サービス残業を訴えたい方必見|4つの方法と報復リスクへの対処法

サービス残業を訴えたい方必見|4つの方法と報復リスクへの対処法

「毎日残業しているのに、残業代が支払われない」

「上司に訴えても残業代未払いの状況が改善されない」

「サービス残業を訴えるにはどうしたらいいのだろうか?」

労働者は、残業時間に応じた残業代を請求する権利がありますので、サービス残業は明確な労働基準法違反です。労働者から声を上げることで、未払い残業代を取り戻すことも可能ですが、「訴えたら職場で報復されるのでは?」と不安に感じる方も少なくありません。

会社からの報復が不安なときは退職後に残業代請求をすることでそのようなリスクを回避できますが、弁護士に残業代請求を依頼する方法も会社からの報復を抑止する意味では有効な手段となります。

本記事では、

・サービス残業を訴える4つの方法
・サービス残業を訴えたときに想定される4つのリスク
・サービス残業を訴えたときに生じるリスクへの対処法

などをわかりやすく解説します。

泣き寝入りせず、自分の権利を守る一歩を踏み出すためにも、まずは本記事を参考にしてください。

サービス残業を訴える方法と相談先

サービス残業は、労働基準法に違反する状態ですので、サービス残業を訴えることで未払い残業代の回収や違法なサービス残業の状態が改善される可能性があります。

以下では、サービス残業を訴える方法と主な相談先を紹介します。

ケース・状況適した相談先主な対応内容・特徴
まずは社内で改善を試みたい場合社内(人事・労務部門)制度の見直し、勤怠管理の是正、管理職への指導など。内部での円満解決が期待できる。
社内では取り合ってもらえない場合労働基準監督署無料・匿名で相談可能。違法の疑いがあれば企業に是正勧告が出る。ただし、強制力に限界がある。
自分の代わりに残業代請求をしてもらいたい場合弁護士内容証明による任意交渉や、証拠整理、請求額の算定を代行。
話し合いが決裂した場合弁護士労働者の代理人として労働審判や訴訟に対応可能。

社内での相談(まずは内部解決)

サービス残業が発生したとき、最初に検討すべきは社内での相談です。人事部門や労務管理部門に状況を伝え、就業規則や賃金規程に基づいた適正な処理を求めてみるとよいでしょう。

社内での相談では、以下のような対応が期待できます。

・残業代の支払いに関する制度の見直し

・勤怠管理の改善(タイムカードの徹底など)

・管理職への是正指導

ただし、社内対応には限界があります。経営層が労働問題を軽視している場合、「証拠がない」「違法性はない」などと取り合ってもらえない可能性もあります。また、密告者扱いされて職場で無視されたり、陰湿な嫌がらせを受けたりすることもあるため、慎重な判断が必要です。

労働基準監督署に申告する(行政による是正)

社内で改善が見込めない場合は、勤務先所在地を管轄する労働基準監督署に申告するという手段があります。

労働基準監督署への相談は、窓口での面談相談だけではなく、電話やメールでの相談にも対応していますので、時間がないという方でも利用しやすいでしょう。労働基準監督署において労働基準法違反の疑いがあると判断した場合、事業所への調査を実施し、その結果、指導や是正勧告により状況が改善される可能性があります。

【メリット】

・無料で利用できる

・匿名申告が可能

・国の権限で企業に改善を促すことができる

【デメリット】

・強制力はやや弱く、会社が是正しないケースもある

・申告から是正まで時間がかかる場合もある

・証拠が不十分だと動いてもらえないことも

弁護士を通じて未払い残業代請求(任意交渉・内容証明)

より確実に残業代を回収したい場合は、労働問題に強い弁護士に依頼し、任意交渉を行う方法が有効です。特に、証拠がそろっている場合は、弁護士名での内容証明郵便が強いプレッシャーとなります。

労働基準監督署では、労働者の代理にとして未払い残業代の回収には対応してくれませんので、労働者個人での対応に限界を感じるときは弁護士への相談を検討した方がよいでしょう。

