故意に起こされた交通事故?恐喝トラブルに発展し300万円請求される

交通事故が恐喝トラブルに発展した経緯

相談者は東京出身の30代男性。

営業として忙しなく働き、まさに仕事が恋人とまでなっていた相談者は彼女もいない独り身。
年齢を重ねるにつれ両親から「そろそろ結婚をして孫の顔ぐらい見せてくれないのか」とのプレッシャーをたびたびかけられていました。

けれども相談者は常日頃、仕事が忙しいからと趣味や合コンなどできるだけ削ってきたので、出会いのきっかけなど全くなかった状況。

そこで「何かのきっかけになればいいな」と試しに出会い系アプリを利用することに。

そんな中、カメラ好きとの趣味が一致した一人の女性と意気投合し、「車でしか行けない場所だけど、夕焼けがきれいに撮影できる隠れスポットがあるから、一緒に写真を撮りに行きませんか」とお誘いが。
相談者は誘いを快諾し、当日は家から車で向かい女性を待ち合わせ場所でピックアップすることを約束。

いざ当日、待ち合わせ場所で女性を乗せた後、隠れスポットに行き、きれいな夕焼けを互いに撮りました。
その後、女性が「家の最寄りの駅近くに美味しい居酒屋があるから」と一緒にご飯を食べることに。
なお女性がお酒を飲むなら一緒に飲み、代行で帰るか翌日にでも電車で取りに来ることを想定して、車は駅そばの駐車場に停めました。

居酒屋に入ると、女性は当然のようにお酒を頼んだので、相談者もあわせて注文。
お互い今日撮った夕焼けの写真のほか、過去に撮った写真を見せ合いながら飲んでいると、あっという間に終電もなくなり、お店の閉店時間となりました。

すると女性は名残惜しいのか「もっと喋りたいから私の家で飲みなおさない?」とのアプローチが。

そこで駅に向かい、タクシーを探すも時間が時間なだけに1台もいませんでした。
そんな最中、女性からトイレに行きたいと言われるとともに、「家まで5分くらいだから車を出してくれると助かる」と。

相談者は飲酒運転になるからと一瞬悩んだものの、そんなには酔っていないと思ったことと5分くらいの距離ならと車を出すことに。

ただお酒が入っているのでいつもより慎重に運転し、女性が指示したとおりの道を走りました。

そして住宅街に入り、道なりに進んでいると前方に軽自動車が。
道も狭かったこともあり低速で進んでいたが、いきなり軽自動車が急停車したため衝突!!

衝突するや否や、軽自動車からいかつい男性が降りてきて「どこ見て運転しているんだよ!」と。
さらに男性はバックドアの動作確認をした後に「車のバックドアが開きづらくなった。どうしてくれるんだ」と。

相談者は飲酒運転していた引け目からか委縮してしまい、何度も謝ったうえで「修理費を出すので示談してくれないか」と打診。

すると男性は「示談したければ誠意を見せろ」示談金としてまさかの300万円もの請求が。

相談者はすぐには支払えない旨を伝えると、男性は「近くにコンビニあるから。今すぐ支払える分だけ支払って、残りは後日支払え」と。

恐怖心と気も動転していたこともあり、言われるがままにコンビニへ向かい口座に入っていた20万円を下ろし、男性に支払いました。
さらに残りの280万円を支払う旨を記載した念書まで書かされてしまいました。

くわえて、「逃げたら許さないからな」と脅されつつ、免許証の写真と電話番号を交換したのちに解放されました。

その後、女性とも「コンビニから歩いて帰れるから」と別れ、どうしようもないのでコンビニの駐車場でそのまま仮眠。
しかし目が覚めて冷静になると、こちらが飲酒運転だったとはいえ、相手方の急停車自体がそもそも不自然な気がしてきました。

