「発信者情報開示請求が棄却されるのはどのようなとき?」
「発信者情報開示請求が棄却された実際の事例を知りたい」
「発信者情報開示請求が棄却されるのを防ぐにはどうしたらいい?」
インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損の投稿者を特定するためには、「発信者情報開示請求」という手続きが必要です。しかし実際には、裁判所に申し立てても開示が認められず棄却されてしまうケースも少なくありません。
発信者情報開示請求が棄却されてしまうと、加害者を特定できないため損害賠償請求や刑事告訴といった責任追及が困難になります。実際、当事務所が対応した事案でも、ホテルのWi-Fiを経由して投稿された誹謗中傷のケースでは、ホテルまでは特定できても投稿者本人の特定までは至らず、泣き寝入りを余儀なくされる例がありました。
本記事では、
| ・発信者情報開示請求が棄却された実際の裁判例 ・発信者情報開示請求が棄却される原因やそのリスク ・棄却を避けるために取るべき対策 |
などを弁護士の視点から解説します。
インターネット上のトラブルで後悔しないために、ぜひ参考にしてください。
発信者情報開示請求が棄却された実際の裁判例
発信者情報開示請求は、権利侵害を受けた被害者にとって加害者を特定するための重要な手続きですが、必ずしも認められるわけではありません。実際には、証拠不足やログの消失などを理由に、裁判所が請求を棄却するケースが多数存在します。以下では、代表的な裁判例を紹介します。
発信者情報開示請求が棄却された裁判例一覧
| 判決日 | 事案の概要 | 判断の理由 |
|---|---|---|
| 東京地裁令和6年8月30日判決 | PTA関連の口コミ投稿が「個人情報漏洩」を示唆するとして名誉毀損を主張 | 投稿は社会的評価を下げるが、公共性・公益目的があり、重要部分は真実と認定 |
| 東京地裁令和6年8月20日判決 | パチンコ店「B」の常務とされる人物について「キャバ嬢指名NG」「無理やり」などと掲示板に投稿された事案 | 一般読者の注意では投稿対象が原告と同定できず、名誉権侵害も明白でないと判断 |
| 東京地裁令和6年8月19日判決 | 風俗店勤務の女性(源氏名X)が、掲示板投稿「NN(膣内射精)」などにより名誉を毀損されたと主張 | 投稿は必ずしも原告を対象としたものといえず、隠語の意味も一般読者に理解されるものではないと判断 |
| 東京地裁令和6年6月27日判決 | 繁華街の案内所「D」に関する掲示板に「クソ県民」「しょぼい店 たたんでまえ」などと投稿 | 表現は前提事実の摘示がない意見・論評にとどまり、社会的評価の低下までは導かれない |
| 東京地裁令和6年6月14日判決 | 医療法人Xクリニックが、Googleマップ口コミにおける「誤診」投稿につき発信者情報の開示を請求 | 投稿は診療内容・対応態度に関するもので公共性・公益目的が認められ、真実性も否定できない |
| 東京地裁令和6年3月19日判決 | 地域掲示板「B」の「アキテック」スレで複数投稿(不倫?等)。会社&代表者が請求 | 会社については対象と認識し得るが、各投稿は主語・意味が不明で名誉毀損性否定。代表者個人は同定不可。さらに一部情報は被告不保有 |
裁判例からわかること
これらの裁判例から見えてくるのは、次のようなポイントです。
| ・権利侵害が軽微と判断されれば棄却される |
| ・証拠が不十分な場合は請求自体が認められない |
| ・ログ保存期間が過ぎると物理的に発信者特定ができない |
| ・表現の自由や公益性とのバランスで棄却されることもある |
つまり、発信者情報開示請求は「申し立てれば必ず通る」ものではなく、事前の証拠収集や迅速な対応が重要であることがわかります。
関連コラム:【実績1000件超】弁護士が発信者情報開示請求の流れ・費用・成否のポイントを解説
発信者開示請求が棄却される主な原因
タイトル:発信者開示請求が棄却される主な原因
| 主な原因 | 棄却されやすい理由(裁判所の見方) | 典型例・注意点 |
|---|---|---|
| 権利侵害の立証(証拠)が不足 | 「権利侵害があったとまでは言えない」と判断される | 意見・感想の域/社会的評価が下がるほどではない/証拠の信頼性が弱い。※投稿単体ではなく前後の文脈が重要 |
| ログ保存期間の経過 | 発信者特定に必要なログが残っていない | 一般に3〜6か月程度で消去されるため、放置すると棄却リスク。※早期の証拠保存と迅速な手続きが重要 |
| 表現の自由・公益性が優先される | 違法性がない(または低い)と判断される | 消費者の体験談・評価の範囲/公益性のある論評/事実に基づく正当な情報提供 → 「表現の自由を不当に制約」と見られやすい |