【メリット】

・弁護士名で通知することで、企業側が真剣に対応する

・裁判にせずに解決できる可能性が高まる

・成功報酬型(着手金無料)の弁護士であれば、経済的負担を抑えられる

【デメリット】

・弁護士費用が発生する

・和解できない場合は次の法的手段に進む必要がある

労働審判・民事訴訟(裁判所による法的手段)

会社との任意交渉が不調に終わったときは、交渉ではなく法的手段に移行する必要があります。サービス残業を訴える手段としては、主に労働審判と民事訴訟の2種類があります、それぞれ異なる特徴がありますので、事案に応じた最適な手段を選択することが大切です。

【労働審判】

・労働審判は、裁判よりも簡易・迅速に解決を図る制度
原則3回以内の期日で審理し、調停・審判の形で終結
・審判に不服があるときは、異議申し立てにより訴訟に移行する

【民事訴訟】

・当事者の合意ではなく裁判所が最終的な判断を下す
・解決までには1年程度の期間がかかる
・判決確定後も会社が支払いに応じなければ強制執行も可能

会社との話し合いの余地が残されているようであれば、迅速かつ柔軟な解決が可能な労働審判を選択した方が早期解決が期待できますので、手続き選択の目安にしてみてください。

法的手段によりサービス残業を訴える場合の手順

法的手段によりサービス残業を訴える場合の手順

サービス残業の問題を法的に解決するには、段階的な手続きを踏む必要があります。以下では、サービス残業を訴える場合の具体的な手順と注意点を説明します。

サービス残業の証拠を集める

訴えるためには、まず「残業が実際に行われたこと」「その時間に対して賃金が支払われていないこと」を証明する必要があります。

サービス残業を立証するための証拠として有効なものとしては、以下のようなものが挙げられます。

・タイムカードやICカードによる出退勤記録
・パソコンのログオン・ログオフ時間
・日報や業務報告書、チャット履歴
・上司の指示が記録されたメール・LINEのスクリーンショット
・給与明細や就業規則、賃金規程

証拠は、客観的なものであるほどサービス残業の立証には効果的です。スマホのメモや日記でも状況によっては証拠になり得るため、可能な限り記録を残しておきましょう。

未払いかんれん残業代の計算をする

サービス残業の証拠が確保できたら、次は証拠に基づいて未払い残業代の金額を計算します。具体的な計算式は、以下のとおりです。

残業代=1時間あたりの基礎賃金×割増賃金率×残業時間

このうち「1時間あたりの基礎賃金」は、以下のように計算します。

1時間あたりの基礎賃金=月給÷1か月の平均所定労働時間
1か月の平均所定労働時間=
(365日-1年間の所定休日日数)×1日の所定労働時間÷12か月

なお、「月給」には以下の手当は含まれません。

・家族手当
・通勤手当
・子女教育手当
・住居手当
・臨時に支払われた手当
・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

また、残業代を計算する際に適用される割増賃金率は、労働の種類に応じて以下のようになっています。

労働の種類内容割増賃金率
時間外労働法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えたとき25%以上
時間外労働が1か月60時間を超えたとき50%以上
休日労働法定休日(週1日)に労働したとき35%以上
深夜労働午後10時から翌午前5時までの間に労働したとき25%以上
深夜残業深夜時間帯(午後10時から翌午前5時まで)に残業をしたとき50%以上

会社に対して内容証明郵便を送付して未払い残業代を請求する

未払い残業代計算ができたら、会社に対して未払い残業代請求を行っていきます。

その際は、内容証明郵便を利用して残業代請求をするのが一般的です。これは、内容証明郵便という特殊な形式の書面を利用することで会社に対してプレッシャーを与えられるとともに、時効の完成を阻止することができるからです。

内容証明郵便には、請求金額と支払期日、支払いがない場合の対応などを明記して会社側の回答を待ちましょう

会社と交渉をする

内容証明郵便を送付した後は、会社との任意交渉を行います。

会社が未払い残業代の支払いに応じる意向を示したときは、金額、支払時期、支払い方法などの細かい条件の話し合いを行い、合意がまとまったときは必ず書面を作成するようにしてください。

