「管理職の残業代は出ない」は間違い!違法なケースや請求方法を解説

「自分は管理職だから、残業代はもらえない」
「管理職になると、残業代が出ないから手取りが減る」

このような思いを抱えているとしたら、その “管理職” は、

「法的な定義における、“管理監督者” か否か?」

を、しっかり確認することをおすすめします。

管理職であっても、管理監督者に該当しなければ、使用者(企業)は、法律で定められた残業代を支給する義務があるからです。

そして、課長、店長など管理職の肩書きがあったとしても、法律上は管理監督者に該当せず、残業代請求ができるケースが多いです。

現代の労働環境では、肩書きと実態が一致しない「名ばかり管理職」が問題となっています。残業代の支払いを免れるために、社員を形式上「管理職」としている会社も少なくありません。

本記事では、管理職の残業代の基本知識から、違法と判断された判例、実際に残業代を請求できるケースと請求の流れまでを詳しく解説します。

自身の権利を正しく理解し、必要に応じて適切な対応を取れるようにしていきましょう。

「管理職=残業代が出ない」は間違いである理由

冒頭でも触れたとおり、管理職だから残業代が出ないと思い込んでいる人は少なくありません。しかし、これは大きな間違いです。

管理職だから、残業代が出ないわけではありません。管理職の中でも、法的に残業代の支払い義務が免除されるのは一部の「管理監督者」だけだからです。

管理職と管理監督者の違い、管理監督者が残業代を受け取れない理由について詳しく見ていきましょう。

労働基準法規制の一部適用除外となるのは「管理監督者」

まず、法律面を整理しましょう。

労働者(従業員)を守るために、労働時間や残業代について定めている法律として「労働基準法」があります。

労働基準法では、労働時間などに関する規制の一部について、「管理監督者」を適用除外としています。

「管理監督者」と労働基準法の規定

出典:日本労働組合総連合会「Q&A労働基準法の「管理監督者」とは?」より作成

 

上図の中で残業代と直接関連するのは、

「第32条 / 労働時間(1週40時間、1日8時間)」
「第37条 / 時間外、休日の割増賃金」

です。

管理監督者は、1週40時間、1日8時間までという法定労働時間の規制を受けません。また、時間外労働や休日労働が生じても、割増賃金の支給は必須ではありません(深夜労働は必要)。

 

管理監督者が保護されないのは自分で処遇を決められるから

なぜ、管理監督者は残業代の支払い義務が免除されるのでしょうか。

それは、管理監督者とは、経営者と一体的な立場にあり、自らの労働条件を決定できる権限を持っている者をいうからです。

管理監督者は、自分の裁量で業務を遂行し、労働時間なども自ら管理できる立場にあります。

たとえば、残業の必要性を自ら判断し、必要な対価を経営判断の中で確保できるのです。そのため、一般の労働者とは異なり、法律で労働時間や賃金を保護する必要がないと考えられています。

 

重要:管理監督者 ≠ 管理職

一般的に使われる「管理職」の言葉と、法律用語の「管理監督者」は、かならずしも一致しません。

管理職の定義や範囲はあいまいで、企業によって異なるからです。たとえば、A社では「課長以上」を管理職と呼び、B社では「部長以上」を管理職と呼ぶ、という具合です。

多くの場合、管理職の言葉は、法律用語の管理監督者よりも広義に用いられています。

管理監督者と管理職の関係図

以下は、東京労働局の資料からの引用です。

ここでいう管理監督者とは「労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされており、「部長」「営業所長」といった肩書きではなく、実態により判断します。

例えば、「地位に応じた相応の賃金が支払われている」といった待遇とともに「部下の採用、給与の決定など人事管理の権限を持つ」「出退勤時間が本人の裁量に任されている」といった立場にあることが必要です。

営業上の理由で全員に「課長」という肩書きが与えられている部署があったとしても、その従業員がこのような立場になければ管理監督者とはいえません。

出典:東京労働局「しっかりマスター労働基準法 割増賃金編」

「管理監督者」の判断方法は、後ほど詳しく解説します。

ここでは、たとえ社内で管理職と呼ばれていても、「労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者」という実態がなければ、管理監督者ではない、というポイントをよく押さえておきましょう。

