インスタなりすましは犯罪!?犯人特定とアカウント削除依頼の方法

弁護士 若林翔
2022年10月16日更新

インスタ(Instagram)では、本名と異なる名前でアカウントを開設したり、実際と異なる人格を演じたりすることができます。

しかもアカウントの作成も簡単で、思いたったらすぐに開設できるので、複数のアカウントを使い分けているという方もいるのではないでしょうか。

その手軽さの裏で、なりすましアカウントが開設されるという問題も多く発生しています。

被害に遭うのは芸能人のような著名な人物だけでなく、企業やブランドのアカウント、そして一般人の個人アカウントも含まれます。

今回は、インスタ上でなりすましアカウントを作成されてしまった場合の、犯人特定方法や削除依頼の方法などを解説します。

インスタのなりすましとは?

インスタにおける「なりすまし」とは、特定の人物のふりをしてアカウントを作ったり、そのまま運用したりすることを指します。

アカウントのIDやパスワードを不正入手され、他人にログイン、運用されてしまった場合は厳密には「乗っ取り」といいますが、この場合もなりすましにふくまれることがあるので、当記事ではどちらの場合も「なりすまし」と総称します。

自身のアカウントと似ているアカウントを発見したとき、たとえばそれが下記のような特徴に当てはまるのであれば、なりすまし行為をされている可能性が高いといえるでしょう。

・アカウント名が自身のアカウント名、もしくは本名と同一、酷似している
・プロフィール文が自身のものと同一である
・投稿された内容が自身のものと同一である
・自身のアカウントが投稿しているように見せかけている

乗っ取りではない場合、インスタ上では同じアカウント名で新規登録はできないため、「.(ドット)」が「_(アンダーバー)」に変更されていたり、「_(アンダーバー)」の数が増えていたり、一見見分けるのが難しい変化をつけて登録されることが多いです。

以前は芸能人やインフルエンサーのような、膨大なフォロワーを抱える著名人が被害に遭うことが多かったですが、現在では一般企業や一般個人アカウントがなりすましされるケースも増えており、「有名じゃないから大丈夫」とは安心できない状況にあります。

なりすましの目的

インスタでなりすましを行う目的には、以下のようなものが考えられます。

・有名人や有名企業の中の人になりすまし、その知名度を利用してフォロワーを集める
・実在する人物や企業の中の人になりすまして悪質な投稿を繰り返し、当該人物、企業の評判を貶め、信用を下げる
・実在する人物や企業の中の人になりすまし、いたずらに過去の投稿を削除したり改変したりする
・実在する人物になりすまし、DMなどを活用して、その周囲の人の個人情報を収集する
・実在する人物になりすまし、DMなどを活用して、その周囲の人をフィッシングサイトに誘導したり、詐欺行為で騙したりする

もちろんこういった行為は、インスタの規約に違反します。

・他人へのなりすましや不正確な情報の提供は禁止されています。

Instagramでは、利用者ご自身の身元を開示していただく必要はありませんが、弊社に対しては、正確かつ最新の情報(登録情報を含む)を提供していただく必要があります。これは個人データの提供を含むことがあります。また、他者へのなりすましは禁止されており、本人から明示的な許可を得ない限り、他者のアカウントを作成することはできません。

出典:Instagram ヘルプセンター

インスタでは実名を公表する必要はありませんが、上記のようになりすましは一切禁じられており、登録時に必要な個人情報はすべて自身の正確なものを入力することが求められます。よって、なりすましであることが判明した場合には、アカウントがそのまま削除されたり、あるいは法的な処罰を受けたりすることもあるでしょう。

とはいえ自身がなりすましの被害に遭った場合、フォロワーが多いなどの拡散力、影響力がよっぽど大きくない限り、なかなかすぐに気づくのは難しいかもしれません。アカウント名があまりに酷似していると、本人だと勘違いしたフォロワーが上記のように個人情報を明け渡してしまったり、詐欺行為に遭ってしまったりすることも考えられます。

自身だけではなく、周囲の人にまで被害が及んでしまっては、大事な人まで傷つけてしまいかねません。できる限り早く適切に対処して、これ以上被害が大きくなってしまうことを避けましょう

インスタのなりすましは犯罪?何罪になる可能性がある?