これにより後日トラブルが生じることを避けることができます。

交渉が決裂したときは労働審判の申立て

交渉で合意に至らない場合は、労働審判を申し立てることができます。これは裁判所を通じて労使紛争を迅速に解決する制度で、原則3回以内の期日で結論が出るのが特徴です。費用や時間的負担も通常の訴訟より軽く、法的拘束力のある審判や調停が行われます。

ただし、審判に異議がある場合は、不服申し立てにより効力が覆り、通常の訴訟手続きに移行する点に注意が必要です。

最終的には訴訟を提起して解決を図る

労働審判でも解決できない場合、最終手段として民事訴訟を提起することになります。

裁判で勝訴すれば、残業代の支払義務が法的に確定し、会社の資産を差押えるといった強制執行も可能となります。

訴訟には時間と費用がかかりますが、サービス残業を訴えるもっとも強力な手段といえるでしょう。

サービス残業を訴えたときに想定される4つのリスク

サービス残業を訴えたときに想定される4つのリスク

サービス残業を訴えることは、法的に正当な行動ですが、残念ながら職場での報復など、現実的なリスクも存在します。以下では、訴えた場合に実際に起こりうる4つのリスクについて解説します。

職場で嫌がらせを受けるリスク

サービス残業を訴えたことで生じるリスクとしてよくあるのが、同僚や上司からの嫌がらせです。たとえば、「会議に呼ばれない」「業務連絡をもらえない」「仕事を与えられない」などの無視や排除、または「陰口を言われる」「執拗にミスを責められる」といった精神的な圧力をかけられるケースもあります。

これは、いわゆる「職場いじめ」や「パワハラ」に該当し、内容次第では法的責任を問うことも可能です。

不当な配置転換をされるリスク

報復の一環として、明らかに不自然な配置転換をされるケースもあります。たとえば、急にまったく経験のない部署に異動させられたり、通勤が困難な遠方の支店に転勤を命じられたりするといったケースです。

こうした配置転換が合理性を欠く場合、権利の濫用として配置転換が無効と判断される可能性もあります。不合理な配置転換をされたときは、泣き寝入りするのではなく専門家である弁護士に相談しながら、無効を主張していくべきでしょう。

違法な退職勧奨を受けるリスク

「これ以上会社にいるのはお互いのためにならない」「空気を読んで退職してくれ」などと、あたかも本人の意思による自主退職を促すような発言も典型的なリスクです。

明確に「辞めろ」と言わないことで不当解雇を回避する狙いがありますが、内容や経緯によっては「退職強要」として違法とされる可能性があります。

不当解雇されるリスク

最後にもっとも深刻なリスクとして、不当解雇があります。

残業代請求を理由とする解雇は、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上も相当とはいえませんので、正当な解雇の要件を満たさず無効と判断されます。解雇された場合でも、労働審判や裁判を通じて、地位の確認や損害賠償請求を行うことが可能です。

サービス残業を訴えたときに生じるリスクへの対処法

サービス残業を訴えたときに生じるリスクへの対処法

万が一、サービス残業を訴えたことで職場での不利益や嫌がらせを受けた場合でも、適切な対処をすることでリスクを軽減することができます。ここでは、サービス残業を訴えたときに生じるリスクに対する有効な対応策をご紹介します。

退職後に残業代請求をする

報復リスクを避ける方法の一つが、退職してから未払い残業代を請求するという方法です。退職後であれば、職場での嫌がらせや不当な配置転換、解雇といった不利益を受けることがなく、精神的にも落ち着いて対応できるというメリットがあります。

ただし、この方法には注意点もあります。それは「時効」です。

未払い残業代請求の時効は、各給料支払日の翌日から3年とされていますので、のんびりと準備を進めていると、一部または全部の残業代が時効で消滅してしまう可能性があるのです。

そのため、退職後に残業代請求をするなら退職する前から証拠を集めておき、退職後すぐに残業代請求に着手することが重要です。

弁護士に依頼する

もう一つ有効な対処法が、労働問題に詳しい弁護士に依頼することです。

弁護士が代理人として介入することで、企業側も不用意な報復行為を行いにくくなりますので、報復リスクを最小限に抑える方法として有効です。仮に違法な対応があった場合でも、弁護士が迅速に法的措置を講じることができますので、万が一の場合でも安心です。