 

「名ばかり管理職」で権利のみ奪うのは違法

管理監督者としての実質的な職務や権限を伴わないにもかかわらず、管理職の肩書きを利用して残業代の支払いを回避するのは、明らかな違法行為です。

いわゆる「名ばかり管理職」「偽装管理職」と呼ばれるもので、看過できない重大な労働問題といえるでしょう。

名ばかり管理職の問題は、2000年代に大きくクローズアップされ、社会的な議論を呼びました。多くの企業がコンプライアンス意識を高め、是正に向けた取り組みを進めてきた経緯があります。

大きな転機となったのは、2008年の日本マクドナルド事件です。

東京地方裁判所は、原告である店長の主張を認め、店長は管理監督者には該当しないとの判断を下しました。その結果、会社側に対し、過去2年分の未払い残業代など約750万円の支払いを命じる判決が下されたのです。

参考:日本マクドナルド割増賃金請求事件(平成20年1月28日、東京地方裁判所)

2020年代に入った現在において、名ばかり管理職の状況が生じているケースは、単なる無知や無自覚によるものではないと考えるべきでしょう。

むしろ、違法であることを認識しながら、意図的に行われている可能性が高いといわざるを得ません。

 

「管理監督者」か「名ばかり管理職」か判断する基準

では、管理職が「管理監督者」に当たるのか、「名ばかり管理職」なのかは、どのように判断すればよいのでしょうか。

まず重要となるのが、次の3つのポイントです。

管理監督者の判断基準(東京労働局)

出典:東京労働局「しっかりマスター労働基準法 管理監督者編」

以下でそれぞれ解説します。

経営者と一体的な立場で仕事をしている

1つめは「経営者と一体的な立場で仕事をしている」です。

そのことを証する実態としては、経営者から、管理監督・指揮命令にかかる一定の権限を委ねられている必要があります。

裁量権の有無や、経営方針に関する意思決定への関与がポイントです。

たとえば、多くの事案について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝えるに過ぎない場合には、管理監督者に含まれません。

具体的に、どのような権利を有していれば管理監督者と判断されるのかについては、一律の基準では判断できないため、裁判例と照らし合わせながら考えることになります。

東京労働局「しっかりマスター労働基準法 管理監督者編」(以下「同資料」という)に掲載の民事裁判例から、該当部分のみ抜粋すると、以下のとおりです。

【管理監督者ではないとされた判例】

・店長としてコック、ウエイター等の従業員を統括し、採用にも一部関与し、店長手当の支給を受けていたが、社員の労働条件は経営者が決定していた。
(レストラン「ビュッフェ」事件/大阪地裁判決 昭和61年7月30日)

・乗務員の出勤点呼、配車、苦情や事故対応などを行っていたが、懲戒処分や示談等の最終的な権限はなかった。
(彌栄自動車事件/京都地裁判決 平成4年2月4日)

・関係職員の超過勤務命令について総務課長とともに支店長に具申する権限があったが、経営方針の決定や労務管理上の指揮権限について経営者と一体的な立場にあったとまではいえない。
(国民金融公庫事件/東京地裁判決 平成7年9月25日)

・管理職会議で意見具申の機会はあるものの、経営方針に関する意思決定には関与していなかった。
(東建ジオテック事件/東京地裁判決 平成14年3月28日)

※注:実際には、上記の要素のみではなく総合的な判断となります。あくまでも具体例の参考としてご覧ください(以下同様)。

出社・退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない

2つめは「出社・退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない」です。

管理監督者は、〈時を選ばず経営上の判断や対応を求められることがあり、また労務管理においても一般の従業員と異なる立場に立つ必要〉があります。

このことを証する実態とされるのが、出退勤時間が、自らの裁量に任されていることです。

出退勤時間が、一般社員と同様に定められていたり、遅刻や早退によって給与を減らされたりする場合は、管理監督者とはいえません。

同資料に掲載の民事裁判例から、該当部分のみ抜粋すると、以下のとおりです。

【管理監督者ではないとされた判例】

・店舗の営業時間に拘束され、出退勤の自由はなかった。
(レストラン「ビュッフェ」事件/大阪地裁判決 昭和61年7月30日)

