「Googleの口コミ削除に関する判例にはどのようなものがあるのか知りたい」
「口コミ削除が認められた判例のポイントを知りたい」
「Googleの口コミの削除請求をする際に何か注意することはある?」
Googleの口コミは、いまや多くの人が病院や飲食店、各種サービスを選ぶ際に参考にする情報源となっています。その一方で、根拠のない悪質な書き込みや、事実とは異なる口コミが投稿されてしまうと、事業者や医療機関の信用を大きく傷つけ、集客や経営に深刻な影響を与えかねません。実際に、「Google口コミの削除」を求めて裁判で争われたケースも少なくなく、口コミが名誉毀損にあたるのか、削除が認められるのかについては判例ごとに判断が分かれています。
削除が認められた判例では、虚偽の事実を摘示して社会的評価を著しく低下させたケースが多い一方で、削除が認められなかった判例では、表現が事実の範囲内とされたり、公益性が認められたりするケースも存在します。つまり、口コミ削除が可能かどうかは、口コミの内容や背景事情によって大きく左右されるのです。
本記事では、
| ・Googleの口コミ削除が認められた判例と認められなかった判例 ・Googleの口コミ削除が認められるためのポイントや注意点 |
などを詳しく解説します。
実際の裁判例を知ることで、自社が被害にあった場合にどのような主張や証拠が必要となるのかを理解でき、適切な対応につなげることができます。口コミ対応に悩んでいる経営者やクリニックの方は、ぜひ参考にしてください。
| 区分 | 事件名 | 投稿内容 | 実務ポイント |
|---|---|---|---|
| 削除が認められた | 動物病院口コミ削除 (東京地裁立川支部令和6年3月26日判決) | 「誤診が複数ある」「誤診で亡くなった」等 | 事実摘示か意見かで線引き。医療の誤診・死亡は社会的評価低下大。 |
| 水産物養殖業者口コミ削除(山口地裁令和4年5月12日判決) | 「不衛生」「従業員の態度が悪い」等(非顧客の虚偽投稿) | なりすまし・虚偽は削除されやすい。非顧客証明が決め手。 | |
| 整骨院なりすまし口コミ削除(大阪地裁令和2年9月18日判決) | 同姓同名の氏名冒用アカウントによる投稿 | 氏名冒用は人格権侵害。削除が認められやすい。 | |
| 削除が認められなかった | 歯科医院口コミ削除 (東京地裁令和6年6月27日判決) | 「予約より大幅に遅れた」「医師が離席」「放置された」等 | 患者の不満表現は「感想」と解されやすい。 |
| 自動車販売業者口コミ削除(大阪地裁岸和田支部令和4年7月1日判決) | 「社長が横柄」「保証が効かない」「最悪」等 | 「横柄」「最悪」等の主観評価は削除困難。 | |
| 学習塾口コミ削除(長野地裁松本支部令和3年11月30日判決) | 「高額寄付を強要」「払わないと手抜きすると言われる」等 | 虚偽立証できないと削除は困難。教育系は公共性重視。 |
Google口コミの削除方法については、以下の記事をご参照ください。
【2025年最新版】Google口コミの削除方法を図解で解説!削除できない場合の対策も紹介
Googleの口コミ削除が認められた判例
| ❶動物病院への口コミの削除が認められた判例 |
| ❷水産物の養殖販売業者への口コミの削除が認められた判例 |
| ❸なりすましの口コミ削除が認められた判例 |
Googleの口コミ削除が認められた判例では、口コミが虚偽の事実を摘示していたり、事業者の社会的評価を著しく低下させる内容であったケースが多いです。以下では、Googleの口コミ削除が認められた最近の判例3つを紹介します。
動物病院への口コミの削除が認められた判例|東京地裁立川支部令和6年3月26日判決
【事案の概要】
動物病院が、地図情報サービスに投稿された口コミ3件について削除と損害賠償を求めた事案です。口コミは「誤診が複数ある」「誤診で亡くなった」「他院医師に『もっと早ければ死ななかった』と言われた」といった内容(投稿1・2)と、「説明が曖昧」「費用が高い」などの内容(投稿3)でした。
【裁判所の判断】
裁判所は、投稿1・2については、「誤診」「死亡」などが具体的事実の摘示に当たり、真実性・真実相当性が立証されていないため、名誉毀損として削除を命じました。
しかし、投稿3については、「説明が曖昧」「費用が高い」等は利用者の感想や意見にとどまり、直ちに社会的評価を低下させるものではないとして削除を認めませんでした。
また、損害賠償については、プラットフォーム運営者に侵害の明白性を認識できたとはいえず、請求は棄却されました。
【実務のポイント】
・事実摘示か意見かが判断の分かれ目。事実の摘示は立証がなければ削除されやすい。
