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ホストの売掛金・未収の回収方法を弁護士が解説!内容証明・裁判・時効など

弁護士 若林翔 2021/07/06更新

ホストクラブでは、売掛(うりかけ)と言われる店舗や担当ホストが飲食代金を立て替えるシステムがあります。

カケ、ツケと言われることもあり、この回収についてトラブルが発生することが多いです。

当法律事務所では、新宿歌舞伎町などのホストクラブの顧問弁護士をしておりますので、売掛金の回収についてのご相談や、回収のご依頼を多く受けています。

そこで、今回は、ホストの売掛金について、その法的根拠、回収方法、弁護士からの内容証明、裁判、時効、回収時の注意事項、ホストの逮捕事例などについて解説をしていきます。

ホストクラブの売掛金・未収とは?

ホストクラブの売掛金(売掛・掛け・未収)とは、店や担当ホストが、お客さんのホストクラブでの飲食代金をつけにしたり立て替えたりすることをいいます。

ホストクラブでは、通常の飲食店より高価なお酒が提供されていたり、担当ホストを応援するために多くの注文をしたりすることがあります。お客さんがその場に現金をもってきていればいいのですが、そうでないことも多いので、売掛金とすることが多いです。

店がつけにする場合もありますが、担当ホストが立て替えることが多いです。

担当ホストがお店に飲食代金を立て替えて支払い、そのあとにお客さんに立て替えた分を支払ってもらう場合や、担当ホストがお客さんにお金を貸して飲食代金を払ってもらい、お客さんには貸したお金を返してもらう場合があります。

「売掛金(売掛・掛け・未収)」と呼ばれていますが、法的には、「立替払契約に基づく立替金請求権」「金銭消費貸借に基づく貸金返還請求権」などと言われることになります。

このような売掛金(売掛・掛け・未収)のシステムがあることで、お客さんとしてはその場に現金がなくてもホストクラブで楽しく遊ぶことができますし、担当ホストとしてもその場でお金を持っていないお客さんから注文を受けて売上をあげることができます。

しかし、担当ホストとしては、お客さんが飛んだり(飛ぶ=売掛金を払わないまま連絡がつかなくなること)、後で売掛金を払えないと言われたり、そんな注文していないと文句を言われたりすることがあります。

お店に立て替えて支払っているホストとしては、自分が損してしまうことになります。せっかく大きな売上が立ったと思えば、実際にはお店にお金を払う形になります。このような事態を防ぐため、売掛にした担当ホストにとって、売掛金(売掛・掛け・未収)の回収はとても重要となります。

ホストの売掛金の取立方法(総論)

ホストが売掛金を取り立てるための方法は、大きく分けて4つあります。

  1. ホスト自身で売掛金を取り立てる
  2. 実家に連絡をする
  3. 回収業者に依頼する
  4. 弁護士に依頼する

以下、それぞれについて解説をしていきます。

ホスト自身で売掛金を取り立てる

担当ホストとしては、自分でお客さんのお金を立て替えているわけですから、原則として自分で売掛金の取り立てを行うことになります。

お客さんは売掛金を払えていなくても、担当ホストに好意を持っていることがありますので、担当ホストが取り立てればそのまま払ってくれることもあります。

担当ホストとしても、他の人に依頼する場合に比べてお金がかからず、回収できた場合にはより多くの金額が手元に残る可能性が高いです。

一方で、担当ホストとお客さんの仲が悪化している場合には、携帯電話を着信拒否されたり、LINEをブロックされたりして飛ばれることもありますので、自分では何ともならないこともあります。

実家に連絡して売掛金の支払いをお願いする

お客さんが飛んだ場合などで、お客さんの実家の住所や電話番号が分かる場合もあります。担当ホストとしては、実家に連絡をして、売掛金の支払いをお願いして取り立てることもあります。

