「借用書を作成しようと思っているけど、手書きでも効力があるの?」
「手書きで借用書を作成する際にはどのような点に気を付ければいいの?」
「手書きの借用書はあるけど、これで実際に債権回収はできるの?」
個人間でのお金の貸し借りをする際には、口約束だけで終わらせてしまう方も多いのが実情です。
しかし、将来のトラブルを防止するためには借用書を作成することが必須です。
そして、借用書は、もちろん手書きであっても効力があります
ただ、その契約状況や内容によっては例外的に無効になってしまうケースもあります。
したがって、無効にならないように手書きの借用書を作成する際のポイントを押さえておくようにしましょう。
本記事では
・手書きの借用書の効力
・手書きであっても借用書を作成すべき3つの理由
・手書きの借用書があっても契約が無効になってしまうケース
・手書きの借用書をもとに債権回収を実現させた事例
などについてわかりやすく解説します。
個人間でお金の貸し借りをする予定があるという方は、本記事を参考に、手書きの借用書に関する基本事項を身につけておくとよいでしょう。
なお、実際に借用書の書き方を知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
借用書の書き方|主な項目と5つのポイント【テンプレート(雛形)付】
1 手書きの借用書の効力
手書きの借用書にはどのような効力があるのでしょうか。
1-1 そもそも借用書とは
借用書とは、貸主と借主との間で金銭の貸し借りがあったときに作成する文書です。
借用書のことを「金銭消費貸借契約書」と呼ぶこともあります。
お金の貸し借りのことを法律上は、「金銭消費貸借契約」と呼びます。
金銭消費貸借契約は、貸し借りの合意と金銭の交付という2つの要件で成立しますので、借用書の作成は必須ではありません。
実際、個人間の貸し借りでは、口約束だけで終わらせてしまうケースも少なくありません。
とはいえ借用書を作成することで、後述するようなお金の貸し借りに関するトラブルを回避できるなどメリットがありますので、必ず作成するようにしましょう。
1-2 手書きの借用書にも法的効力がある
借用書は、法律上作成が義務付けられているものではありませんので、借用書の形式には特に決まりはありません。
そのため、手書きの借用書であっても、必要な項目が盛り込まれているのであれば、お金の貸し借りを立証する法的効力が認められます。
時間がなくてきちんとした借用書が用意できない場合には、手書きの借用書でもよいので、お金の貸し借りをした証拠を残しておくことが重要です。
2 手書きであっても借用書を作成すべき3つの理由
手書きの借用書でも法的効力がありますので、以下の3つの理由からお金の貸し借りがあったときは必ず借用書を作成するようにしましょう。
2-1 トラブルを回避できる
お金の貸し借りをするという金銭消費貸借契約は、口約束だけでも成立します。
しかし、口約束だけでは、どのような内容の契約をしたのかが不明確ですので、当事者間で以下のようなトラブルが生じるリスクがあります。
・お金を貸したのに相手はもらったつもりになっている
・100万円を貸したのに相手は10万円しか借りていないと言い張っている
・支払期限が過ぎたため返済を求めたところ、期限はまだ先だと言われた
手書きであっても借用書が残っていれば、貸し借りがあった事実や契約内容が明確になりますので、上記のようなトラブルを回避することができます。
当事者間の認識を共有し、明確化するためにも借用書の作成は重要です。
2-2 裁判での法的証拠になる
お金の貸し借りでトラブルが発生し、当事者同士の話し合いで解決できない場合には、裁判所に貸金返還訴訟を提起することになります。
裁判でお金の貸し借りに関してお互いの言い分が食い違ったときは、証拠に基づいて事実を立証していく必要があります。
その立証は、貸主の側で行っていかなければなりませんが、口約束だけでは貸し借りの立証は困難です。
しかし、手書きの借用書があれば、お金の貸し借りがあったという決定的な証拠になりますので、容易に貸し借りがあったことを立証することが可能です。
貸したお金をきちんと回収するためにも、借用書を残しておくことが大切です。
2-3 安易なお金の貸し借りを防ぐことができる
口約束でのお金の貸し借りだと、気軽にできてしまいますので、特に借りる側はその認識が希薄になってしまいがちです。
しかし、「借用書を書いてもらわない限り貸さない」と伝えることで、返さなければいけないお金であることをしっかり認識させ、本当に借りる必要があるかどうか再考させる効果が期待できます。
すなわち、安易なお金の貸し借りを防ぐことができ、本当に必要なときにだけ借用書を作成して貸し借りを行う、いわば親しき中にも礼儀ありといった関係を構築することができます。
3 手書きの借用書があっても契約が無効になってしまうケース
手書きの借用書であっても契約の成立を立証する重要な証拠となります。
しかし、以下のような事情がある場合には、手書きの借用書を作成していても契約が無効になってしまう可能性がありますので注意が必要です。
3-1 制限行為能力者との契約
制限行為能力者とは、以下のいずれかに該当する人のことをいいます。
・未成年者(18歳未満の人)
・成年被後見人(精神上の障害により判断能力を欠くとして、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人)
・被保佐人(精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分であるとして、家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた人)
・被補助人(精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分であるとして、家庭裁判所から補助開始の審判を受けた人)
