公務員も残業代請求できる!残業代計算の計算方法や相談窓口を解説

公務員の残業代の計算方法や相談窓口
弁護士 若林翔
2024年04月02日更新

「公務員は残業代が出ないと聞いたけど本当なの?」

「残業代がでない公務員にはどのような職種があるの?」

「公務員の残業代が未払いになっているときはどのように請求すればよいの?」

人事院が公表している「令和5年人事院勧告」によると、令和5年における国家公務員の平均年間超過勤務時間数は220時間でした。

安定した職業として人気の職種である公務員ですが、一般企業の労働者とは異なるため、「残業代が出るのだろうか?」といった疑問を持たれる方も少なくありません。

結論から言えば、一部の職種の公務員を除き、公務員にも残業代が支払われます

ただし、民間の労働者とは異なり、労働基準法が適用されないなどの特殊性がありますので、公務員特有の問題をしっかりと押さえておくことが大切です。

本記事では、

  • 公務員でも残業代が出ない職種
  • 公務員の残業代の計算方法
  • 公務員の未払い残業代があったときの相談窓口

などについてわかりやすく解説します。

未払い残業代請求をすると査定に響くなどの理由で、なかなか残業代請求に踏み切れない公務員の方も多いと思います。在職中に未払い残業代請求が難しいときは、退職のタイミングで請求することもできますので、本記事を参考に必要な知識を身につけておきましょう。

 

【原則】公務員でも残業代請求ができる

公務員でも残業代請求ができる

公務員というと民間企業の労働者とは異なり、残業代を請求できないと誤解されている方も少なくありません。しかし、一部の職種を除き、公務員であっても残業代請求は可能です。

公務員は、大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」の2種類があります。

国家公務員については、円滑な公務の運営が要求されるため、民間企業の労働者に適用される労働基準法は適用されません。しかし、「一般職の職員の給与に関する法律」により、超過勤務手当が定められていますので、同法に基づいて、国家公務員は残業代を請求することができます。

地方公務員については、一部の職種を除き、民間企業の労働者と同様に労働基準法が適用されます。そのため、地方公務員は、労働基準法に基づいて、残業代を請求することができます。

 

【例外】公務員で残業代が出ない職種

公務員でも残業代が出ない職種

公務員であっても原則として残業代を請求することができますが、例外的に以下のような職種については、残業代を請求することができません。

 

公立学校の教員

地方公務員のなかでも公立学校の教員には残業代が支払われません

なぜなら、公立学校の教員に対しては、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」が適用され、時間外手当と休日勤務手当が支給対象外とされているからです。

また、公立学校の教員は、以下のような勤務態様の特殊性があるため、勤務時間の管理が困難であるというのも残業代が支払われない理由の一つです。

  • 修学旅行や遠足などの学校外の教育活動
  • 家庭訪問や学校外の自己研修など教員個人での活動
  • 夏休みなどの長期の学校休業期間

ただし、公立学校の教員は、残業代が出ない代わりに、「教職調整額」と呼ばれる手当が支給されます。教職調整額は、実際の勤務時間にかかわらず、月給の4%が支給されます。

 

特別職の国家公務員

国家公務員のなかでも特別職の公務員には残業代が支払われません。特別職の国家公務員に該当する職種としては、以下のものが挙げられます。

  • 裁判官
  • 自衛隊
  • 国会で働く議員や職員
  • 裁判所職員

このような特別職の国家公務員は、業務の特殊性・専門性から一般職の国家公務員に適用される「一般職の職員の給与に関する法律」が適用されませんので、同法が定める超過勤務手当も支給されません。

 

公務員の残業代の計算方法

公務員の残業代の計算方法

残業代を請求できる職種の公務員であれば、基本的には、「1時間あたりの給与額×支給割合(支給率)×勤務時間」という計算式により残業代を計算します。以下では、計算式に含まれる各項目を説明します。

 

1時間あたりの給与額

1時間あたりの給与額は、以下のような計算式によって求めます。

1時間あたりの給与額=(月額給与+手当)×12÷(1週間あたりの勤務時間×52週)

月額給与に含まれる手当については、国家公務員であれば、広域異動手当、地域手当、研究員調整手当が含まれます。地方公務員については、自治体の条例によって異なりますので、それぞれの自治体の条例を確認してみましょう。

 

支給割合(支給率)

支給割合(支給率)とは、民間企業の労働者でいうところの、割増賃金率のことをいいます。国家公務員の支給割合は、以下のように定められています。

  • 平日の残業:25%
  • 休日の残業:35%
  • 深夜の残業(午後10時から翌午前5時):25%
  • 月60時間以上の残業:50%

地方公務員の支給率は、基本的には上記と同様の内容になりますが、自治体の条例によって異なりますので、正確な数値については各自治体の条例を確認してください。

 

勤務時間

正確な残業代を計算するためには、証拠に基づいて勤務時間を明らかにする必要があります。証拠の有無によって残業代請求が認められるかどうかの結論が大きく変わってきますので、勤務時間に関する証拠をしっかりと集めるようにしましょう。

なお、人事院が公表している「令和5年人事院勧告」によると、令和5年における国家公務員の平均年間超過勤務時間数は、220時間でした。

 