実は、なりすましアカウントを作成すること自体は、インスタの規約違反にはなるものの、犯罪というわけではありません

そのため、法的に裁くことは難しい可能性があります。とはいえ、なりすましアカウントのすべてが犯罪に該当しないというわけではありません。

どういったケースが犯罪にあたるのか、そしてその場合、どういった罰がくだされる可能性があるのかを解説します。

刑事責任に問われる場合として、「業務妨害罪・信用毀損罪(刑法233条)」「名誉毀損罪(刑法230条)」が考えられます。

業務妨害罪・信用毀損罪

業務妨害罪は、偽計(人をあざむく計略)や風説の流布(虚偽の情報をばら撒く)などを用いて、人の業務を妨害する危険性があるときに成立します。

信用毀損罪は、同様の手段により、人の信用を毀損する危険性があるときに成立します。

(信用毀損及び業務妨害)

第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

出典:刑法(e-Govポータル)

たとえば、インスタグラマーなどの仕事としてインスタを使っているアカウントや、企業の公式アカウントになりすまして詐欺行為をはたらいた場合や虚偽の情報を投稿するような場合、そのインスタグラマーや企業の信用が毀損され、通常業務よりも被害対応を優先しなくてはいけなくなるなど、その業務が妨害される危険性があります。

このような場合、業務妨害罪や信用毀損罪が成立します。

名誉毀損罪

名誉毀損罪は、公然と事実を摘示し、人の社会的評価を低下させるような発言、行為を行ったときに成立します。

このとき、摘示した内容が事実かどうかは関係ありません。

(名誉毀損)

第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

出典:刑法(e-Govポータル

たとえば、なりすましアカウントが「私はAさんからお金を盗みました」と投稿して周囲からの評価を貶めた場合、そのなりすましに遭った本人が実際にお金を盗んでいようと盗んでいまいと、名誉毀損罪にあたると考えられます。

ほかにも、わいせつな画像を投稿したり、ほかのユーザーに対して誹謗中傷を繰り返したりして社会的評価を落とした場合、あるいはその可能性を生じさせた場合にも成立する可能性があるでしょう。

その他の考えられる犯罪

インスタアカウントのなりすましによって想定できる犯罪は、偽計業務妨害罪、名誉毀損罪だけではありません。

たとえばIDとパスワードを不正に入手され、アカウントが乗っ取られてしまった場合は、「不正アクセス禁止法」違反にあたる可能性も考えられます(別のアカウントによってなりすましている場合は適用されません)。

なりすましの犯人が過去に交際していた相手などだとして、性的な画像を投稿した場合は「リベンジポルノ禁止法」違反、また「ストーカー規制法」違反になる可能性があります。

こういった内容は、専門的な知識がないと判断がつかないでしょう。なりすまし被害によって不快な思いをさせられた場合は、一人で悩まずに弁護士や警察など、頼れる人に相談すること。それによって次に進むべき道が見えてくることもあるはずです。

インスタなりすましの民事上の違法性と損害賠償請求

民事上の違法性・権利侵害

インスタアカウントのなりすましによって民事責任に問われるときは、主に下記の権利いずれかを侵害しているときだと考えられます。

・名誉権
・著作権、肖像権
・プライバシー権

まず名誉権とは、人がみだりに社会的評価を低下されない権利のこと。人格権の一種です。これが侵害された際、刑事責任に問う場合は先述のとおり、名誉毀損罪が挙げられるのですが、民事においても「不法行為」として違法となる可能性があります。

名誉権の侵害が認められれば、加害者へその行為を停止するよう差し止め請求できることはもちろん、損害賠償の請求も行うことができます。

また、プロフィールや投稿内容をコピーして発信されたことで、自身が撮影した写真、あるいは自身の写った写真を転載された場合、著作権や肖像権の侵害を主張することもできるでしょう。

写真は特に加工などを施していなくても、撮影した時点でその撮影者の著作権が生じえるものなので、無断転載された場合にはやはり、使用の差し止めを求めること、そして損害賠償を請求することも可能です。

さらには、これまで公開してこなかった私生活に関する情報を勝手に開示されてしまった場合は、プライバシー権の侵害にあたります。

自宅や勤め先の写真や住所、電話番号といった個人情報はもちろん、家族や家庭に関すること、今まで公開したことのない、人に知られたくない事実などが他人の手によってさらされてしまったら、当然ながらいい気はしないですよね。

そういった情報が全世界に発信されることで、家の前で待ち伏せされたり、いたずら電話をかけられたり、といった二次災害の危険性も考えられます。

後述する「犯人の特定方法」によって法的に罰することで次なる被害を防ぐことが大事ですが、まずはインスタ上でプライバシーが侵害されていると報告したほうが、早急に当該投稿が削除される可能性は高いです。