・自らの業務内容、出退社時刻等について裁量権がなかった。
(彌栄自動車事件/京都地裁判決 平成4年2月4日)

・出退勤の管理は一般職員と同様であった。
(国民金融公庫事件/東京地裁判決 平成7年9月25日)

・タイムカードにより厳格な勤怠管理を受けていた。
(ほるぷ事件/東京地裁判決 平成9年8月1日)

・出退勤の自由はなく、時間配分が個人の裁量に任されていたとは考えられない。
(日本コンベンションサービス事件/大阪高裁判決 平成12年6月30日)

・出勤簿と朝礼時の確認により一応の勤怠管理を受けており、自由裁量があったとは認められない。
(リゾートトラスト事件/大阪地裁判決 平成17年3月25日)

その地位にふさわしい待遇がなされている

3つめは「その地位にふさわしい待遇がなされている」です。

管理監督者は、重要な職務を担っているため、地位・給料・その他の待遇において、一般社員とは異なる相応の待遇がなされていることは当然として考えます。

管理監督者になると、労働基準法で規定されている数々の規定の適用外となることは前述のとおりです。以下に再掲します。

「管理監督者」と労働基準法の規定

出典:日本労働組合総連合会「Q&A労働基準法の「管理監督者」とは?」より作成

 

上記の適用を除外されても、余りある待遇を得ていなければ、「名ばかり管理職」の疑いが強くなります。

同資料に掲載の民事裁判例から、該当部分のみ抜粋すると、以下のとおりです。

【管理監督者ではないとされた判例】

・給与等の待遇も一般従業員と比較してそれほど高いとはいえない。
(育英舎事件/札幌地裁判決 平成14年4月18日)

・役職手当を受け、タイムカードによる打刻をしなくてもよく、それぞれの課や支店で責任者としての地位にあったが、他の従業員と同様の業務に従事していた。
(日本コンベンションサービス事件/大阪高裁判決 平成12年6月30日)

・店長の職務の他にコック、ウエイター、レジ、掃除等全般に及んでいたことから店舗の経営者と一体的な立場にあるとはいえない。
(レストラン「ビュッフェ」事件/大阪地裁判決 昭和61年7月30日)

出典:東京労働局「しっかりマスター労働基準法 管理監督者編」

 

管理職が残業代請求を検討する際に知っておくべきこと

管理職の立場にありながら、「残業代の未払いがあるのではないか」と疑問を抱いたら、請求するかどうか、そしてどのように請求するのかを検討する必要があります。

その際に知っておくべきポイントを3つ、お伝えします。

  1. (1)管理監督者であっても深夜手当と有給休暇の特例はない
  2. (2)未払い賃金請求は5年(経過措置3年)で時効となる
  3. (3)我慢は美徳ではなく会社や後輩のためにならない

 

管理監督者であっても深夜手当と有給休暇の特例はない

1つめのポイントは管理監督者であっても深夜手当と有給休暇の特例はないです。

「管理監督者に該当すれば、深夜手当や有給休暇の適用もない」というのは誤解で、これらは管理監督者であっても適用されます。

割増賃金の種類・割増率・管理監督者への適用の有無

出典:東京労働局「しっかりマスター労働基準法 割増賃金編」より作成

 

まず、「深夜手当」に関しては、上図の22時から5時までの間に勤務させたとき:割増率25%以上が該当します(労働基準法第37条)。

管理監督者であっても、夜22時〜朝5時の間に働いた場合、別途手当が支給される必要があります。

同じく、年次有給休暇については、6ヵ月間継続勤務し、全所定労働日の8割以上出勤した労働者に対して最低10日を与えなければなりません(労働基準法第39条。参照:愛媛労働局「年次有給休暇」

