債務不履行で「報復サイト」 個人情報、裸写真さらす―専門家「不当な告発」と警告

ニュース内容

インターネットを通じた個人間の金の貸し借りをめぐり、返済できなかった人の住所や勤務先、裸の写真などが投稿される掲示板サイトが問題となっている。個人情報の削除は困難で、被害者の精神的苦痛は大きく、専門家は「不当な告発だ」と警告している。

サイトは2016年、「匿名で不正を告発できる」とうたい開設された。返済を滞らせたとみられる200人以上の名前や勤務先が掲載され、債権者が「連絡がないと性行為の動画をばらす」と脅す投稿もある。

自営業の70代男性は今冬、生活費に窮し、インターネット交流サイト(SNS)を通じて見知らぬ男から1万円の融資を受けた。借入時に運転免許証を提示し、緊急連絡先として友人や親族の個人情報も伝えた。

10日で5割という法外な高金利。返済先延ばしを繰り返すうち借入総額は6万円となり、支払いを迫る電話が日に数十回に上ることもあった。免許証の顔写真がサイトにさらされた上、「詐欺師」と中傷され、妻まで精神的に追い詰められた。「返せないのが悪いとはいえ、友人や親族のこともネットに出た。何をされるか分からない」。男性は軽率に個人情報を提供したことを悔やむ。

20代の女性は、25万円の融資の条件として送った自身の裸の写真が、実名と共に投稿された。「なんでこんなことに。(画像が)早く消えて」と嘆いた。

個人でも貸金業者としての登録をせずに反復して貸し付けをするのは違法だが、サイトを利用する債権者らに悪びれた様子はない。「債務不履行者を調べるための一つのツール。ありがたい存在だ」。毎月約30人に融資をするという男性はこう述べた上で、「さらすのは嫌がらせ。返さない人を同業者に教えるためでもある。罪悪感なんてみじんもない」と個人情報の書き込みを正当化する。

サイトの管理者に取材を申し込んだが、28日までに回答はなかった。  

ネットでの中傷問題に詳しい清水陽平弁護士は「裸の写真や勤務先までさらすのは正当な告発ではない」と指摘。性的な画像をネット上で公開する行為を禁じたリベンジポルノ防止法に抵触し、名誉毀損(きそん)にも当たる恐れがあるという。

ただ、同サイトのサーバーはウクライナに置かれているとみられ、同弁護士は「日本の法律が適用されず、投稿削除は困難」と話している。

2020年03月29日07時32分 時事ドットコムニュース

弁護士からのコメント

今回のニュースは、インターネットを通じた個人間の金の貸し借りをめぐり、返済できなかった人の住所や勤務先、裸の写真などが投稿される掲示板サイトが問題となっているというものです。

個人間融資・SNS融資のトラブルについては、下記別サイトのページで解説していますのでご参照ください。

また交際相手や元交際相手でないにもかかわらず、裸の写真をインターネット上に投稿・公開することがリベンジポルノ防止法違反になることについては、下記ページで解説しておりますのでご覧くださいませ。

そして今回のニュースにおいては、裸の写真や動画など他人に見られたくないものを提供する危険性について解説したいと思います。

近年、スマホをはじめとしたデジタル機器の発達により、誰もが手軽に写真や動画を撮影・保存することが可能となりました。

くわえてインターネットを取り巻く環境も進化の一途をたどり、誰でも簡単に持っている写真や動画をインターネット上に公開・投稿できるとともに、公開・投稿されている動画も容易にダウンロードというかたちで保存できる時代となっています。

このように写真や動画の撮影・保存および投稿・公開をたやすく行える状況下においては、該写真や動画を他人に提供してしまった結果、思いもよらない事態に発展することになりかねません。

特に裸の写真や動画など他人に見られたくないものについては、それを他人に提供してしまった時点で、脅迫や恐喝・強要の材料として利用されたり、リベンジポルノとして晒されるリスクがあります。

さらにいちどでも投稿・公開されてしまうと、基本的には全世界の人間がアクセスできるインターネット上の特性から、提供した他人だけでなく見知らぬ第三者にも拡散される可能性もあります。

もし拡散されてしまったとなると、すべてを削除することは現実問題困難と言わざるを得ません。

以上のように、事情があったといえども他人に写真や動画を提供することには、いわば一生ものの傷を負いかねない危険性があるということです。

ですので、どのような事情や関係性があるにせよ、他人に見られたくない写真や動画は絶対に提供しないようにすべきです。

実際弊所においても、他人に見られたくない写真や動画を提供してしまったがゆえに、脅迫や恐喝・リベンジポルノなどのトラブルになっているとのご相談を毎日いただくほど被害が急増しています。

最後にリベンジポルノに遭いそう、遭ったかもと思った際には、遠慮なく当事務所にご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。