・医療機関に対する「誤診」「死亡」等の表現は社会的評価に大きく影響し、違法性が認められやすい。
・「費用が高い」「説明が曖昧」などは感想として削除は困難。
・損害賠償を求めるには、運営者が侵害を知り得た状況を具体的に示す必要がある。
水産物の養殖販売業者への口コミの削除が認められた判例|山口地裁令和4年5月12日決定
【事案の概要】
本件は、水産物(生食用エビ)の養殖販売を営む会社が、Googleマップ上に掲載された口コミによって信用を傷つけられたとして、削除を求めた事案です。問題となった投稿には「不衛生で従業員の態度も悪く、食品を扱うなら衛生面に気を配って欲しい」と記載されていました。
債権者が発信者情報を開示請求した結果、投稿者は同社の顧客ではなく、取引実績もなかったことが判明しました。さらに投稿者本人も、事実に基づかない投稿であることを認め、信用毀損について謝罪し、削除に同意しています。しかし、口コミの削除権限は運営者側にしかないため、裁判所に仮処分を申し立てました。
【裁判所の判断】
裁判所は、口コミサイトの性質上、批判的な内容や主観的な評価も想定され、事業者は一定の批判を受忍すべき立場にあるとしつつも、本件口コミは以下の理由から違法であると判断しました。
・投稿者は顧客ではなく、体験に基づかない虚偽の内容であった
・「不衛生」などの表現は生鮮食品を扱う業者の信用を大きく損なう性質を持つ
・公共性・公益目的・真実性のいずれも認められない
以上の点から、口コミは債権者の社会的評価を違法に低下させるものであり、人格権を侵害すると認定しました。そのため、運営者に対して口コミ削除を命じています。
【実務のポイント】
・顧客でない人物による「なりすまし投稿」は、虚偽性が明らかで削除が認められやすい
・発信者情報の開示によって「非顧客である事実」を立証できた点が決め手となった
・生鮮食品や医療のように社会的信用が重視される業種では、信用低下の危険性が高く、削除の必要性が認められやすい
なりすましの口コミ削除が認められた判例|大阪地裁令和2年9月18日判決
【事案の概要】
本件は、整骨院に通院していた原告と同姓同名(ただし漢字の順を逆にした表記)の氏名を用いたアカウントが、Googleの口コミに投稿した事案です。口コミは、原告本人が書いたかのように表示され、原告は氏名権の侵害を理由として運営者に削除を求め、さらに削除を怠ったことによる損害賠償(11万円)を請求しました。
【裁判所の判断】
裁判所は、まず「氏名は人格の象徴であり、他人に冒用されない権利は強く保護される」と指摘しました。口コミ投稿は、原告の通院状況やその後の経緯から見ても第三者によるなりすまし投稿と認定され、読者も原告本人が書いたと誤解し得る内容でした。そのため、原告に不利益が現実化しており、受忍限度を超える違法な氏名冒用として削除を命じました。
一方で損害賠償については、運営者が当時「なりすましである」と判断できる状況まではなかったとして、過失は認められず請求は棄却されました。
【実務のポイント】
・氏名の冒用は人格権侵害として違法性が強く、削除が認められやすい
・本人の投稿でないことを示す証拠(通院状況・迅速な法的対応など)が必要
・プラットフォーム規約(なりすまし禁止)も削除の根拠になる
・損害賠償を認めてもらうには、運営者が侵害を「知り得た」ことを具体的に立証する必要がある
Googleの口コミ削除が認められなかった判例
| ①歯科医院への口コミの削除が認められなかった判例 |
| ②自動車販売業者への口コミの削除が認められなかった判例 |
| ③学習塾への口コミの削除が認められなかった判例 |
Googleの口コミは、批判的な内容であっても「意見」や「感想」の範囲にとどまる場合には削除が認められないことがあります。裁判所は、表現の自由や消費者の知る権利を重視し、事業者は一定の批判を受忍すべき立場にあると判断する傾向があります。以下では、Googleの口コミ削除が認められなかった最近の判例3つを紹介します。
歯科医院への口コミの削除が認められなかった判例|東京地裁令和6年6月27日判決
【事案の概要】
矯正歯科を運営する医療法人が、地図サイト上の口コミ(「予約より大幅に遅れて案内」「医師がクレーマー対応で離席を繰り返し、自分は放置された」「他患者と大声で言い争い」等)により名誉等が侵害されたとして、投稿削除とともに発信者情報開示を求めた事案です。
【裁判所の判断】
裁判所は、以下のような理由から投稿削除および発信者情報開示のいずれの請求も棄却しました。
・口コミ中の各摘示(遅延・離席・言い争い)は、医療機関の業務特性(突発対応の必要性等)を踏まえると、一般閲覧者は誇張や主観を織り込んだ体験談として読むのが通常で、直ちに社会的評価を低下させるものではない。
