本記事では、ホストクラブにおいて未成年の女性を誤って入店させ、飲酒させてしまったことで店長が逮捕されたものの、不起訴となった実例を紹介します。
ホストクラブや風俗営業に関わる経営者・従業員の方々にとって、年齢確認の重要性や万が一の対応方法を理解するための参考になる内容です。
Aさんは歌舞伎町のホストクラブで店長を務めており、店では入り口での年齢確認を徹底していました。
ある日、ホストの一人が知人の女性を来店させました。提示された身分証を確認した結果、その女性は20歳を超えていると判断され、入店・飲酒が許可されました。
しかし、実際にはその女性は17歳であり、ホストと共謀して偽造身分証を用いて年齢を偽っていたことが後日発覚します。
その結果、未成年者に飲酒させたとして、Aさんは逮捕されてしまいました。
弁護士は即座にAさんと接見を行い、取調べでの対応方針についてアドバイスしました。
Aさんは女の子の年齢を本当に20歳以上だと信じていたこと、入店時に身分証の確認を行っていたことを主張しました。
その後、弁護士はお店と協力し、ホストと女性が共謀して身分証を偽造した証拠を収集。また、Aさんが複数の身分証提示を徹底していた運用実態も確認されました。
これらを基に、「Aさんには過失がなかった」とする意見書が検察に提出され、最終的に不起訴処分が決定しました。
ホストクラブは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(通称:風営法)」上の「風俗営業(1号営業)」に該当します。
そのため、以下の制限があります:
入店年齢:18歳以上(高校生を除く)
飲酒・喫煙:20歳以上
つまり、19歳の客は入店は可能でも飲酒は禁止。17歳であれば、入店も飲酒もできません。
これらに違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
風営法には「両罰規定」が設けられており、たとえ違法行為を行ったのが一人の従業員だったとしても、事業主や法人も処罰の対象となります。
今回も、実際に未成年者を招き入れたのはホストでしたが、店の責任者であるAさんもこの規定により逮捕されることとなりました。
Aさんは以下のような対応を日頃から行っていました。
・入店時の身分証確認(2点提示のルール)
・店内掲示による未成年入店禁止の明示
・従業員に対する法令遵守の教育
また、事件当日も提示された身分証を確認したうえで対応しており、年齢詐称の故意は一切ありませんでした。
さらに、弁護士がホストと未成年者の共謀による偽造の証拠を収集し、過失がないことを客観的に証明したことが大きな決め手となりました。
経営者・管理者が意図的でなくても、未成年者の入店・飲酒が発生すれば、刑事責任を問われる可能性があります。
そのため、以下のような対策が重要です。
・入店時に顔写真付き身分証を2点以上提示させる運用
・偽造防止対策として、光に透かしてチェックするなどの手順の明確化
・従業員に対する定期的な研修・マニュアル整備
・防犯カメラや受付記録の保存
・トラブル発生時の弁護士との即時連携体制
今回の事件は、未成年者と従業員の共謀による年齢詐称により、店長が一時逮捕されるという深刻なトラブルでした。
しかし、日頃の法令遵守体制や弁護士による適切な対応により、不起訴という結果を得ることができました。
風俗営業におけるトラブルは、本人に悪意がなくとも発生するリスクがあります。法律は随時改正されており、最新の法令に沿った運営と、トラブル発生時の迅速な対応が求められます。
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