親としては、自分の子がホストクラブで遊んだにもかかわらず代金を払っていないとなれば、親として代わりに払ってくれることがあります。この場合、担当ホストはこの支払いを受け取っても問題ありません(民法では「第三者弁済」といわれています(民法474条))。

(第三者の弁済)
第四百七十四条 債務の弁済は、第三者もすることができる。

2 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。

3 前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。

4 前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。

民法

お客さん自身よりも親の収入が多い場合もあり、お客さんよりも支払ってもらいやすい場合もあります。また、親に知られたくないと思っていたお客さんがすぐに支払ってくれる場合もあります。

一方で、法的には親に売掛金を支払う義務がありませんので、支払わないといわれてしまえばそれっきりです。また、親に知られたくないと思っていたお客さんが機嫌を損ね、支払ってもらえていたものも支払ってもらえなくなる可能性もあります。

回収業者に依頼して売掛金を取り立てる

歌舞伎町などの繁華街には、ホストの売掛金(売掛・掛け・未収)をホストに代わって回収してくれるという回収業者もいます

トリハンと言って、回収できた場合には、回収できた金額の半分を成功報酬としてもっていかれることが多いようです。

このような回収業者は、あとで詳しく説明するとおり、非弁行為というもので違法です。また、回収業者が違法な取り立てをすることもあり、場合によっては担当ホストが共犯者として責任を問われることもあります。

店の方から紹介されたり、先輩ホストからお勧めされたりすることもあるようですが、回収業者を利用することは絶対にやめましょう

弁護士に依頼して売掛金を回収する

売掛金の回収を弁護士に依頼し、弁護士に代理人となってもらって取り立てを行ってもらいます。

弁護士に依頼すれば、お客さんに内容証明を送り売掛金を請求すること、回収の交渉することはもちろん、裁判を起こすなどの法的な手続きを利用することもできます。お客さんとしても、弁護士から連絡が来た以上、裁判を起こされるかもしれないと考え、いきなり払ってくれることもあります。

また、弁護士は、弁護士法により資格をもっていますので、取り立ての依頼が違法とはなりません。また、弁護士が違法な取り立てをするということも基本的にはないでしょう。

一方で、弁護士にホストの売掛金の回収を依頼する場合には、着手金・成功報酬・実費などの弁護士費用がかかることがあります。弁護士費用は回収業者よりもかなり安いのですが、それでも回収金額の10~25%程度はかかることもあります。

売掛金(売掛・未収)の回収は、一般的に「債権回収」と呼ばれる弁護士の業務にあたります。債権回収を行っている弁護士は数多くいますが、ホストクラブにおける売掛金回収は、ホストクラブにおけるルールやお客さんの客層が独特で、会社間の債権回収などとは異なります。売掛金の回収を依頼する場合には、ホストクラブに詳しい弁護士を探すのがいいでしょう

なお、簡裁代理権という資格をもった司法書士も140万円未満であれば、回収業務をすることができます。しかし、140万円以上の売掛金の場合には取り立てをすることはできませんし、弁護士と比べて裁判を行う経験が少ないことがあります。

行政書士も売掛の取り立てをサポートすると宣伝している場合があります。しかし、行政書士は書面を作ることができるだけで、弁護士や一部の司法書士とは異なり、お客さんと交渉することはできません。そのため、お客さんが支払う意思を全く見せない場合には、最終的に弁護士に依頼しなくてはいけないこともあり、二重に費用がかかってしまうことがあります。

弁護士による売掛金の回収方法については、後述します。

ホストの売掛回収業者は違法!非弁行為とは?