・「大幅」「激怒」「大声」「放置」などは抽象的・主観的表現で、具体的に不適切医療を断定する内容でもない。記述全体で見ても、感想・印象の域を出ず、名誉毀損にはあたらない。
・本件サイトは肯定・否定の情報を通じて消費者の選択に資する公共的機能を有し、事業者は一定の批判を受忍すべき。
【実務のポイント】
・口コミが社会的評価を低下させる内容かどうかがまず核心。単なる感想・印象にとどまる場合は名誉毀損が否定されやすい。
・患者や顧客の不満表現も、自由な言論の範囲として保護されやすい
自動車販売業者への口コミの削除が認められなかった判例|大阪地裁岸和田支部令和4年7月1日決定
【事案の概要】
自動車販売業者が、Googleマップ上に投稿された口コミについて人格権侵害を理由に削除を申し立てた事案です。口コミには「社長が横柄でタメ口」「人が続かないからバイトを常に募集中」「保証が効かない」「誠意が全く感じられない」「最悪」などの記載がありました。業者は、これらの投稿が信用を失墜させ、社会的評価を低下させるとして削除を求めました。
【裁判所の判断】
裁判所は、以下の理由から削除を認めませんでした。
・口コミは投稿者の体験や印象をもとにした感想・評価の域にとどまっており、具体的事実の摘示が乏しい。
・一般の閲覧者は、口コミが個人的感想であることを前提に、その信憑性を取捨選択して読むと考えられるため、直ちに信用するとはいえない。
・「社長が横柄」「保証が効かない」などの表現も、具体的根拠や状況の説明を欠き、社会的評価を直ちに低下させるものとはいえない。
・仮に社会的評価の低下があったとしても、公共性・公益目的が認められる口コミであり、違法性阻却事由の存在を否定できない。
以上から、裁判所は、被保全権利の存在を疎明できないとして申立てを却下しました。
【実務のポイント】
・「横柄」「誠意がない」「最悪」といった主観的評価・感想は、基本的に削除の対象となりにくい。
・投稿に具体的事実が含まれていない場合、社会的評価の低下は認められにくい。
・削除を求める側は、口コミに記載された内容が虚偽の事実であることの疎明が必要。
・裁判所は、口コミサイトにおける表現の自由を尊重する傾向が強い。
学習塾への口コミの削除が認められなかった判例|長野地裁松本支部令和3年11月30日決定
【事案の概要】
個別指導塾を運営する事業者が、Googleマップ上に投稿された口コミについて削除を求めた事案です。
口コミには「寄付金などとにかく高額なお金を払わせられる」「払わないと手抜きすると言われる」といった内容が記載されていました。塾側は、これらの投稿が事実に反し、名誉権を侵害するとして削除を申し立てました。
【裁判所の判断】
裁判所は、以下のように判断しました。
・投稿内容は塾の社会的評価を低下させ得るものである。
・しかし、これが虚偽であることを債権者側が疎明するに足りる証拠は提出されていない。塾側の主張や自作の資料だけでは、事実がなかったとまでは認められない。
・投稿は、塾選びを検討する消費者への情報提供として公共性があるといえる。また、公益目的以外の事情もうかがえない。
このような事情から社会的評価の低下を認めた者の違法性阻却事由の存在を排除できないとして、削除の申立てを却下しました。
【実務のポイント】
・投稿が名誉を傷つける内容でも、虚偽であることの疎明が不可欠。
・事業者が自ら作成した資料や一方的な主張のみでは、裁判所は虚偽と認めにくい。
・教育サービスや学習塾の口コミは、公共性・公益性が強く考慮されやすい。
・削除請求を検討する際は、証拠保全や客観的資料の確保が重要になる。
判例を踏まえたGoogleの口コミ削除が認められるためのポイント

Googleの口コミ削除を裁判所に認めてもらうためには、多くの場合「名誉毀損」が成立するかどうかが大きな判断基準となります。判例を見ると、以下の3つの要素を満たすことが、削除を命じるかどうかの分かれ目になっていることがわかります。
口コミにより社会的評価が低下したこと
名誉毀損の前提として、口コミの内容が事業者や医療機関の「社会的評価」を低下させる性質を持っていることが必要です。
たとえば、動物病院の事例(東京地裁立川支部令和6年3月26日判決)では「誤診で死亡した」との記載が社会的評価を著しく損なうものとされ、削除が認められました。一方で「説明が曖昧」「費用が高い」といった表現は、単なる意見・感想にすぎないとして削除は否定されています。
つまり、口コミが単なる不満や印象の表明にとどまるのか、それとも具体的事実を摘示して社会的信用を失墜させるのかが大きな分岐点となります。
口コミで摘示する事実が真実に反すること
