無料求人広告の詐欺トラブルは弁護士からの内容証明郵便で拒絶せよ!

ハローワークで求人募集をしたら、無料の求人広告サイトの営業電話がかかってきて、掲載をした。

掲載期間終了後に自動更新されたと多額の掲載料金の請求をされた

有料の求人広告サイトと一年間の契約をしたら、実際には契約期間は360日で、自動更新がなされて更に一年分の掲載料金を請求された

自動更新の説明なんて聞いていない!

たしかに、契約書には自動更新についての条項が小さい文字で記載はされているが。。

求人効果は全くなく、解約する予定だったのに。。。

自動更新された契約金は支払わなければいけないのだろうか。

このような求人広告をめぐる詐欺トラブル、悪質商法トラブルの被害が続出している。

グラディアトル法律事務所の弁護士にも、同様の相談が寄せられ、ご依頼を受けている。

結論から言えば、求人広告の詐欺トラブルについては、自動更新された契約金額を支払うべきではない

求人広告自体には実態がなく、自動更新による更新料をぼったくるための悪質商法だからだ。

もっとも、契約書には自動更新の記載があり、支払義務については、法的な問題点もあることや、悪徳業者が裁判を起こしてくるケースも散見されるため、弁護士に依頼をして内容証明郵便を送付して、支払拒絶をすべきだろう。

本記事では、無料求人広告の詐欺トラブルについて、その内容や最新の手口、支払拒絶の法的根拠、裁判例、対処法としての内容証明郵便の送付について、解説する。

無料求人広告の詐欺トラブルとは

無料求人広告の詐欺トラブルとは、無料で求人広告に掲載をすると、その契約・規約上、契約期間内で更新拒絶の連絡をしないと自動更新がなされ、自動更新後の有料広告の掲載料として多額の金銭を請求される詐欺的なトラブルのことをいう。

自動更新については、契約時に説明されず、求人広告に効果はなく、無料の求人広告はあくまでも自動更新を誘うための罠であり、もっぱら、自動更新後の有料広告費用を取ることを目的とした悪徳商法だ。

ここ数年で、無料求人広告の詐欺トラブルの被害が増加している。

厚生労働省も、ハローワークインターネットサービスにおいて、無料求人広告の詐欺トラブルについて、情報提供をしている。

リンク:「求人広告掲載時のトラブルについて(無料掲載後の高額請求など)」(厚生労働省HP)

無料求人広告詐欺トラブルの手口

典型的な無料求人広告詐欺トラブルの手口としては、以下の特徴がある。

  • ハローワーク等に掲載されている会社へのテレアポ営業
  • 無料を強調する営業トーク
  • 自動更新の説明無し・記載が分かりづらい
  • 契約後は連絡が取りづらい
  • 求人効果は無い

ハローワーク等に掲載されている会社へのテレアポ営業

無料求人広告詐欺トラブルの悪徳業者は、実態として、効果のある求人広告を行なっていない。

そのため、営業手法としては、ハローワーク等に掲載されている会社へのテレアポ・電話営業を使うことが多い。

その他に、FAXなどによる勧誘もおこなわれているが、テレアポによる電話勧誘が多い印象だ。

無料を強調する営業トーク

テレアポによる電話営業での営業トークの内容として、無料を強調した営業トークをするという特徴がある。

「ハローワークに掲載されているのを拝見しました」

「3ヶ月間無料で求人広告を掲載できます」

「ハローワークに掲載されている情報を掲載するのでお手間は取らせません」

「無料ですので、一度お試しいただいて効果を実感してください」

などと、無料であることを強調して勧誘をすることが多いのだ。

多くの経営者の方は、無料であるなら、一度、掲載をしてみても良いかと思って、契約をしてしまうのだ。

自動更新の説明無し・記載が分かりづらい

無料掲載を強調して求人広告への掲載契約の勧誘をするのだが、その際に、自動更新について説明がなされないという点も特徴的な手口だ。

無料求人広告詐欺トラブルを仕掛ける悪徳業者は、無料掲載を餌にした自動更新後の掲載料を取ることが目的なので、自動更新について説明をすることはない。

求人広告契約についての、申込書・契約書などの書面には、自動更新についてや更新後の掲載料について記載はされているものの、多くの条文に紛れて分かりづらいのが特徴だ。

無料の求人広告だと思っているので、経営者の方々も、契約をする際に契約書を隅々まで注意して読む人は多くなく、自動更新についての条項に気がつかないまま契約をしてしまう人も多いのだ。

