「風営法違反で懲役刑になる可能性がある行為とは?」
「風営法違反で懲役刑になる可能性はどのくらいある?」
「風営法違反で懲役刑を回避するにはどうしたらいい?」
風営法では、違反行為に応じて、以下のような懲役が含まれる法定刑を定めている。
・2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれらの併科
・1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらの併科
・6月以上の懲役もくしは100万円以下の罰金またはこれらの併科
これらの法定刑に該当する違反行為をすると、逮捕・起訴され、懲役刑が科される可能性があるため注意が必要である。ただし、風営法違反で起訴された事件の約87%が略式命令請求により罰金刑になっているため、風営法違反で罰金刑になる可能性は低いといえるだろう。
早期にポイントを押さえた弁護活動をすることで懲役刑を回避できる可能性が高まるため、早めに弁護士に相談するべきである。
本記事では、
・風営法違反で懲役刑が含まれる違反行為
・風営法違反で懲役刑が科される可能性のある5つの事情
・風営法違反で懲役刑の実刑判決を回避するための4つのポイント
などについてわかりやすく解説する。
風営法違反事件の弁護は、風営法の知識や経験がなければ対応が困難であるため、風営法に強い弁護士に依頼するようにしてほしい。
風営法違反で法定刑に懲役刑が含まれる罪には、以下のようなものがある。
法定刑 | 具体的な違反行為 |
---|---|
2年以下の懲役 または200万円以下の罰金 または併科 | ・無許可営業 ・不正な手段で許可を取得 ・名義貸し ・禁止区域での営業 |
1年以下の懲役 または100万円以下の罰金 または併科 | ・不正な手段で構造・設備変更の承認を受けた ・不正な手段で特殊風俗営業の認定を受けた ・18歳未満の者に接待をさせた ・午後10時~午前6時に18歳未満の者に接客をさせた ・18歳未満の者を客として立ち入らせた ・20歳未満の者に酒類・たばこを提供した |
6月以下の懲役 または100万円以下の罰金 または併科 | ・客引き行為をした ・性風俗関連特殊営業を無届で営業した ・マージャンやゲームセンター等で現金を商品として提供した |
2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれらの併科という法定刑が定められている風営法違反行為は、以下のとおりである。これらの行為は風営法違反の中でも特に悪質な行為であるため、重い刑罰が科される可能性がある。
・無許可営業
・不正な手段で許可を取得
・名義貸し
・禁止区域での営業
1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらの併科という法定刑が定められている風営法違反行為は、以下のとおりである。
・不正な手段で構造または設備変更の承認を受けた
・不正な手段で特殊風俗営業の認定を受けた
・18歳未満の者に客の接待をさせた
・午後10時から午前6時までの時間帯に18歳未満の者に接客業務をさせた
・18歳未満の者を客として立ち入らせた
・20歳未満の者に酒類またはたばこを提供した
6月以上の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらの併科という法定刑が定められている風営法違反行為は、以下のとおりである。
・客引き行為をした
・性風俗関連特殊営業を無届で営業した
・マージャンやゲームセンターなどで現金を商品として提供した
2023年検察統計によると風営法違反で起訴された事件は697件であるが、そのうち公判請求となった事件が90件、略式命令請求となった事件が607件であった。
公判請求とは、公開の法廷で審理を求める手続きで一般的な刑事裁判がこれにあたる。公判請求された事件は、99%以上が有罪となり法定刑の範囲内で懲役または罰金刑が科されることになる。
略式命令請求とは、被疑者に異議がないことを条件に簡易裁判所の書面審査のみで100万円以下の罰金または科料を科す手続きである。略式命令請求された事件は、公判請求された事件とは異なり、懲役刑が科されることはなく、必ず罰金または科料が科されることになる。