深夜割増賃金の支給がない、あるいは年次有給休暇の取得を制限される状況であれば、違法な扱いといえます。

未払い賃金請求は5年(経過措置3年)で時効となる

2つめのポイントは「未払い賃金請求は5年(経過措置3年)で時効となる」です。

2020年4月1日の民法改正により、旧法では2年であった賃金請求権の消滅時効期間が、5年に延長されました。ただし、当面の経過措置として3年の時効が適用されます。

 

 

残業代の時効(厚生労働省)

出典:厚生労働省「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」

未払い賃金を請求する場合には、上記の時効期間が消滅する前に、速やかに行動する必要があります。

一方で、現在生じている未払い賃金があるのなら、証拠をしっかり残しておくことも忘れてはなりません。

今はまだ請求する気持ちがなくても、5年後には状況や心境に変化があり、請求したくなるかもしれないからです。

残業代請求の時効についての詳細や時効を阻止する方法については、以下の記事をご参照ください。

残業代の時効は3年!時効を阻止する方法と残業代請求の流れを解説

 

我慢は美徳ではなく会社や後輩のためにならない

3つめのポイントは「我慢は美徳ではなく会社や後輩のためにならない」です。

管理職の方の中には、会社の都合に自らを合わせて我慢することが、美徳だと考える人もいるでしょう。

しかし、違法な働かせ方を黙認することは、会社の不正を助長し、後輩たちを不当な労働環境に置き続けることにつながります。

むしろ、管理職こそ、適正な労働条件の実現に向けて行動すべき立場にあるのです。

会社の持続的成長の観点から見ても、違法あるいはグレーな労働環境は、悪影響です。優秀な人材ほど早々に見切りを付けて、自らの価値を正当に評価してくれる職場へ転職していくからです。

加えて、せっかく新しい人材を採用しても、先輩社員が自己犠牲的に働いている異常な状況を目の当たりにすれば、戸惑ってすぐに離職を考え始めるかもしれません。

貴重な人的資源を、不健全な労働環境のために失ってしまうのは、会社にとっても取り返しのつかない損失です。

管理職が未払いの残業代を請求する流れ

最後に、管理職の方が未払いの残業代を請求する際の、具体的な流れを確認しておきましょう。証拠集めから法的措置の検討まで、段階を踏んで進めていくことが重要です。

  1. (1)証拠を集める
  2. (2)自分が管理監督者に該当するか確認する
  3. (3)(状況に応じて)弁護士に相談する
  4. (4)請求額を算定する
  5. (5)会社と交渉する
  6. (6)労働基準監督署に相談する
  7. (7)法的措置を検討する

証拠を集める

1つめのステップは「証拠を集める」です。

未払い残業代の請求を行う際、まず取り組むべきは証拠集めです。管理職の場合、一般の従業員とは異なり、タイムカードによる勤怠管理がされていないケースもあります

その場合は、労働時間を推認できる資料を可能な限り集める必要があります。

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【労働時間の証拠となり得る資料の例】

業務日誌:日々の業務内容と労働時間を記録した業務日誌をつけておくと、重要な証拠となります。

スケジュール帳:会議や出張、打ち合わせなどのスケジュールを記録しておきます。業務の開始時間と終了時間がわかれば、労働時間の証明に役立ちます

業務メールやチャットの記録:深夜や早朝、休日に送信されたメールやチャットの記録は、労働時間を裏付ける有力な証拠となります。送信時間と内容を保存しておきましょう

業務に関する電話の記録:業務に関する通話の日時と相手先、通話時間がわかれば、労働時間の証明に活用できます。

上司や同僚とのやり取りの記録:残業を指示されたり、休日出勤を命じられたりしたメールや会話のメモは、重要な証拠となります。日時と内容を明確にしておきましょう。

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次に、管理職としての立場や職務内容を証明する資料も欠かせません。自分が管理監督者に該当しないことを示す証拠があれば、残業代請求の正当性を裏付けることができるからです。

 

