妊娠詐欺!?別れて2か月後にいきなり中絶費用と慰謝料の請求が・・・

事案の概要~弁護士との相談に至るまで~

相談者は大阪市に住む30代、経営者の男性。
マッチングアプリで知り合い、タイプの女性だったので実際に会うことに。
初めてのデートも楽しく過ごせ、付き合うことになりました。

いざ付き合いだしたら、仕事で連絡が遅くなったり会えなくなったりすると、「私のことが好きじゃないんだ、大事じゃないんだ。」と泣いたり怒ったり・・・
当初はお詫びや好きな気持ちを示すためにも、彼女が欲しがっているものをプレゼントすることで仲直りしていました。
ところが、それが段々エスカレート。
会うたびにプレゼントがなければ不機嫌になり、しかも高級なブランド品しか納得せず。
いつのまにか彼女とのデート代は毎月100万円以上に膨れ上がっていきました。

さすがに、このままずっと続くとなるとやっていけないと思い、
彼女に対して、「これ以上会うたびに、プレゼントをあげることはできないよ。」と伝えました。
結果、間もなくして彼女から別れを切り出され、別れることになりました。

それから2カ月以上たったある日、
「あなたとの子どもを妊娠したんだけど・・・中絶費用と慰謝料100万円を払って。」
と、彼女から突然電話が。
たしかに付き合っていた当時に肉体関係はあったものの、いつも避妊具は使用していました。
それに、最後にした性行為の時期からして、本当に妊娠していたとしても限りなく自分の子である可能性は少ないのでは・・・?

そこで、「疑うつもりじゃないけど診断書をもらってきてほしい。」と伝えると、
彼女は、「『産むつもりがないので診断書は出せない』と病院から言われた。」とのこと。
相談者は、2、3日中に必ず連絡すると約束し、いったん電話を切りました。

相談者としては、経営者ということもあり、なるべく大ごとにしたくありませんでした。
一方で、本当に自分の子を妊娠しているのであれば、男の責任として中絶費用はもちろん慰謝料を支払うつもりも。
ただ、そもそも彼女が妊娠しているのかすら疑わしいと思っていたので、どうしたらいいものかインターネットで検索。
当事務所の妊娠詐欺についてのコラムを見つけ、翌日相談にこられました。

弁護士との相談~方針決定~

まず、出会い系サイトやアプリなど男女が出会う場には、その結婚願望や恋愛感情を逆手に取り、詐欺を行う人間も潜んでいることを説明しました。
そして、異性に不慣れそうだとかそれなりにお金を持ってそうな人が対象に選ばれやすいことも。

今回のケースは、お金を持っている男性と付き合い、もうお金が搾り取れないとなったら、別れを告げ、その後に妊娠したと嘘をつき、中絶費用や慰謝料を請求する詐欺である可能性がありました。

ただ、妊娠したと言われた場合、慎重な対応が必要であることも告げました。

というのも、簡単に自分の子どもでないと否定したり無視したりした場合、仮に妊娠詐欺であったとしても腹いせに家族や職場に嫌がらせをされたり、ネットに個人情報を含めた誹謗中傷が書き込まれたりするリスクがあるためです。

また、中絶費用や慰謝料を支払っても、それで終わりではなく何かと理由をつけて追加のお金を請求してくる可能性もありました。

そして、肉体関係を持ってしまった以上、避妊具を装着していても妊娠の可能性はゼロとはいえません。
もし本当に自分の子供を妊娠していて、出産となった場合には、生まれた子に対する養育費を支払わなければならない立場になってしまいます。

相談者は、リスクを最小限にしつつ、できるかぎり穏便に収めたいとの要望だったので、以下の提案をし、ご依頼いただくことに。

弁護士の方針としては、

  1. 胎児DNA親子鑑定を要求し、その結果、自分の子であると判明すれば、鑑定費用・中絶費用はもちろん慰謝料も支払う。
  2. ただ、同鑑定は強制することができるものではない上、彼女の身体に負担をかけてしまうもの。
  3. そこで、鑑定をしないとしても、本当に妊娠・中絶していたのであれば、中絶費用は支払う。

以上を内容証明郵便で速達にて送付し、まずは様子をみることにしました。

3.受任後の弁護士の活動~解決に至るまで~

早速、弁護士に連絡が。

彼女は気が立っており、「DNA鑑定はしない!!でも妊娠しているのは本当だから、今すぐ事務所に行くので、中絶費用を支払って!!」の一点張り。
弁護士は、彼女自身が妊娠・中絶した証拠がない状況では、中絶費用の支払いはできないことを根気強く、刺激しないように伝えました。
また、妊娠が本当で中絶費用を支払うにしても、お互いに今後のトラブルやリスク回避のために、口外禁止(秘密保持)や他に金銭的要求をしない旨の合意書を結ぶべきであることも丁寧に説明しました。

すると翌日、彼女から、「中絶費用は25万円で、1週間後が手術日。その日に領収書など持っていくし合意書にもサインするから、その場で支払って。」と連絡が。
弁護士は、「領収書など確認させていただき、合意書にサインしてもらえるのであれば25万をその場で手渡します。」と回答しました。

まだ本当に妊娠しているかはわかりませんでしたが、仮に妊娠していた場合にスムーズに中絶費用が支払えるように、依頼者に25万円を用意してもらい、弁護士が預かることに。
また、同日にサインしてもらう必要があるため、合意書も事前に作成しておきました。

中絶日当日、自らの氏名が記載された領収書や医療明細書などを持参した彼女が事務所に現れました。
そこで、弁護士が、合意書にサインしてもらうのと引き換えに、預かっていた25万円を手渡すと、彼女は「金の切れ目が縁の切れ目」と一言だけ残し、そそくさと事務所を後にしました。

結果として、彼女が依頼者の子を妊娠していたのかどうかはわかりませんでした。
ただ、鑑定を即座に拒否したことから、おそらく依頼者の子ではない別人の子を妊娠していたのであろうと推測されます。
とはいえ、依頼者の要望に沿ったかたちで、穏便に無事解決することができました。

弁護士からのコメント

近年、出会い系アプリ等インターネットが出会いのきっかけとして占める割合が急増している傾向にある中、それに伴い詐欺や詐欺まがいの行為をする人間も増えています。
本件のように、本当は他人の子であるはずにもかかわらず、あなたの子どもだからと中絶費用や慰謝料などを請求してくるケースも少なからず見受けられます。

妊娠が本当かどうか、また自らの子かどうかはさておき、妊娠を告げられた場合には、一定期間を過ぎてしまうと中絶という選択自体できなくなりますので、一刻も早く適切に対応することが重要となります。
妊娠詐欺の疑いがある状況だったとしても、すぐに弁護士に相談して、相手を刺激するなど誤った対応をしないようにしましょう。

最後に、もし妊娠詐欺かもと思う場合には、遠慮なく当事務所にご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。