損害賠償・慰謝料請求

先に軽く触れてしまいましたが、今回挙げた権利のいずれかが侵害されてしまった場合は、民法709条の不法行為として、損害賠償請求が可能です。

内容によって金額は異なりますが、犯人の特定さえできれば、裁判でも請求が認められることが期待でき、損害賠償、慰謝料の請求を行うことは、なりすまし行為の深刻化を防ぐひとつの有効な手段といえるでしょう。

インスタのなりすまし犯人の特定方法

インスタをはじめとするSNSはインターネットを介したサービスなので、「プロバイダ責任制限法」に基づいて犯人の特定(情報開示請求)が可能です。では、どのように手続きを行うのでしょうか。

犯人を特定する流れは、このとおりです。

①準備:権利侵害の立証
②運営者に犯人のIPアドレスの情報開示請求
③IPアドレスの情報から犯人のプロバイダを特定
④プロバイダに犯人の情報開示請求
⑤許可が下りた場合、犯人特定

それぞれ順を追って確認していきましょう。

①準備:権利侵害を立証する

まず、なりすましアカウントによって権利侵害された事案を確認します。侵害されるおそれのある権利はシチュエーションなどによってさまざま考えられると思いますが、少なくとも先述した名誉権、著作権、肖像権、プライバシー権は押さえておきましょう。

これから行う手続きをスムーズにすませるためにも、アカウントをなりすまし、あるいは乗っ取られたことで、どういった侵害を受けたのか、受ける可能性があるのか、最初にしっかり洗いだしておくことが肝心です。

詳細は、後述しますが、スクリーンショットなどで証拠を保存しておくことも重要です。

②IPアドレスの情報開示請求を行う

権利侵害を立証できたら、先に言及した「プロバイダ責任制限法」という法律に則って、インスタ運営者に犯人のIPアドレスの情報開示請求を行います。

③プロバイダを特定する

IPアドレスの情報開示請求が応じられた場合は、その情報から、犯人がどのプロバイダを介してインスタにログインしたかを確認することができます。

プロバイダとは、たとえば自宅や職場などからインターネットを介してなにかを検索、閲覧する際に回線のような役割を果たすもののこと。

④プロバイダに対して契約者情報の開示請求する

プロバイダが特定できたら、改めて情報開示請求を行います。これにプロバイダ側が応じてくれてはじめて、犯人の特定につながる情報を入手できることになります。

しかし個人情報となると、請求しても絶対に開示してもらえるとは限りません。

名前や住所といった犯人を特定できる情報を手に入れるためには、プロバイダと交渉する必要があります。大手プロバイダでは、訴訟提起により裁判所から開示の判決が出ないとなかなか開示をしてくれません

一個人、ましてや学生や就労者でなりすまし被害の対応にばかり時間を割けない場合などは、最初から弁護士などに依頼したほうが負担は小さくすむでしょう。

特に専門的な知識を要する場面も出てくる可能性が高いので、プロバイダ責任制限法にくわしいプロに頼んでしまったほうが安心できるかもしれません。

犯人特定時の注意点

まず覚えておきたいのは、先にも触れましたが、情報開示請求を行っても必ず犯人を特定できるとは限らないということ。くわえて2点、押さえておきたい注意点があります。

・ログには保存期間がある

犯人特定につながるアクセス時のログといった記録は、なりすましが行われた接続場所や犯人自身を見つけ出す際に有力な材料となりますが、その一方で、個人情報にあたるため、長期保存されないという特徴があります。

携帯大手各社においては、3ヶ月程度しかログを保存しておりません。そのため、3ヶ月以内にIPアドレスの開示をして、プロバイダを特定し、プロバイダに対して、ログの保存請求を済ませなければなりません

そのため、被害に遭ってすぐには犯人を特定する気にならなかったものの、あとから思い直したといった場合、もしかしたら既に保存期間を過ぎてしまって、情報が開示されないということもあるでしょう。

たとえばすぐに削除された場合などは、あまり事を大きくしたくないという気持ちから「もう解決したからいいや」と思ってしまうかもしれませんが、落ち着いたときに後悔するようであれば、それは解決したとはいえません。

事件直後に冷静に考えるのは難しいかもしれませんが、できればすぐに自分はどう対応すべきなのか、したいのかを考えるようにしてください。

・日数がかかる

ネットの誹謗中傷問題について精通した弁護士に頼んだとしても、犯人が特定されるまでに、半年〜1年程度の期間がかかります。

プロ責法が改正されて、新しい発信者情報開示請求の手段ができましたので、今後は、開示までの期間が短縮されるかと思います。

この手続きで、どの程度期間が短縮されるか、

被害に遭ってから犯人を特定するまで、先述のとおり多くのフローを経る必要があるため、どうしても時間がかかってしまいます。焦らず気長に立ち向かうことが求められるということです。

