Facebookの誹謗中傷コメント・投稿の削除方法と自分でできる対策方法

弁護士 若林翔
2023年09月03日更新

Metaが運営するFacebookは、実名を登録して利用するSNSです。

顔写真や出身校、勤め先などの個人情報が公開されているため、匿名アカウントで利用する他のSNSと比べ、誹謗中傷などの無責任な書き込みは少ない傾向にあります。しかし、トラブルになった際は、家族や知り合いなど広く周囲に知れ渡ってしまうといったリスクがあります。

そこでこの記事では、Facebookと誹謗中傷の関係性を整理したうえで、削除対象になりうるアカウント・コンテンツや自分でできる誹謗中傷対策について解説します。すでにFacebookを通じた誹謗中傷に悩まされている方にも、今後のために対策しておきたい方にも参考になる内容です。

なお、Facebookでの誹謗中傷の被害がご自身の手に負えないような場合には、すぐに弁護士にご相談ください。

 

Facebookでの誹謗中傷トラブルの特徴

Facebookは、より私生活との距離が近いSNSです。ビジネスにおいて活用されるケースも多いことから、他のSNSとは誹謗中傷トラブルの性質が異なります。

原則、実名登録なので他のSNSと比較して誹謗中傷は多くない

先述のとおり、Facebookは実名登録が求められるSNSです。機能的には偽名で登録することも可能ですが、Facebookの規約において実名以外の登録は認められていません。

Facebookというコミュニティの利用者は誰もが、ふだん使っている名前を使用することになっています。そのため、つながっている相手が誰であるかを常に知ることができます。

引用:Facebookで使用できる名前 | Facebookヘルプセンター

実名で登録するということは、そのSNS上での行動が実生活と密接に関わってくるということです。Twitter(X)やTikTokなど、匿名で利用できる他のSNSよりも発信に責任がともなうため、誹謗中傷をはじめとした迷惑行為は少ない傾向にあります。

実名だからこそトラブルは深刻化しやすい

Facebookでは実名が公開されているため、誹謗中傷を受けた場合、悪評と実名が一緒に拡散されてしまう恐れがあります。家族や知り合い、職場に届けばすぐに誰のことか知られてしまうため、実生活に悪影響を及ぼす可能性は低くないでしょう。

また、加害者と被害者が互いに相手の実名を知っている状況も、さらなるトラブルにつながる可能性をはらんでいます。

Facebookは誹謗中傷が起こりにくい一方で、一度トラブルに発展すると深刻化しやすいといえるでしょう。

ビジネス利用している場合、会社の信用問題につながる可能性も

Facebookでは、「Facebookページ」という企業用アカウントを作成することができます。複数人で管理することができ、会社の情報をまとめたり、ニュースを発信したりすることによって、ユーザーの流入経路になりえます。

その一方で、Facebookページも個人アカウントと同様、誹謗中傷の標的にされる可能性があります。企業アカウントが誹謗中傷を受けた場合、アカウントを訪れたユーザーに悪印象を与えてしまいますし、他のSNSや掲示板で拡散されてしまうかもしれません。内容が事実無根であったとしても、会社の信用が低下してしまう恐れがあります。

 

Facebookで削除対象となるアカウント・コンテンツ

Facebookにおいて、削除対象になりうるアカウント・コンテンツは、「コミュニティ規定」や「利用規約」によって定められています。これらの規定に違反していた場合、当該アカウント・コンテンツは制限や削除を受ける可能性があります。

被害者になってしまった場合に役立つのはもちろん、加害者にならないためにも、あらかじめ知っておくことが大切です。

Facebookのコミュニティ規定

コミュニティ規定には、Facebookにおいて禁止されている行為が記載されています。以下のような内容が含まれるアカウントやコンテンツは、コミュニティ規定違反として削除対象になる可能性があります。

・ヘイトスピーチ

・暴力や過激な描写を含むコンテンツ

・成人のヌードと性的行為

・性的行為の勧誘

・知的財産権を侵害するコンテンツ

・いじめと嫌がらせ

・スパム

・児童のヌード、性的搾取、虐待

・自殺または自傷行為を助長するようなコンテンツ

・深刻な暴力行為を助長するようなコンテンツ

・犯罪行為や有害行為を助長するようなコンテンツ

・規制品に関するコンテンツ

・不正行為および詐欺

・プライバシーを侵害するコンテンツ

・偽アカウント、偽情報

・セキュリティの侵害

参照:Facebookコミュニティ規定|Meta

それぞれの項目について説明されているので、よりくわしく知りたい方は公式ページをご確認ください。

Facebookの利用規約

利用規約の「Facebookとコミュニティに対する利用者の誓約」にも、削除対象になりうるアカウント・コンテンツについて記載されています。

Facebookを利用できない方としては、以下のような例が挙げられています。

・13歳未満の方

・性犯罪をおかした方

・規約、コミュニティ規定、またはFacebookの利用に適用されるその他の規約やポリシーに違反したことを理由に、過去にアカウントを停止されたことがある方

・適用法に基づき、弊社の製品、サービス、またはソフトウェアの受領を禁止されている方

参照:利用規約|Facebook

さらに、「Meta製品で共有可能なコンテンツおよび認められる行為」にも、禁止されているコンテンツ・行為についての記載があります。まとめると、主に以下のような項目が挙げられています。

