相談者がW不倫に及んだ経緯
相談者は埼玉在住の40代後半の男性。
若くして結婚してから20年以上過ぎ、二人の子供たちは既に独り立ち。
職場では上司や部下にも恵まれ、1部署を取りまとめる役職に就き、仕事も充実していました。
しかし、家に帰れば妻とは二人きり。
そして会話はほとんどなく、男女の関係というより夫婦だからとりあえず一緒に生活していただけの状況。
家庭の時間には意義を感じなくなり、家にいることはどちらかというと相談者のストレスとなっていました。
とある月末、相談者が勤めている会社と取引先での合同飲み会の開催されることに。
相談者はお酒を飲むことが苦手だったものの、家に帰るよりはと飲み会への参加を決めました。
当日、合同飲み会が始まり適当に過ごしていると、取引先の女性が遅れて到着。
その女性は空いていた隣の席に来て「こちらに座ってもいいですか」と。
断る理由もなく、せっかくだから情報交換でもしようかと女性と話してみることに。
女性はとても人当たりもよく他愛のない仕事上の会話から始まり、同世代の既婚者同士ということがわかると、生活のマンネリやパートナーとの関係について会話が弾みました。
自身の悩みやストレスに対して女性からの優しい言葉は、相談者の気持ちも高揚。
ついつい、いつもは飲めないお酒もすすんでしまいました。
まもなく飲み会がお開きになり同僚などが散り散りに帰っていく中、女性と帰る方向が一緒だったので、二人で最寄り駅に向かうことに。
その途中、相談者はお酒の勢いもあったのか、「今夜だけでもいいから」と日常では埋められない気持ちを満たすために関係を持ちかけました。
すると女性も同じ想いを持ってくれていたのか「今夜だけなら」と相談者は不倫するにいたりました。
そして一夜限りとのことだったが、案の定一夜だけの関係ではおさまらず、定期的に肉体関係に及ぶ仲にまでなることに。
それから数か月が経ったある日のこと、溜まっていた仕事に追われ、会社で一人残業をしていると社内電話が着信。
連絡してきた番号に心当たりはなかったものの、仕事柄いつもどおり受話器を取りました。
電話先の相手が相談者の名前を確認したとたん
「お前は俺の嫁と不倫しただろ!」と。
電話をかけてきた男性は不倫相手の夫でした。
不倫相手とは最低限の連絡に控えていたので、
「バレることはないだろう」と高を括っていた相談者は気が動転。
そんな中、相手方は「今後について話したいことがあるから、電話番号を教えろ!」とも。
相談者はしどろもどろになりつつも電話番号を相手方に伝えました。
すると相談者が謝罪する間もなく相手方は
「話したいことがあるから10分以内にココに来い!」と住所を吐き捨て切電。
言うことを聞かなければ何をされるのかわからないと怖くなった相談者は、すぐに仕事を切り上げることに。
会社前の大通りでタクシーを拾い、指定された住所に向かいました。
相手方に会うや否や相談者はすぐさま謝罪するも
「お前が妻を誘ったからこうなった!慰謝料として50万円支払え!さもなければ会社に行くからな!」
と恫喝。
会社に不倫問題が発覚すれば、職場での立場が危うくなることはもちろん、もし取引先との関係まで悪化するとなると職を失うことまで頭によぎり、どうしてもバレずに解決したい相談者は誠実に対応しますと返答。
相手方は「今夜すぐに来た態度は認めるから、後日にしっかり対応しろ。さもなければどうなるかわかっているだろうな」と言い捨てたうえで、待ち合わせ場所をあとにしました。
相談者は帰宅後、不倫をしたのは事実であるから慰謝料は誠実に支払わなければならないと思った一方、支払えば本当に解決するのかどうか一抹の不安を覚えました。
そこで、インターネット上で“不倫バレ 解決”について検索。
するとネット上の事例では、相手方の要求を呑み慰謝料を支払ったにもかかわらず、上乗せの請求や止まらない脅迫や恐喝から職場バレ・家族バレなどしたケースがいくつか見つかりました。
そうこうしているうちにも相手方から「慰謝料の件忘れてないよね?」との催促や「殴っていい?」「殺したろうか」などと脅迫するショートメッセージを何度も受信。
