱Peing上の誹謗中傷は名誉毀損罪・侮辱罪にはあたらない可能性が高い

誹謗中傷を受けたとき、該当される可能性がある罪は主に「名誉毀損罪」と「侮辱罪」のふたつ。名誉毀損罪は、公然と事実を摘示して、相手の名誉を毀損した際に該当するもので、侮辱罪は、公然と事実を摘示せずに相手を侮辱した際に該当するものです。

たとえば、「会社のお金を横領している」「不倫をしている」「経歴詐称している」などと具体的な事実(それが真実であるかどうかを問わず)を公開された場合は名誉毀損、「バカ」「キモイ」といった具体性の欠ける内容を公開された場合は侮辱に当てはまるといえます。

しかし、Peing上で同様に「会社のお金を横領している」あるいは「バカ」とメッセージが送られても罪に問えない可能性が高いです。

それは「公然」という要件が成立しにくいためです。先述のプロバイダ責任制限法における発信者情報の開示請求の要件を満たないように、名誉毀損罪も侮辱罪も同様に、不特定多数の閲覧できる場ではないために成立しにくいのです。

とはいえ、あまりにも悪質であったり、繰り返し行われたりすることで、精神的に疲弊し通院することになるといったケースにおいては、違法行為に基づく損害賠償請求が認められるかもしれません。

まずはどういった内容の誹謗中傷がどのくらいの頻度で送られているのかがわかるようにスクリーンショットなどをとっておき、弁護士に相談してみましょう。弁護士が代理に立つことで、相手への心理的プレッシャーにもつながりそうです。

質問箱Peing上の誹謗中傷が罪に問えるケース

また、名誉毀損罪や侮辱罪は成立しなくても、ほかの罪に問える可能性も考えられます。たとえば自身や家族など身近な人に対する殺人予告をされたり、「家を燃やす」などといったメッセージが送られたりした場合は、「脅迫罪」に該当するでしょう。

脅迫罪は、相手の生命、身体、自由、名誉、または財産に対して害をくわえることを告知して脅迫した場合に問われる罪。告知を行った時点で当てはまるため、実際にそういった行動を起こされなくても訴えることができるのがポイントです。

 

質問箱Peing上で誹謗中傷された際の対策



ここからは、Peing上で誹謗中傷を受けたときに、すべき対策についてお伝えしていきます。なお、個人で相手を特定したい場合は、たとえば質問内容から探るといった方法が考えられるでしょう。

被害を受けた方からすると、さらにショックが大きい話ではありますが、実はネット上で誹謗中傷を行う相手は身近な存在であるというケースもしばしばあるのです。そのため、質問にふくまれる内容を知っているのはだれか、特徴的な言い回しや語尾であれば、普段からそういった発言をする人は周りにいなかったか、といった点に注目して考えてみてもいいかもしれません。

また有料オプションではありますが、Peingには特定の相手にDMを送ることもできます。相手から返信が来るかどうかはわかりませんが、なにかしらやりとりが生まれたら、そこで質問者を推測したり追及したりすることができる可能性はあるでしょう。

とはいえ、悪質なメッセージに傷ついたあとに、その相手を自分自身で問いつめるなんて、なかなか荷が重いです。むやみに行動を起こして余計に傷ついてしまうことのないよう、これから提案する方法で対応してみてはいかがでしょうか。

誹謗中傷を行う相手をブロックする(IPアドレス単位でのブロック)

先ほど軽く触れましたが、Peingには実はブロック機能があります。一度設定すると、その相手からはメッセージが届かなくなるので、「また同じ人から誹謗中傷メッセージが送られているかもしれない」とおびえることなく安心して利用できるでしょう。

ただし、Peingのブロック機能はIPアドレスが対象。IPアドレスとはネットワーク上の機器を識別するために割り振られたアドレスのことで、インターネット上の住所のようなもの。つまり特定のユーザーやアカウントではなく、特定のIPアドレスを制限することになるので、もし相手がIPアドレスを変更して再度質問を送ってきた場合は、再び届くようになってしまいます。

本人がブロックされたことに気づかなくても、プロバイダの契約内容によっては自動でIPアドレスが変更されることもあり、そうなるとPeingのブロック機能はリスク回避として万全とはいいきれません。

たしかにアカウント単位でブロックする場合、質問者はその場ですぐに新しいアカウントを作成して再度メッセージを送ることができるので、IPアドレス単位でブロックする以上にいたちごっこのようなことになりかねないことを考えると、多少は効果が期待できるかもしれませんが、100%の対策とはいいにくいでしょう。