発信者情報開示請求が認められるかどうかは、裁判所の判断に大きく左右されます。実際に棄却される場合、その背景にはいくつか共通する原因があります。以下では、発信者情報開示請求が棄却される代表的な原因を紹介します。
権利侵害があったことを立証する証拠が不足している
発信者情報開示請求が認められるためには、投稿によって申立人の権利が侵害されたことを証明しなければなりません。ところが、次のようなケースでは「権利侵害があったとまでは言えない」と判断され、棄却されることがあります。
| ・投稿が単なる意見・感想の域を出ない ・社会的評価を低下させるほどの内容ではない ・提出された証拠が不十分で信頼性が乏しい |
たとえば、SNSで「対応が悪かった」「もう利用しない」といったコメントが投稿された場合、それだけでは名誉毀損や信用毀損とまでは評価されないことが少なくありません。
【弁護士視点のポイント】
当事務所の経験上、問題の投稿だけを切り取っただけの証拠では裁判所に伝わりにくい傾向があります。誹謗中傷などの権利侵害は、一連の投稿全体を見て判断されますので、前後の文脈がわかるように、証拠を残しておくことが大切です。
ログの保存期間が経過している
発信者を特定するには、プロバイダに残されているアクセスログが必要です。しかし、ログには保存期間があり、一般的には3か月〜6か月程度で消去されてしまいます。
そのため、誹謗中傷の投稿を見つけてから長期間放置してしまうと、開示請求をしても「ログが残っていない」という理由で棄却されてしまいます。
【弁護士視点のポイント】
「しばらく様子を見てから請求すればよい」と考えてしまう方は多いですが、その間にログが消えてしまうことが非常に多いのが実情です。誹謗中傷の投稿を見つけたら、早期の証拠保存と速やかな法的手続きが何より大切です。
関連コラム:プロバイダのログ保存期間は3~6か月程度|削除前にとるべき対応を解説
投稿内容が表現の自由や公益性に配慮されたと判断される場合
裁判所は、表現の自由や公益性とのバランスも考慮します。たとえ申立人が不快に感じたとしても、以下のような場合は「違法性がない」と判断され、棄却されやすい傾向にあります。
| ・消費者によるサービスの評価や体験談の範囲にとどまる投稿 ・公益性のある意見・論評(例:公共性のある事件に関する批判的意見) ・事実に基づいた正当な情報提供 |
この場合、投稿者を特定するための請求は「表現の自由を不当に制約する」として認められないことがあります。
フリーWi-Fiなどを利用している場合、棄却はされないが発信者の特定は困難
発信者情報開示請求が棄却される典型例は「証拠不足」や「ログ消失」ですが、棄却まではされなくても、技術的な理由から発信者の特定が困難になるケースもあります。その代表がフリーWi-FiやVPNを経由した投稿です。
フリーWi-Fi経由の投稿の限界
カフェやホテルなどのフリーWi-Fiは、同じIPアドレスを複数の利用者が共有しています。そのため、開示請求で判明するのは「どの施設の回線を使ったか」までであり、実際に書き込みをした個人の特定は難しいのが実情です。
主な理由は以下のとおりです。
| ・同時接続者が多く、利用者の切り分けができない |
| ・利用者の個人情報と接続ログが紐づいていない場合が多い |
| ・仮に宿泊者名簿が残っていても、宿泊者=投稿者とは限らない |
当事務所で扱った事例:ホテルWi-Fiのケース
グラディアトル法律事務所でも、ホテルのWi-Fiを利用して誹謗中傷が行われた案件を担当しました。
| ・開示請求の結果、ホテルの特定までは成功 |
| ・しかし宿泊者の中から実際の投稿者を特定することはできず、訴訟や損害賠償に進めなかった |
このように、開示請求が棄却されるわけではないものの、実質的に加害者追及が不可能になるケースがあります。
VPNや海外サーバー経由も同様
匿名性を高めるためにVPNや海外サーバーを利用するケースも増えています。これらも同様に、開示請求で分かるのは「VPN業者」や「海外の通信事業者」までであり、個人の特定に至らないことがほとんどです。
発信者情報開示請求が棄却された場合のリスク
発信者情報開示請求が認められなかった場合、被害者にはさまざまな不利益が生じます。特に、誹謗中傷やプライバシー侵害の被害を受けている方にとっては、泣き寝入りせざるを得ない事態に直結しかねません。以下では、棄却によって生じる主なリスクを説明します。
誹謗中傷などをした投稿者を特定できなくなる
開示請求の最大の目的は「匿名の投稿者を特定すること」です。しかし、棄却されてしまえば、加害者が誰なのかを突き止める道は閉ざされます。
| ・誰が書き込んだのか分からないまま、被害者だけが苦しむ |
| ・同じ人物が再び投稿しても追跡できない |
