<取材ファイル>「王族の末裔」かたり金集め 「建国」投資詐欺 被害総額40億円か

ニュース内容

数十兆円分の海外資産を回収して英国内に「ブライトン王国」を建国しようとする王族の末裔(まつえい)を支援してほしい-。にわかに信じ難い投資話による詐欺事件の裁判が、福井地裁で開かれている。法廷での証言や関係者への取材から、詐欺グループは、東京都内の女性の五千五十万円を含め、全国で数百人から計四十億円近くを集めたとみられる。 (梶山佑)

「王見家という王族の埋蔵金がバチカン市国にある。末裔の王見禎宏(さだひろ)氏は身分を隠してきた。資産を移すためブライトン銀行の設立費用や渡航費を支援してほしい」

東京都の五十代女性は二〇一三年十月、知人に港区内のホテルに誘われ、一緒に現れたグループの女から説明を受けた。皇室関係の勤務経験があり、興味をそそられた女性は「自分や家族の資産を守ることになる。年末までに一・五倍にして返す」とたたみかけられ、親族から借金し計五千五十万円を渡した。女性は法廷で「とにかく返してほしい」と訴えた。

福井県の六十代女性は、義母がグループに八百万円を渡していたことを昨年、義母の死去後に知った。「なんでこんな話にだまされたのか」と驚く。

起訴状によると、王見禎宏被告(66)=住所不定=と、五百旗頭(いおきべ)正男被告(71)=東京都文京区目白台一=は共謀し、一三年、都内の女性ら二人から計六千百五十万円をだまし取ったとされる。検察は、五百旗頭被告が王見被告を利用した構図とみる。

王見被告の証言によると、同被告は広島県生まれで、父親から「王見家は孝明天皇から名字を賜った」と聞いて育った。三重県伊勢市の大学で歴史学を学ぶうち、伝承を確信。その後、不動産業に携わり、一九九三年ごろ上京。九六年、五百旗頭被告に借金した縁で行動を共にするように。

二〇〇二年、王見被告の当時の自宅に英文に和訳が付いた「欧州王室連合からの書簡」がファクスやメールで届くようになったという。「王見の名でさまざまな財産が預けられている」「回収には資金が必要」と集金を指示する内容で、「貴君の代理人」として五百旗頭被告の名前があった。王見被告は知人に「書簡」を見せるなどして金集めに協力する支援者を増やし、五百旗頭被告に送金した。

検察は、五百旗頭被告が書簡を偽造し、王見被告からの送金は月七十万円の都内のマンションの家賃や遊興費に使ったと指摘。両被告は起訴内容を否認するが、五百旗頭被告は偽造を一部認め、「王見さんの力を生かすため。全てがうそではない」と述べた。

現在も支援者の一部は王見被告を信じている。千葉県の会社経営の男性(72)は取材に「全国で五百人近くの同志がいる。これまで三十九億円を支援した。王見さんの復帰を待っている」と語った。判決は四月以降に言い渡される。

2020年3月24日 東京新聞

弁護士からのコメント

今回のニュースは、王族の末裔を支援してほしいとの投資詐欺事件の裁判が開かれており、詐欺グループは全国で数百人から計四十億円近くを集めたとみられるものです。

投資詐欺は昔から多く行われていますが、投資に勧誘する手口は様々です。

一般的には、元本保証や高配当・高利息をうたい、いわゆるタンス預金や金融機関に預けているより得、利益になると誘い、出資させる手口です。

1.支援型投資詐欺の悪質性(大きな夢や希望をかたる点)

この点、今回のニュースのように資産面の増加を騙るのみでなく、投資話に大きな夢や希望を含ませ支援というかたちで援助者を募る投資詐欺(「支援型投資詐欺」)は、ある意味タチが悪いといえます。

というのも、資産面の増加だけで勧誘するものであれば、約束していた高配当や高利息の支払いが滞れば、投資詐欺ではないかとの疑いの目を持つことができます。

他方、本来は投資話であるにもかかわらず、支援や援助で勧誘する支援型投資詐欺は、その夢や希望が実現されないことにはリターンがないことを投資者が認識しています。

そして夢や希望が大きなものであればあるほど、実現するにもスムーズにいかず障害や問題が起こるであろうとの考えに投資者は陥りやすいです。
それゆえ投資者は予定した支払日が延長になったとしても、致し方ないと受け入れる傾向にあります。

すなわち、当初約束していた話と違っても投資詐欺ではないかとの疑いの目を持ちにくい分、詐欺被害が拡大しやすい点で悪質ということです。

なお支援型投資の詐欺師が大きな夢や希望でかたる内容として多いのは、今回のように歴史やロマンを感じさせるもののほか、すべてのガンが治る特効薬の開発、新たなエネルギーの発明など、現在の世の中にないものを生みだすという話が見受けられがちです。

2.支援型投資詐欺の悪質性(支援や援助という言葉を利用する点)

また「支援」や「援助」という言葉を利用すること自体も、悪質な手口といえます。

どういうことかというと、「投資」という言葉には欲深いイメージもある上に、投資詐欺だったとなれば「お金に目がくらんだ結果」と思われることになるでしょう。

一方、「支援」や「援助」という言葉には寄付やボランティアに近い響きがある上に、投資詐欺だったとしても「信じてよいことをしたのに騙された結果」と思われることになるでしょう。

このような言葉の印象の違い、仮に失敗に終わっても自らや他者に言い訳がつきやすいという点は、出資する心理的ハードルを下げさせる方向に傾かせ、その意味で悪質なのです。

言い換えれば、投資者にさも善行をしているかのように錯覚させることで出資金を騙し取るところがタチが悪いということです。

実際「支援」や「援助」という言葉を使った詐欺は、今回のニュースと逆パターン、支援するからと嘘をつき金銭を騙し取ったケースですが、最近もありましたのでよければご参照ください。

3.支援型投資詐欺に遭わない対策

基本的には、「世の中にうまい話はない」と認識し、うまい話であればあるほど疑ってかかるべきです。
今回のニュースのように、大きな夢や希望をかたり、支援や援助という言葉を使う支援型投資話には特に注意が必要です。

もし支援型投資に勧誘された場合には、自らだけで判断せず家族や友人・弁護士などに相談しましょう。
第三者に相談し意見をもらうことで、未然に詐欺被害を防止できることも十分あり得るからです。

最後に支援型投資詐欺をはじめ詐欺被害に遭ったかもと思った際には、遠慮なく当事務所にご相談ください。

Bio

弁護士 刈谷龍太

グラディアトル法律事務所代表弁護士。
中央大学法科大学院修了。2012年弁護士登録。
離婚・労働・ネット・消費者被害など一般向けのトラブルから、企業法務や経営サポートなど幅広く担当。