契約後は連絡が取りづらい

無料求人広告詐欺トラブルを仕掛ける悪徳業者は、更新料を取ることを目的としているので、契約後・掲載後に業者からフォローの電話や連絡があることはない。

それどころか、担当者もつかず、掲載後の連絡はサポートセンターのフリーダイヤルのみ知らされ、その番号すら繋がりにくいケースもある。

求人効果は無い

無料求人広告詐欺トラブルでは、求人効果が無いことも特徴的だ。

真っ当に求人広告を行う業者ではなく、更新後の掲載料を騙し取ることを目的とした悪徳業者が作成したサイトなので、求人の効果がないのだ。。

3ヶ月間の求人広告の無料期間・自動更新後、ともに求人効果が無いことが多い。

一件の問い合わせもないケースも多い。

2〜3件は問い合わせはあったが、結局、採用には至らなかったというケースもある。

最新手口!「有料」求人広告の詐欺トラブル(悪徳業者も工夫している)

ここまで説明をしてきたのが数年前から増加している典型的な無料求人広告の詐欺トラブルだ。

もっとも、この手口が有名になってきたからか、最近は悪徳業者側も工夫をしてきているようだ。

最低限の実態を作った上で、有料の求人広告での掲載をさせて、自動更新をさせるパターンなど、新たな手口も出てきている。

ここでは、最新の「有料」求人広告の詐欺トラブルの手口について解説をする。

不自然な契約期間(365日ではなく、360日)

最新の有料求人広告の詐欺トラブルの手口として、契約期間が不自然であるという点がある。

悪徳業者による有料求人広告においても、その目的は広告掲載料をより多く騙し取ることにある。そのため、契約時の求人広告掲載料に加えて、自動更新後の掲載料をも取ることを目的に設計されている。

すなわち、自動更新についての契約条項を読まずに契約をした人や、自動更新条項を読んだけども更新拒絶通知の期間内に連絡するのを忘れる人から更新後の掲載料を取るための設計だ。

不自然な契約期間についても、契約期間を1年(365日)ではなく、少し短い360日に設定することにより、自動更新拒絶の連絡期間を経過させるための仕掛けと言って良いだろう。

自動更新付きのプランと自動更新がないプランの料金差が大きい

最新の有料求人広告の詐欺トラブルの手口として、自動更新付きのプランと自動更新がないプランの料金差が大きいという点がある。

例えば、自動更新付きのプランの掲載料金が100万円であるのに対して、自動更新なしのプランが200万円である場合だ。

同じ期間、同じ求人広告媒体に掲載され、掲載の条件やプラン等に違いがないにも関わらず、その料金が倍以上違うということがあるのだ。

自動更新についての契約条項を読まずに契約をした人や、自動更新条項を読んだけども更新拒絶通知の期間内に連絡するのを忘れる人から更新後の掲載料を取ることを目的としているから、このようなプランになっているのだと考えられる。

やはり求人広告の効果は無い

これは、従前の無料求人広告の詐欺トラブルの手口と共通するところではあるが、有料の求人広告の詐欺トラブルにおいても、求人効果は無いことが多い。

一応の体裁は整え、求職者の登録があるケースもあるが、求人・採用の成約率が極めて低いというのが特徴だ。

求人広告詐欺トラブルの自動更新後の支払いを拒絶する法的根拠

ここまで見てきたように、無料・有料に関わらず、自動更新をさせ、その更新後の掲載料を騙し取ることを目的とした悪徳商法が横行している。

悪徳商法である以上、掲載料を支払うべきではない。

無料求人広告詐欺トラブルにおいて、法律上、支払義務がない、支払いを拒絶するためには、以下の3つの理屈が考えられる。

  1. 詐欺取消し
  2. 錯誤取消し
  3. 公序良俗違反無効

詐欺取消し

民法では、詐欺により騙されてした意思表示は取り消すことができると定められている(民法96条1項)。

(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

民法

無料求人広告のトラブルにおいても、悪徳業者が嘘をついていて、それに騙されて申し込みをしてしまった場合には、申し込みの意思表示を取り消して、契約を無かったことにできる。