ホストの売掛回収業者は違法です。

債権(お金の支払いを求めるなど相手に何かを求める権利のこと)の回収業務ができるのは、弁護士(140万円未満の売掛に限って簡裁代理権をもつ司法書士)と法務省により債権回収業の営業の許可を得た債権回収会社のみです。

法務省から債権回収業の許可を受けた売掛金回収業者もいると思うかもしれません。しかし、債権回収業の許可を受けた債権回収業者が回収できる債権の種類は決まっているため、基本的に個人からの回収を受けていません。

法務省から営業許可を受けた債権回収会社は、法務省のウェブサイトに「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」として会社名が記載されていますので、不安に思ったら確認してみましょう。
(参考サイト:http://www.moj.go.jp/housei/servicer/kanbou_housei_chousa15.html

売掛金回収などの債権回収業務は「法律業務」に当たるといわれており、弁護士の資格なくして行うことは「非弁行為」と言われています。非弁行為を行えば、弁護士法72条に違反することになります。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

弁護士法

弁護士法72条の非弁行為をすると、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処するとされています(弁護士法77条3号)。

売掛回収業者に依頼することはもちろんダメです。他のホストからお金を受け取って代わりに売掛金回収をすることも違法なので注意してください。

弁護士からの内容証明郵便で売掛金を回収する方法

弁護士が売掛金回収をするときに取る方法の1つが、内容証明郵便というもので通知書を送ることです。

弁護士は、担当ホストに売掛金を請求する権利があることを通知書に記載し、特定の日までに支払うように催促する書面を作成します。弁護士はこの書面を内容証明郵便というもので郵送します。

内容証明郵便は、送った内容を郵便局により証明してもらえます(通常の封筒などで送ってもどんな内容を送ったかを裁判所などに「証明」することはできません)。内容証明郵便で送ることで売掛金の請求をしたことを証明でき、時効間近でも時効の完成を猶予することができます。また、請求してからの遅延損害金(年3%)を請求することができる場合もあります。

弁護士名義で作成された通知書を受け取ったお客さんは、裁判を起こされることなどを考えて、すぐに弁護士に連絡したり、売掛金を支払ったりすることもあります。

内容証明郵便を送って売掛金を回収する方法は、あとに説明するような支払督促・訴訟提起・強制執行などに比べて弁護士費用が安いことも多いというメリットがあります。

しかし、内容証明郵便が送られてきても無視をするお客さんもいます。その場合には、依頼した弁護士と相談のうえ、別の手段に移るということになります。

 

裁判で売掛金を回収する方法

支払督促(しはらいとくそく)

支払督促とは、金銭などの請求について、債権者(請求する人)の申立てにより、その主張から請求に理由があると認められる場合に、裁判所書記官が支払督促を発する手続きです。

債務者(請求される人)が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申し立てをしなければ、裁判所は債権者の申立てにより、支払督促に仮執行宣言を付さなければなりません。

仮執行宣言が付された支払督促があれば、強制執行をすることができます。

売掛金(売掛・掛け・未収)も金銭の債権ですので、支払督促により請求することが可能です。

支払督促は、訴訟を提起することなく強制執行をすることができる手段で、訴訟を提起する場合よりも早く強制執行をすることができます。

しかし、支払督促に対して債務者から異議が申し立てられると、自動的に訴訟に進んでしまうという問題点もあります。

訴訟提起(裁判)

訴訟とは、裁判所に訴状や証拠を提出し、争いとなっている権利について裁判所に判決をして争いとなっている権利が存在するかどうかを確定してもらう手続きになります。

裁判所により判決が下されたものについては、原則として後から争うことはできません。そのため、お客さんとの間で売掛金が存在しているかどうかなどの争いがある場合には、訴訟提起をすることが有効です。

お客さんが弁護士に依頼して、「飲食代金は高すぎるので公序良俗に違反し無効です。あなたには一切支払いをしません。」というような内容証明郵便が送られてきた場合、担当ホストとしては訴訟提起まで考えないといけません。

このように訴訟は争いとなっている権利を確定し、後から覆せないようにすることができます。また、判決で売掛金を請求できると認められれば、強制執行をすることもできます。

