「名誉毀損による慰謝料相場がどのくらいなのか知りたい」
「名誉毀損を理由とする慰謝料の請求方法や流れを知りたい」
「名誉毀損の慰謝料請求はどのような点に注意すればいい?」
インターネットやSNSの普及により、誰もが簡単に情報を発信できる時代になりました。その一方で、根拠のない誹謗中傷やプライバシーを侵害するような投稿によって名誉を傷つけられる被害も増えています。匿名の投稿であっても、社会的評価が下がるような内容を広く拡散されれば、精神的苦痛はもちろん、仕事や生活にまで大きな影響を及ぼしかねません。
このような場合、被害者は加害者に対して「名誉毀損」を理由に慰謝料請求を行うことができます。もっとも、名誉毀損が成立するには法律上の条件があり、すべての投稿が慰謝料請求の対象になるわけではありません。また、慰謝料の金額はケースによって異なり、個人の場合は10~50万円程度、法人や事業者の場合は50~100万円程度が相場とされています。
さらに、慰謝料額は投稿内容の悪質性や拡散状況、被害の程度などによって増減するため、実際にどの程度請求できるのかを正しく把握しておくことが重要です。
本記事では、
| ・名誉毀損による慰謝料請求の条件や相場 ・名誉毀損による慰謝料額を左右する要素 ・ネット上での誹謗中傷に対して慰謝料請求を行う手続きの流れや注意点 |
などをわかりやすく解説します。
ネット上での名誉毀損被害を受けた方は、早期に適切な対応をとるための参考にしてください。
名誉毀損を理由に慰謝料請求をするための条件

名誉毀損を理由に慰謝料を請求するには、まず法律上「名誉毀損」が成立していることが前提となります。以下では、名誉毀損の成立要件と名誉毀損が認められない場合(違法性阻却事由)について説明します。
名誉毀損の成立要件
名誉毀損が認められるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
①公然性があること
発言や投稿が「不特定または多数の人に伝わる状態」にあることを指します。
たとえば、XやInstagram、掲示板への投稿、YouTubeでの発言は、公然性が認められやすいでしょう。逆に、友人とのLINEなど特定少数のやり取りであれば、公然性が否定される場合もあります。
②事実の摘示があること
単なる意見や感想ではなく、「具体的な事実」を示している必要があります。
たとえば、「〇〇は不倫している」「〇〇は横領した」といった具体的な行為を断定的に述べると事実の摘示にあたります。他方で、「〇〇は最低だ」といった抽象的な悪口は事実の摘示がないため名誉毀損は成立しません。
③人の社会的評価を低下させる内容であること
発言や投稿によって、対象者の社会的評価が下がる可能性があることが必要です。
たとえば、犯罪歴をでっち上げる、勤務態度を事実と異なる形で非難する、風評被害を広めるといった行為は、社会的信用を低下させるため、名誉毀損に該当する可能性が高くなります。
内容や目的によっては名誉毀損が成立しないこともある
上記の要件を満たしていても、場合によっては名誉毀損が成立しないケースもあります。これは「違法性阻却事由」と呼ばれるもので、以下の要件を満たす投稿であれば、違法とはならず慰謝料を請求することができません。
| ・公共性があること:発言や投稿の内容が社会的に重要な関心事であり、広く伝える必要があると認められるとき。 ・公益目的があること:単なる嫌がらせではなく、社会の利益のために行った発言であるとき。 ・真実性の証明があること:摘示した事実が真実である、または真実であると信じるに足る相当な理由があるとき。 |
たとえば、政治家の汚職に関する報道や消費者被害を防ぐための口コミ投稿などは、公共性・公益性が認められる可能性があります。このような場合には、相手の社会的評価が下がったとしても違法性が阻却され、名誉毀損は成立しないのです。
名誉毀損による慰謝料相場|個人10~50万円、法人・事業者50~100万円

