6月の風営法改正は業界に大きな影響を与えたが、11月に施行される風営法改正もホストクラブやキャバクラのグループに大きな影響を与える!
簡単に説明すると、ホストやキャバの1店舗が摘発されて営業許可が取り消されると、グループ全店舗の営業許可が取り消される可能性があるのだ。
この風営法改正における欠格事由の拡大については、11月28日から施行される。
欠格事由がある人や法人は、風俗営業許可(ホストクラブやキャバクラの営業許可)をとることができない。
また、欠格事由があることが、営業許可の取り消し事由にもなるため、許可法人等に欠格事由があることが発覚した場合には、許可を取り消すことができるようになる(風営法8条2号)。
このように、ホストクラブやキャバクラなどの風俗営業許可業種にとっては、欠格事由は営業の基礎となる重要な事由である。
その重要な欠格事由が、この11月の風営法改正で拡大される。
風営法改正による欠格事由の拡大は、以下の3つある。
【11月の風営法改正による欠格事由の拡大】
①親子会社・兄弟会社等「密接な関係を有する」法人の営業許可が取り消された法人
②処分逃れ(立ち入り調査後に営業許可証を返納した)をした者
③暴力的不法行為を行う恐れがある人に支配されている者
この中で、最重要なのは、①親子会社・兄弟会社等「密接な関係を有する」法人の営業許可が取り消された法人だ。これにより、ホストクラブやキャバクラのグループ全店舗の営業許可が取り消される可能性があるからだ。
ここが最重要なので、本記事では、この部分に絞って解説をする。
その他の欠格事由の拡大(②、③)や風営法改正全般(6月改正も含む)については、以下の記事を参照してほしい。
11月の風営法改正の欠格事由の拡大の中で、この「①親子会社・兄弟会社等「密接な関係を有する」法人の営業許可が取り消された法人」の追加が最も重要だ。
これにより、ホストクラブグループやキャバクラグループの1店舗の営業許可が取り消された場合に、その他のグループの店舗まで営業許可取消しの対象となり得るからだ。

この営業許可取り消しの波及の対象となる親子会社、兄弟会社「等」について、どのような会社が波及対象となるかは、風営法、風営法施行規則、風営法解釈運用基準により定義・解釈されている。
どのようなグループ構成がこれに該当するのか、本記事で丁寧に解説をしていく。
ホストクラブやキャバクラグループでは、グループ間の繋がりや形態も各グループによって様々だ。
【ホストやキャバのグループ店舗間の関係性】
・親子会社・兄弟会社
・フランチャイズ契約
・本部と各店舗がコンサル契約等の契約でつながる
・ブランドシェア
など。
営業許可取り消しの波及の対象となる親子会社、兄弟会社「等」については、以下のように風営法の委任関係、解釈関係が複雑だ。
11月改正の風営法
↓
国家公安委員会規則(風営法施行規則)
↓
風営法解釈運用基準
風営法、風営法施行規則、解釈運用基準の委任関係を簡単な図式で表すと以下の通りだ。
【風営法】
「密接な関係」があり、実質的に支配又は重要な影響を与える者(詳細は規則で定める)
↓
【施行規則】
議決権や資本金の過半数
or
「緊密な関係」により議決権等の過半数と同等以上の支配的な影響力がある者
↓
【解釈運用基準】「緊密な関係」の解釈
かなり緩やかに認められる印象。
店名の類似性やマニュアルなどの共有、役員の共通性、フランチャイズでも含まれる可能性あり。
※「緊密な関係」が認められたとしても、最終的に議決権等の過半数と同等以上の支配的な影響力があると認められなければ、欠格事由の拡大にはならない!
では、それぞれの詳細を見ていこう。
欠格事由の対象となる「密接な関係を有する」法人とはどのような法人なのだろうか?
風営法では、「密接な関係を有する」法人について、以下のように規定している(風営法4条1項7号イないしハ)。
七 当該許可を受けようとする者(法人に限る。イ及びハにおいて同じ。)と密接な関係を有する次に掲げる法人が第二十六条第一項の規定により風俗営業の許可を取り消され、当該取消しの日から起算して五年を経過しない者である者
イ 当該許可を受けようとする者の株式の所有その他の事由を通じて当該許可を受けようとする者の事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの(ロにおいて「親会社等」という。)
ロ 親会社等が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの
ハ 当該許可を受けようとする者が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの
風営法4条1項7号(e-gov参照)
風営法は、密接な関係を有する法人について、以下の二つの要件を定めている。
・事業を「実質的に支配」
又は
・事業に「重要な影響」を与える
そして、これらの「実質的に支配」や「重要な影響」を与える関係のある者の詳細について、国家公安委員会規則で定めるとしている。
国家公安員規則(風営法施行規則)では、「密接な関係を有する」法人の詳細について以下の3つが定められている。
ア 新法第4条第1項第7号イからハまでに掲げる、風俗営業の許可を受けようとする者と密接な関係を有する法人として、次の者を規定する。(新規則第6条の3関係)
(ア) 申請者が株式会社である場合にその議決権の過半数を所有している者等
(イ) 申請者が持分会社である場合にその資本金の二分の一を超える額を出資している者等
(ウ) 出資、人事、資金、技術、取引等において「緊密な関係」があることにより、申請者の事業の方針の決定に関して、前二号に掲げる者と同等以上の支配的な影響力を有すると認められる者等
(「新風営法施行規則」について警察庁HP参照)
株式や持分について半分以上を保有している者が、「実質的な支配」や「重要な影響」を与える関係のある者であって、「密接な関係を有する」法人であるとされている。