また、その質問者の家族などほかのユーザーも同じIPアドレスを利用している場合は、同時にその人からのメッセージもブロックすることになります。しかも一度設定すると解除ができないので、注意が必要です。

とはいえ、誹謗中傷に悩んでいるのであれば、簡単に対処できる方法なので、まずは取り入れてみてもよいでしょう。先述のとおり、過去には複数人からブロックされたユーザーのIPアドレスが開示されるという事例もあるため、誹謗中傷を受けた際に最初に行う対策として適切といえるかもしれません。

もしIPアドレスが開示されれば、学校や会社から質問を送っていた場合、IPアドレスからはそういった組織を特定することが可能です。また、自宅やスマホから送っていた場合も、県や市といったある程度の居住エリアまでは特定することができるので、質問者としても誹謗中傷を行うことはリスキーな行為だといえます。

なお、ブロックする方法は以下のとおり。

  • Peingの受信箱を開き、該当するメッセージの右下にある「ブロック」をタップ
  • 表示される「一度ブロックしたIPアドレスは解除できない」といった内容のポップアップメッセージを確認し「OK」をタップしたら完了

このとき相手に通知が届くことはありませんが、再度その質問者がメッセージを送ろうとすると「ブロックされています」といった文言が表示されます。

質問箱Peingに対して該当アカウントの利用停止や任意での個人情報開示請求を求める

Peingでは回答者しか閲覧できない場で質問が送られてくるため、「不特定多数が閲覧できる場」が要件になっているプロバイダ責任制限法に基づいて、個人情報開示請求をすることができないわけですが、とはいえPeingのサーバーにはそのIPアドレス自体は記録されているはずです。

そのため、ブロックでは対応しきれない悪質な誹謗中傷を受けている場合は、相手へ利用停止、あるいは任意で個人情報開示請求を行うこともできないわけではありません。Peingのプライバシーポリシー第7条によると、以下のように記載されています。

お客様またはその代理人の方からの個人情報の開示・訂正・利用停止の請求があった場合には、当社は、当該請求がお客様ご本人の請求であることをしかるべき方法で確認させて頂いた上で、法令の定める合理的な範囲で速やかに対応いたします。

 引用:Peing プライバシーポリシー

また、こういった明示がなされたうえで、個人情報の開示・訂正・利用停止の請求先(メールアドレス)が掲載されているため、スムーズに連絡することが可能です。ただし、被害者本人からの請求であることを確認する「しかるべき方法」がどういった内容なのかは不明瞭なので、自身の身分を証明するもの、あるいはやはり誹謗中傷を受けたときのスクリーンショットなどを取っておいて、いつでも提出できるようにしておくとよいでしょう。

くわえて念頭に置いておきたいのは、運営側にも当然ながら守秘義務が存在するため、個人相手には容易に相手の個人情報を開示してくれない可能性もあるということ。その際は弁護士など第三者の力を借りるといった対応策を用意しておきましょう。

質問箱Peing上で悪質な誹謗中傷が繰り返される場合は弁護士に相談を



最後に、Peing上で悪質な誹謗中傷を受けた際に覚えておきたいポイントをおさらいしておきましょう。

  • Peing上で誹謗中傷を受けても相手を特定するのは難しく、また名誉毀損罪や侮辱罪に問うことはできない可能性が高い
  • 事件性の高い誹謗中傷メッセージが届いた際には脅迫罪が適用されることも考えられる
  • Peingでは質問を送ってきた相手をIPアドレス単位でブロックすることができる
  • 悪質な質問者がいれば運営側に利用停止や任意の個人情報開示を求めることができる
  • 誹謗中傷を受けたらスクリーンショットなどで証拠を取っておくと、のちのち弁護士に相談する際にも役に立つ

ブロックや運営側に利用停止、任意での個人情報開示を求めることはできるものの、完全な解決策とはいいきれないでしょう。ひとりで耐えようとすると、余計に心ない言葉に敏感になって傷ついてしまうこともあるのではないでしょうか。

そういうときは、まず弁護士に相談するという選択肢を思い出してみてください。Peingは匿名性をもったサービスである以上、やはり個人で対処できる方法は限られています。もしかしたらせっかく勇気を出して警察に相談しても、取り合ってくれなかったり、解決しなかったりすることもあるかもしれません。

インターネット上のトラブルに強い弁護士を選べば、相手の特定が可能になる、あるいは解決するまでの道筋がスムーズになるでしょう。なにより同じ目線で対処法を考える相手ができることで心強くなるのではないかと思います。ひとりで悩むのではなく、ぜひ相談してみてください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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