また、先にも触れましたが、時間的に余裕のない方は一人で抱え込んでしまうと、学業や仕事に支障をきたす可能性があるので、事前に時間がかかることは覚悟しておきましょう。

・スクリーンショットなどを残しておく

犯人を特定することができても、そのとき既にそのなりすましアカウントや投稿が削除されてしまっていたら、著作権やプライバシー権の侵害を立証することが難しくなってしまうかもしれません。

まずは必ずスクリーンショットなどで証拠を残しておくようにしましょう。

インスタなりすましアカウントの削除方法

先ほど証拠は残しておいたほうがいい、と言及しましたが、一方で被害を最小限にすませるためには、一刻も早くなりすましアカウントを削除したほうがいいでしょう。

しかし、いくらなりすましとはいえ、開設した本人でないとログインも削除もできません。(乗っ取りの場合は、もとは自身のアカウントなのでこうとは限りません)

そこで、外部からそのアカウントを削除してもらうために、インスタの運営者になりすましをされていることを報告する必要があります。アプリとWeb、どちらからも可能なので、それぞれ方法を解説します。

アプリから報告する場合

①なりすましアカウントのプロフィールを開き、右上の「…」マークより、「報告する」をタップします。

②「このアカウントを報告する理由」から「アカウントの報告」を選択。

③次のページで「なりすましアカウントである」をタップします。

④「このアカウントは誰になりすましていますか?」の問いに対して、自分・知り合い・著名人または有名人・事業者または団体です、の中から選んで答えてください。

⑤最後に「サポートアクション」として、当該アカウントをブロック、あるいは制限するといった選択肢が表示されるので、必要に応じて選びましょう。

このようにアプリから報告する場合は、自身の個人情報などを明かさずに、なりすましアカウントの通報をすることができます。

 

Webから報告する場合

Instagramヘルプセンターの「Instagramでのなりすましアカウントを報告」フォームより、だれのアカウントになりすましているのか、自身のアカウントにログインできるかどうかといった選択肢の中から今の状況に近いものを選びます。

②(「誰かが私または友達になりすましたアカウントを作成した」を選択した場合)

手順に沿って、自身の氏名、メールアドレス、なりすましアカウントの氏名、ユーザーネームを入力してください。

③本人確認書類として、運転免許証やパスポート、学生証などと自身が写った写真を撮影し、アップロードしましょう。

④「追加情報」という項目があるので、被害状況をくわしく記入してください。最後に「送信」をクリックすれば完了です。

入力事項が多く、アプリで報告するよりも手間がかかりますが、その分、現状を細かく伝えることができるといえるので、できれば先にアプリで通報した方も、併せてWebでも通報したほうがいいかもしれません。

法的対処を行う(削除の仮処分命令)場合

犯人がだれなのか特定する前、後、どちらにせよ、DMなどで直接相手とやりとりをするのは避けたほうがいいかもしれません。

だれがどういった目的でなりすましているのかわからないため、もしかしたら逆上してさらに嫌がらせを繰り返してくる可能性も考えられますし、こちらがなにかしらの対策をとる前に、訴訟などに必要な証拠となる部分を削除されてしまう可能性もあるためです。

そのため、削除要請が応じられなかった場合は、民事保全法第二十三条(仮処分命令の必要性等)2項にしたがって、裁判所に対して削除の仮処分命令申し立てを行うようにしましょう。

仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。

出典:民事保全法(e-Gov ポータル

つまり、なんらかの権利が侵害されたときには、法律によってそれらをきちんと守ることができるため、犯人に直接接触するのではなく、弁護士などの専門家に任せたほうが安心できるということです。

インスタのなりすまし予防策

では、インスタにおいてなりすまし被害に遭わないようにするためにはどうしたらいいのでしょうか。今すぐできる予防策をまとめてみました。すべて行っても「絶対になりすましされなくなる」というわけではないですが、対策するに越したことはないでしょう。

二段階認証を設定する

乗っ取りの場合のなりすましを防ぐには、二段階認証の設定を推奨します。

二段階認証とは、通常ログインする際に必要なパスワードだけでなく、任意で連携させた別のアプリやSMSに届くコードを入力しないとログインできない仕組みのことで、これにより、もし自分以外のだれかがログインしようとした際にもほかのアプリやSMSにコードが届くため、セキュリティを強化することができるというものです。

