どこからが誹謗中傷?刑事・民事責任の分岐点をわかりやすく解説

どこからが誹謗中傷?刑事・民事責任の分岐点をわかりやすく解説
弁護士 若林翔
2025年12月09日更新

「誹謗中傷はどこから違法になるのか知りたい」

「悪口や批判と誹謗中傷とではどのような違いがある?」

「違法な誹謗中傷をされた場合の慰謝料の相場はどのくらい?」

誹謗中傷は一見すると「ただの悪口」に思えるかもしれません。しかし、本人や家族にとっては精神的な負担が大きく、生活や仕事に支障をきたすこともあります。その際に問題になるのが、意見や批判の範囲なのか、それとも違法な誹謗中傷にあたるのかという線引きが非常にわかりにくい点です。

実際には、投稿者は軽い気持ちで投稿された内容でも、社会的評価を下げるものであれば名誉毀損罪に該当する可能性がありますし、侮辱的な発言であれば侮辱罪が成立することもあります。また、業務に悪影響を及ぼす書き込みが行われれば業務妨害罪、恐怖心を与える内容であれば脅迫罪と判断されるケースもあります。さらに、刑事事件とまではいかなくても、プライバシー侵害や社会的評価の低下を理由に、民事上の損害賠償請求が認められることも少なくありません。

「どこからが誹謗中傷なのか」「どこから違法になるのか」を知ることは、被害を受けたときに正しく対応するために不可欠です。

本記事では、

・ネット誹謗中傷の定義と悪口・批判との違い
・誹謗中傷がどこから違法となるのかの具体例
・違法な誹謗中傷をされた場合の損害賠償請求

などをわかりやすく解説します。

ネットでの誹謗中傷に不安を感じている方や、実際に被害を受けて対応を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

ネットの書き込みはどこから誹謗中傷になる?一般的なイメージとの違い

インターネット上では日常的に意見や批判、ときには感情的な発言が飛び交っています。利用者の多くは、「少し厳しい意見を言っただけ」「感想を書いただけ」と考えているかもしれません。しかし、法律上の「誹謗中傷」と、一般的な意味での「悪口」や「批判」とは大きな違いがあります。まずは定義を確認し、その境界線を確認しておきましょう。

誹謗中傷の定義

「誹謗中傷」という言葉は、日常的に使われていますが、実は法律上の明確な定義はありません。一般的には、事実に基づくかどうかを問わず、相手の社会的評価を下げたり、人格を否定したりするような発言を指すことが多いです。

たとえば、以下のような表現は「誹謗中傷」にあたる可能性が高いと考えられます。

・「あの人は詐欺師だ」「犯罪者だ」など事実無根のレッテル貼り
・「バカ」「死ね」「気持ち悪い」などの人格攻撃
・「この会社の商品は欠陥品だ」「あの店は不衛生だ」と根拠なく断定する表現

一方で、「誹謗中傷」は、必ずしも違法行為とイコールではありません。刑事責任や民事責任を問えるかどうかは、具体的な言葉の内容や書き込まれた状況によって判断されます。

「悪口」や「批判」と「誹謗中傷」の境界線

誰かに対して否定的な意見を述べることが、すべて誹謗中傷になるわけではありません。社会生活において意見の相違や批判は当然存在しますし、法的にも「表現の自由」として一定程度守られています。

たとえば、次のようなケースは「誹謗中傷」ではなく、正当な意見や感想にとどまる可能性が高いでしょう。

・「この映画は自分には合わなかった」「つまらなかった」といった感想

・「対応が遅いと感じた」「価格が高いと思う」といった主観的な評価

・政治家や有名人に対する政策批判・活動への意見

しかし、これが以下のような表現になると「誹謗中傷」と評価されやすくなります。

・「あの政治家は犯罪者だ」と事実を歪めて断定する

・「あの芸能人は不倫している」「借金まみれだ」など根拠なく広める

・「この会社は潰れるべきだ」など、存在自体を否定する攻撃

つまり、「根拠のない断定」「人格や社会的評価を不当に下げる表現」「必要以上に攻撃的な言葉」が含まれると、単なる批判を超えて誹謗中傷に当たる可能性が高くなります。

どこからが犯罪になる?違法な誹謗中傷の具体例

どこからが犯罪になる?違法な誹謗中傷の具体例

誹謗中傷のすべてが直ちに違法となるわけではありません。しかし、一定の要件を満たすと刑法に定められた犯罪に該当し、刑事責任を問われる可能性があります。以下では、誹謗中傷により成立しうる代表的な犯罪類型とその具体例を紹介します。

名誉毀損罪に該当する誹謗中傷の例

名誉毀損罪(刑法230条)は、公然と事実を摘示して他人の社会的評価を下げる行為をした場合に成立します。真実かどうかは問わず、社会的評価を傷つけること自体が問題になります。

【該当する具体例】・「○○は不倫している」「○○は前科者だ」と事実無根の噂を書き込む・「この会社は脱税している」などの虚偽の投稿を拡散する・芸能人や政治家に対し「薬物を使用している」と断定的に書き込む
【該当しない具体例】・「○○の態度が好きになれない」「サービスが悪いと感じた」といった主観的意見・事実に基づいた社会的に正当な批判(例:公人の政策批判

侮辱罪に該当する誹謗中傷の例

侮辱罪(刑法231条)は、具体的な事実を示さずに公然と相手を侮辱する行為をした場合に成立します。単なる悪口や罵倒でも処罰対象となるのが特徴です。

【該当する具体例】・「バカ」「死ね」「気持ち悪い」などの書き込み・特定の人物に対して「無能」「人間のクズ」といった人格攻撃・SNSで名前を挙げ「こいつは終わっている」など嘲笑する投稿
【該当しない具体例】・「この商品は自分には合わない」といった感想・個人を特定せず「最近の若者は…」など一般化した意見