| ・投稿者が「どうせ特定されない」と考えて、誹謗中傷を繰り返すリスクもある |
このように、棄却によって被害が拡大・長期化する可能性があります。
損害賠償請求や刑事告訴などの責任追及ができなくなる
発信者を特定できなければ、その後の法的手続きにも進むことができません。たとえば、名誉毀損や信用毀損の被害を受けていても、相手が誰か分からなければ損害賠償請求をすることは不可能です。さらに、刑事事件として告訴したい場合でも、加害者が特定できなければ、警察の捜査は大きく制約を受け、立件自体が難しくなってしまいます。
このように、開示請求が棄却されると、被害者は権利侵害を受けたまま、加害者に対して何の法的措置も取れないという厳しい状況に置かれることになります。
発信者情報開示請求が棄却されるのを防ぐための対策
発信者情報開示請求は、準備不足や対応の遅れがあると棄却されやすい手続きです。しかし、あらかじめ正しい対策を取っておけば、棄却のリスクを大きく下げることができます。以下では、被害者が意識すべき3つのポイントを説明します。

権利侵害が生じたことを立証する証拠を集める
裁判所に認めてもらうためには、投稿が権利侵害にあたることを証拠によって示さなければなりません。
| ・投稿のスクリーンショットだけでなく、URL・投稿日時・アカウントIDを保存する |
| ・投稿が削除されても証明できるよう、キャッシュやウェブ魚拓も残す |
| ・名誉毀損や信用毀損を裏付けるため、業績への影響や第三者の反応なども補足する |
実務的には「どの程度被害が発生しているのか」を明確に示すことが、裁判所の心証を左右します。当事務所でも、証拠の収集段階からサポートすることで棄却を回避できたケースが少なくありません。
ログ保存期間経過前に迅速に開示請求の手続きを進める
発信者の特定には通信事業者の接続ログが不可欠ですが、その保存期間は、3〜6か月程度と非常に短いのが実情です。時間が経過すればするほど、ログが消失して棄却される可能性が高まります。
・投稿を発見したら、まずは証拠保存を最優先する
・できるだけ早く弁護士に相談し、裁判所への仮処分や訴訟提起に移る
「様子を見る」「相手が自発的に削除するかも」と待ってしまうことは、棄却の大きな原因になります。迅速な対応こそが、棄却を防ぐための最重要ポイントです。
ネットトラブルに強い弁護士に相談する
発信者情報開示請求は、一般的な民事事件とは異なり、インターネットの仕組みや通信事業者の運用、最新の裁判例にまで精通していなければ対応が難しい分野です。経験の浅い弁護士に依頼してしまうと、証拠の提出方法や申立書の書きぶりが不十分となり、裁判所から棄却されてしまうリスクが高まります。
一方で、ネットトラブルに特化した弁護士であれば、被害者が日常的に見落としがちな証拠の収集方法を丁寧に指導し、ログ保存期間を考慮したスピーディーな進行計画を立てることができます。さらに、単に開示請求を成功させるだけではなく、その後の損害賠償請求や削除請求まで一貫して見通した戦略を立てられるため、被害者にとっては大きな安心につながります。
つまり、開示請求を「成功させるかどうか」は、依頼する弁護士の専門性に大きく左右されるのです。
発信者情報開示請求で棄却を回避するならグラディアトル法律事務所に相談を

発信者情報開示請求は、ほんの些細な不備や立証不足でも棄却につながる難易度の高い手続きです。投稿が権利侵害にあたることを丁寧に主張し、裁判所に納得してもらえるだけの証拠をそろえる必要があります。しかし、一般の方が独力でこれを行うのは困難であり、経験の浅い弁護士であっても棄却リスクを十分に回避できないケースがあります。
グラディアトル法律事務所は、これまで多数の発信者情報開示請求を成功させてきた実績を持ちます。ホテルのWi-Fi経由といった難しい案件でも施設特定まで到達した事例や証拠不足で棄却が危ぶまれた案件において追加資料を補強し認められた事例など、豊富なノウハウを有しています。
また、接続ログの保存期間が短いことを踏まえ、依頼直後から証拠保全や申立て準備に着手する体制を整えているため、スピーディーに対応可能です。
さらに当事務所では、開示請求だけでなく削除請求や損害賠償請求、刑事告訴まで一貫して対応できるため、依頼者が安心して任せられる点も大きな強みです。発信者情報開示請求を確実に進めたい方は、ネットトラブルに強い当事務所へぜひご相談ください。
まとめ
発信者情報開示請求は、証拠不足やログ消失といった理由で棄却されるリスクが高く、対応を誤れば加害者を特定できないまま泣き寝入りにつながります。棄却を防ぐためには、十分な証拠の収集、迅速な手続き、そして専門知識を持つ弁護士のサポートが欠かせません。
被害を確実に止め、適切に責任を追及するためにも、実績豊富なグラディアトル法律事務所に早期に相談することを強くおすすめします。