しかし、訴訟となった場合には、時間がかかることが多いです。訴訟提起から判決までに1~2年かかる場合もあります。

また、訴訟を弁護士に依頼した場合、内容証明郵便を送ったり支払督促を申し立てたりする場合に比べて弁護士費用が多くかかることもあります。

強制執行

仮執行宣言付き支払督促を受け取ったり、訴訟を起こして判決を受け取ったりしても、それだけでは紙切れにすぎません。もちろん、その段階になってお客さんが自ら支払ってくれる場合もありますが、判決が出たにもかかわらず売掛金を支払わない場合もあります。

そのときには、強制執行をする必要があります。

強制執行の対象としては、不動産・自動車、給料、預貯金、家財道具などがあります。

強制執行をする場合には、これらのお客さんの財産をお金に換えて、売掛金に充てることができます。

強制的に回収ができるという点ではメリットがありますが、強制執行の対象となる財産は自分で探さなければいけません。また、強制執行をするにも費用がかかります。そのため、強制執行を申し立てたのに、価値のある家財道具はなかったから費用倒れになってしまった、という場合もあります。

ホストの売掛金回収には証拠作りが重要!

ホストの売掛金回収には、これまで説明した様々な方法がありますが、実際に取り立てに移る前に、証拠づくりが重要となります。

借用書・合意書・誓約書などの書面作り

売掛にするときに書面を書いてもらうことが重要です。

売掛金を請求する際には、いくらの金額分のサービスを提供をしたのか立証する必要があるからです。

シャンパンなどを頼み、お酒を飲んでいれば、記憶が無くなってしまうこともあるでしょう。そんなときのために売掛にするときには、売掛に同意する署名をしてもらいましょう。

また、注文した内容を確認してもらう意味でも、お客さんには会計の伝票を確認してもらってサインしてもらう必要があります。

とっさに書面を準備することは難しい場合もあります。もしも現在お店に書面が用意されていない場合には、事前に弁護士に依頼するなどして、売掛にする場合の書面を作成し、お店に備えておきましょう

身分証確認

また、売掛金を請求する際に、お客さんの身元が分からなければ、請求ができません。

また、せっかく書面を書いてもらったのに、あとで読んでみたらなんて書いてあるか分からない…という場合もあります。

伝票にサインをしてもらう頃にはお客さんにもお酒が入っていることもありますので、字が読みづらくなる場合もあります。そんなときに備えて身分証を確認させてもらい、写真やコピーをとっておきましょう。

お客さんの中には、最初からホストクラブの代金を払うつもりがなく、いろんなホストクラブで売掛金を払わない人もいます。そのような人は、売掛にするときの書面に、わざと偽の住所や電話番号を書きます。書面に書いた住所や名前が本当のものかどうかを確認するためにも身分証の確認は忘れないようにしましょう。

また、身分証は顔写真付きのものにする必要があります(自動車運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど)。他人の身分証を使ってホストクラブに入ってくる人もいるためです。中には姉の身分証を使って未成年のお客さんがホストクラブで大量の売掛をしたこともあります。このようなことを防ぐためにも、顔写真付きの身分証を確認しましょう。

写真やラインなど

伝票へのサインがあったとしても、「そのシャンパンはテーブルには出てこなかった」と言い訳をされる場合があります。また、お客さんによっては、「脅されて注文してしまったので本当は注文するつもりはなかった」などと言いだすこともあります。

そんなときは、お客さんが楽しそうにシャンパンを持っている写真が重要な証拠となります。記念撮影として撮っている場合もあると思います。

お客さんが帰った後のLINEのやりとりも大事になります。帰った後も楽しそうに会話をしていたり、また飲みに行きたいと言っていたりすれば、脅されたなどの言い訳は通用しなくなります。

ホストクラブの売掛金と時効

ホストクラブの売掛金の時効は、お店の場合でも担当ホストの場合でも5年間となっています。

支払ってもらえる日から5年間何もしないでいると時効により売掛金を請求する権利は消滅してしまいます。

5年が過ぎようとしている場合には、早急に時効の完成をストップすることが必要です。内容証明郵便を送ることで6か月間猶予をもらえますので、急いで弁護士にご相談ください。

※ 2020年4月1日に現在の民法が施行される前の時効は、お店の売掛金については1年間、担当ホストの売掛金については10年間となっていました。これらの時効が間近に迫っている場合にも内容証明郵便を送る必要がありますので、お早めに弁護士にご相談ください。

 

売掛回収の際の注意点・未収になってしまう場合とは?

