あなたの宿直は残業代が出る?判断のポイントと判例・解決事例を解説

宿直の時間も残業代請求可能!断続的労働や労働時間の判断基準を解説

宿直や当直で夜間に職場へ待機しているにもかかわらず、「宿直勤務は労働時間ではない」「宿直だから残業代は出ない」と説明されていませんか。

しかし法律上、宿直に残業代が発生するかどうかは、名称ではなく実際の働き方(実態)で判断されます。

仮眠が取れない、呼び出しが多い、通常業務と変わらない、というような宿直は、労働時間と評価され、残業代請求が認められる可能性があります。

実際に裁判でも、医師・看護師・ビル管理員・施設職員などの宿直について、残業代の支払いが認められた例が多数あります。そして、グラディアトル法律事務所でも、宿直勤務の看護師の未払い残業代約500万円を回収した事例をはじめ、医療・介護・警備・設備管理など幅広い業種の宿直残業代問題を解決してきました。

「宿直手当しか出ない」「仮眠時間だから残業代にならない」とされていたケースでも、勤務実態を丁寧に立証することで、残業代請求が認められた例が多数ありますので、宿直で残業代が出ないことに疑問を感じている方は、当事務所までご相談ください。

本記事では、

・宿直の残業代が発生するかどうかの判断基準やチェックポイント ・裁判例・解決事例 ・具体的な残業代計算例

などをわかりやすく解説します。

ご自身の宿直が適法かどうかを判断する参考として、ぜひ最後までご覧ください。

目次

宿直に残業代が出るかどうかは「実態」で決まる|最初に押さえておくべき基礎知識

宿直に残業代が発生するかどうかは、「宿直」という名称ではなく、実際の働き方(勤務実態)によって判断されます。そのため、「宿直だから残業代は出ない」という説明が必ずしも正しいとは限りません。まずは基本的な考え方を押さえておきましょう。 宿直に残業代が出るかどうかは「実態」で決まる|最初に押さえておくべき基礎知識