この詐欺には、相手を騙すためにあえて重要な事項を伝えないことも含まれる。

有料での自動更新の存在を隠し、無料で掲載ができ、お金を取られることはないと誤解させるよう騙すために「無料」を強調し、自動更新の存在を告げないことも詐欺に該当するのだ。

錯誤取消し

民法では、勘違い・錯誤に陥ってした意思表示は取り消すことができると定められている(民法95条1項)。

(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

民法

無料求人広告のトラブルにおいても、無料で掲載ができ、自動更新でお金を取られることはないと勘違いをして申し込みをしてしまった場合には、申し込みの意思表示を取り消して、契約を無かったことにできる

以下のように、意思表示に対応する意思を欠く錯誤・勘違いといえるからだ。

意思表示:契約書記載の有料契約へ自動更新がある契約をする意思

意思:無料で掲載できて自動更新でお金を取られることはない契約をする意思

詐欺取消との違いは、相手方の騙す行為や騙す意思の認定までは必要が無い点にある。

公序良俗違反無効

民法では、公序良俗に違反する法律行為は無効と定められている(民法90条)。

(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

民法

簡単に言えば、正義に反する悪徳な契約は無効だということだ。

人を採用したい企業に対して、ちゃんとした効果のある求人広告を提供するためではなく、無料で釣って、自動更新後の有料掲載料を騙し取るという目的でする悪徳な契約は無効だという理屈だ。

求人広告詐欺トラブルの自動更新後の支払いを拒絶する法的根拠のまとめ

求人広告詐欺トラブルの自動更新後の支払いを拒絶するための法的根拠は、詐欺取消し、錯誤取消し、公序良俗違反無効と3つある。

この3つは、3つ同時並行的に主張をしても良いし、事案に応じてぴったりなものを選んで主張しても良いだろう。

弁護士に相談しながら、具体的な事案の内容や、証拠関係に照らして、適切な主張をすべきだろう。

求人広告トラブルではクーリングオフは適用されない!

求人広告トラブルでは、クーリングオフは適用されず、契約を解除できない

クーリングオフは法人や事業者が営業のために締結する契約には適用されず、求人広告は、何らかの事業を行なっている会社や事業者がその営業のために必要な人を募集するため(営業のため)に締結する契約だからだ。

クーリングオフとは、契約の申込み又は契約締結後一定期間内は、申込者等が無条件で申込みの撤回又は契約の解除ができる制度のことをいう。

世の中には、消費者が冷静に商品の購入を検討して申し込むことができないような場合も存在する。たとえば、急に電話がかかってきて、巧みなセールストークで商品を売り込まれ、今だけ限定の価格で購入できると言われてついつい申し込みをしてしまった場合などだ。

このような場合には、よくよく冷静に考えてみたら、あの商品は必要なかった。契約を解除したいと思うことがある。

このような場合に、消費者を保護するために、冷静に考えられる一定期間は契約を自由に解除できるという制度が必要だ。

そこで、特定商取引法という法律は、クーリングオフという制度を定め、契約の申込み又は契約締結後一定期間内は、申込者等が無条件で申込みの撤回又は契約の解除ができることにしたのだ。

そして、特定商取引法は、消費者を保護するための法律で、クーリングオフも消費者を保護する制度なので、事業者が事業のために行う求人広告については適用されないのだ。

(適用除外)

第二十六条 前三節の規定は、次の販売又は役務の提供で訪問販売、通信販売又は電話勧誘販売に該当するものについては、適用しない。

 売買契約又は役務提供契約で、第二条第一項から第三項までに規定する売買契約若しくは役務提供契約の申込みをした者が営業のために若しくは営業として締結するもの又は購入者若しくは役務の提供を受ける者が営業のために若しくは営業として締結するものに係る販売又は役務の提供

