「相席屋の開業に必要な風営法の許可とは?」
「相席屋で風営法違反を防ぐためのポイントを知りたい」
「相席屋でサクラに接待させるのは問題ある?」
知らない男女が同席して出会いの場になる相席屋であるが、具体的な営業形態によっては一般的な居酒屋と同様に扱われるケースから風俗営業として風営法の許可が必要になるケースまでさまざまなケースが想定される。これから相席屋の開業を検討している場合、具体的な業態に応じた許可や届出をしなければ風営法違反などに問われるリスクがあるため注意が必要である。特に、風営法が適用される相席屋については、風営法違反にならないようにするためにも、以下のポイントを押さえて営業することが大切である。
・客席の広さが9.5㎡以上で周囲から見通すことができること
・すでにいる客の顔を見てから席を選ばせてはいけない
・異性の人数が足りないからといって従業員が相手をしてはいけない
・照明を暗くしすぎない
本記事では、
・【業態別】相席屋の開業に必要な風営法の許可・届出とは?
・相席屋でサクラに接待させることの問題点
・相席屋の営業で風営法違反にならないようにするための4つのポイント
などについてわかりやすく解説する。
相席屋の営業にあたっては知らずに風営法違反を犯しているケースもあるため、風営法を遵守した健全な経営を目指すためにも、風営法に強い弁護士に相談することをおすすめする。
項目 | 内容 |
---|---|
深夜酒類提供飲食店営業の届出 | 深夜(午前0時~6時)営業の場合、深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要。喫茶店・カフェ等お酒を提供しない形態は不要。 |
風俗営業の2号営業の許可 | 照明を10ルクス以下にする場合、2号営業許可が必要。照明を暗くすると深夜営業不可になる点に注意。 |
風俗営業の3号営業の許可 | 個室を設置する場合、広さ5㎡以下&見通し困難な個室は3号営業許可が必要。一般的な個室風居酒屋は対象外。 |
店舗型性風俗特殊営業の 6号営業の届出 | 出会い系喫茶に該当する場合、6号営業の届出が必要。厳しい規制があり、事実上新規開業は困難。 |
相席屋を開業するには、具体的な営業形態に応じて風営法の許可や届出が必要になる。以下では、相席屋の業態別に風営法上必要となる許可や届出について説明する。
深夜営業(午前0時から午後6時まで)の相席屋は、深夜酒類提供飲食店営業に該当するため、深夜酒類提供飲食店営業の届出をしなければならない。
ただし、深夜酒類提供飲食店営業は、お酒をメインに提供するバーなどを想定しているため、お酒の提供を予定しない喫茶店やカフェなどの形態であれば深夜酒類提供飲食店営業の届出は不要である。
客席の照明を暗くして10ルクス以下にする場合、風営法の風俗営業に該当するため、風俗営業の2号営業許可が必要になる。
10ルクス以下の照明とは、バーカウンターや上映前の映画館の明るさをイメージしてもらえればよいだろう。雰囲気のある相席屋にしたいときは照明を暗くするというのも一つの手段になるが、照明を10ルクス以下に落としてしまうと風俗営業にあたり、深夜営業ができなくなる点に注意が必要である。
相席屋で個室を設置する場合、個室の広さや状態によっては風営法の風俗営業に該当し、風俗営業の3号営業許可が必要になることがある。
風俗営業の3号営業とは、喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食させる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営むものをいう。具体的には、以下のような特徴を有するものがこれに該当する。
・客室の床面積が1室5㎡以下であること
・客室の内部が外部から容易に見通すことができないものであること
・店舗内の照度が10ルクス超であること
なお、一般的な個室居酒屋は、あくまでも「個室風居酒屋」であり、風営法の3号営業の規制対象にならないよう工夫がなされている。
相席屋が出会い系喫茶に該当する場合、店舗型性風俗特殊営業の6号営業の届出が必要になる。
出会い系喫茶とは、料金を支払った男性客が店内にいる面識のない女性を指名し、合意すれば店外に連れ出すことができるというものである。出会い系喫茶は、風営法や条例により厳しい規制があるため新規開業は事実上困難であるため、相席屋を開業する際には、出会い系喫茶に該当しないようにしなければならない。
ここまで相席屋の業態別に風営法上必要になる許可や届出を説明してきたが、一般的な相席屋であれば、食品衛生法に基づく飲食店営業許可と風営法の深夜酒類提供飲食店営業の届出をすれば十分である。
風俗営業の許可が必要なケースは、特殊な相席屋の形態になるため、一般的な相席屋であればそこまで難しい手続きは必要ない。
なお、深夜酒類提供飲食店営業と風俗営業の両立はできないため、深夜営業を予定しているなら相席屋が風俗営業に該当しないようにしなければならない
