彼女を妊娠させ中絶を選んだことで、彼女の親戚から恐喝を受けることになった事例

1.事案の概要~弁護士との相談に至るまで~

相談者は、美容師になろうと上京し新宿の専門学校に通っていた20歳の男性

ある日、付き合っていた彼女から妊娠したと報告を受けました。
彼女とどうするか相談することに。

当初、彼女は産みたいとのこと。
しかし相談者はまだ学生でバイトしかしておらず、親からの仕送りがあって生活が成り立っていた身分。
自分で生活すること自体もままならない状況で、正直子どもを育てていく自信がありませんでした。

そのため彼女には申し訳ないが、今回は中絶してもらえないかと話しました。
当然彼女はひどく悲しみましたが、彼女自身も学生であったこともあり、最終中絶することに合意して中絶の諸費用は折半することに。
なお相談者と彼女は、この話し合いを最後に別れることになりました。

中絶することが決まってから数日後、彼女の親戚を名乗る相手方から電話が。

「お前、彼女のことを妊娠させといて、おろせってどういうつもりだ。男やったら責任取れ!!とりあえず家行くから待ってろ。」と。

相談者もいきなりの電話に気が動転していたこと、また妊娠させたことにはもちろん自分にも責任があると考えていたので、とりあえず相手方を待つことに。

相手方が相談者の家に到着。
電話が恫喝する口調であったこともあり、怖そうなイメージを抱いていたところ、案の定見た目も恐怖を覚える風貌でした。

相手方は開口一番、
「どう責任取るつもりだ。中絶費用はもちろん、彼女を辛い思いをさせたことに対して誠意を見せろ!!」と。

相談者が「具体的にどうすればいいですか?」とたずねると、
「そんなこと自分で考えろ!!」と怒鳴られる始末。

相談者は相手方の恐喝するような口調・見た目から完全に畏怖し、
「慰謝料として100万円払います。」と回答してしまいました。

相手方はその回答に納得したようで、
「また取りに来るから、用意しとけ!!」と告げ、その場は帰っていきました。

けれども、相談者にそんな大金を用意できるわけがありませんでした。
ただ一方で、相談者も自分にも非があると思っていたので、何とかしなければならないと大阪に住む母親に相談

母親は息子である相談者から今までの経緯を聞き、女性として「中絶してほしい」と言われた彼女の気持ちは痛いほど理解できると。
相談者をきつく叱り、相談者の親としても責任を取らなければならないと考えました。

そこで母親からも彼女に対して直接謝罪しようとするも、彼女は電話に出ず連絡がつかない状態。
他方、相手方に対して連絡すると、「彼女にはつながない。それより金は用意できたのか!!」というのみでした。

もっとも何者かすらわからない状態で、恐喝といってもいい口調で話をしてくる相手方に対して、そもそもお金を支払うことに大きな不安がありました。
彼女に渡されるのかも不明ですし、1度支払ってしまえばいわゆるカモにされて他の名目で何度も請求されるかもしれないと。

不安は拭いきれず、脅迫・恐喝被害の無料相談をしている弁護士をネットで探したところ、弊所を見つけて東京オフィスにご相談に来られました。

2.弁護士との相談~方針決定~

弁護士は、まず相手方の立場をしっかり確認することが必要であると助言。

具体的には、相手方が彼女本人から代理権を受任しているかということ。
相手方に代理権がなければお金を支払ったところで意味がないからです。

そのため、たとえば委任状などで彼女が相手方に代理権を与えたことが確認できないかぎり、金銭の支払いには応じない旨を伝えるべきと弁護士は提案。
もちろん依頼をいただければ、今すぐ弁護士が代理人として伝えることも可能とも。

相談者は、本音を言えば相手方が怖いのですぐさま弁護士に依頼したい気持ちがあると。
他方で、自らの行為がきっかけとなったトラブルであるため、自身でケジメをつけられるならつけたい気持ちもあるとのこと。

結果、相談者は、いただいた提案どおりに伝えてみて、話し合いにならなければ依頼するとのことに。
弁護士は、もし相手方と話して身の危険を感じた際には、警察対応を含め即事務所に連絡してくださいと話し、相談を終えました。

その後、相談者が上記の内容を伝えると、
「なめてんのか!!おまえが悪いんだろ。責任取るっていっただろ。また家に行くから待ってろ。逃げたら容赦しないからな!!」
などと相手方は烈火のごとく恫喝してきたとのこと。

