「売春防止法で処罰対象となる行為には何がある?」
「売春防止法で処罰対象となっている行為ごとの罰則を知りたい」
「売春防止法違反の量刑相場や重い罰則が科される事情とは?」
売春防止法違反で逮捕・起訴されるとほぼすべての事件が有罪になるため、罰金や懲役などの罰則が科されることになる。一口に売春防止法違反といっても売春防止法ではさまざまな行為が処罰対象となっており、行為ごとに適用される罰則も異なっている。
また、同じ行為であっても具体的な事情によっては法定刑の範囲内でより重い罰則が適用されることもあるため、売春防止法違反を犯してしまったときはご自身の行為に対してどのような罰則が適用されるのかを把握しておくことが重要である。
本記事では、
・売春防止法で処罰対象となる9つの行為と罰則
・売春防止法違反で適用される罰則の相場
・売春防止法違反で重い罰則が科される可能性がある事情
などについて詳しく解説する。
売春防止法違反の疑いをかけられてしまった、家族が売春防止法違反で逮捕されてしまったという方は、本記事を参考にしてすぐに弁護士に相談するようにしてほしい。
売春防止法は、主に売春を助長する行為を処罰することで、売春の防止や性風俗の維持を図ることを目的とする法律である。
売春防止法では、売春を「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定義しており、誰であっても売春をすることが禁止されている。もっとも、売春防止法は、主に売春を助長する行為を処罰対象にしているため、売春自体には罰則が設けられていない。
すなわち、売春をしたとしてもそれだけであれば処罰されることはないということである。
ただし、後述するように売春を助長する行為に関しては売春防止法違反として処罰対象になっているため、罰則が適用されることになる点に注意が必要である。
以下では、売春防止法違反で処罰対象となる9つの行為とその罰則について説明する。
違反行為 | 内容 | 法定刑 |
---|---|---|
売春行為の勧誘 | 公衆の目に触れる方法で売春の勧誘をする | 6月以下の懲役または1万円(※2万円)以下の罰金 |
売春行為の周旋 | 売春の周旋をする | 2年以下の懲役または5万円以下の罰金 |
困惑等による売春 | 相手が正常な判断ができない状態を利用して売春をさせる | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金(暴行・脅迫がある場合は両方) |
対償の収受 | 売春の対償を収受・要求・約束をする | 5年以下の懲役および20万円以下の罰金 |
前貸 | 売春をさせる目的で財産的利益を供与する | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
売春をさせる契約 | 売春を内容とする契約を結ぶ | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
場所の提供 | 事情を知りながら売春場所を提供する | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金(業としていた場合は7年以下の懲役または30万円以下の罰金) |
売春をさせる業 | 管理・指定場所に人を住まわせて売春させる | 10年以下の懲役および30万円以下の罰金 |
資金等の提供 | 売春場所提供や管理売春に資金・建物などを提供 | 5年以下の懲役および20万円以下の罰金(管理売春は7年以下の懲役および30万円以下の罰金) |
売春をする目的で、以下のような勧誘行為をすると売春勧誘罪で逮捕される可能性がある。
・公衆の目に触れる方法で人を売春の相手に勧誘する
・売春の相手となるように勧誘するため、道路や公共の場所で人の身辺に立ちふさがったり、つきまとう
・公衆の目にふれるような方法で客待ちをし、または広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引する
売春勧誘罪が成立すると6月以下の懲役または2万円以下の罰金が科される。
なお、法定刑は1万円以下の罰金であるが、罰金等臨時措置法2条1項により「2万円以下の罰金」に修正されている。
売春行為の周旋とは、売春をする人と買春をする人の間に立って売春の仲介を行う行為をいう。以下のような行為をすると売春周旋罪で逮捕される可能性がある。
①売春の周旋をする
②売春の周旋をする目的で行う以下の行為
・売春の相手方となるように勧誘する
・売春の相手となるように勧誘するため、道路や公共の場所で人の身辺に立ちふさがったり、つきまとう
・広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引する
売春周旋罪が成立すると2年以下の懲役または5万円以下の罰金が科される。
以下のように相手が正常な判断ができない状態を利用して売春をさせた場合、困惑などを利用して売春させる罪で逮捕される可能性がある。
①人を欺いて売春させる
②人を困惑させて売春させる
③親族関係による影響力を利用して売春させる
④人を脅迫して売春させる
⑤人に暴行を加えて売春させる
困惑などを利用して売春させる罪が成立すると「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」(上記①~③)か「3年以下の懲役および10万円以下の罰金」(上記④⑤)が科される。
上記の困惑などを利用して売春させる罪を犯した者が以下のいずれかの行為をした場合、困惑などを利用して売春させて対償を収受する罪により逮捕される可能性がある。
・売春の対償の全部または一部を収受する
・売春の対償の全部または一部を要求する
・売春の対償の全部または一部を約束する
対償の収受等罪が成立すると5年以下の懲役および20万円以下の罰金が科される。
ただし、親族関係による影響力を利用して、売春の対償の全部または一部の提供を要求した場合に限り、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科される。