上記の統計結果からわかるように、風営法違反で起訴された事件の約87%が略式命令請求であることから、風営法違反事件のほとんどが罰金刑で終わっていることがわかる。すなわち、風営法違反で懲役刑が科される可能性は低いといえるだろう。
項目 | 内容 |
---|---|
①接待飲食店営業の遵守事項の追加 | ・料金の虚偽説明の禁止 ・恋愛感情を利用した色恋営業の一部禁止 ・注文していないドリンクなどの提供禁止 |
②接待飲食店営業の禁止行為の追加 | ・売掛金支払い目的の威迫等禁止 ・料金支払いのための買春、風俗、AV出演等の要求禁止 【罰則】6月以下の拘禁刑、100万円以下の罰金刑 |
③性風俗店のスカウトバック禁止 | スカウトバックの支払いを禁止 【罰則】6月以下の拘禁刑、100万円以下の罰金刑 |
④無許可営業等の罰則強化 | 改正前:2年以下の懲役/200万円以下の罰金 改正後:5年以下の拘禁/1000万円以下の罰金 法人:200万円以下→3億円以下の罰金 |
⑤欠格事由の範囲拡大 | ・親会社等が取消処分を受けた法人 ・警察立入後の許可証返納者(処分逃れ) ・暴力的不法行為者が支配的影響力を持つ者 |
2025年3月7日、悪質なホストクラブへの対策などをまとめた風営法の改正案が閣議決定された。
この改正風営法の概要は以下のとおりである。
①接待飲食店営業の遵守事項の追加
・料金の虚偽説明の禁止
・恋愛感情を利用した色恋営業の一部禁止
・注文していないドリンクなどの提供禁止
②接待飲食店営業の禁止行為の追加【罰金刑の新設】
・売掛金を支払わせる目的で威迫、困惑させる行為の禁止
・威迫等をして料金支払いのための買春、風俗、AV出演等の要求の禁止
→6月以下の拘禁刑、100万円以下の罰金刑
③性風俗店のスカウトバックの支払い禁止【罰金刑の新設】
6月以下の拘禁刑、100万円以下の罰金刑
④無許可営業、名義貸し、メンエス禁止区域営業等の罰則強化【罰則強化】
・【改正前】2年以下の懲役→【改正後】5年以下の拘禁
・【改正前】200万円以下の罰金→【改正後】1000万円以下の罰金
・【改正前】法人の罰則 200万円以下の罰金→【改正後】3億円以下の罰金
⑤風俗営業の欠格事由の範囲拡大【欠格事由の追加】
・親会社等が許可を取り消された法人
・警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者
・暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者
政府は、2025年の通常国会での改正風営法の成立を目指しており、成立した場合、交付から1か月後に施行となる見込みである。
今回の風営法改正では、無許可営業、名義貸し、メンエス禁止区域営業等の罰則が強化され、従来の2年以下の懲役から5年以下の拘禁刑へと変更される予定であり、これにより懲役(拘禁)刑が科される事案も増えてくるだろう。
風営法違反で懲役刑が科される可能性のある事情としては、主に以下の5つが挙げられる。
過去に前科がある人が再び罪を犯した場合、初犯の人に比べて再犯のリスクが高いと評価されることになる。そのため、被告人に前科がある事案だとより重い刑罰を適用しなければ矯正が難しいといえるため、懲役刑が科される可能性がある。
特に、風営法違反の同種前科がある場合だと懲役刑が科される可能性が高くなるだろう。
前科がなかったとしても、複数の余罪がある場合には、懲役刑が科される可能性が高くなる。
余罪とは、現に捜査または起訴された罪以外の罪のことであり、複数の余罪があればそれぞれについて起訴される結果、より重い刑罰が適用されることになる。
行為の悪質性も罪の重さを決めるときの重要な考慮要素である。
たとえば、無許可営業の期間が長い、複数の店舗で風営法違反を繰り返していたなどの事情がある場合は、悪質な犯行であると評価され懲役刑が科される可能性が高くなるだろう。
共犯者がいる事案では、当該犯行における役割や地位によって科される刑罰が変わってくる。
たとえば、風俗店の従業員により客引き行為が行われた場合、実際に客引きをした従業員よりもそれを指示した店長やオーナーの方が重い刑罰が科される傾向がある。
