復興庁職員の男を逮捕 薬飲ませ、わいせつ疑い

ニュース内容

10代少女に睡眠作用のある薬物を入れた酒を飲ませ、わいせつな行為をしたとして、警視庁池袋署は19日、復興庁参事官補佐の菅原久興容疑者(46)=埼玉県新座市新堀1=をわいせつ目的略取と準強制性交の疑いで逮捕した。

逮捕容疑は5月27日夜、東京都豊島区の居酒屋で少女に睡眠作用のある薬物を入れた酒を飲ませ、意識を失った少女を近くのホテルに連れ出してわいせつな行為をした疑い。「睡眠薬を飲ませたりしていない」などと容疑を否認している。

池袋署によると、食事やデートの対価に金銭を受け取る「パパ活」の相手を少女がツイッターで募集し、菅原容疑者が応じたという。記憶がないことを不審に思った少女が署に相談。ホテルに連れ出すところが映った防犯カメラの解析などから関与が浮上した。

2020/7/19 20:46 (2020/7/19 22:46更新) 日本経済新聞

今回のニュースは、パパ活をきっかけに、10代少女に睡眠作用のある薬物を入れた酒を飲ませ、わいせつな行為をしたとして、わいせつ目的略取と準強制性交の疑いで逮捕されたというものです。

つい先日も、パパ活ではなく婚活サイトがきっかけではありましたが、同様に睡眠導入剤を飲ませた性犯罪被害のニュースがありました。

このような薬物を利用した性犯罪の手口については下記ページで解説していますので、よければご参照ください。

そして今回は、逮捕の被疑事実となった「わいせつ目的略取罪」と「準強制性交罪」について解説したいと思います。

「わいせつ目的略取罪」とは!?

刑法上「わいせつ目的略取罪」については、下記のように規定されています。

(営利目的等略取及び誘拐)
第二百二十五条 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。


すなわち「わいせつ目的略取罪」とは、わいせつ目的で、人を略取し、又は誘拐した者に対し、1年以上10年以下の刑罰を処するものです。

まず、「わいせつ」とは、性欲を刺激、興奮、または満足させ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為を意味します。
わかりやすくいうと、一般人がいわゆるエッチな行為と思うものが「わいせつ」行為といえるでしょう。

そして、わいせつ「目的」は、自らわいせつ行為をする目的だけに限らず、第三者にわいせつ行為をさせる目的、または被害者にわいせつ行為をさせる目的も含まれます。

今回のニュースによれば、わいせつな行為をした疑いとありますので、自らわいせつ行為をするという意味合いで、わいせつ目的があると判断されたのでしょう。

次に「略取」とは、暴行・脅迫等の強制的手段を用いるなど人の意思を抑制して、他人をその生活環境から離脱させ、自己または第三者の事実的支配下に置く行為のことをいいます。

一方、「誘拐」とは、偽計・誘惑を手段とするなど人に誤った判断をさせて、他人をその生活環境から離脱させ、自己または第三者の事実的支配下に置く行為のことをいいます。

今回のニュースでは、睡眠作用のある薬物を入れた酒を飲ませて意識を失わせホテルに連れ出したとあるので、抗拒不能というかたちで意思を抑制して自らの事実的支配下に置いた行為として、「略取」と判断されたと思われます。

以上のように、自らわいせつな行為をする、または被害者含め第三者にわいせつな行為をさせる目的で、何らかの手段で被害者の意思を抑制して事実的支配下に置くと、「わいせつ目的略取罪」に該当し得ることになります。

「準強制性交罪」とは!?

刑法上「準強制性交罪」については、下記のように規定されています。

(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
(準強制わいせつ及び準強制性交等)
第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。


すなわち「準強制性交罪」とは、人の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、または心神を喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて、性交をした者に対し、5年以上の有期懲役の刑罰を処するものです。

「心神喪失」とは、精神的な障害によって正常な判断力を失った状態のことをいいます。
他方、「抗拒不能」とは、心理的又は物理的に抵抗ができない状態をいいます。

今回のニュースでは、睡眠作用のある薬物を入れた酒を飲ませて意識を失ったとあるので、物理的に抵抗ができない状態といえ、「抗拒不能」にさせてと判断されたのでしょう。

なお「性交」については、医師の診断書などを証拠に性交があったと判断されたものと思われます。

このように正常な判断力を失った状態や心理的又は物理的に抵抗ができない状態にさせたり、乗じることにより性交を行うと、「準強制性交罪」に該当し得ることになります。

最後に、冒頭でも述べたとおり、パパ活や婚活をはじめネットをきっかけとした出会いにおいて、睡眠剤などの薬物を飲まされて性犯罪被害に遭うケースが増加しています。

ですので、素性のよくわからない相手と会うことには、通常より犯罪に巻き込まれるリスクが高いことを認識したうえで慎重に対応・行動すべきです。

性犯罪被害はもちろん、男女トラブルでお悩み・お困りの方は遠慮なく当事務所にご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。