「eスポーツに関して風営法上どのような規制がある?」
「eスポーツ大会を開催する際に注意すべきこととは?」
「風営法の5号営業に該当するeスポーツ施設には何があるのか知りたい」
eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)」の略で、コンピューターゲームやビデオゲームを使った競技を指す言葉である。日本でもeスポーツの認知度が高まっており、プロライセンス制度や高校・大学での部活動、地方自治体のイベントなども増えてきている。このようなeスポーツ人気の高まりに伴い、誰でも気軽にeスポーツを楽しめる施設の開業を検討している方もいると思われるが、eスポーツ施設の中には風営法の規制対象となるものもあるため、適正な手続きを踏んでから開業・営業することが大切である。
また、eスポーツ大会を開催する際には風営法などの法令上の注意点があるため、法令違反によるペナルティを避けるためにも、法令上の規制をしっかりと理解しておかなければならない。
本記事では、
・風営法が適用されるeスポーツ施設と適用されないeスポーツ施設
・風営法が適用されるeスポーツ施設に対する主な規制内容
・eスポーツ大会を開催する際の風営法などの法令上の注意点
などについて詳しく解説する。
eスポーツ施設やeスポーツ大会に関する風営法などの法令上の規制は、専門家でなければ正確に理解・判断することは困難であるため、eスポーツの開業やeスポーツ大会の開催をお考えの方は、一度弁護士に相談することをおすすめする。
eスポーツ施設のすべてが風営法の規制対象となるわけではないが、後述する風営法の5号営業に該当するeスポーツ施設に該当する場合、風営法の風俗営業(遊技場営業)にあたるため開業にあたっては5号営業許可を取得する必要がある。
風営法では、客に飲食や遊興をさせて接待する営業または射幸心をそそる遊戯をさせる営業を「風俗営業」と呼び、「接待飲食等営業」と「遊技場営業」の2つに分けられている。また、遊技場営業のうち、スロットマシン、テレビゲームその他遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるものを備える店舗その他これに類する区画された施設において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業を「5号営業」といい、このような営業を行うには風営法上の許可が必要になる。
eスポーツ施設の中には風営法の許可が必要なものもあるため、きちんと許可を得ておかなければ無許可営業で厳しい処罰を受ける可能性がある点に注意が必要である。
風営法の5号営業に該当するかは、以下の基準で判断する。
①店舗その他これに類する区画された施設に、スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができる遊技設備が存在すること
②遊技設備により客に遊技させる営業を行っていること
①の要件のうち、「テレビゲーム機」については、風営法施行規則3条2号で「テレビゲーム機(勝敗を争うことを目的とする遊技をさせる機能を有するもの又は遊技の結果が数字、文字その他の記号によりブラウン管、液晶等の表示装置上に表示される機能を有するものに限るものとし、射幸心をそそるおそれがある遊技の用に供されないことが明らかであるものを除く。)」と定義されている。
このような定義からすると、テレビゲーム機を設置して誰でも遊技可能な状態でサービスを提供するeスポーツカフェなどが風営法の5号営業に該当するといえる。
テレビゲーム機を設置するeスポーツ施設は、ほとんどが風営法の規制対象となるため、風営法の規制対象外となるeスポーツ施設を押さえておいた方がわかりやすいだろう。
風営法の5号営業に該当しないeスポーツ施設には、以下のようなものがある。
パソコンやタブレット、スマートフォンなどの汎用的な機器を用いたゲームについては、風営法の5号営業が適用される「テレビゲーム機」には該当しないものと考えられている。
インターネットカフェでは、パソコンを利用してオンラインゲームに参加することが可能であるものの、上記のような理由から「テレビゲーム機」には該当しないため、風営法の5号営業許可が必要なeスポーツ施設には該当しない。
風営法の5号営業に該当するeスポーツ施設とは、テレビゲーム機を設置していることが要件になるため、テレビゲーム機をプレイする場所を提供する施設であれば風営法の5号営業許可が必要なeスポーツ施設にはあたらない。
たとえば、客が家庭用ゲーム機を持ち込んでeスポーツ施設内でプレイするという営業形態であれば風営法の5号営業許可は不要であると考えられる。
風営法が適用されるeスポーツ施設では、風営法上以下のような規制がある。
風営法が適用されるeスポーツ施設は、風俗営業(5号営業)許可が必要になるため、風俗営業許可を得てから営業を開始しなければならない。
風俗営業許可が必要であると知らなかったとしても、必要な許可を得ることなくeスポーツ施設の営業をすると無許可営業として風営法違反となってしまうため注意が必要である。
風営法23条2項では、「遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない」と定められている。eスポーツ施設では、利用客同士による対戦が行われているが、対戦結果に応じて賞金や賞品を提供すると風営法違反になるため注意が必要である。
風営法が適用されるeスポーツ施設は、風俗営業に該当するため、以下のいずれかの地域に該当する場所(要は住宅で静かに暮らすエリアや子どもを守りたい場所)では、風俗営業の許可を受けることができない。