人に売春させる目的で前貸しなどの方法により金銭などの財産的利益を供与した場合、前貸等罪により逮捕される可能性がある。
前貸等罪が成立すると3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科される。
人に売春させることを内容とする契約をした場合、売春契約罪により逮捕される可能性がある。
売春契約罪が成立すると3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科される。
その場所で売春が行われることを知りながら売春場所の提供をした場合、売春場所提供罪により逮捕される可能性がある。
売春場所提供罪が成立すると3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科される。ただし、売春場所の提供を業として行っていた場合は、より悪質性が高いことから7年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることになる。
自分が占有・管理・指定する場所に人を居住させて、売春をさせることを業として行った場合、管理売春罪により逮捕される可能性がある。
管理売春罪が成立すると10年以下の懲役および30万円以下の罰金が科される。
以下のような行為をすると資金等の提供罪が成立し、逮捕される可能性がある。
①事情を知りながら業として売春場所の提供をするための資金、土地、建物を提供する
②事情を知りながら管理売春に必要な資金、土地、建物を提供する
①の法定刑は、5年以下の懲役および20万円以下の罰金、②の法定刑は7年以下の懲役および30万円以下の罰金となっている。
売春防止法違反に対する罰則の相場は、違反内容の悪質性や態様によって大きく異なる。
軽微な違反、たとえば個人による売春の勧誘や単発的な周旋などの場合は、略式起訴による罰金刑が多く、罰金額はおおむね10万円~50万円程度である。初犯で反省の意思が見られる場合には、警察による警告や不起訴処分となることもある。
一方、売春場所の提供や管理売春など、反復継続的または業として行われた違反行為については、公判請求され懲役刑が科される可能性が高い。相場としては、懲役6か月〜3年程度が多く、執行猶予が付くケースも少なくないが、前科がある場合や組織的・営利的な要素が強い場合には、実刑判決(懲役1年以上)が下されることもある。
以上のように、売春防止法違反の罰則は、違反行為の内容と情状によって「罰金刑で済む場合」から「懲役刑となる場合」まで幅があり、その相場も大きく異なる点に留意すべきである。
売春防止法違反を犯し、以下のような事情がある場合には、法定刑の範囲内で重い罰則が適用される可能性がある。
個人的に売春の勧誘をしているだけであれば悪質性は低いが、複数の女性を集めて組織的に売春を行っているような事案になると非常に悪質性が高いため、より重い罰則が適用される可能性がある。
特に、売春防止法では「業として」行っていた行為に対しては、通常の違反行為に比べて重い罰則を定めているため、組織的な犯行は、厳しい処罰を受けることになるだろう。
売春防止法違反の中でも管理売春は、法定刑が「10年以下の懲役または30万円以下の罰金」となっていることからもわかるように非常に重い罰則が定められている。これは、自分が占有・管理・指定する場所に人を居住させて、業として売春をさせることが悪質性の高い行為だと考えられているからである。
このように売春防止法違反の中でも悪質性の高い行為をすると重い罰則が適用されることになる。
売春防止法に違反したとしても1回限りの行為なのか、数十回や数百回繰り返しているのかでは、罪の重さが異なってくる。当然、後者のような反復的な違反があるケースの方が、より重く処罰される傾向がある。
反復的な違反であるかどうかは、警察による取り調べで明らかにされていくことになるが、不必要に過去の違反行為まで話してしまうと厳しい処罰を受ける可能性が高くなるため、取り調べに対する対応は慎重に行わなければならない。どのように供述すればよいか迷うときは、警察に話をする前に弁護士に相談するべきである。
売春防止法違反の量刑を判断する際の重要な要素として、前科の有無が挙げられる。
初犯である場合と前科がある場合とでは、当然後者の方が再犯のおそれが高いと評価されるため、初犯に比べて厳しい処罰を受ける可能性がある。
特に、直近の前科がある場合や同種前科がある場合には、より重い罰則が適用される事情となる。
売春防止法違反を犯してしまった場合、具体的な違反行為や事情によっては重い罰則が適用される可能性がある。また、起訴されて実刑判決になれば、今まで通りの生活を送ることができず、刑務所に収監される可能性もある。
このような厳しい処罰を避けるには、早期に弁護士に依頼して、効果的な弁護活動をしてもらうことが重要である。ただし、依頼する弁護士は、弁護士であれば誰でもよいというわけではない。売春防止法違反の弁護をするには売春防止法に関する知識や弁護経験が不可欠であるため、知識や経験豊富な弁護士を選ぶべきだろう。
グラディアトル法律事務所は、東京と大阪の2拠点を中心に活動しており、ナイトビジネス業界で全国1000件以上の解決実績がある。売春防止法違反に関する刑事弁護の経験も豊富であるため、早期釈放や不起訴処分を獲得するためのポイントを熟知している。
また、当事務所では、24時間365日相談受付をしているため、深夜に売春防止法違反で逮捕されてしまったという場合でもすぐに対応することが可能である。逮捕後すぐに対応できるかどうかによって、今後の処分内容が大きく左右されることから、逮捕されたときはすぐに当事務所まで連絡してもらいたい。
売春防止法では、売春自体には罰則が適用されないが、売春を助長する行為に関しては具体的な行為ごとに罰則が定められている。そのため、売春の勧誘、周旋、場所提供、管理売春などの行為をしてしまうと逮捕・起訴されて、厳しい処分を受ける可能性がある。
少しでも有利な処分を希望するなら早期に弁護士に依頼することが重要であるため、売春防止法違反を犯してしまったときは、すぐにグラディアトル法律事務所まで相談してもらいたい。