「特定商取引に関する法律」e-gov法令検索

無料求人広告詐欺トラブルについての裁判例

無料求人広告の詐欺トラブルでは、悪徳業者側が更新後の掲載料の支払いを求めて裁判を起こしてくるケースがある。

ここでは、詐欺取消を認めた判例、公序良俗違反を認めた判例を紹介する。

詐欺取消を認めた裁判例(那覇簡裁令和3年10月21日)

この裁判例は、無料求人広告業者の営業マンの説明が、有料での自動更新の存在を隠し、無料で掲載ができ、お金を取られることはないと誤解させるよう騙すために「無料」を強調し、自動更新の存在を告げなかったとして、詐欺に該当するとして業者からの請求を否定した事例だ。

この事例でも、無料求人広告の業者はテレアポ営業をしている。

その電話の際に、求人広告掲載の利用料は無料であることのみを強調し、無料掲載期間終了後は解約手続きを事前に取らない限り、自動的に有料契約に移行するとの契約ルールについては何ら説明をしなかった。

FAXにて申込書を送らせ、契約が成立した。

その申込書には、以下の内容が記載されていた。

  • 無料求人広告期間は14日間
  • 4日前までに書面で更新拒絶をしない限り、何度も自動更新される
  • 自動更新後の掲載料は有料
  • 14日ごとに掲載料が発生する

那覇簡易裁判所は、詐欺に該当するとして、契約の申し込みの意思表示は取り消されたとして業者からの請求を否定した。

 平成31年4月から令和元年11月25日にかけて厚生労働省や全国求人情報協会、毎日新聞等のマスコミ及び沖縄県弁護士会を含む各県の弁護士会が原告らの勧誘手法が事業者の錯誤に付け込んだ商法である旨の注意喚起を大々的に行っていた事実が認められる(原告勧誘担当者が被告代表者に無料求人広告掲載の勧誘電話をかけてきたのは令和元年11月20日)。

原告においても当然自身の行っている勧誘手法に指摘されている問題があることは十分に認識していたと認められ、…勧誘によって被告代表者を錯誤に陥らせようとする故意があったこと、…被告代表者の錯誤によって契約申込みをさせようとする故意があったと認められる。

 被告代表者は本件広告掲載契約日までに原告勧誘担当者から3度も勧誘電話を受け、その都度広告掲載料金は「無料」と強調されていたこと、そして、勧誘担当者に無料であることを確認して本件広告掲載契約の申し込みをしたと述べる。…自動更新や有料契約に自動移行することについて意識が向かないように誘導された結果、電話勧誘を受けた被告代表者は、…無料期間が終了する4日以上前までに書面で更新拒否を通知しなければ自動更新となり、有料契約に自動移行されてしまうという契約であることを全く理解していなかった原告は、被告代表者の錯誤をその不作為によって深めて本件契約の申込みをさせたといえる。

那覇簡裁令和3年10月21日

公序良俗違反を認めた裁判例(東京地判令和元年9月9日)

この裁判例は、無料求人広告業者との契約は、自動更新についての規約を読んでいない者やその規約を読んだが更新拒絶の通知をし忘れた者から更新後の有料広告の掲載料を支払わせることを目的とした者であるとして、公序良俗に反し、無効であるとして、無料求人広告業者の請求を否定した。

この事例でも、無料求人広告業者はテレアポ営業を行い、その営業の際には、自動更新後は有料になる旨の説明はされていなかった。

規約には、以下の内容が記載されていた。

  • 掲載期間は3週間
  • 契約期間中に解約申入れの書面が到達しないと自動更新
  • 自動更新後は1年間45万円
  • 自動更新後は途中解約しても45万円は返還しない