これに加えて、問題なのが、「緊密な関係」があることにより、株式や持分について半分以上を保有しているのと同等以上の支配的影響力を有している法人が対象となっていることだ。
ホストクラブやキャバクラのグループ店が、営業許可取り消しの他店への波及を防ぐためにグループの制度設計をする際に、①株式会社の議決権の過半数を持たない、②持分会社(合同会社など)の資本金の2分の1以上の出資をしないというこの2つの基準については、基準が明確であり、基準に沿った対策をとることができる。
他方で、③「緊密な関係」があることにより、株式や持分について半分以上を保有しているのと同等以上の支配的影響力を有している法人については、基準が不明確な部分があり、対策が難しい部分が残ってしまう。
とはいえ、過半数の議決権や出資をしているということは、会社法上、経営の重要事項の多くを決めることができ、強い影響力があるといえる。これと同程度の支配的影響力ということであれば、実質的な親会社、実質的な経営判断をしているといえる程度が求められるべきだろう。
そして、この同程度の支配的影響力の前提となる「緊密な関係」については、最新の風営法の解釈運用基準において基準が示されている。
風営法改正でのキャバクラやホストクラブでのグループの摘発、欠格事由の拡大は、風営法が定める「密接な関係」があり、「実質的に支配」又は「重要な影響」を与える者」に波及する。
そして、「密接な関係があり、実質的に支配又は重要な影響を与える者」については、風営法施行規則により、株式や持分について半分以上を保有している者か、「緊密な関係」があることにより、株式や持分について半分以上を保有しているのと同等以上の支配的影響力を有している者と定められている。
この、「緊密な関係」について、風営法の解釈運用基準が細かい基準、判断基準を示している。
施行規則第6条の3各項第3号中の「緊密な関係がある」か否かの判断に当たっては、
・両者の関係が形成された経緯
・両者の関係状況の内容
・両者の過去の議決権の行使の状況
・両者の商号の類似性
等を踏まえることになる。
例えば、
〇 役員若しくは使用人である者、又はこれらであった者を、他の法人の代表権のある役員として派遣している法人
〇 他の法人の資金調達額の総額のうち相当額について融資(債務保証及び担保の提供を含む。)を行っている法人
〇 技術援助契約を締結しており、当該契約の終了により、事業の継続に重要な影響を及ぼすこととなる法人
〇 フランチャイズ契約等により著しく事業上の影響を及ぼすこととなる法人
等は、一般的に緊密な関係がある者に該当する者と考えられるほか、
・過半数には及ばないまでも相当数の議決権を有していること
・接客や経営に関するマニュアルの配布
・役員や従業員の指導・教育を通じて事業の方針の決定に影響を及ぼしていること
等も含め、法人間の関係性を総合的に考慮して判断することとなる。
(2025年10月20日付風営法解釈運用基準より引用)
この解釈運用基準によれば、「緊密な関係」については、総合考慮で判断されるものの、わりと緩やかに「緊密な関係」があると判断されそうだ。
ホストクラブやキャバクラのグループを見てみると、多くのグループで接客や経営に関するマニュアルを共有していたり、役員や従業員の指導・教育を通じて事業の方針の決定に影響を及ぼしていたりすることがほとんどだろう。
また、多くのグループの場合、本部を通じるなどして、コンサル契約などの業務委託契約やフランチャイズ契約等の契約関係がある。
役員や重要な役割をする人物が共通することもあるだろう。
そうなると、総合的に考慮したとしても、ホストクラブやキャバクラのグループでは、「緊密な関係」があると判断されるケースが多そうだ。
もっとも、最初に説明したように、「緊密な関係」があるとしても、株式や持分について半分以上を保有しているのと同等以上の支配的影響力を有していなければ、欠格事由の拡大の対象になることはない。
11月施行の風営法改正では、ホストクラブやキャバクラの欠格事由が拡大される。
これにより、ホストクラブやキャバクラでは、グループの1店舗の営業許可が取り消されると、グループの全店舗の営業許可が取り消されるリスクがある。

この営業許可取り消しの波及の対象となる親子会社、兄弟会社「等」について、どのような会社が波及対象となるかは、風営法、風営法施行規則、風営法解釈運用基準により定義・解釈されている。
具体的には、風営法が定める「密接な関係」があり、「実質的に支配」又は「重要な影響」を与える者」に波及する。
そして、「密接な関係があり、実質的に支配又は重要な影響を与える者」については、風営法施行規則により、株式や持分について半分以上を保有している者か、「緊密な関係」があることにより、株式や持分について半分以上を保有しているのと同等以上の支配的影響力を有している者と定められている。
この「緊密な関係」はわりと緩やかに判断され、ホストクラブやキャバクラのグループでは該当することが多いだろう。
ただ、「緊密な関係」にあるとしても、株式や持分について半分以上を保有しているか、それと同等以上の支配的影響力を有していなければ、欠格事由の拡大の対象になることはない。
そして、過半数の議決権や出資をしているということは、会社法上、経営の重要事項の多くを決めることができ、強い影響力があるといえる。これと同程度の支配的影響力ということであれば、実質的な親会社、実質的な経営判断をしているといえる程度が求められるべきだろう。
そうであるならば、グループ経営をするにしても、本部や本店、その経営者らが実質的に他店も経営していると見られるようなことを避けて、それぞれの店舗はそれぞれの店舗の経営法人に経営をさせる。
各店舗の重要事項、人事、経理(お金)などの経営判断は各店舗の経営者に任せることが重要だ。
ホストクラブやキャバクラグループのグループ間の組織設計、風営法対策については、風営法についての経験豊富なグラディアトル法律事務所にぜひご相談を!