公務員でも未払い残業代が発生する可能性はある

公務員でも未払いの残業代が発生する可能性はある

公務員というと勤務時間をしっかりと管理しているイメージがあるため、「そもそも未払い残業代がないのでは?」と考える方も少なくありません。しかし、以下のような理由から公務員であっても未払い残業代が発生する可能性は十分にあります。

 

予算に上限があるためサービス残業をしている

公務員に対して支払われる残業代は、国会または地方議会で定められた予算の中から支出されます。残業代として支払われる予算の総額には上限がありますので、残業をしてもそれに見合う予算が残っていない場合には、サービス残業を強いられることもあります。

ただし、予算の上限があるから残業代が支払えないというのは誤った理解ですので注意が必要です。予算が定められていたとしても、残業をすればそれに見合う残業代の支払いを受けることができますので、しっかりと残業代を請求していくようにしましょう。

 

残業時間が多いと査定に響くため少なく申告している

公務員の方の中には、「残業時間が多いということは、自分の能力が低いことを意味する」という考えを持っている方が多いため、実際に残業をしているにもかかわらず、残業を申告しない、または実際の残業時間よりも少なく申告するということが行われています。

また、残業時間が多いと査定に響き、将来の昇進にも影響が生じるため、残業を適切に申告しないケースもあります。

残業を申告しないことが美徳という考え方が広まっているのが、公務員に未払い残業代が発生する原因の一つです。

 

上司が残業を承認してくれない

残業をしたため、残業を申告しようとしても上司が残業を承認してくれないこともあります。これは、上司が担当する部署の残業時間の多寡は、上司の評価に関わる事項になりますので、残業時間を実際よりも少なく処理しようとするのがその理由です。

残業を適切に申告しようとしても、上司が承認してくれなければ、残業として認められませんので、それにより未払い残業代が発生することになります。

 

公務員の未払い残業代があったときの相談窓口

公務員の未払い残業代があったときの相談窓口

公務員の残業代に未払いがあったときには、以下のような相談窓口を利用するとよいでしょう。

 

人事院への相談|国家公務員

国家公務員の勤務条件や勤務環境などに関する悩みは、人事院で受け付けています。

未払い残業代があることを人事院に相談すれば、人事院から当該公務員が所属する府省に相談内容を伝達し、必要に応じて事実関係の調査などの対応を求めることもできます。人事院に相談したことを理由として、職場において不利益な取り扱いをすることは禁止されていますので、安心して相談できるでしょう。

ただし、国家公務員のうち、国会職員、防衛省の職員など特別職の国家公務員については、対象外です。

 

人事委員会への相談|地方公務員

地方公務員の勤務条件や勤務環境などに関する悩みは、各自治体の人事委員会で受け付けています。

対象となる地方公務員は、一般職の職員(一般行政職員、教育公務員、警察職員など)です。人事委員会に相談をすれば、問題の解決に向けたアドバイスをしてもらうことができ、必要に応じて所属部署に対して相談内容を伝達し、事実関係の確認や調査結果に応じた対応を求めてくれることもあります。国家公務員と同様に、人事委員会に相談したことで不利益を受けることはありませんので、安心して相談してください。

 

労働基準監督署への相談|一部の地方公務員

地方公務員のうち、以下のような職種の方は、労働基準監督署に相談することができます。

  • 地方公営企業の職員(水道事業の職員など)
  • 単純労務職員(学校給食の職員、清掃職員など)
  • 特定独立行政法人の職員
  • 労働基準法別表第1、第1号~10号および13号~15号に該当する職員
  • 特別職

未払い残業代の存在が確認されれば、労働基準監督署による指導や勧告により違法状態の改善が期待できます。

 

弁護士への相談

公務員の未払い残業代請求の相手は、国または地方公共団体になりますので、民間企業の労働者よりも個人で対応するのは困難だといえます。

そのため、未払い残業代の請求は、公務員の方が個人で対応するのではなく、まずは弁護士にご相談ください。

弁護士であれば、未払い残業代の請求に必要な証拠収集、残業代計算、交渉や訴訟手続きなどを公務員に代わって行うことができますので、ご自身の負担は大幅に軽減します。国や地方公共団体を相手にするのが不安だという場合には、弁護士のサポートを受けながら進めていくのがおすすめです。

 

公務員の残業代未払いでお困りの方はグラディアトル法律事務所にご相談ください

残業代未払いでお困りの公務員の方はグラディアトルへ

 

公務員は、地方公務員と国家公務員で適用される法律が異なり、さらにその中でも職種に応じて細かく分類がなされています。民間企業の労働者とは異なり公務員の残業代請求に関しては、公務員特有の法令の理解が不可欠となります。

グラディアトル法律事務所では、これまで多くの未払い残業代に関する問題を解決に導いてきたという豊富な実績があります。公務員特有の問題点についても経験豊富な弁護士が適切に対応することが可能ですので、どうぞ安心してお任せください。

未払い残業代に関する問題については、初回法律相談無料で対応しております。まずは相談だけでも結構ですので、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

 

まとめ

公務員であっても、公立学校の教員や特別職の国家公務員を除いて、原則として残業代請求をすることができます。しかし、民間企業の労働者とは異なり、相手にするのが国または地方公共団体になりますので、公務員の方が個人で対応するのは非常に困難といえます。

公務員の方が未払い残業代請求をする際には、弁護士のサポートが必要になりますので、まずはグラディアトル法律事務所までお気軽にご相談ください。

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。

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