社会的評価を低下させる内容であっても、その内容が「真実」であれば違法性は否定されます。そのため、削除を求める事業者側は、口コミの記載が虚偽であることを疎明する必要があります。
水産物業者の事例(山口地裁令和4年5月12日決定)では、投稿者が顧客ですらなく、実際の体験に基づかない虚偽投稿であることが判明したため削除が認められました。逆に、学習塾の事例(長野地裁松本支部令和3年11月30日決定)では、投稿内容が虚偽だと裏付ける証拠が不足していたため、削除は認められませんでした。
このように、虚偽性の立証ができるかどうかが重要なカギとなります。
口コミで適示する事実が公共の利害に関する事実にあたらず、専ら公益を図る目的ではないこと
口コミの内容が公共の利害に関わり、公益を図る目的で投稿されたものである場合、名誉毀損であっても違法性が阻却されることがあります。
裁判所は、一般的に、口コミサイトの性質上、消費者がサービス選択のために肯定・否定両面の情報を得る必要性を重視しています。そのため、内容が多少厳しい評価であっても、公共性や公益目的が認められる限り、削除は難しくなります。
ただし、動物病院の「誤診」や水産業者への「不衛生」といった投稿のように、公共性を装っていても虚偽である場合や、公益目的とは言えない場合には削除が認められやすいといえます。
Googleの口コミの削除請求をする際の注意点

Googleの口コミに対して法的な削除請求を検討する場合、すべての投稿が削除の対象となるわけではありません。判例の動向から見ても、削除が認められるためには一定の要件を満たす必要であり、手続を進める上ではいくつかの注意点があります。以下では、口コミ削除を検討する際に押さえておくべきポイントを説明します。
すべての口コミが削除の対象になるわけではない
裁判所は、口コミサイトの性質上「意見・感想」の投稿を尊重する傾向にあります。そのため、たとえ事業者にとって不利益な記載であっても、表現が体験に基づく感想や意見の範囲にとどまる場合、削除は認められにくいです。
例として、「費用が高い」「説明が曖昧」「最悪だった」といった表現は、社会的評価を直ちに低下させるものではなく、削除は困難とされます。
逆に、「誤診で死亡した」「不衛生で食中毒になった」といった具体的事実を摘示する虚偽の口コミは、削除の対象となりやすいといえます。
被害を最小限に抑えるには迅速な対応が重要
口コミは、インターネット上で不特定多数に閲覧されるため、放置すると短期間で信用低下や顧客離れが進行しかねません。さらに、内容が拡散すれば事業への影響は一層大きくなります。
そのため、問題のある口コミを発見した場合には、できるだけ早く削除申請や弁護士への相談を行うことが大切です。
投稿者を特定するなら削除前に証拠の保全をする
削除請求とあわせて、投稿者を特定するための発信者情報開示請求を検討するケースもあります。この場合、削除だけを先にしてしまうと、証拠が失われて開示請求が難しくなることがあります。
そのため、問題の口コミをスクリーンショットで保存し、URL・投稿日時などを記録することが重要です。
Googleの口コミ削除はグラディアトル法律事務所にお任せください
Googleの口コミ削除は、単に「不快だから消したい」という理由だけでは認められません。判例でも明らかなように、社会的評価の低下や虚偽性、公益性の有無といった複雑な要素を踏まえた的確な主張が求められます。それは専門的な知識と経験を持つ弁護士に相談することが不可欠です。
グラディアトル法律事務所は、これまで動物病院、歯科医院、飲食業、教育サービスなど幅広い業種で、口コミ削除に関する相談や解決を数多く手掛けてきました。豊富な実績をもとに、最新の裁判例を分析しながら、削除が認められやすい論点を押さえた戦略的な対応を行うことができます。さらに、単に口コミを削除するだけではなく、発信者の特定や損害賠償請求といった次のステップまで見据えた総合的なサポートも可能です。
ネット上の誹謗中傷は拡散が早く、放置すれば信用失墜の被害は雪だるま式に大きくなります。当事務所では、こうした被害を最小限に抑えるため、スピーディーな対応を重視しています。
口コミによる被害に悩んでいる方は、ぜひ一度グラディアトル法律事務所へご相談ください。
まとめ

Googleの口コミ削除は、投稿内容が虚偽かつ社会的評価を低下させるものである場合に認められる傾向があります。一方で、意見や感想の範囲にとどまる口コミは削除が難しく、証拠や主張の仕方次第で結果が大きく変わります。被害を最小限に抑えるには、早期に専門的な対応をとることが重要です。
グラディアトル法律事務所は、豊富な実績と最新判例に基づく戦略的な対応で、依頼者の信用と事業を守ります。口コミ被害にお悩みの方は、ぜひご相談ください。