もっとも帰省していたタイミングで大阪の実家から相手方と電話で話したため、東京の家に来られたとしても問題はなかったと。
ただ、もはや自身では解決できないと思ったとのことで、母親とともに弊所大阪オフィスに来られ、ご依頼されることとなりました。

3.受任後の弁護士の活動~解決に至るまで~

弁護士は受任後、すぐ相手方に架電。

まず依頼者の代理人となったことを伝えるとともに、彼女の代理人であることを証明できない限り、請求にはもちろん交渉にも断固として応じないことを伝えました。

くわえて、相手方の行為は恐喝罪に該当しうるものと考えており、もし今後も続けるようであれば警察への被害届の提出など法的措置をとることも告知。

相手方はさすがに弁護士に自分の言い分が通じるわけもなく、ましてや刑事事件化のリスクまであると感じたのか、依頼者にとっていた態度から180度翻し、彼女に伝えておくので連絡してくださいとのこと。

弁護士が彼女と話してみると、たしかに相手方は親戚であり、相談者と一度話すということは聞いており、それは容認していたと。
しかしながら、慰謝料まで請求するとはまったく聞いていなかったとのことでした。

彼女としては、妊娠は二人でした行為の結果で、残念ながら中絶することも話し合って決めたこと。
なので、話し合いしたとおり中絶費用を半分負担してくれればいいとのことでした。

後日、彼女に中絶費用の半分を支払い、事件は無事終結にいたりました。

4.弁護士からのコメント

脅迫・恐喝被害に限らず、妊娠・中絶でトラブルになったとのご相談は非常に多くあります。

そして脅迫・恐喝被害においては、男性側からの相談がほとんどです。

たとえば妊娠・中絶させたことを家族や職場にバラすとかネットに公開するなど脅迫されたり、それをされたくなければ中絶費用はもちろん多額の慰謝料を支払えと恐喝されたりするケースです。

また今回のように、本人は傷ついて話ができないから代理しているなどと述べて、脅迫・恐喝に第三者が介入してくることも多くあります。

たしかに妊娠・中絶するとなると、肉体的にも精神的にも多大な負担を負うのは女性です。

しかしながらレイプであった場合などであれば格別、当事者双方の合意のもとで性行為を行い妊娠となった場合には、法律上慰謝料請求は認められません。
また中絶についても、話し合いで合意のもとに中絶を選択した場合には同様です。
いずれも当該女性の権利を侵害したとはいえないからです。

他方、妊娠の検査や診療費用・中絶の諸費用については、あくまで女性が診察・手術等を受ける立場であるため、まずは女性が負担すべきものでありますが、全額負担後、男性に半額の支払いを請求できます。

もっとも、法律上は男性側に妊娠・中絶費用の半額しか請求できないとしても、妊娠・中絶費用全額や一定程度の慰謝料を男性側が支払うことはままあります。
肉体的精神的負担を多大に負うのは女性側ですから、支払えるものであれば男性側も支払った方がトラブルにならないといえるでしょう。

なお支払う際には、なかには妊娠詐欺のケースもあるので診断書や医療明細書等を確認したり、何のために支払ったかという証拠を残しておくべきです。

ただし男性側が支払ってもいいといえるケースは、その支払いに際し、女性と合意が形成された場合です。
女性やその関係者とする第三者に脅迫や恐喝されてまで、支払うべきでは当然ありません。

脅迫・恐喝被害では今回の事例のように、弁護士が入ることで相手方の態度が打って変わり、自らではどうにもならなかったものが解決することが往々にしてあります。

というのも弁護士から相手方に対し、脅迫罪・恐喝罪に該当しうる行為であると伝えることで、相手方は自らが犯罪となる行為をしていると認識し、刑事事件化するリスクを負ってまで当該行為を続けようとはまず思わないからです。

もし不当な請求内容の書面であったとしてもサインしてしまった後に覆すことや、金銭を支払ってしまった後に取り戻すことは相当困難です。
ですので脅迫や恐喝された段階で、早急に弁護士に相談し、適切な解決方法を探されることをお勧めします。

最後に脅迫・恐喝被害に遭ったかもと思った際には自力で解決しようとせず、遠慮なく当事務所にご相談ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。