【2021年最新版】就活セクハラの実例・実態と対処法を弁護士が徹底解説!!

弁護士 若林翔
2021年06月07日更新

つい先日、就活・インターンシップでのセクハラについてのニュースが大きな話題となりました。

就活やインターンシップにおいて、学生が会社の採用担当者などからセクハラの被害を受ける事例が少なからず起きているようです。

後述する厚生労働省の調査では、就活中・インターン中のセクハラ被害者は4人に1人という驚きの調査結果が出ています!

本記事では、就活セクハラの実態・実例を解説しつつ、被害にあった場合には、どのような対処法が取れるのか、加害者や会社に対して慰謝料等の損害賠償請求ができるか、強制わいせつ罪等で刑事責任を追及できるのか、解説します。

就活セクハラ・インターンシップセクハラの実態と実例

令和3年4月30日、厚生労働省より「職場のハラスメントに関する調査」についての報告書が公表されました。

今回の調査では、調査対象として、就職活動中やインターンシップ参加中のセクハラについても調査がされました。

その結果、就職活動中やインターンシップ参加中のセクハラ(就活等セクハラ)を経験した人の割合が25.5%、約4人に1人であったことが明らかになりました。

就活等セクハラの内容で最も多かったのが「性的な冗談やからかい」(40.4%)でした。

次いで、「食事やデートへの執拗な誘い」(27.5%)、「性的な事実関係に関する質問」(23.6%)という結果となっています。

そして、就活等セクハラを受けた場面で最も多かったのは、「インターンシップに参加したとき」(34.1%)、次に、「企業説明会やセミナーに参加したとき」(27.8%)となっています。

採用面接などの就職活動のときよりも、インターンシップや企業説明会(セミナー)に参加したときの方が多かったことが明らかになりました。

また、つい最近でも、東証一部上場企業の近鉄グループホールディングス(大阪府大阪市)の採用担当者が就職活動中の女子学生に肉体関係を迫るなど不適切な行為をしていたことが発覚し、社会問題化しました。

「厳重な処分を行う」近鉄採用担当者が就活中の女子学生に“不適切行為”

東証一部上場企業の近鉄グループホールディングス(大阪府大阪市)。同社の採用担当者が就職活動中の女子学生に肉体関係を迫るなど不適切な行為を働いていたことが、「週刊文春」の取材でわかった。近鉄は採用担当者に厳重な処分を行うとしている。

近鉄グループHDは主力の鉄道事業のほか、あべのハルカスなどを運営する近鉄不動産や、近鉄百貨店などを傘下に抱えている。今年3月期のグループ売上高は約7000億円で、関西主要私鉄5社ではトップだ。

その近鉄の採用担当者・X氏に、不適切な行為を迫られたことを証言するのは、就職活動中の大学4回生、A子さん。X氏から「エントリーシートの添削をしてあげる」などと繰り返し誘われ、今年2月23日夜、大阪市内の和食屋で一緒に食事をすることになったという。その後、酔いが回った彼女がX氏にタクシーで連れて行かれたのは、ラブホテルだった。

文春オンライン 2021.6.2 https://news.yahoo.co.jp/articles/b9792f54ca00de1a7d334c244f859d0687e2fd76

 

セクハラとは?

セクハラとは、Sexual harassment(セクシャル・ハラスメント)を省略した呼び方で、一般に、性的な言動によって相手に対し不利益や不快感を与えるものを意味します。

法律では、セクハラについて、男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)に規定がおかれています。

男女雇用機会均等法11条1項では、職場における性的な言動として、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害される」と規定されています。

男女雇用機会均等法

(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)
第十一条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

ここでいう、「性的な言動」の解釈については、厚生労働省が「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」という指針を出しています。

これによると、「性的な言動」は、性的な事実関係を尋ねたり、性的な内容の情報を意図的に流布したりするなどの「性的な内容の発言」と、性的関係を強要すること、必要なく身体に触ること、猥褻な図画を頒布することなどの「性的な行動」を指すと考えられています。

そして、この言動を行う者には、労働者を雇用する事業主、上司、同僚に限らず、取引先等の他の事業主又はその雇用する労働者、顧客、患者又はその家族、学校における生徒等もなり得ると考えられています。

なお、この法律や指針を見ても、「職場」や「労働者」について規定はしているものの、「就職活動」や「インターンシップ」をしている人については明記されていません

そのため、就活等をしている人は、この法律や指針の対象外とも考えられそうです。

しかし、「就職活動」や「インターンシップ」をしている学生なども職場で活動する者であって、適切な職場環境を享受されてしかるべきです。

したがって、就活等をしているという人もこの法律や指針に含まれると考えることができるでしょう。

就活セクハラ・インターンシップセクハラの対処法と責任追及

悲しいことに、現状では就活やインターンシップの場面でセクハラの被害にあう人が多くいます。

それでは、セクハラ被害にあってしまった際には、どのような対処法があるのでしょうか?