そこで家に帰り、早速ドライブレコーダーを確認。

すると、住宅街を低速で走行していた相談者の車に前方を塞ぐかたちで相手方の軽自動車が現れ、他の車がいたわけでもないのに急ブレーキを踏まれたことで衝突したと判明。
しかも、降りてきた相手方はなぜか助手席に乗っていた女性に対し、目配せや合図するような動きをしていました。

そこで女性に連絡しようとすると、やり取りしていたLINEもブロックされており出会い系アプリも退会していました。

もしかすると最初から仕組まれていたのでは?と不審に思った相談者は警察に行こうと考えたものの、仕事は営業回りで車の運転は不可欠。
それゆえ、もし警察に行って飲酒が原因でしばらく運転できないとなれば仕事にならなくなるため思いとどまることに。

何か解決方法はないかと”恐喝トラブル”や”示談金トラブル”でネットを検索したところ、当事務所のHPを見つけご相談が寄せられました。

交通事故の状況確認から導く解決策を提示

弁護士はまずドライブレコーダーの内容を確認。

たしかに軽自動車があえてブレーキを踏み衝突させるよう動いていたほか、相手方が女性に対し目配せや合図しているような動きであったから、わざと交通事故を引き起こしたうえでの示談金請求目的の恐喝の可能性があると。

したがって、犯罪にも当たりうる示談金請求目的の恐喝として、残額の280万円の請求を拒否しつつ支払った20万円の返金も要求できると説明。
また上記のとおり犯罪に当たりうるものであるので、警察に相談することも可能とも。

もっとも飲酒運転での交通事故であったことから、相談者のいうとおり行政罰、すなわち違反切符や罰金となる可能性はゼロではないと。

相談者は仕事が営業回りで車は必要不可欠なうえ,点数に余裕もないので警察沙汰は避けて穏便に解決したいとのこと。

そうであれば,弁護士が代理人となり,相手方が行った行為は恐喝に該当し得ると警告し残額請求を拒否しつつ,支払い済の20万円を示談金として交渉を行い,互いに刑事事件化しない条項を盛り込んだ合意書締結を目指す手段があると伝えました。

ただ,相手方が弁護士からの連絡や書面を受けても意に介さず恐喝をやめない場合は,警察と連携する必要も出てくるので,そこから警察沙汰となるリスクはどうしてもあり得ることも告知。

相談者は,そのような相手方ならば覚悟を決めるとのこと。
まずは弁護士による交渉をお願いしたいということで依頼を受けることに。

恐喝トラブル解決にむけ弁護士が交渉

弁護士は早速、まずは代理人になったことを告げるため相手方に電話。
しかし、何度か架電しても繋がらず、留守電を残しても折り返し連絡はありませんでした。

そこで相手方の住所に内容証明を送ることに。

内容としては、依頼者に対し物損修理代として300万円の請求は法外な金額であり「今すぐ支払え」と20万円を支払わせた行為や強制的に念書を書かせた行為は恐喝罪や強要罪に該当し得ると警告。

一方で、すでに支払った20万円を示談金として解決する意思があるならば、互いに今回のトラブルを刑事事件化しない条項などを記載した合意書を締結することも可能と提案したもの。