相談者は、自らではネットにあったとおり穏便には解決できないのではといてもたってもいられず、弁護士に直接相談したいと東京事務所へ来られました。
不貞行為の確認と解決方法の模索
まず相談者が既婚女性と肉体関係(性行為)を持つことは女性の夫に対する不貞行為に該当し、民法上の不法行為として、慰謝料が請求される立場であると説明。
(不法行為による損害賠償)
引用 / 民法
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
ただ相手方が「殴っていい?」「殺したろうか」などの相談者に対して害を加える告知することは脅迫行為に該当し得ると説明。
(脅迫)
引用|刑法
第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
そして一方、職場への直接連絡や執拗なショートメッセージを行う相手方の態様をみると、対応が遅れると職場はもちろん妻にバレることも避けられない可能性があると。
そうなれば職場での責任問題や妻との離婚問題までトラブルが肥大化するおそれがあるとも。
相談者は、不貞行為をしたのは事実であるし慰謝料は支払うので、職場バレ・家族バレを何とか避けたいとのご要望。
そうなると、弁護士が代理人として相手方と交渉し、脅迫に該当し得る行為を止めていただくよう警告しつつ、不貞慰謝料を含めた合意書締結による示談での解決を求めていくことを提案。
合意書の内容としては、まず今回の不貞行為を謝罪し、慰謝料を支払う条項。
また職場バレ・家族バレを防ぐべく、お互いの関係者を含めた接触禁止条項にくわえ、ネットを含む口外禁止条項も記載。
さらに改めて慰謝料請求がされないように、今回のトラブル以外にお互いに債権債務はないとのいわゆる清算条項も。
相談者は、合意書によって穏便に解決できるのであればお願いしたいとご依頼を受けました。
合意書締結を目指した弁護士の交渉
弁護士は早速、相手方に対し連絡。
依頼者の代理人になった旨とともに、弁護士が窓口となるので依頼者への直接連絡を差し控えてもらうように伝え、相手方からご了承をいただく。
そして弁護士は、まず「殴っていい?」「殺したろうか」などのメッセージを伝えることは、脅迫に該当し得るので止めていただくよう警告。
それに対し相手方は、冷静ではなかったとして今後は行わないとのこと。
他方で、依頼者が不貞行為をしたのは事実で、依頼者は真摯に反省していると謝罪を伝えました。
すると相手方は、たしかに妻とうまくいっておらず、その理由は自らにもあり、それが妻を不倫に走らせてしまったと考えていると。
それゆえ今回は妻を許して離婚する気もないので、相手方としても早期解決を要望しているとのことでした。
そこで弁護士は、相手方に対し慰謝料の支払いとともに接触や口外の禁止条項などを記載した合意書の締結を打診。
相手方は「妻と話し合ってから回答したい」とのことで、いったん話を終えました。
その後「提案の合意内容で問題ない」との回答をもらい、合意書締結にて職場バレ・家族バレを無事防ぐことができた解決に至りました。
不倫(不貞)とその脅迫・恐喝に対する弁護士のコメント
今回は不倫(不貞)をしてしまったことにより脅迫トラブルにまで発展した事例を紹介しました。
不貞行為については、上述したとおり相手の配偶者から不貞慰謝料を請求される立場になります。
とはいえ、そのことから脅迫をはじめ恐喝、義務のないことの強要などまで受け入れざるを得ないわけではありません。
ですので、不貞慰謝料だけでなく、脅されるようなことがあったり仕事を辞めろなど無理な要求までされたりした際には、弁護士に相談すべきでしょう。
また不貞慰謝料の請求金額につき、払えないような高額が請求されるケースもあります。
そのような場合も、弁護士に相談すべきといえます。
弁護士であれば、相談者の事情に即した裁判例などを踏まえたうえで、減額交渉することも可能だからです。
最後に、不倫(不貞)問題はもちろんのこと男女トラブルでお困りでしたら、一人で悩まずぜひ当事務所へご相談ください。