なお、被害者である被告のもとには、契約期間最終日に挨拶状が届き、そこに自動更新についての記載があった。

東京地裁は、以下のように、公序良俗違反を認定し、請求を否定した。

 上記前提事実のとおり,本件規約によれば,本件サービスは,3週間の無料掲載期間内に被告によるFAXでの解約申入れが原告に到達しない限り,自動的に1年間の有料掲載期間に移行し,42万円(消費税別)という高額の広告料の支払義務が発生する仕組みになっている上,その後,被告が中途解約をしても,支払済みの広告料は返還しないものとされている。
 原告は,被告に対し,本件サービスの利用を勧誘するに際し,3週間の無料掲載期間については説明したものの,3週間以内に解約しなければ自動的に有料掲載期間に移行し,1年分の広告料が発生することの説明まではしなかったとみるべきである(なお,Cが,被告に対し,有料掲載に移行する前に電話で事前に意思確認をする旨の発言をしたことまで認めるに足りる証拠はない。)。
 上記のとおり,本件サービスは,3週間の無料掲載期間を1日でも経過すれば,直ちに1年分の広告料の支払義務が発生する仕組みになっているにもかかわらず,原告から被告に対して,事前に有料掲載期間に移行するか否かの意思確認を行う仕組みにはなっていない。原告は,挨拶状によって注意喚起を行っていると主張するが,挨拶状が被告に到達したのは,無料掲載期間の最終日の午後であるから,真に注意喚起の趣旨で挨拶状を送付しているとは認められず,単に注意喚起をした体裁を整えようとしているにすぎない。
 そして,原告は,無料掲載期間が経過するや否や,直ちに請求書を被告に送付して1年分の広告料の支払を請求し,被告が抗議をしても本件規約を盾に解約に応じず,訴訟提起に至っているところ,原告が,東京地方裁判所に,求人情報サービスの利用代金の支払を求める訴訟を多数提起していることは当裁判所に顕著な事実である。また,証拠(乙1各枝番)によれば,すべてが本件サービスに関するものであるかは不明であるものの,本件と同様の紛争が多数発生していることが窺われる。
 被告は,本件サービスには求人広告としての実体がなく,本件の請求は詐欺に類する行為であると主張するので,当裁判所は,原告に対し,繰り返し,原告の業務内容や,本件サービスによる求人の実績について明らかにするよう求めたが,原告は,この点について何ら主張立証を行わなかった。したがって,本件サービスには求人広告としての実体はないものと評価せざるを得ない。
 以上を総合すると,原告は,専ら無料掲載期間内に解約しなかった顧客(この中には,本件規約を読んで,無料掲載期間内に解約手続が必要であることを認識したが手続を失念した者のほか,被告のように,そもそも本件規約を読んでおらず,解約手続が必要であることを認識していないかった者も含まれる。)に,1年分の広告料を支払わせることのみを目的として,本件契約を締結しているものといわざるを得ないから,本件契約は,公序良俗に反し無効である。

東京地判令和元年9月9日

詐欺取消と公序良俗違反の両方を認めた裁判例(津簡易裁判所令和5年11月7日判決)

この裁判例は、無料求人詐欺について、公序良俗違反と詐欺取消の両方を認めています。

【無料求人広告について判例が公序良俗違反と詐欺取消を認めたポイント】

  • 求人効果が期待できないサイト(アクセス数が少ない)
  • 求人実績等について説明せず
  • 無料を強調した勧誘
  • 無料期間終了の2日前にFAX等をしないと自動更新される
  • 自動更新後の金額は66万円
  • 解約は期間までにすれば簡単にできると虚偽の説明

「被告の商法は、被告が運営するWebサイト(ライズワーク)(https://risework.jp)において、求人情報を掲載することを業務とするものであるが、「ライズワーク」での求人情報の掲載は、ユーザーには見られないビューアビリティが低いサイトであり、当該サイトへの求人情報には求人効果が期待できないにもかかわらず,1本22万円、3本で66万円の求人情報の掲載を販売するものであって、それでは顧客が集まらないため、無料掲載の電話勧誘を行って顧客を勧誘し、無料掲載のセールストークにつられて無料掲載の申込みをした顧客に対し、それが同時に、有料掲載契約の申込みとなり、無料掲載期間の終了日より2日前に解除の通知をメールやfaxで連絡しない限り、有料掲載契約に自動的に移行する内容であるところ、無料掲載ばかりを強調し、当該ウェブサイト(ライズワーク)がユーザーには見られないビューアビリティが低いサイトであることや求人情報の実績がないことの説明もなかったものである。」