名誉毀損で慰謝料請求が認められる場合、実際にどの程度の金額が支払われるのでしょうか。慰謝料の金額は、ケースごとに異なりますが、裁判例の傾向や実務上の相場として、一定の目安があります。以下では、個人と法人に分けて、名誉毀損による慰謝料相場を紹介します。
個人の場合:10万~50万円程度が中心
個人が被害者となった場合、慰謝料の相場は10万円から50万円程度とされています。
たとえば、SNSで「〇〇は不倫している」「〇〇は会社をクビになった」など虚偽の投稿をされたケースでは、20~30万円の範囲で慰謝料が認められることが多いといわれています。
ただし、投稿内容が極めて悪質であったり、拡散の規模が大きく実生活に深刻な影響が及んだ場合には、100万円以上の慰謝料が認められた事例もあります。
法人・事業者の場合:50万~100万円程度が目安
法人や事業者の信用が害された場合は、慰謝料の水準がやや高くなる傾向にあります。一般的には50万~100万円程度が相場とされ、企業の信用低下や取引先への影響が具体的に立証されれば、さらに高額の損害賠償が認められることもあります。
たとえば、飲食店の衛生管理について虚偽の口コミが書き込まれた場合や会社の経営者が不正をしているかのようなデマを流布された場合には、営業上の損失やブランド価値の毀損につながりやすいため、高額の賠償が認められる可能性があるのです。
慰謝料相場はあくまで目安にすぎない
以上のとおり、個人であれば10~50万円、法人であれば50~100万円程度が一つの目安となりますが、実際の慰謝料額はケースごとに大きく異なります。
たとえば、投稿が一度きりなのか、繰り返されたのか、被害が全国的に広まったのか、特定の地域やコミュニティに限られるのか、といった事情が考慮されます。また、被害者の職業や社会的立場によっても評価が変わることがあります。芸能人や政治家など、社会的評価が重要な職業に就いている場合は、慰謝料が高額になる傾向にあります。
名誉毀損の慰謝料額を左右する主な要素
名誉毀損による慰謝料は、裁判例をみても一律に金額が決まるものではなく、被害の内容や態様によって増減します。慰謝料の相場は個人で10~50万円、法人で50~100万円程度と説明しましたが、実際の金額はさまざまな事情を考慮して算定されます。ここでは、慰謝料額を左右する代表的な要素を紹介します。
投稿内容の悪質性
発言や投稿の内容がどの程度悪質であるかは、慰謝料額を大きく左右します。
たとえば、「〇〇は犯罪者だ」など根拠のない犯罪歴を流布したり、極端に侮辱的な言葉を繰り返すような場合は、社会的評価の低下が著しいと判断され、慰謝料が高額になる傾向があります。逆に、軽度な悪口や抽象的な批判にとどまる場合は、慰謝料も低額にとどまる可能性があります。
投稿の目的
投稿が単なる個人的な意見表明なのか、それとも被害者を陥れる意図や嫌がらせを目的としたものなのかによっても、慰謝料額は変わります。悪意が明確な場合は違法性が強いと評価され、慰謝料が増額される傾向があります。
投稿されていた期間やアクセス数
インターネット上の投稿は、短期間であっても多くの人の目に触れる可能性があります。特に、長期間削除されずに残っていた場合や、アクセス数が多く影響範囲が広い場合には被害が拡大しやすく、慰謝料額が高額化します。
逆に、早期に削除された場合や閲覧数が限られていた場合は、比較的軽く評価されることがあります。
投稿の頻度
一度きりの投稿と、繰り返し継続的に投稿された場合とでは、被害者が受ける精神的苦痛の度合いは大きく異なります。継続的な誹謗中傷は、被害者の生活や仕事に深刻な悪影響を与えるため、裁判所も慰謝料を高めに認定する傾向があります。
実害発生の有無
投稿によって実際に被害者が損害を被ったかどうかも重要です。
たとえば、会社の売上が下がった、取引先との契約が打ち切られた、就職活動に不利益が生じたといった具体的な損害が立証できれば、慰謝料の増額要因になります。単なる精神的苦痛だけでなく、経済的損害が発生している場合には、損害賠償全体の金額が大きくなるのが一般的です。
ネット上での名誉毀損を理由とする慰謝料請求の方法・流れ

インターネット上で名誉毀損の被害を受けた場合、慰謝料を請求するためには一定の手順を踏む必要があります。感情的に相手へ直接抗議しても解決につながらないばかりか、かえってトラブルが拡大するおそれもあるため、冷静に法的手続きを進めることが大切です。以下では、慰謝料請求の一般的な流れを紹介します。
誹謗中傷の証拠を保全
まず重要なのは、誹謗中傷や虚偽の書き込みの証拠を確実に残すことです。
インターネット上の投稿は簡単に削除できるため、後から証拠を入手しようとしても削除された後では証拠の入手が難しい場合があります。スクリーンショットを撮影する、タイムスタンプを付与して保存する、専門の証拠保全サービスを利用するなど、正確性を担保できる形で記録を残しておきましょう。
投稿者を特定するための発信者情報開示請求
投稿が匿名の場合、まずは投稿者を特定する必要があります。そのために利用されるのが「発信者情報開示請求」です。これは、プロバイダ責任制限法に基づき、投稿が行われたサイトの管理者やプロバイダに対して、投稿者のIPアドレスや契約者情報の開示を求める手続きです。裁判所の仮処分や訴訟を経て情報を開示させるのが一般的であり、弁護士に依頼して行うケースが多いです。
投稿者に対して内容証明郵便を送付
投稿者が特定できたら、まずは裁判に進む前に示談での解決を目指すのが通常です。
その第一歩として「内容証明郵便」を送付します。これは、いつ・誰から誰に・どのような内容の文書を送付したのかを郵便局が公的に証明してくれるサービスです。内容証明郵便自体には、慰謝料の支払いを強制する効力まではありませんが、請求内容を証拠化することができ、相手に心理的なプレッシャーを与えることで任意の支払いを促す効果も期待できます。
投稿者と示談交渉
相手方が責任を認める場合、示談交渉によって解決できる可能性があります。示談では、慰謝料の金額や支払い方法、今後の再発防止策などを取り決めます。合意が成立した場合には、示談書を作成して署名押印し、確実に履行されるようにしておくことが大切です。
示談交渉の過程では、相手が過小な金額を提示してくることも多いため、弁護士を通じて適正額を主張することが望ましいでしょう。
交渉が決裂したときは損害賠償請求訴訟の提起
もし交渉がまとまらない場合には、最終的に裁判での解決を図ります。
裁判所は、投稿の内容や拡散状況、被害者の社会的地位などを考慮して慰謝料額を判断し、最終的に判決という形で慰謝料の支払いを命じます。訴訟による解決には時間や費用がかかりますが、判決によって強制執行が可能となるため、最終的な解決手段として有効です。
ネット上での名誉毀損で慰謝料請求をする際の注意点