相席屋は、初対面の男女が同じ席で飲食や会話を楽しめる居酒屋であるため、異性の客が店にいなければ相席屋の営業は成り立たない。繁盛している相席屋であれば、サクラを用意する必要はないが、女性客が少ない店では店を盛り上げるためにサクラを雇って客の対応をさせることもある。
しかし、サクラに客の対応をさせる行為は、風営法上の「接待」に該当するため、風俗営業の1号営業許可が必要になる。多くの相席屋は、深夜酒類提供飲食店営業の届出のみで営業していることからサクラに接待させると風営法の無許可営業として厳しく処罰される点に注意が必要だ。
一般的な相席屋の営業で風営法違反にならないようにするためにも、以下の4つのポイントを押さえておくべきである。
深夜酒類飲食店営業の届出をして相席屋を営業する場合、客席の広さが9.5㎡以上でなければならない。
また、客席は周囲から見通すことができるようにしなければならず、高さ1m以上の見通しを妨げる設備を設置してはならない。このような設備を設置してしまうと、客席が1室ではなく2室とみなされ、9.5㎡以上という客席の広さの要件を満たさなくなってしまう。
見通しを妨げる設備には、以下のようなものが挙げられる。一見設備とは思えないものも含まれている点に注意が必要である。
・高さ1mのパーテーション
・背もたれの高さが1mのイス
・高さ1mの観葉植物
・高さ1mの間仕切り
・高さ1mのグラス棚やスタンドライト
相席屋は、偶然来た男女が同じ席で飲食や会話を楽しむ居酒屋ですので、客同士は誰と同席するかを選ぶことはできません。
すでにいる客の顔を見てから席を選ぶようなシステムだと出会い系喫茶に該当し、店舗型性風俗特殊営業の6号営業の届出が必要になってしまいます。
すでに説明したとおり、相席屋でサクラを雇って従業員に客の対応をさせることは、風営法上の「接待」に該当するため、深夜酒類提供飲食店営業ではなく風俗営業になってしまいます。
深夜酒類提供飲食店営業の届出だけでは営業できませんので、このような行為をすると無許可営業で風営法違反になってしまうでしょう。
深夜酒類飲食店営業の届出をして営業する相席屋は、店内の照度を20ルクス以上にしなければならない。
なぜなら、店内の照度を暗くしすぎると低照度飲食店営業や区画席飲食店営業に該当し、風俗営業の許可が必要になってしまうからである。
2025年3月7日に閣議決定された改正風営法により、風営法の無許可営業の罰則が大幅に強化されている点に注意が必要である。
改正前の風営法では、無許可営業に対して「2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれらの併科」という罰則であったものが、改正風営法では、「5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金または併科」となり、懲役(拘禁刑)の上限および罰金刑の金額がそれぞれ引き上げられた。
また、法人への両罰規定についても改正前の風営法では「200万円以下の罰金」だったものが改正風営法では「3億円以下の罰金」へと大幅に引き上げられた。
改正風営法施行後は、無許可営業に対して非常に厳しい刑罰が適用されることになるため、相席屋を開業・営業する際には、業態に応じた適切な許可・届出をすることが重要である。
相席屋は、業態に応じて必要になる風営法上の許可や届出が異なるため、開業を予定している業態に応じた手続きをしなければならない。今後、風営法改正により無許可営業の罰則が強化され、厳しい処分を受ける可能性があるため、相席屋の開業・営業にあたっては風営法違反にならないように注意が必要である。
もっとも、風営法の規制内容は非常に複雑であるため、風営法の正確な知識や理解がなければ知らずに風営法違反を犯してしまうことも考えられる。それを回避するには風営法に詳しい弁護士に相談することが重要である。
グラディアトル法律事務所は、東京と大阪の2拠点を中心に活動しており、ナイトビジネス業界で全国1000件以上の解決実績がある。風営法違反に関する刑事弁護の経験も豊富であるため、逮捕の回避・早期釈放・不起訴処分の獲得などを希望するなら、すぐに当事務所まで相談してほしい。
また、グラディアトル法律事務所では、500店舗以上の風俗店の顧問弁護士を担当しており、ナイトビジネス業界に特化した弁護士事務所といえるだろう。トラブル対応だけではなくトラブル予防にも力をいれているため、実際にトラブルが生じていなくても気軽に相談してもらいたい。
一般的な相席屋であれば、飲食店営業許可と深夜酒類飲食店営業の届出で開業することができるが、個室の広さや店内の明るさなどによっては風俗営業にあたる可能性もある。
このように相席屋は具体的な営業形態によって必要な手続きが異なるため、風営法違反を防ぐためにもまずは弁護士に相談することをおすすめする。
風営法に強い弁護士をお探しの方は、グラディアトル法律事務所まで相談してもらいたい。