「カジノバーに関する風営法の規制はどうなっている?」
「カジノバーを開業するために必要な風営法上の許可とは?」
「カジノバーを開業する際の風営法上の注意点を知りたい」
カジノバーとは、お酒を飲みながらポーカー・バカラなどのカードゲーム、ルーレットなどを楽しむことができる店をいう。このような店を「アミューズメントカジノ」や「ポーカーバー」と呼ぶこともある。
カジノバーは、風営法上の風俗営業に該当するため、カジノバーを開業するには風俗営業5号営業許可を得ることが必要である。また、カジノバー開業後もチップの換金や景品の提供はできない、ディーラーを設置するカジノバーは1号許可が必要になるケースもある、午前0時以降の深夜営業はNG、チップの持ち帰りや預かり証の発行は禁止などの風営法上の規制がある点にも注意が必要である。
本記事では、
・カジノバーの開業に必要な風営法等の許可
・カジノバーで風営法の5号営業許可を得るための条件
・カジノバーを開業する際の風営法上の注意点
などについてわかりやすく解説する。
カジノバーの経営で風営法違反を防ぐには、風営法に強い弁護士によるサポートが必要になるため、顧問弁護士の利用をおすすめする。
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)の開業にあたっては、風営法の「風俗営業の5号営業許可」と食品衛生法の「飲食店営業許可」が必要になる。以下では、それぞれの概要を説明する。
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)では、カードゲームやルーレットなどの射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができる設備を備えた店舗であるため、風営法の風俗営業に該当し、5号営業許可が必要になる。
射幸心とは、幸運や偶然により思いがけない利益を得ることを期待する心理をいい、射幸心をそそるおそれのある遊技を提供する施設では、賭博などの違法行為の誘発や未成年者が犯罪に巻き込まれるおそれがあることから風営法の規制対象とすることで営業の適正化を図るのが狙いである。
そのため、カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)を開業するには、風営法の風俗営業5号営業許可を得る必要がある。
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)では、食べ物や飲み物を提供するため、食品衛生法に基づく飲食店営業許可を取得する必要がある。
飲食店営業許可は、必要な調理設備などを設けていれば取得できるため、それほど難しいものではない。そのため、カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)の開業にあたって特に問題になるのは風営法上の許可である。
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)で風営法の5号営業許可を得るには、以下の要件を満たす必要がある。
以下のいずれかの条件に該当する人は、風俗営業の許可を受けることはできない。
①破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
②1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
③集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者
④アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
⑤精神機能の障害により風俗営業の業務を適正に実施するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
⑥風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
⑦風俗営業の取消処分に係る聴聞の期日等の公示日から取消し等の決定をする日までの間に、許可証を返納した者で、当該返納の日から起算して5年を経過しないもの
⑧⑦の規定する期間内に合併により消滅した法人又は許可証を返納した法人
⑨⑦の規定する期間内に分割により、聴聞に係る風俗営業を継承させ、若しくは分割により、当該風俗営業以外の風俗営業を継承した法人
⑩営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者
⑪法人の役員、法定代理人が上記①から⑤までに掲げる事項に該当するとき
なお、2025年3月7日に風営法の改正案が閣議決定され、風俗営業の欠格事由の範囲が拡大し、以下の欠格事由が追加されることになった。
・親会社等が許可を取り消された法人
・警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者
・暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者
なお、2025年3月7日に風営法の改正案が閣議決定され、風俗営業の欠格事由の範囲が拡大し、以下の欠格事由が追加されることになった。
・親会社等が許可を取り消された法人
・警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者
・暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者
これによりグループ店舗も欠格事由に該当し、グループ会社や関連会社の許可が取り消される可能性がある点に注意が必要である。
以下のいずれかの地域に該当する場所(要は住宅で静かに暮らすエリアや子どもを守りたい場所)では、風俗営業の許可を受けることはできない。
・第1種低層住居専用地域
・第2種低層住居専用地域
・第1種中高層住居専用地域
・第2種中高層住居専用地域
・第1種住居地域
・第2種住居地域
・田園住居地域
・準住居地域
ただし、これらの地域に該当しない場所であっても、お店の場所から半径100m以内に「保護対象施設」(学校、図書館、児童福祉施設、病院、診療所)がある場合、その場所では風俗営業の許可は受けられない。
風営法の5号営業許可を受けるには、構造・設備に関して営業区分に応じた以下の要件を満たす必要がある。
・客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと
・善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと
・客室の出入り口に施錠の設備を設けないこと
・店舗内の照度(明るさ)が10ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
・騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
・紙幣を挿入できる遊戯設備や客に現金若しくは有価証券を提供するための遊戯設備を設けないこと
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)を開業するための風営法の許可申請は、以下のような流れで行う。
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)の開業を検討している方は、まずは警察署に事前相談をするとよいだろう。