なお、提案を飲まずに依頼者へ直接連絡したり、残金280万円の請求を維持するのであれば、被害届の提出など刑事事件化することは辞さないと申し添えました。

すると電話では連絡がつかなかった相手方でしたが、弁護士から内容証明が届いて恐喝が刑事事件化することを恐れてか、後日連絡があって合意書の締結に応じるとのこと。

結果、刑事事件化を回避しつつ280万円もの残額請求もブロックに成功し、無事事件は終結するに至りました。

今回の恐喝トラブルに対する弁護士からのコメント

今回は故意に交通事故を起こされ、恐喝トラブルに巻き込まれるケースをご紹介しました。

まず残念ながら出会い系サイトやアプリには、今回のケースのような恐喝など犯罪目的で利用している者が一定数存在します。

具体的には、美人局が多く見受けられ、合意の上で肉体関係に及んだのに合意はなかったといわれるパターンです。

このパターンは、あとから夫や彼氏を名乗る男性が現れて誠意を見せろと恫喝されたり、実は18歳未満だから青少年育成保護条例違反で警察に通報するなど脅されたりです。

また一方で、脅迫・恐喝トラブルに巻き込まれた当事者は、恐怖や不安から冷静な判断・対応を自ら行うことは難しくもあります。

たとえば無視したり、逆に言われるがままに金銭などを支払ったとしても、脅迫・恐喝行為が解決することはまずなく、かえって悪化するケースが多いのが実情です。

それゆえ自身のみで対応しようとするのではなく、法の専門家である弁護士を介入させることが解決の最善手であるといえます。

最後に、脅迫・恐喝トラブルに一人で立ち向かわず、まずは当事務所へご相談ください。

交通事故における恐喝トラブルの最新ニュース

酒を飲ませ衝突事故に…飲ませた男らと事故の相手方は「仲間」 恐喝などの疑いで4人を逮捕

滋賀県竜王町の会社員の男ら4人が、知人に飲酒後に運転するよう仕向け、現金200万円を脅し取った疑いで逮捕されました。

恐喝と監禁の疑いで逮捕されたのは、滋賀県竜王町の会社員、由良晧平容疑者(24)ら4人です。

警察によりますと、去年12月、4人のうち2人が、草津市の飲食店で知人の男性2人に酒を飲ませ、その後に、飲食店の駐車場で男性2人に車を運転させました。

そして残り2人が別の車で、男性の車に衝突したということです。

飲を飲ませ、車を運転するよう男性に仕向けた2人は、衝突してきた車について「やくざに違いない」などと言い、男性に「示談で終わらせよう」などと迫って、金を払うよう仕向けました。

男性2人は半日にわたって車や飲食店などで監禁され、現金200万円を脅しとられたということです。

調べに対して4人は「間違いありません」と容疑を認めてます。

2020年10月26日 月曜 午後10:43 関西テレビ

解決事例と同様に、同乗者と交通事故の相手方が実際は仲間だったという恐喝トラブルのニュースです。

以前にも紹介しましたが、飲酒をさせて、わざと交通事故を引き起こし、示談金などの名目で金銭を脅し取る手口は典型的な恐喝の1つといえます。

というのも、被害者側からすれば交通事故を引き起こしたことで気が動転していることにくわえ、飲酒運転で警察沙汰になりたくないという心理状況を逆手にとって、加害者は金銭を脅し取りやすいからです。

またニュースにあるよう、グループで犯行を行うことで、本来は味方ないし第三者となるべき同乗者が、実は加害者側の仲間であるがゆえ、より恐怖心を煽ったり、言われるがままの示談を積極的にすすめたりすることで、被害者に冷静な判断を行えないように囲い込むことが可能だからです。

したがって、そもそも飲酒運転をしないことは当然ですが、交通事故を引き起こしたなら即座に警察に連絡すべきです。

相手方がこのような恐喝グループなら、警察に連絡されることは犯行がバレることになりかねないので、態度を180度変えることは大いにあり得ます。

もちろん飲酒運転でしかるべき処分を受けることにはなるかと思いますが、恐喝トラブルに遭うことは防ぐことができます。

なお同乗者が恐喝グループかどうかの見分け方は、下記のようなことがなかったかが判断要素になるでしょう。

  • 知り合って間もない知人やネットをきっかけに初めて会う人間だった
  • 車内や飲食店などで誰かと頻繁に連絡を取っている
  • 車を運転してきたにもかかわらず、飲酒をすすめてくる
  • タクシーや代行などを利用しようとすると、何かと理由をつけて飲酒運転をさせようとする
  • 運転経路を指示出ししてくる
  • 交通事故後に、警察への連絡を促さない

最後に、このような恐喝トラブルに遭わないためにも、お酒を飲んだ際には絶対に運転をしないようにしましょう。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。