・利用規約、コミュニティ規定をはじめとした規約やポリシーに違反するもの

・違法、誤解を招く、差別的、不正に該当するもの(あるいはそのような態様で弊社製品を利用する他の者を補助するもの)

・利用者が所有権を持たない、またはシェアするために必要な権利を持たないもの

・知的財産権など他の者の権利を侵害するもの

・ウイルスもしくは悪意のあるコードをアップロードすること

・スパムを送信するためにサービスを利用すること

・弊社のサービス、システム、もしくは製品の正常な機能、保全、運用、もしくは表示を停止させる、妨げる、損なう、もしくはこれらに過負荷をかける可能性のある行為

・事前の許可なく、自動化手段を用いて弊社製品のデータにアクセスしたり、データを取得したりすること

・アクセス許可のないデータへのアクセスを試みること

・弊社製品のユーザーネームやパスワードを代理使用、リクエスト、または収集すること

・アクセストークンを不正使用すること

・弊社または弊社サービスから取得されたデータを販売、ライセンス供与、または購入すること(プラットフォーム利用規約に定めのある場合はこの限りではない)

・報告、警告、申し立て、または異議申し立てのための手段を濫用すること

参照:利用規約|Facebook

また利用規約内では、規約やポリシーへの深刻な違反があったと判断した場合や、法的な理由によって必要とされる場合、アカウントが長期間アクティブでないといった場合に、アカウントの停止や削除といった措置が下されることも明言されています。

自分でできるFacebookの誹謗中傷対策

Facebookの誹謗中傷に対しては、まずできるところから対策を講じましょう。問題が深刻化するのを防ぐために、スピーディーな対応が求められます。

自分でもできるFacebookの誹謗中傷対策には、以下のようなものがあります。

・誹謗中傷されたらまずは証拠を保管する

・公開範囲の設定を見直す

・アカウントをブロックする

・投稿を削除するように直接依頼する

1つずつ解説していきます。

誹謗中傷されたらまずは証拠を保管する

Facebookを含めたSNSは、自分の投稿であれば簡単に削除できてしまいます。「誹謗中傷が削除されたからOK」という方なら問題ありませんが、法的責任の追及や損害賠償請求を検討するような場合、以下のような方法で誹謗中傷の証拠を保管しておく必要があります。

・誹謗中傷となる投稿のスクリーンショット

・Web版のFacebookで該当ページを印刷(もしくはPDF化)

注意点として、誹謗中傷の事実を証拠に基づき主張するためには、投稿された日時と場所、内容を説明しなければいけません。つまり、Facebookで誹謗中傷が行われた場合、以下の情報を保全しておく必要があります。

・投稿のURL

・投稿の内容

・投稿の日時

・証拠を保管した日時

PC画面のスクリーンショットなら、一般的にWindowsは画面右下、Macは画面右上に年月日と時刻が表示され、誹謗中傷の投稿URLも映っており、上記項目をすべて記録することが可能です。

スマホアプリのスクリーンショットだけでは、証拠として不十分とみなされることもあります。できるだけPC画面のスクリーンショットで保存することをおすすめします。

公開範囲の設定を見直す

Facebookでは、自分の投稿に誹謗中傷が何件もコメントされたり、写真が第三者に悪用されたりする場合があります。そのような被害にあわないためにも、公開範囲を見直すことが自衛手段として効果的です。具体的な手順は以下のとおり。

1.画面右上にあるプロフィール写真を選択
2.編集する投稿までスクロール
3.「プライバシー設定選択ツール」を選択
4.公開範囲の設定

公開範囲を「友達」に設定すれば、知らない人に投稿をチェックされる心配がありません。当然、自分の投稿に友達以外がコメントできなくなりますし、写真の悪用リスクも大幅に下げられます。