法的な責任追及としては、刑事責任の追及民事責任の追及(慰謝料等の損害賠償請求)という方法があります。

前者は加害者に対して逮捕・刑事処罰を求めるというもので、後者は加害者本人や会社に対して損害賠償請求をするというものです。

刑事・民事のいずれの責任追及をしていくにしても、セクハラの証拠が重要になってきます。

以下では、それぞれの法的責任追及について解説し、セクハラの証拠収集について解説をしていきます。

就活セクハラ・インターンシップセクハラの刑事責任追及

身体を触られたり、性交渉を強いられたりした場合、これらの行為は、強制わいせつ罪(刑法176条)や強制性交等罪(刑法177条)にあたり、被害者は、被害届や告訴することにより、刑事上の責任を追及することができます。

実際に、懇親会やOB訪問の際にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつ罪で逮捕されたような事案もあります。

刑法

(強制わいせつ)
第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

(準強制わいせつ及び準強制性交等)
第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

 

就活セクハラ・インターンシップセクハラで会社にも慰謝料を請求する方法(民事責任追及)

就活生やインターン生に対するセクハラ行為は、民事上、不法行為(民法709条)にも該当しますので、慰謝料などの損害賠償請求をすることができます。

民法

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

また、会社がセクハラ被害に対して何らの対処もしていなかった場合などには、会社に対しても債務不履行(民法415条)や不法行為があったとして、慰謝料などの損害賠償請求をすることができます。

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

インターンシップをしている場合には、会社との間で短期間の雇用契約等の契約をしているので、債務不履行に基づく損害賠償請求ができます。

他方で、就活生の場合には、会社との間にはまだ契約が成立していないことが多いでしょうから、会社に対する債務不履行の損害賠償請求は難しいでしょう。

もっとも、会社の不適切な対応など、会社の行為自体が不法行為に該当する場合や、セクハラ加害者の行為の使用者責任(民法715条)として損害賠償請求ができる場合が多いでしょうから、就活セクハラの場合でも、会社に対する責任追及はできるでしょう。

(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

 

就活セクハラ・インターンシップセクハラの証拠を確保する!

セクハラが大勢の見ている場所で行われることはほとんどありません。

周りに社員がいない状況であったり個室での飲食だったりと人目につきにくい環境で行われることがほとんどです。

そのため、セクハラがあったことを証明することが非常に困難です。

特に、就活等をしている人の場合、証明の困難性が高くなります。

そこで重要となってくるのが、「証拠」です。

たとえば、相手とのメールやSNSでのやりとり録音データなどがあげられます。

その他にも、日記やメモ、親しい人とのメールやSNSのやりとりや投稿などもあります。

なお、どの記録が証拠として使えるかについては、法律的な視点からの検討も必要となります。

ですので、被害を受けた場合には、やりとりを消さず、資料を持って法律事務所に相談に行かれることをお勧めします。

また、もしセクハラ被害を受けそうな場合には、損害賠償など考えていない場合であっても、今後のために、証拠を残しておく方が良い場合が多いです。

実際、何度もセクハラ被害に遭っていたにもかかわらず、証拠を残すことができておらず、いざ慰謝料を請求しようという段階で証拠がなく、慰謝料請求ができなかったといったケースもあります。

そのため、慰謝料請求などを考えていない場合であっても、セクハラ被害を受けている場合、法律事務所に相談に行かれることをお勧めします。

就活セクハラ・インターンシップセクハラの実例・実態と対処法まとめ

セクハラ行為が、社員に対するものでも就活やインターンシップ等をしている人に対するものでも、個人の権利・自由を侵害する違法な行為であることには変わりありません。

内容によっては相談しにくいことも多いかとは思いますが、信頼できる人や専門家である弁護士に相談することで、解決の糸口が掴めることができる場合もあります。

「こんなことで」とは思わずお気軽に相談していただければと思います。

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

お悩み別相談方法

相談内容詳細

よく読まれるキーワード