・第1種低層住居専用地域
・第2種低層住居専用地域
・第1種中高層住居専用地域
・第2種中高層住居専用地域
・第1種住居地域
・第2種住居地域
・田園住居地域
・準住居地域
また、これらの地域に該当しない場所であっても、eスポーツ施設から半径100m以内に「保護対象施設」(学校、図書館、児童福祉施設、病院、診療所)がある場合、その場所では風俗営業の許可は受けられない。
そのため、若者をターゲットにしたeスポーツ施設を営業したいからといって、学校の近くにeスポーツ施設を開業することはNGである。
項目 | 内容 |
---|---|
風営法の対象外とする方法 | 参加料を「大会運営費÷最大参加者数」以下に設定すれば営業性なしとされ風営法の規制対象外。 |
賭博罪回避のための対策 | 賞金・賞品はスポンサーから支給することで賭博罪を回避。参加料を原資にすると違法の可能性あり。 |
景品表示法への対応 | ゲームメーカー主催の大会では景品表示法が適用されるため、高額賞金の提供は注意が必要。課金無関係な大会にするなどで対応。 |
著作権許諾の必要性 | ゲーム映像やプログラムの使用には著作権者(ゲーム会社)の許諾が必須。無断使用は著作権法違反。 |
eスポーツ大会を開催する場合、風営法などの法令上の規制が及ぶことがあるため、eスポーツ大会の開催方法には注意が必要である。
eスポーツ大会に営利性が認められる場合は、風俗営業に該当するため、風営法の規制対象となる。一般的に参加者から参加料を徴収すると営利性が肯定されることになるが、eスポーツ大会の最大参加者数をあらかじめ設定し、参加料の合計額が大会・イベントの設営に必要な費用を上回らないときには、その範囲内で参加料を徴収しても営業には当たらないと考えられている。
たとえば、大会設営費用見込額が200万円、最大参加者数が1000人のeスポーツ大会でスポンサーからの協賛金が100万円の場合、1選手あたりの参加料は2000円(大会設営費用見込額200万円÷1000人)を超えていなければ風営法の規制対象外となる。
eスポーツ大会において参加者から徴収した参加料を原資として、eスポーツ大会の勝者に賞金や賞品を出すのは、刑法で禁止されている「賭博」に該当するおそれがある。
賭博行為に該当するとeスポーツ大会の参加者および主催者には以下のような刑罰が科される。
・eスポーツ大会の参加者(賭博罪):50万円以下の罰金または科料(常習の場合3年以下の懲役)
・eスポーツ大会の主催者(賭博場開帳図利罪):3月以上5年以下の懲役
このような賭博行為を回避するには、以下のような対策が考えられる。
・参加者から参加料を徴収しない
・賞金や賞品を第三者であるスポンサーが提供する
景品表示法とは、事業者が高額の賞金や賞品などを提供することにつられた消費者が惑わされ、質の良くないものや割高なものを買わされてしまうことを防ぐことを目的として、景品の内容に規制を設けることを内容とする法律である。
つまり、eスポーツ大会では、ゲーム会社から消費者を保護するためのものであるため、ゲームメーカーが開催するeスポーツ大会では景品表示法の規制が生じることになる。
たとえば、有料または課金要素が強さに影響するゲームを販売する会社が優勝賞金1000万円のゲーム大会を開催した場合、当該大会の仕組みによっては景表法違反となる可能性があるため注意が必要である。
景品表示法の規制をクリアするには、以下のような対策が考えられる。
・ゲーム会社が関与しないでeスポーツ大会を開催する
・課金が優劣に関係のない無料のゲームアプリ大会を開催する
・予選を行い上位者にプロライセンスを発行した上で、仕事の報酬として賞金が出るという形のeスポーツ大会を開催する
ゲームの映像は「映画の著作物」(著作権法10条1項7号)、ゲームのプログラムは「プログラムの著作物」(著作権法10条1項9号)に該当するため、著作権者の許諾なくこれを使用してeスポーツ大会を開催すると著作権法違反となる。
ゲーム会社が主催するeスポーツ大会以外では、著作権を有するゲーム会社の許諾を得てから開催しなければならない。
eスポーツ施設の営業やeスポーツ大会の開催にあたっては、風営法以外にも刑法、景品表示法、著作権法などさまざまな法令上の規制が及ぶため、一般の方ではすべての法令上の規制を正確に理解するのは困難である。特に、複数のスポンサーが付くeスポーツ大会では、参加者やスポンサーにまで迷惑をかけることになり、契約によっては莫大な違約金を請求される可能性もある。
法令上の規制をクリアにしたうえでeスポーツ施設の営業やeスポーツ大会を開催するには、法律の専門家である弁護士のサポートが不可欠であるため、まずは弁護士に相談することをおすすめする。
グラディアトル法律事務所は、東京と大阪の2拠点を中心に活動しており、ナイトビジネス業界で全国1000件以上の解決実績がある。風営法違反に関する刑事弁護の経験も豊富である。
また、グラディアトル法律事務所では、500店舗以上の風俗店の顧問弁護士を担当しており、ナイトビジネス業界に特化した弁護士事務所といえるだろう。トラブル対応だけではなくトラブル予防にも力をいれているため、実際にトラブルが生じていなくても気軽に相談してもらいたい。
近年、eスポーツの人気が高まっており、eスポーツ施設も多数存在するようになった。また、全国でeスポーツ大会も開催されるなど今後もeスポーツが普及していくことが予想される。
しかし、eスポーツ施設やeスポーツ大会には風営法などの法令上の規制があるため、適法に営業等を行うには弁護士によるサポートが不可欠である。eスポーツ施設の開業やeスポーツ大会の開催を検討中の方は、グラディアトル法律事務所までぜひ相談してもらいたい。