警察署で事前相談をすれば、カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)の開業にあたって満たすべき要件や必要な書類などを案内してもらえるため、スムーズに許可申請の手続きを進めることが可能だ。警察署によっては所定の書類以外の書類を求められることもあるため、事前の相談が重要になる。
風俗営業5号営業許可の申請にあたっては、以下のような書類が必要になる。
風俗営業の許可申請に必要な書類は、以下のとおりである。
①許可申請書
②営業の方法を記載した書類
③営業所の使用について権原を有することを疎明する書類
④営業所の平面図及び営業所の周囲の略図
⑤住民票の写し
⑥人的欠格事由に該当しない旨の誓約書
⑦市町村の発行する身分証明書
⑧法人の場合は、定款・法人に係る登記事項証明書及び役員に係る上記⑤から⑦までの書面
⑨管理者を選任する場合は、選任する管理者の誓約書、上記⑤から⑦までの書面
⑩管理者の写真2枚
風俗営業の許可申請の窓口は、営業所の所在地を管轄する警察署である。
また、飲食店営業許可申請の窓口は、営業所の所在地を管轄する保健所である。
それぞれの許可申請に応じて申請すべき窓口が異なるため注意が必要だ。
風俗営業の許可申請書類を提出後しばらくすると、警察による立ち入り検査が行われる。これを一般的に「実査」という。
実査とは、申請内容と実査の店舗に相違がないかどうかを実際に店舗に訪れてチェックすることである。実査では、主に以下のような項目がチェックされる。
・店舗の寸法は図面通りか
・客室の見通しがあるか
・二重扉に鍵はないか
・照明スイッチが調光式でないか
・出入口付近に「屋号(看板)」を掲示しているか
・防音対策が講じられているか
・音響・照明の種類が申請した図面どおりか
・イスやテーブルの配置や寸法が図面どおりか
・従業員名簿が用意されているか
不備がある場合は、是正指示が入ることもあるため、しっかりと準備してから臨むようにした方がよいだろう。
書類審査と実査が完了し、問題がなければ許可証が交付される。許可証が交付されれば無事カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)の営業開始することができる。
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)を開業する際は、風営法に関して以下の点に注意が必要である。
風営法では、遊技の結果に応じて賞品を提供することを禁止している。
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)では、客にチップを購入して、遊技を楽しんでもらうシステムが一般的であるが、遊技の結果得られたチップを現金や景品に交換することはできない。店内での飲食物や何らかの無料サービスとの交換も禁止されているため、「それぐらいのサービスなら大丈夫だろう」という考えは危険である。
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)は、基本的には風俗営業5号営業許可により営業することが可能であるが、ディーラーによる接待を伴う場合は風俗営業1号営業許可が必要になる。
ディーラーによる接待行為があるとみなされる例としては、以下のようなものが挙げられる。
・ディーラーが客に教えながら一緒にゲームをする
・プレイングディーラーとしてゲームに参加する
・スタッフが客と一緒にゲームをしたり飲食をする
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)は、風営法の風俗営業の規制が適用されるため、営業時間は午前0時までである。
午前0時以降も店内で射幸心をそそるおそれのある遊技をさせてしまうと風営法違反に該当するため、営業時間の規制を守って運営していかなければならない
風営法では、遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行することを禁止している。わかりやすくいえば、チップの枚数を確認できる預り証を発行してはならないということである。
店側で客のチップを預かることは合法であるが、会員カードなどにチップの預かり枚数などを記載すると風営法違反となる。チップの預かりシステムを導入するなら、店側で台帳を用意して管理するか、ICカードシステムを導入するべきである。
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)において、ポーカーなどのカードゲームやルーレットなどの遊技で金品を賭けて偶然に左右される勝負をすれば刑法の賭博罪等に該当する。
具体的には以下のような行為に注意が必要である。
・ポーカーの勝敗や大会の順位に応じて参加者が賞金等を争う→賭博罪(常習賭博罪)
・参加費やゲーム代金を徴収して店内で賭博となる行為をさせる→賭博場開帳図利罪
・参加者が直接現金を賭けていなくてもポーカーゲームの結果、獲得したチップを換金する→賭博罪
賭博をした客は賭博罪で処罰されるが、店内で賭博をさせた店側も賭博場開帳図利罪により処罰される。
実際に賭博行為により逮捕された事例としては、以下のようなものがある。
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なお、賭博罪の法定刑は50万円以下の罰金または科料、常習賭博罪の法定刑は3年以下の懲役、賭博場開帳図利罪の法定刑は3月以上5年以下の懲役と定められている。
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)の開業および営業には、風営法が大きく関わってくる。風営法の正確な知識や理解がないままカジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)の営業をしていると知らないうちに風営法違反を犯してしまうリスクがあるため注意が必要である。
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)の開業・営業に関する風営法の問題や悩みを解決するには、風営法に詳しい弁護士によるアドバイスやサポートが不可欠であるため、まずはグラディアトル法律事務所に相談をしてもらいたい。
グラディアトル法律事務所は、東京と大阪の2拠点を中心に活動しており、ナイトビジネス業界で全国1000件以上の解決実績がある。風営法違反に関する刑事弁護の経験も豊富である。
また、グラディアトル法律事務所では、500店舗以上の風俗店の顧問弁護士を担当しており、ナイトビジネス業界に特化した弁護士事務所といえるだろう。トラブル対応だけではなくトラブル予防にも力をいれているため、実際にトラブルが生じていなくても気軽に相談してもらいたい。
他のバーとの差別化からカジノバーの開業を検討している方もいるはずである。しかし、カジノバーの開業には、風俗営業5号営業許可が必要になるため、一般的なバーとは開業に必要な手続きが異なってくる。
また、射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができる設備を設置している関係上、刑法上の賭博行為にも注意が必要である。
カジノバー(アミューズメントカジノ、ポーカーバー)の営業にあたって法的な悩みや疑問が生じたときは、ぜひグラディアトル法律事務所に相談をしてもらいたい。