証拠がない場合

たとえ証拠が何もなくても、売掛にした以上、お客さんには売掛金を支払う義務があります。

しかし、お客さんとの間で争いとなった場合には、証拠がないために負けてしまうこともあります。証拠は重要ですので、売掛にするときから証拠を作っておきましょう。

恐喝・強迫などの場合

お客さんを脅して無理やり注文させるようなことがあれば、注文自体を取り消されて売掛金を支払わなくてもよくなることになります。お客さんが脅されたという証拠はないことも多いですが、脅すようなことがあればお客さんが自ら売掛を払ってくれなくなりますので、恐喝・脅迫には気を付けましょう

また、回収するときの恐喝・脅迫にも気を付ける必要がありますが、それはあとで説明します。

客が未成年の場合

お客さんが未成年の場合ですと、売掛の約束をしたとしても、約束自体を親権者に取り消されてしまう場合があります(未成年者取消し(民法5条))。

(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

民法

そもそも未成年の場合には飲酒することができませんので売掛金が大きな金額にならないと思いますが、成人と騙されないように身分証確認はしっかり行いましょう。

注文していないと言われた場合

「伝票には書いてあるが、注文したことはない」「これは担当ホストが自分で注文したものだ」などと言われることがあります。

伝票にサインがない場合や特に高級なボトルの注文がされた場合にはいわれることがあります。

これも伝票へのサインや、飲んでいるときの写真を撮ることで防ぐことができる場合があります。

お客さんに飛ばれた場合

どんなに証拠を揃えていたとしても、お客さんに逃げ切られてしまえば売掛金の回収ができないこともあります。ホストクラブのお客さんの中には、定職についていない方もいて、簡単に飛んでしまう人もいます。

飛ばれないようにお客さんとの関係性を築いておくことが大事ですが、最初から飛ぼうと考えている人への対策は難しいです。どうしても連絡がつかないようであれば、実家の両親などに現在どこにいるのか教えてもらうこともあります。

もっとも、お客さんに飛ばれたとしても、お客さんが財産を持っている場合などでは、裁判をして強制執行をすることにより、売掛金を回収できる場合もあります。

時効が成立した場合

消滅時効が成立してしまうと、売掛金を請求する権利がなくなってしまいます。時効をストップ(完成猶予)する方法もありますので、忘れずに管理しておきましょう。

逆にいえば、売掛金を請求する権利が確定すれば、時効が成立するまで権利は残り続けることになります。一時的にお客さんと連絡が取れなくても、諦めずに売掛金の回収を目指しましょう。

売掛回収業者・反社会的勢力を使った場合

売掛の回収業者は、先に説明したとおり、違法です。反社会的勢力に依頼して、違法な取り立てをすることも許されません。

このような業者を利用することで直ちに売掛金を請求する権利が消滅するというわけではありませんが、売掛回収業者・反社会的勢力から取立てを受けたお客さんは、警察や弁護士に相談し、その結果支払いを求めることができなくなることがあります。

また、場合によってはお客さんから損害賠償請求を受けることがあり、売掛金の未収金額よりも損害賠償の金額の方が上回ってしまうこともあります。

ホストの売掛回収での逮捕事例

恐喝罪

恐喝罪とは、人を恐喝して財物を交付させたときに成立する犯罪です(刑法249条)。

(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法

人に暴行をすることはもちろん、脅迫(人を畏怖させるような害悪の告知)をすると「恐喝」にあたります。

・支払わないと●●するぞ、ヤクザが取立てに来るぞと脅すようなことを言う
・支払いを求めるときに暴力を振るう

などをすると恐喝罪に該当する可能性が高いです。

お客さんが取立てを受ける様子を撮影や録音している場合もあります。このような証拠をもって警察署に相談されると逮捕されてしまう場合があります。そのまま警察に行かれなくても、その動画や音声をSNSにアップされてしまえば、既にいるお客さんも離れてしまうかもしれません。