業務妨害罪に該当する誹謗中傷の例

業務妨害罪(刑法233条・234条)は、虚偽の風評や誹謗により他人の業務を妨害した場合に成立します。

【該当する具体例】・飲食店のレビューサイトに「食中毒になった」と虚偽の投稿をする・競合会社に対して「詐欺会社だ」と事実無根の書き込みを拡散する・店舗に嫌がらせの電話を繰り返しかける
【該当しない具体例】・「料理が自分には合わなかった」と正直な感想を書く・実際に遅延や欠陥があったことを事実に基づいて指摘する

脅迫罪に該当する誹謗中傷の例

脅迫罪(刑法222条)は、相手やその親族に対して生命・身体・自由・名誉・財産に危害を加える旨を告知して脅す行為をした場合に成立します。

【該当する具体例】・「住所を特定した。殺してやる」など生命・身体への危害を告げる投稿・「家に火をつけるぞ」「車を壊してやる」など財産への危害を告げる行為・「裸の写真をネットにアップする」と名誉を害することをほのめかす
【該当しない具体例】・「本当に許せない」と怒りを表現するだけの投稿・相手を挑発するにとどまる言葉(ただし度を超せば侮辱罪の対象)

誹謗中傷をされた場合に民事ではどこから損害賠償請求できる?

刑事事件に発展しない場合でも、誹謗中傷によって精神的苦痛を受けた被害者は、民事上の損害賠償請求を行うことができます。以下では、損害賠償請求できる誹謗中傷の例と慰謝料相場について説明します。

損害賠償請求できる誹謗中傷の例

民事上の損害賠償請求は、名誉権やプライバシー権などの権利侵害した場合に認められます。刑事上の犯罪に当たらない場合でも、損害賠償請求が可能な事例は多く存在します。

【該当する具体例】・SNSに「○○はうつ病で仕事ができない」と事実を広め、就業や人間関係に影響を与えた・掲示板で「○○の自宅住所・電話番号」を公開する(プライバシー侵害)・実名を挙げ「不倫相手だ」と断定的に書き込む(社会的評価の低下)・匿名ブログで特定個人を繰り返し中傷し、精神的苦痛を与えた
【該当しない具体例】・「対応が遅かった」「値段が高い」といった主観的感想・特定の個人を示さずに一般的な不満を述べる書き込み・批判対象が公的活動に関わるもので、社会的に正当な目的のある場合(例:政治的な活動への批判)

誹謗中傷による慰謝料の相場

誹謗中傷による慰謝料の金額は、ケースによって異なりますが、一般的には10万円~100万円程度が多いとされています。ただし、誹謗中傷の影響が大きい場合や被害が長期に及ぶ場合は、それ以上の金額が認められるケースもあります。

【慰謝料が低額にとどまるケース】
・一度きりの軽い中傷投稿・被害者の社会的評価に大きな影響を与えなかった場合

【慰謝料が高額になりやすいケース】
・長期間にわたる繰り返しの中傷投稿
・プライバシー情報(住所・勤務先・家族構成など)の公開・芸能人
・経営者など社会的影響力のある人への誹謗中傷
・投稿内容が拡散され、広範な社会的評価の低下につながった場合

なお、加害者が謝罪や削除対応をしない場合や被害者がうつ病などの精神的疾患を発症した場合には、慰謝料額が上がる傾向にあります。

ネット誹謗中傷の被害に遭ったときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

ネット誹謗中傷の被害に遭ったときはすぐにグラディアトル法律事務所に相談を

ネット上の誹謗中傷は、一度拡散すると完全に消すことが難しく、放置すれば被害が拡大してしまいます。精神的な苦痛はもちろん、仕事や人間関係に深刻な悪影響を与えることも少なくありません。実際に被害に遭った方の中には、匿名の加害者を特定できない、削除依頼をしても対応されない、警察に相談しても取り合ってもらえなかったと悩むケースが多く見られます。

このような問題に直面した場合、自力で解決するのは非常に困難です。証拠の収集や投稿者特定、削除請求、損害賠償請求といった手続きを被害者自身で進めるには大きな負担がかかります。そこで頼りになるのが、誹謗中傷案件に強い弁護士です。

弁護士に依頼すれば、法的根拠を示した削除請求や、発信者情報開示請求による投稿者の特定、さらには慰謝料請求や示談交渉、刑事告訴まで一貫して対応することが可能になります。

グラディアトル法律事務所は、ネット誹謗中傷の解決実績が豊富で、迅速かつ効果的な対応を強みとしています。個人に対する中傷だけでなく、企業や店舗の風評被害対策にも力を入れており、初期の相談から解決までワンストップでサポートが受けられます。被害に気づいたらまず証拠を保存し、早めに相談することが解決への近道です。

まとめ

誹謗中傷は「ただの悪口」と思われがちですが、内容次第では名誉毀損罪や侮辱罪などの犯罪に該当し、刑事責任や民事での損害賠償請求につながります。

被害を放置すれば拡散し、精神的・社会的なダメージが深刻化しかねません。匿名だからといって泣き寝入りする必要はなく、早めに専門家に相談することをおすすめします。

グラディアトル法律事務所は、誹謗中傷案件の実績が豊富で、迅速かつ実効性ある解決を得意としています。被害に気づいたら、証拠を残し早めにご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTiktokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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