もし身に覚えのないタイミングでコードが送られてきた場合は、パスワードをだれかに知られてしまったということがわかるので、より複雑なものに変更するといった対処がすぐにできるようになります。

二段階認証を設定する方法は下記のとおり。

①自身のプロフィールに移動し、「設定」を開きます。
②「セキュリティ」をタップしたあと、「二段階認証」をタップ。
③続けて下部の「スタート」をタップしてください。
④追加するセキュリティ強化方法を選択し、画面の指示にしたがいます。

著名人や企業、ブランドのアカウントの場合は、可能であれば、これにくわえて認証バッジを取得すると、本物となりすましのアカウントの違いが明確になるので、より安心できるでしょう。なお、認証バッジは「設定」よりリクエストすることができるので、まずトライしてみてもいいかもしれません。

複雑なパスワードに変更する

インスタではユーザーネームそのものがログイン時に必要なIDとなるため、二段階認証をしていない場合はパスワードさえわかれば、簡単に乗っ取られてしまう危険性があります。二段階認証を設定するだけでなく、パスワードそのものも強固なものに変えておくと、より安心できるでしょう。

アルファベットと数字を組み合わせたものにするのはもちろんですが、たとえばそれが名前+生年月日といった単純なものであれば、簡単に推測されてしまいかねません。できる限り関係のないものの組み合わせで、なおかつどこかにメモなどを残さなくてもちゃんと覚えていられるものにする必要があります。

また、複雑なパスワードに設定し直したあとも、できれば定期的に変更するようにしてください。

DMは慎重に開封・返信する

インスタでは、自身がフォローしていない相手から送られてきたDMは「リクエスト」タブに表示され、内容を確認しても既読したことが相手に伝わらない仕様になっています。よく知らない人から送られてきたメッセージはこの段階で削除してしまったほうが安全でしょう。

またフォロイー、フォロワーであっても、DMはむやみやたらに返信しないほうが無難です。たとえばそれが本人ではなく、何者かに乗っ取られてしまったアカウントだった場合、巧みに個人情報などを抜き出してこようとしてくるかもしれません。怪しいと感じたら無視するようにしましょう。

URLが添付されてきた場合は、よっぽど信頼できる状況でない限り、アクセスしないことをおすすめします。タップしただけでなんらかの情報が相手に漏えいしてしまうこともあり、盗まれた個人情報を悪用されてしまったら第二次、第三次被害に発展するおそれもあるためです。

不用意な他アプリとの連携は控える

ログイン情報などの漏えいを防ぐには、不用意にインスタをほかのアプリと連携させないことも予防策になりえるでしょう。

そのアプリ自体が、個人情報を抜き取る目的で作られた悪質なものである可能性があるだけでなく、単純にインスタのログイン情報を保持する先が増えることになるので、漏えいの可能性も増えてしまうことになります。

どうしても連携しなくてはいけないという場合は、本当に必要なものを厳選しながら検討するようにしましょう。

インスタ上でなりすまし被害に遭ってしまったら

実際にインスタ上でなりすまし被害に遭ってしまったときは、まず3つのことを行うようにしましょう。

①スクリーンショットをとって、なりすましの証拠を残しておく
②インスタになりすましアカウントを報告(報告方法は先述のとおり)
③フォロワーになりすましアカウントが存在していることを伝える

フォロワーに伝える理由は、もしかしたらなりすましアカウントがその人に接触する可能性があるため、その際に自身のものと間違えて個人情報やそのほかの大事な情報を明け渡さないように注意を促すためです。

また、周知させることができれば、フォロワーも当該アカウントをインスタに通報してくれるかもしれません。そうなれば、より早く削除などの対処がなされる可能性も考えられます。

まずこの3つを行ったあとで、犯人を特定したり訴訟を起こしたり、といったことを検討するようにしましょう。インスタ上でのなりすましは、特にいやがらせ目的の場合、その被害は深刻なものに発展することもおおいにあります。

慎重に進める必要があることはもちろん、専門的な知識がないと不安も大きいと思うので、ネット関連の問題解決実績のある弁護士に相談してみるという手段もあるということを繰り返しお伝えいたします。

SNSは本来、全世界に自由に発信できる表現の場。悪質な行為によってそれが奪われてしまうことのないよう、できる範囲で予防策を打っておくこと、そしてもしも自身が被害に遭ってしまったときも当記事を参考に落ち着いて行動すること。自身のアカウントやフォロワー、自分自身を守るためにも決して悪意に屈することなく努めてください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

お悩み別相談方法

相談内容一覧

よく読まれるキーワード