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【管理監督者性の判断に関わる資料の例

職務記述書:管理職としての職務内容や権限が記された文書。自分の職務が管理監督者に該当しないことを示す根拠となります

組織図:自分の職位や部下との関係性が分かる図表。管理監督者としての立場にないことを示す材料になります

任命書:管理職に任命された際の辞令。管理職としての職務や権限が限定的であることが明記されていれば、管理監督者性を否定する証拠となります。

人事評価の記録:自分が部下の人事評価を行う立場になかったことを示す資料。管理監督者の重要な権限である人事考課に関与していなかったことを証明できます

稟議書や決裁書類:重要な意思決定に自分が関与していなかったことを示す書類。経営上の判断に携わる立場ではなかったことを裏付けられます。

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残業代請求の正当性を高めるためには、できる限り多くの証拠を集めることを心がけましょう。

先ほど時効の解説で述べたことの繰り返しとなりますが、今すぐに請求するつもりはなくても、将来に向けて証拠だけでも残しておくことが大切です。

自分が管理監督者に該当するか確認する

2つめのステップは「自分が管理監督者に該当するか確認する」です。

証拠集めと並行して、自分が労働基準法上の管理監督者に該当するかどうかを確認していきましょう

おさらいですが、管理監督者に該当するかどうかは、以下の3つのポイントを総合的に判断します。

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【管理監督者の該当性を判断するポイント

経営者と一体的な立場で仕事をしているか:経営上の重要事項の決定に関与したり、部下の採用・昇格などの人事権を持っていたりするかどうかがポイントです。単に現場の業務を管理するだけでは不十分であり、会社の経営にも深く関わっている必要があります。

出退勤や勤務時間に厳格な制限がないか:管理監督者は、時間に縛られずに働くことが求められます。始業・終業時間が決まっていたり、勤怠管理システムで厳格に管理されたりしていれば、管理監督者といえません。自らの裁量で柔軟に働ける立場でなければなりません。

待遇面で十分な処遇を受けているか:管理監督者としての重要な職務に見合った待遇が必要です。同じ勤続年数の一般社員と比べて、相応に高い給与が支払われていなければなりません。管理職手当の有無や、賞与・退職金の金額なども判断材料となります。

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しかし、実際には、これらの判断が微妙なケースも少なくありません。

専門家に、客観的に判断してもらう必要のあることが多いでしょう。その場合、次のステップに進みます。

(状況に応じて)弁護士に相談する

3つめのステップは「(状況に応じて)弁護士に相談する」です。

自分が管理監督者に該当するかどうか判断に迷う場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談することが推奨されます。

状況によっては、かなり早い段階から、弁護士に相談することをおすすめします。

示談交渉や裁判で会社と渡り合うとなれば、法律の専門家であり、交渉のプロでもある弁護士が心強い味方となるからです。

弁護士に相談する際、費用の問題が心配になるかもしれません。

その場合は、初回無料の相談を行っている事務所を探し、無料相談を利用して、専門的な見解を得ることをおすすめします。

当事務所でも、無料で未払い残業代に関する相談を受け付けており、未払い残業代請求に関しては、多数の実績があります。以下のページよりご確認ください。

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請求額を算定する

4つめのステップは「請求額を算定する」です。

未払い残業代の請求を行う前に、具体的な請求額を算定することは非常に重要なプロセスです。

しかし、管理職の場合、一般の従業員とは異なる労働時間制度で働いているケースが多いため、計算方法が複雑になりがちです。

管理職に適用される主な労働時間制度には、以下のようなものがあります。

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【管理職に適用される主な労働時間制度】

裁量労働制:業務の性質上、その遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある場合に、実際の労働時間ではなく、労使で合意した時間を労働時間とみなす制度です。管理職の場合、企画業務型裁量労働制が適用されているケースが見られます。

みなし労働時間制:事業場外で業務に従事した場合に、実際の労働時間を算定することが困難なときは、所定労働時間労働したものとみなす制度です。営業職の管理職などに適用されるケースがあります。

変形労働時間制:1か月や1年単位で労働時間を平均化し、1日や1週間の労働時間を柔軟に設定できる制度です。繁閑の差が大きい業種の管理職に適用されることがあります。

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自分がどの制度で働いていたのかを確認し、その制度に基づいて未払い残業代を計算する必要があります。弁護士などの専門家に相談するとともに、以下の記事も参考にしてみてください。