制限行為能力者は、原則として一人では法律行為を行うことができません。
したがって、制限行為能力者が必要な同意を得ることなく、金銭消費貸借契約を締結した場合には、後日取り消されてしまう可能性があります。
3-2 公序良俗に違反する内容の契約
民法では、公序良俗に反する法律行為は無効になると定められています(民法90条)。
公序良俗とは、公の秩序または善良の風俗を略したものであり、以下のような内容の契約をした場合には、公序良俗違反として契約が無効になる可能性があります。
・返済が終了するまでの間、月に数回貸主との性行為を行うこと
・娘に売春をさせて親がお金を借りること
・賭博の資金として利用されることを知りながらお金を貸すこと
3-3 利息制限法の上限金利を超える契約
個人間のお金の貸し借りでも、利息や遅延損害金を請求できますが、その際に定める金利は、利息制限法により以下のように制限されています。
利息制限法を超える金利を定めた場合、契約自体が無効になるというわけではありませんが、制限金利を超過する部分が無効になります。
たとえば、元金100万円の貸付で、年20%の利息を定めた場合、利息制限法の上限金利が15%ですので、年20%のうち5%分が無効となり、年15%の金利を定めた契約として扱われます。
4 手書きの借用書をもとに債権回収を実現させた事例
依頼者は母と娘の親子。
ふとしたとき母から、実は話してなかったことがあると切り出されました。
何の話かと聞くと、3年前に付き合っていたあなたの元彼に200万円貸しているとのことでした。
当時、いずれ結婚すると思っていたし、あなたがいないときでも家に顔を出すくらいに私とも仲が良かったからと。
何で貸したのか問い質すと、元彼から新しく商売を始めたいと考えていると言われ、手書きだったものの借用書も書いてもらっていたから問題はないかなと。
それが結局別れることになり、私から催促のために連絡しても電話も出なくてどうしたものかと思い、打ち明けた次第とのこと。
娘は、寝耳に水で、すぐさま元彼に電話もLINEもしたところ、音信不通。
手書きの借用書に記載のある元彼の住所にまで行ったものの、既に別の人が入居していました。
母にお金を借りていたことを隠したまま別れて、ましてや返してもいないなんて絶対許せないと弊所に相談に来られ、ご依頼いただくことに。
弁護士は、手書きの借用書に記載のある住所から調査し、現在の住所を判明させ、至急返済しなければ裁判も辞さない旨を記載した内容証明を送付。
内容証明を受け取った元彼から事務所に連絡があり、お金をかき集めてすぐに返しますとのこと。
結果、ご依頼から1か月で全額回収し、無事解決にいたりました。
5 正しい手書きの借用書の書き方
借用書の書き方には、決まったルールがあるわけではありませんので、自由に作成することができます。
しかし、手書きで借用書を作成するのであれば、後日のトラブルを回避し、貸し借りの内容を明確にするためにも、以下の項目を記載する必要があります。
・表題
・借用書の作成日
・金額
・貸し借りの事実
・利息
・返済方法
・返済期限
・貸付日
・貸主・借主に関する情報
・署名・捺印
なお、手書きの借用書の書き方の正しいルールについては、こちらの記事をご参照ください。
「借用書の書き方|主な項目と5つのポイント【テンプレート(雛形)付】」
6 借用書の作成や貸金の回収はグラディアトル法律事務所にお任せください
借用書の作成や貸金の回収をお考えの方は、グラディアトル法律事務所にお任せください。
6-1 将来のリスクも踏まえた借用書を作成できる
借用書は、手書きでも作成できるとはいっても、必要な項目が漏れていたり、内容が曖昧であったりすると契約内容を立証する証拠としては十分な効果を発揮できない可能性があります。
知識や経験がない方では、有効な借用書を作成するのは困難ですので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、お金の貸し借りの経緯、貸し付け条件、将来予想されるトラブルなどを踏まえて、具体的状況に応じた最適な借用書を作成することができます。
市販の借用書では実現できないようなきめ細かな対応も可能です。
また、弁護士に依頼すれば公正証書の作成をサポートしてもらうことができます。
一般的な借用書では、お金の貸し借りの証拠にはなりますが、お金を返してもらえないときには、裁判所に貸金返還請求訴訟を提起して、勝訴判決を得なければなりません。
しかし、執行認諾文言付きの公正証書であれば、債務者による不履行があれば裁判を経ることなく直ちに強制執行を申し立てることができます。
公正証書は裁判するための時間や手間を省き、短期間で債権回収を実現できますので、手書きの借用書だけでなく公正証書の作成も検討するとよいでしょう。
6-2 返済の滞納があったときは法的手段により回収できる
貸したお金を返してもらえないという場合には、裁判所に貸金返還請求を提起し、勝訴判決を得たうえで、強制執行の申立てをしなければなりません。
弁護士に依頼すれば、このような複雑かつ面倒な債権回収の手続きをすべて任せることができます。
グラディアトル法律事務所では、債権回収に関する豊富な実績がありますので、財産開示手続、第三者からの情報取得手続などにより債務者の財産を特定した上で、債権回収を実現することができます。
貸したお金を返してもらえないという場合は、自分で対応するのでなく、当事務所にお任せください。
7 まとめ
借用書は、お金の貸し借りがあったことを証明する重要な証拠となります。
手書きの借用書でも、借用書としての効力は変わりありませんので、必ず借用書を作成しておくようにしましょう。
ただし、不慣れな方では必要な項目が漏れていたり、内容が曖昧になるなどトラブルの原因になりますので、借用書の作成は、専門家である弁護士に依頼するのがおすすめです。
お金の貸し借りをお考えの方は、まずはグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。