依頼者は、顧問先のデリヘル経営者。
過去にスカウト事業に関わっていたことが原因で、職業安定法違反(有害業務の紹介)の疑いで逮捕された事例を紹介する。
2025年の風営法改正で、スカウトバックが禁止されたことにより、今ではスカウトを利用する風俗店経営者は少ないだろう。
ただ、それまではキャストの採用手段として風俗業界では当たり前であった。
そのため、過去であれば、ほとんどの風俗店経営者はスカウトと何らかの関係があったはずだ。
そして、過去にスカウトと関与していた場合でも、この事例のように警察の捜査対象となり、逮捕されるケースがあるのである。
そこで、本記事では、事件の概要を述べた後、依頼から解決までの流れの中で、
・過去にスカウト事業に関わっていただけなのになぜ逮捕されたのか
・弁護士は警察の見立てを崩すためにどのような証拠を集めたか
・証拠収集後の弁護活動
を解説する。
事件の概要
依頼者は、京都でデリヘルを複数店舗経営していた30代の男性。
過去には、女性を風俗店などへ紹介する、いわゆるスカウト事業も経営していた。
しかし、数年前にスカウト事業に関連して警察からの捜査を受けたことなどをきっかけに、その後はスカウト業務から離れることに。
実際、スカウト事業を行っていた会社についても、事業活動を停止し、同社から給与や報酬等は受け取っていなかった。
そのため、依頼者としては、もはやスカウト事業には関与していないという認識だった。
ところが、ある日突然、職業安定法違反(有害業務の紹介)の疑いで逮捕された。
依頼から解決までの流れ
弁護士は、依頼者の家族から連絡を受けた後、すぐに警察署へ接見に向かった。
そして、依頼者から詳しく話を聞くと、過去にスカウト事業に関わっていただけなのになぜ逮捕されたのかが判明するに至った。
また、逮捕された理由や事情を踏まえて、それを切り崩す方針のもと弁護活動を進めることになった。
①過去にスカウト事業に関わっていただけなのになぜ逮捕されたのか
依頼者が逮捕される被疑事実となったのは、約1年前に複数の女性を風俗店へ紹介したとされる行為。
しかし、依頼者としては、すでにスカウト事業から離れており、被疑事実についてもまったく知らなかった。
それにもかかわらず、なぜ依頼者は逮捕されてしまったのか。
その理由は、警察が、形式上はスカウト事業から離れていたとしても、実際にはその後も元従業員を通じてスカウト事業を指示・管理していたのではないかと疑っていたためだった。
そして、その根拠とされたのは、主に以下の事情だった。
・現在もスカウト事業を行っていた会社の代表取締役として登記が残っていたこと
・会社の事業活動停止後も、元従業員はスカウトを行っていたこと
・元従業員からスカウト事業について相談を受け、そのLINEが残っていたこと
警察からすれば、会社の登記がそのまま残り、スカウトを続けていた元従業員との連絡も続いていたため、依頼者が実質的にはスカウト事業を継続していたのではないかという見立てだ。
特に、元従業員からスカウト事業に関する相談を受けていたことは、依頼者が現在も事業に関与していると疑わせる事情となった。
②弁護士は警察の見立てを崩すためにどのような証拠を集めたか
弁護士は、逮捕された理由や事情を踏まえると、依頼者本人の供述だけでの反論では足りないと考えた。
そこで、客観的な証拠となる資料も集め、「依頼者がスカウト事業を継続していた」という警察の見立てを崩す方針を取ることになった。
具体的には、以下の事実を証明できる証拠を収集することに。
・会社がスカウト事業を停止しており、いわゆる休眠状態にあったこと
・元従業員が行っていたスカウトに対して、報酬等金銭を受け取っていないこと
・元従業員とのLINEは単なる相談だけにとどまっていたこと
スカウト事業を行っていた会社が休眠状態にあったこと
スカウト事業を行っていた会社が休眠状態にあったことを示すために、依頼者の顧問税理士に確認。
すると、税務処理上の休眠手続きは、依頼者の指示があった数年前に終わらせているとのこと。
また、最近にも、会社を廃業することについて相談を受けていたとのことだった。
それを受け、弁護士は、休眠手続きを行っている税務資料と顧問税理士の陳述書を証拠として提出することに。
元従業員が行っていたスカウトに対して、報酬等金銭を受け取っていないこと
実際はスカウト事業を継続していたならば、元従業員が行っていたスカウト行為に対して、売上の一部や報酬など金銭を受け取っていることになるはずだ。
そこで、スカウト事業を行っていた会社、現在経営しているデリヘルの会社などの口座に、元従業員からの振込や不審な入金がないことを証拠として提出することに。
具体的には、顧問税理士に協力を得て、ここ数年の通帳コピーや会社の決算資料を提出した。
元従業員とのLINEは単なる相談だけにとどまっていたこと
たしかに、元従業員と連絡を取り続けていたのは事実だった。
しかし、その内容は、単なる相談だけであって、元従業員のスカウト行為に対して何ら指示や管理するようなものではないとのこと。
そこで、LINEのやり取りをコピーし、説明が必要なところには補足を行い、証拠として提出した。
③証拠収集後の弁護活動
弁護士は、集めた証拠をもとに、警察の見立てを崩す反論を行うことに。
具体的には、証拠とともに意見書も提出し、一貫して犯罪事実を否認し、検察には不起訴処分を求めた。
あわせて、依頼者の身柄を早期に解放するべく、勾留に対する準抗告も行った。
結果、不起訴処分となり、依頼者の身柄も解放され、無事解決となった。