アカウントをブロックする

誹謗中傷の程度によっては、アカウントをブロックするのも選択肢の1つです。

Facebookにはブロック機能が搭載されており、プロフィールへのタグ付け、投稿の閲覧などを防ぐことができます。

ブロック方法に関しては、誹謗中傷を行っているアカウントのプロフィールに移動し、カバー写真の右下にある「…」のメニューから「ブロックする」を選択するだけです。ブロックしたことが相手に伝わる心配はありません。

ただ、ブロック機能は投稿を見えないようにするだけなので、誹謗中傷自体を削除することはできません。放置してもさほど気にならない誹謗中傷には効果的ですが、「悪質なデマを流されている」「不当に名誉が傷つけられている」など、実害につながるような投稿に対しては、別の手段を講じる必要があるでしょう。

投稿を削除するように直接依頼する

Facebookには「メッセンジャー」と呼ばれる機能が搭載されており、個人間でメッセージを送りあうことができます。

ただ、誹謗中傷の投稿者に削除依頼をすることは、必ずしも得策ではありません。新たなトラブルに発展する可能性があるからです。

誹謗中傷を行うということは、その相手に対して少なからずネガティブな感情を抱えていると考えられます。「誹謗中傷を削除してほしい」とお願いしても、素直に聞きいれてくれないケースも多いでしょう。

また、投稿者に対して削除依頼をしたことで、むしろ逆上させてしまい、Facebook外のSNSで晒されたり、よりクローズドな環境で誹謗中傷が続いたりなどのトラブルを招きかねません。削除依頼に関しては投稿者ではなく、後述するFacebook運営、もしくは弁護士に相談するのがおすすめです。

「報告」に対するFacebookの対応

誹謗中傷の投稿削除をFacebookに「報告」という形で依頼できます。

ただ、誹謗中傷の削除依頼をしてもすべてが受理されるわけではありません。ここでは、「Facebookの報告」について押さえておくべきポイントを解説します。

利用規約・コミュニティ規定に違反するコンテンツは削除される

Facebookに誹謗中傷を報告した場合、コンテンツが利用規約・コミュニティ規定に違反しているかどうかがチェックされ、問題があれば削除されます。具体的な方法は以下のとおりです。

 

1.報告するコンテンツを表示
2.「投稿を報告」のリンクからFacebookに報告

ただ、当事者が不快に感じる内容でも、Facebookの利用規約・コミュニティ規定に違反してなければ、コンテンツが削除されない可能性があります。

アカウントへの報告に対しては「警告」がなされる

Facebookでは、アカウント(プロフィール)自体を「報告」することができます。誹謗中傷が繰り返されており、投稿ごとの「報告」では埒(らち)が明かないときにおすすめです。具体的な方法は以下のとおり。

 

1.報告するアカウントを表示
2.右側の「…」を選択
3.「サポートを依頼またはコンテンツを報告」を選択
4.どのコミュニティ規定に違反しているか選択肢から選ぶ

「報告」が送信されると、Facebookが該当アカウントをチェックします。違反があれば「警告」がなされ、その後も違反を繰り返す場合は、アカウント停止措置が取られます。

報告が相手にバレることはない

Facebookの「報告」が相手にバレることはありません。

問題が報告されると、Facebookはその内容を確認し、Facebookのコミュニティ規定に従っていないと判断したコンテンツに対して措置を講じます。報告したインシデントが知的財産権の侵害でない限り、報告は秘密情報として扱われ、報告されたアカウントが報告者を知ることはありません。

(引用:報告する| Facebookヘルプセンター

誹謗中傷をFacebookに削除してほしい際は、安心して「報告」してください。

Facebookの誹謗中傷を自分で解決できない場合は弁護士に相談を!

Facebookは実名制のSNSなので、他のSNSよりも誹謗中傷が起こりにくいとはいえ、特定の企業や個人に対して誹謗中傷コメントが投稿されることがないわけではありません。また、なかには実名ではない適当なアカウントを作成し、誹謗中傷を行うようなケースも起こりえます。

あまり気にならない程度の誹謗中傷であれば、投稿の公開範囲を見直したり、相手のアカウントをブロックしたり、簡単な対応で済むかもしれません。しかし、実害を招きそうな誹謗中傷の場合、Facebookに削除依頼を出すなど、本格的な対応が必要になります。

その際には、弁護士に相談をして、法的な削除請求をしてもらうのがよいでしょう。

また、それでも誹謗中傷が続く場合や、Facebookに該当の投稿やアカウントを削除してもらえない場合は、被害を最小限にするためにも早めに弁護士に相談することをおすすめします。

誹謗中傷をしてきた相手に対して刑事告訴や損害賠償請求とった法的措置をとることも考えられます。

その際、PC画面のスクリーンショットなど誹謗中傷の証拠を用意しておけば、スムーズに進むでしょう。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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