みなし残業代(固定残業代)に追加の残業代を請求できる6つのケース

 

会社と交渉する

5つめのステップは「会社と交渉する」です。

算定した請求額を基に、会社に対して未払い残業代の請求を行います。

できれば、労働問題に強い弁護士に相談し、残業代請求の内容証明の作成・交渉を依頼するのが望ましいでしょう。

というのは、単なる残業代の未払いと異なり、管理職の残業代請求は「実態が管理監督者であるか・否か」が争点となるからです。

会社側は、管理監督者に該当すると反論してくる可能性が高く、交渉が複雑化しやすいため、個人では対応し切れないケースが多いのです。

弁護士が代理人として請求することで、会社に与える印象も大きく変わります。弁護士の存在は、交渉を有利に進める大きな武器となるでしょう。

 

労働基準監督署に相談する

6つめのステップは「労働基準監督署に相談する」です。

会社が請求に応じない場合は、労働基準監督署に相談するという選択肢もあります。労働基準監督署は、違法な労働環境の改善を指導する役割を担っています。

全国の労働基準監督署は、厚生労働省のサイト「全国労働基準監督署の所在案内」 にて確認できます。

注意点として、労働基準監督署からの指導によって、会社に一定のプレッシャーを与えることはできますが、個別の紛争解決は、労働基準監督署の直接的な役割ではありません。

並行して弁護士に相談し、個別の法的措置も視野に入れて交渉を進めていくことが肝要です。

 

法的措置を検討する

7つめのステップは「法的措置を検討する」です。

会社との交渉が平行線をたどり、最終的に会社が任意の支払いに応じない場合は、法的措置による解決を試みます。

裁判所に支払いを求める訴訟を提起するか、労働審判を申し立てるかは、ケースバイケースで判断します。

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訴訟:正式な裁判手続きであり、判決に強制力があります。ただし、解決までに時間がかかり、費用も高くなる傾向にあります。

労働審判:訴訟に比べて手続きが簡易で、短期間で解決できる可能性が高いのが特徴です。ただし、基本的には話し合いでの解決を目指す手続きであるため、合意に至らなければ訴訟に移行します。

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いずれにせよ、法的措置に移行する場合には弁護士に相談し、適切な方法を選択することが重要です。

労働問題に精通した弁護士であれば、あなたの置かれた状況を踏まえ、最適な法的手段を提案してくれるはずです。

残業代請求・不当解雇に強いグラディアトル法律事務所

 

まとめ

本記事では「管理職の残業代」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

・「管理職=残業代が出ない」は間違い

・労働基準法規制の一部適用除外となるのは「管理監督者」

・管理監督者が保護されないのは自分で処遇を決められるから

・管理監督者=管理職ではなく 「名ばかり管理職」で権利のみ奪うのは違法

 「管理監督者」か「名ばかり管理職」か判断する基準として、以下を解説しました。

  1. (1)経営者と一体的な立場で仕事をしている
  2. (2)出社・退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない
  3. (3)その地位にふさわしい待遇がなされている

管理職が残業代請求を検討する際には、以下を念頭におきましょう。

  1. (1)管理監督者であっても深夜手当と有給休暇の特例はない
  2. (2)未払い賃金請求は5年(経過措置3年)で時効となる
  3. (3)我慢は美徳ではなく会社や後輩のためにならない

 

管理職が未払いの残業代を請求する流れとして、以下を解説しました。

  1. (1)証拠を集める
  2. (2)自分が管理監督者に該当するか確認する
  3. (3)(状況に応じて)弁護士に相談する
  4. (4)請求額を算定する
  5. (5)会社と交渉する
  6. (6)労働基準監督署に相談する
  7. (7)法的措置を検討する

立場上、行動に踏み出しにくいと感じる管理職の方もいるかもしれません。

しかし、未払いの残業代がある場合には、状況に応じて弁護士に相談しながら、粘り強く行動を起こしていきましょう。その勇気ある一歩が、明るい未来につながるはずです。

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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