「また、期間終了までに解除の通知をすれば解除できると説明しておきながら、後日、顧客が期間終了日に解除の通知をすると、2日前に期間が切れていると言って、高額の掲載料を請求するものであり、解除期間に関して詐欺的な説明で顧客を錯誤に陥らせる販売方法をしておいて有料掲載契約の成立をさせるものであり、Webサイトを使用した求人情報の掲載業務としては、社会通念に反しており、公序良俗にも反しているから、本件有料求人情報掲載契約は無効ある。」

「被告は、無料掲載で顧客を勧誘しておき、一定期間経過後に高額の有料掲載契約に自動的に移行する契約内容であるにもかかわらず、有料掲載契約への移行をしない方法につき「期間終了までにメールやfaxで連絡いただいたら、簡単に解除できます。」という虚偽の説明を行い、いつまでに解除の連絡をすれば解除できるかの具体的な年月日を明示せず、あたかも解除有効日が無料掲載期間の終了日であるかのごとく、顧客に誤認混同をさせる積極的な欺罔行為をしており、かかる欺罔行為により、Aも契約の重要な要素である解除期間につき無料掲載期間終了日までが解除期間であると誤認する錯誤に陥っていたものである。Aには、被告の詐欺により、契約の重要な要素に錯誤があるから、原告は、本件掲載契約を詐欺と錯誤により取り消す。」

津簡易裁判所令和5年11月7日判決

無料求人広告詐欺トラブルは弁護士に依頼をして内容証明を送付すべき

以上で見てきたように、無料求人広告の詐欺トラブルは、非常に悪質だ。

悪質な商法に引っかかってしまったとしても、絶対に、自動更新後の有料広告掲載料を支払ってはいけない。

そして、支払いを拒絶する際には、以下の理由から、弁護士に依頼をして内容証明を送ってもらうのが良いだろう。

  • 内容証明で更新拒絶・契約解除の意思を明確にする
  • 適切な法的主張ができる
  • 裁判を抑止できる可能性が高まる
  • 裁判を起こされても適切な主張・立証ができる

内容証明で更新拒絶・契約解除の意思を明確にする

早期に求人広告の契約を更新しない意思と契約を解除する意思を明確化することが重要だ。

自動更新後の掲載期間が長くなってしまうと、長い期間有料広告を掲載していたのだから、その支払いには合理性があると判断されてしまうリスクがあるからだ。

更新拒絶・契約解除の意思を明確化させるためには、証拠に残る内容証明郵便という手段で意思表示をすべきだ。

適切な法的主張ができる

無料求人広告の詐欺トラブルにも、業者ごとに、営業での説明内容や契約内容が異なる。

また、被害者によっても証拠状況は異なってくる。

それぞれが置かれた具体的な状況の中で、どのような法的主張をすべきかは簡単なことではない。

法律のプロである弁護士であれば、状況に応じた適切な法的主張をすることができる。

裁判を抑止できる可能性が高まる

弁護士からの内容証明郵便で主張されている内容や証拠状況が適切で説得的であれば、業者側も裁判をしても負けてしまう可能性が高いのでは無いかと考える。

そうなると、金と時間をかけて請求が否定され、負けたという前例をつくるリスクは取りたく無いだろう。

そのため、裁判を諦める可能性が高まるのだ。

裁判を起こされても適切な主張・立証ができる

本記事で紹介した裁判例の中でも指摘されているが、無料求人広告の詐欺トラブルについて、多くの訴訟が起こされている。

裁判になってしまった場合にも、初期段階から弁護士がついて対応をしていれば、その後に裁判になってしまう可能性を見据えて、対応をすることができっる。

裁判になった際にも、証拠状況や過去の裁判例に照らした適切な対応ができる。

まとめ

無料求人広告の詐欺トラブルは、非常に悪質だ。

そして、被害は増加している。

万一、無料求人広告の詐欺トラブルに巻き込まれてしまった場合でも、絶対にお金を支払ってはいけない。

裁判例でも、詐欺や公序良俗違反が認められ、業者からの請求が否定されている。

被害に遭ってしまった場合には、弁護士に依頼をして内容証明郵便を送付してもらうのがベストだろう。

まずは、一度、弁護士に相談してほしい。

グラディアトル法律事務所では、LINEでの無料法律相談も受け付けているので、お気軽にご連絡ください。

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Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
東京弁護士会所属(登録番号:50133)
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。