ネット上の名誉毀損に対して慰謝料請求を行う場合、単に被害を受けたことを主張するだけでは十分ではありません。実際には、証拠保全や手続のタイミングを誤ると、請求が困難になったり適正な慰謝料を得られなかったりする可能性があります。以下では、特に注意すべき3つのポイントを説明します。
ログ保存期間経過後だと投稿者の特定は困難
匿名投稿が多いインターネットでは、まず投稿者を特定する必要があります。しかし、発信者情報は、プロバイダや通信事業者が一定期間しか保存しておらず、多くの場合は数か月程度で削除されてしまいます。そのため、被害を受けてから長期間放置してしまうと、投稿者を特定できなくなり、慰謝料請求自体が不可能になるおそれがあります。
被害に気付いたらできるだけ早く証拠を確保し、弁護士に相談して発信者情報開示請求に進むことが重要です。
慰謝料請求には3年の時効がある
名誉毀損による慰謝料請求は、民法の不法行為に基づく損害賠償請求の一種です。そのため、原則として、被害者が加害者を知ったときから3年、または不法行為があったときから20年が経過すると時効により請求ができなくなります。
投稿者が特定できたからといって安心していると、あっという間に時効期間が経過してしまいますので、慰謝料請求を検討する場合は、時効期間を意識して迅速に対応することが大切です。
被害拡大を防ぐには投稿の削除も検討する
慰謝料請求を行うだけでなく、並行して投稿の削除請求を行うことも重要です。
慰謝料で一定の補償を得られたとしても、誹謗中傷の投稿が残り続ければ被害は拡大します。また、検索結果に表示され続けることで、就職や取引、私生活に支障を及ぼす可能性も高まります。
投稿削除請求は、サイト管理者への削除依頼や裁判所における仮処分申立てによって行うことができます。慰謝料請求と併せて削除も検討することで、精神的・社会的被害を最小限に抑えることができるのです。
名誉毀損による慰謝料請求はグラディアトル法律事務所にお任せください

名誉毀損による慰謝料請求は、証拠の保全や投稿者特定、示談交渉や訴訟提起など、専門的な知識と経験が不可欠です。個人で対応するのは困難な場面も多く、弁護士に依頼することで迅速かつ有利な解決が期待できます。
グラディアトル法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷案件を数多く扱っており、証拠保全から投稿削除請求、発信者情報開示請求、慰謝料交渉まで一貫したサポートを提供しています。特に、匿名投稿者の特定は時間との勝負となることが多いですが、当事務所は豊富な実績を活かして迅速に対応可能です。
また、示談交渉においては相手から過小な金額を提示されることもありますが、相場を踏まえた適正な慰謝料を主張し、必要に応じて訴訟での解決も視野に入れます。
名誉毀損の被害は時間が経つほど拡大し、解決も難しくなります。少しでも被害を感じたら、早期にご相談いただくことが大切です。まずはお気軽に当事務所へご相談ください。
まとめ
名誉毀損による慰謝料請求は、成立要件や相場、証拠保全、投稿者特定など複雑な手続きが必要で、放置すると時効やログ保存期間の問題で請求が困難になります。被害を受けたら早急に行動することが重要です。
グラディアトル法律事務所では、証拠収集から削除請求、慰謝料交渉、訴訟まで一貫して対応し、適正な解決へ導きます。ネットの誹謗中傷にお悩みの方は、ぜひ当事務所へご相談ください。