一度恐喝をしてしまえば、お客さんから売掛金を回収することは尚更難しくなります。さらに、罰金を支払うことになるなど回収する金額よりも多い金額を支払わなければいけないことになるかもしれません。

強盗罪

強盗罪とは、暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取したときに成立する犯罪です(刑法236条)。

(強盗)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法

恐喝罪と似ていますが、恐喝よりも強い暴行・脅迫があったときに成立します。

そのため、法定刑も重く、五年以上の有期懲役に処するとされてします。

さらに、怪我を負わせてしまった場合には、強盗致傷罪となり、法定刑は無期又は六年以上の懲役に処するとされてします。

住居侵入罪・邸宅侵入罪

取立てをするためにお客さんの家に行く際に住居侵入罪や邸宅侵入罪で逮捕されるケースがあります。

(住居侵入等)
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

刑法

お客さんや家族が拒否しているのに玄関から中に入り込むことはもちろんですが、オートロックのマンションなどで居住者の許可なくオートロック内に入り込むと玄関の中まで入らなくても「邸宅侵入罪」という犯罪が成立する場合があります。

売掛金の回収の事例ではないですが、20●●年には、元タレントの坂口杏里氏がホストの家に行き、玄関前で話していたことで、邸宅侵入罪により逮捕されたというニュースがありました。

取立てのためにお客さんの家に行くことは適法ですが、その方法次第では犯罪となりますので気をつけましょう。

また、お客さんに家に上げてもらうことができたとしても、退去するように求められて居座り続けると不退去罪という犯罪が成立することになります。

退去を求められるような状況では話合って売掛金を回収することは難しいです。一度退去して、機会を改めましょう。

窃盗罪

売掛を飛んだお客さんと偶然街で出くわすこともあるでしょう。担当ホストとしては、この機会に少しでも売掛金を回収したいと思うでしょう。

しかし、いくら売掛金が未収だからといって、持っている財布から勝手にお金やカードを抜き取ったり、貴重品を持って帰ったりする行為は、窃盗罪となります。

(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法

繁華街には防犯カメラが設置されていることも多く、お金を取った姿が映っていれば、すぐに逮捕されてしまうこともあるでしょう。

民事事件となる場合

SNSやインターネット掲示板で「この人は飲食代金を払わずに逃げています」という内容をお客さんの個人情報や顔写真と一緒に投稿すれば、名誉権侵害やプライバシー権侵害となり得ます。

たとえ匿名で投稿をしたとしても、発信者情報開示請求という方法で投稿した人物が特定され、損害賠償請求を受けることがあります。

適法に回収率を高めるためには?

売掛金に関するホストとお客さんの間のトラブルは、数多く生じています。先輩ホストに教えてもらった方法が適法とは限りません。売掛にする際には、きちんと回収方法の知識を持っておきましょう。

方法を間違えれば、売掛金の回収ができないばかりか、逮捕・勾留されて処罰されてしまう可能性もあります。多少費用や時間をかけたとしても、適法・適切な方法で売掛金の回収をすることがかえって近道となる場合があります。

一般的な売掛金回収について説明しましたが、具体的なケースでどのように売掛金を回収するのがいいのかについては弁護士にご相談ください。

 

ホストクラブの売掛金トラブルについて取材を受けました

グラディアトル法律事務所の弁護士若林翔が、弁護士ドットコムニュースさんから、ホストクラブの売掛・未収のトラブルについて、取材を受けました。

掲載記事は、以下のリンクからご覧ください。

ホストが勝手につけたツケ、別れを告げたら「全部返して」と請求された…支払い義務は?

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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