また、弁護士であれば、残業代請求の書類作成や証拠の整理、交渉・訴訟まで一貫してサポートしてくれます。自分で動く不安や負担を軽減し、安心して請求手続きを進めることができますので、「自分だけでは会社に太刀打ちできない」と感じる方こそ、まずは弁護士に相談してみましょう。

サービス残業を訴える際に弁護士に依頼するメリット

サービス残業を訴える際に弁護士に依頼するメリット

サービス残業を訴える際には、以下のようなメリットがありますので、弁護士に依頼することをおすすめします。

証拠収集や残業代計算のサポートができる

未払い残業代請求の事案では、証拠の有無によって勝ち負けが決まるといっても過言ではありません。それだけ証拠が重要といえますので、まずは適切な証拠を集めることが重要です。

弁護士に相談すれば、どの証拠が有効か、どのような追加資料が必要かといったアドバイスを受けることができます。また、会社に対する証拠開示請求や裁判所の証拠保全手続きなどを利用して証拠を確保することも可能です。

さらに、残業代の計算に関しても、賃金台帳や就業規則をもとに、正確な金額を算出してもらえます。割増賃金率や深夜残業・休日出勤など、法的ルールに従って算出された請求額は、交渉や訴訟の場でも説得力のある主張になるでしょう。

労働者に代わって会社と交渉ができる

企業との交渉は、精神的にも非常にプレッシャーがかかります。特に、相手が組織であり、法務担当者や顧問弁護士が対応してくる場合、個人で対応するのは難しいケースが多いでしょう。

そのような場合でも弁護士を代理人として立てれば、会社との交渉をすべて任せられますので精神的負担を軽減しながら、冷静かつ論理的な主張をしてもらえます。

また。弁護士が交渉に入ることで、企業側も軽視できなくなり、誠実に対応するようになる傾向があります。これにより、裁判に進まずに解決できる可能性が高くなり、時間や費用を抑えることにもつながります。

労働審判や訴訟にも対応可能

仮に交渉がまとまらず、労働審判や訴訟に発展したとしても、弁護士であれば手続き全般を任せることができます。

必要な書類の作成や証人尋問の準備、裁判所への出廷など、複雑な手続きを的確に進めてもらえるため、安心して任せることができるでしょう。

サービス残業を訴えるときはグラディアトル法律事務所に相談を

サービス残業を訴えるときはグラディアトル法律事務所に相談を

サービス残業や未払い残業代の問題に直面したとき、「本当に請求できるのか」「証拠が足りない気がする」「会社とトラブルになるのが怖い」といった不安を抱える方は多くいらっしゃいます。そのような方にこそ、専門家への相談をおすすめします。

グラディアトル法律事務所では、労働問題、特に未払い残業代の請求に関して豊富な実績を有しています。過去には、700万円以上の残業代を回収できたケースもありますので、サービス残業でお困りの方は、ぜひ当事務所にお任せください。これまでの経験に基づき、依頼者一人ひとりの事情に応じた最善の解決策をご提案いたします。

「証拠が不十分かもしれない」「いつの残業が請求対象になるのか分からない」といった状態でも問題ありません。当事務所では、証拠の有無や内容に応じて、どのように請求を組み立てていくべきかを丁寧にアドバイスいたします。証拠の整理や残業代の計算も、弁護士が一緒に行いますので、どうぞ安心ください。

当事務所では、初回相談は無料で承っております。「とりあえず話だけでも聞いてみたい」「自分のケースが対象になるのかを知りたい」といった段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。労働者の立場に寄り添い、最後まで全力でサポートいたします。

まとめ

サービス残業を訴えることは、労働者として当然の権利を主張する正当な行為です。

しかし現実には、報復リスクや手続きの煩雑さなど、多くの不安や障壁が伴うのも事実です。だからこそ、正しい知識を持ち、状況に応じた方法を選ぶことが重要です。

会社に対する未払い残業代請求をお考えの方は、実績と経験豊富なグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTikTokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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