そのため、犯行の主導的地位にある人の方が懲役刑が科されやすい。
執行猶予中に風営法違反を犯した場合、執行猶予が取り消され、今回の刑罰と前回の刑罰を合わせた刑が科される可能性が高い。この場合、再度の執行猶予が付かなければ実刑となり、刑務所に収監されることになる。
風営法違反で懲役の実刑判決になると刑務所に収監されてしまうため、重大な不利益が生じることになる。それを回避するには不起訴処分や執行猶予付き判決を獲得しなければならない。そのためのポイントは、以下の4つである。
風営法違反をしてしまったとしても、過去に罪を犯したことがない初犯であれば、いきなり懲役の実刑になる可能性は低いだろう。
初犯であればその他の有利な事情も合わせて主張していくことで、不起訴処分を獲得できる可能性もあるため、風営法に強い弁護士のサポートを受けながら対応していくべきである。
風営法違反をしたことが事実であるときは、早い段階から罪を認めて反省の態度を示すことで有利な処分を得られる可能性が高くなる。
無許可営業や名義貸しなどの悪質な犯行だと起訴は避けられないものの、真摯に反省していると評価されれば、執行猶予を獲得して懲役の実刑を避けられる可能性も十分にあるといえる。
ただし、風営法違反の成立を争うのであれば、罪を認めるのは避けなければならない。そのため、取り調べに対する具体的な対応は弁護士と相談してから決めた方がよいだろう。
風営法違反による懲役の実刑を避けるには、再犯のおそれが低いことを示すことが重要である。そのためには、再犯防止に向けた具体的な対策を講じなければならない。
引き続き店の営業を続けるのであれば、検察官や裁判官は、再び風営法違反をするのではないかという懸念を抱くはずである。そのような懸念を払しょくできるだけの具体的な対策を示すことができれば、懲役の実刑判決を回避できるだろう。
風営法違反は、被害者が存在しない犯罪であるため、被害者との示談により罪を軽くすることはできない。
しかし、弁護士会や被害者支援団体への贖罪寄付をすることで、反省の気持ちを示すことができるため、それにより有利な処分を獲得できる可能性が高くなる。被害者との示談ほどの効果は期待できないが、他の事情と合わせれば、懲役の実刑判決を回避できる可能性もあるだろう。
風営法違反による懲役刑回避を希望するなら、風営法に強いグラディアトル法律事務所まで相談することをおすすめする。
風営法違反事件は、一般的な刑法犯罪とは異なり、ナイトビジネス業界の特徴や業務内容、慣習などを理解していなければ適切な弁護活動はできない。刑事弁護を得意としている弁護士でも風営法違反事件を取り扱った経験がないという人も少なくないため注意が必要である。
グラディアトル法律事務所では、500店舗以上の風俗店の顧問弁護士を担当しており、1000件以上の解決実績があるなどナイトビジネス業界に特化した弁護士事務所といえるため、風営法違反の弁護に関しても経験豊富な当事務所の弁護士に任せてもらいたい。
風営法違反で逮捕されてしまったときは、すぐに身柄解放に向けた弁護活動を開始することが重要である。
逮捕・勾留による身柄拘束は、最長で23日間にも及ぶため、身柄拘束された被疑者の心身の負担は非常に大きなものとなる。また、風俗店のオーナーが逮捕・勾留されると店の経営にも支障が生じるため早期の釈放を実現しなければならない。
グラディアトル法律事務所では、風営法違反で早期の身柄解放を実現した実績も豊富であるため、ポイントを押さえた弁護活動により、身柄拘束による不利益を最小限に抑えることが可能である。
当事務所では、24時間365日受付をしているため、深夜の営業中に逮捕されたという場合でも対応が可能だ。刑事事件はスピード勝負といわれるように初動対応の早さがポイントになるため、一刻も早く当事務所まで連絡してほしい。
風営法違反の罪には、懲役刑が定められているものもあるため、風営法違反で逮捕・起訴されると事案によっては懲役刑が科される可能性もある。2025年の風営法改正により厳罰化も予定されているため、無許可営業、名義貸し、メンエス禁止区域営業などの事案では重い刑罰が科されることも予想される。
風営法違反で懲役刑を回避するには、風営法に強い弁護士による弁護が必要になるため、まずはグラディアトル法律事務所まで相談してほしい。