宿直・当直・夜勤の違い

宿直・当直・夜勤はいずれも夜間勤務を指す言葉ですが、法律上の扱いは同じではありません。

宿直:夜間の待機や軽微な業務が中心の勤務当直:医療機関などでの夜間待機勤務夜勤:通常業務を夜間に行う勤務

夜勤は、通常の労働時間と同様に扱われるため、原則として残業代や深夜割増賃金の対象となります。

一方、宿直・当直は「軽微な業務に限られる場合」に限り、労働時間規制の適用が除外されることがあります。

ただし実務では、宿直と夜勤の区別が曖昧になっている職場も多く、名称と実態が一致していないケースが少なくありません。

労働基準法における「断続的労働」とは

労働基準法では、監視・断続的労働について労働基準監督署長の許可を受けた場合、労働時間・休憩・休日の規制が適用除外となります。

宿直は、この「断続的労働」に該当することがありますが、認められるためには以下のような条件があります。

・業務が軽微である
・ほとんど待機時間である
・仮眠・休息が確保されている

つまり、実質的に通常業務と変わらない働き方をしている場合は、断続的労働とは認められません。

宿日直許可があっても残業代が発生することがある

企業が労働基準監督署から「断続的労働」に関する宿日直許可を受けている場合でも、それだけで残業代が不要になるわけではありません。

実務では一貫して「許可の有無より実態」が重視されています。

たとえば、以下のような場合、宿日直許可があっても残業代が認められることがあります。

・呼び出し対応が頻繁にある
・通常業務に近い作業を行っている
・仮眠がほとんど取れない
・常時対応体制が求められている

実際に医療機関や施設の宿直で、宿日直許可があっても残業代の支払いが命じられた裁判例は多数存在します。

次章では、ご自身の宿直が残業代対象となるかを判断する具体的なチェックポイントを解説します。

あなたの宿直は残業代が出る?判断のチェックポイント

宿直が「断続的労働」といえるかのチェックリスト

1 宿直中の業務は本当に「軽度・短時間」に限られているか

2 宿直回数・勤務環境は断続的労働の基準を満たしているか

3 仮眠時間中も実質的に拘束されていないか

4 宿直手当は基準額を満たしているか

5 宿日直許可の有無と実態が一致しているか

チェックの目安 複数当てはまる場合、宿直が法律上の「労働時間」と評価され、残業代請求が認められる可能性があります。

宿直が残業代の対象になるかどうかは、「断続的労働」といえるかで判断されます。

断続的労働として認められるには、労働基準監督署の許可基準に適合する必要があります。以下では、労基署の判断基準や裁判例で重視されるポイントをもとに、宿直が労働時間と評価される可能性があるかを確認できるチェック項目を説明します。

宿直中の業務は本当に「軽度・短時間」に限られているか

断続的労働としての宿直が認められるためには、業務が軽微であることが前提です。

しかし実務では、宿直中も通常業務に近い働き方をしているケースが多くあります。

①日中と同じ通常業務を行っていないか

以下のような場合、宿直ではなく夜勤と評価される可能性があります。

・夜間も通常業務を担当している
・患者・入居者・顧客対応が常時発生する
・事務処理・記録業務を行っている
・巡回・監視・受付が継続的にある

このように待機ではなく実作業が中心であれば、軽度業務とはいえません。

②精神的・身体的負担の大きい業務になっていないか

宿直中に次のような状況がある場合も、断続的労働とは認められにくくなります。

・常に緊張状態が必要
・ナースコール対応が頻発
・トラブル・救急対応が多い

裁判でも「精神的負担が大きい宿直」は労働時間と判断される傾向があります。

宿直回数・勤務環境は断続的労働の基準を満たしているか

断続的労働としての宿直は、頻度や環境にも厳しい基準があります。

①宿直回数が過剰になっていないか

断続的労働としての宿直は、原則として週1回以内が基準とされています。

しかし実務では次のようなケースが見られます。

・週2回以上の宿直
・月5回以上
・夜勤シフトの一部化
・宿直が常態化

このような場合、宿直ではなく通常労働と評価されやすくなります。

②仮眠設備・睡眠環境は確保されているか

断続的労働として認められるには、十分な睡眠設備が必要です。

・ 個室やベッドがある
・ 静かな仮眠環境がある
・ 長時間睡眠が可能

仮眠室がなく、椅子・机で待機しているようなケースでは、宿直の労働時間性が強まります。

仮眠時間中も実質的に拘束されていないか

宿直では仮眠時間があるとされることが多いですが、その時間が実際に自由利用できるかが重要です。

①呼び出しや対応で睡眠が妨げられていないか

・ 呼び出しが頻繁にある
・ 仮眠が中断される
・ 深く眠れない
・ 常に待機意識が必要

仮眠が形式的に存在するだけでは、労働時間から除外されません。

②即時対応義務など拘束性が強くないか

・ 即応義務がある
・ 外出できない
・ 常時連絡体制

仮眠時間であっても、このような場合は労働時間と評価されます。

裁判でも「仮眠中も指揮命令下」にある場合は労働時間と判断されています。

宿直手当は基準額を満たしているか

断続的労働として宿直が認められるには、一定額以上の宿直手当が必要とされています。

目安は「1日平均賃金の3分の1以上」です。

宿日直許可の有無と実態が一致しているか

宿直を断続的労働として扱うには、労働基準監督署長の許可が必要です。許可なく宿直扱いとすることは認められていません。

また、許可があったとしても許可と実態が一致していることも重要なポイントです。

・ 許可後に業務量が増えた
・ 呼び出し頻度が増加
・ 夜勤化している
・ 人員不足で常時対応

このような場合、許可は無効と判断され、過去に遡って残業代が発生する可能性があります。

これらのチェック項目に複数該当する場合、あなたの宿直は法律上の労働時間と評価され、残業代請求が認められる可能性があります。

宿直残業代を請求するために重要な証拠とは

宿直の残業代請求では、勤務実態の立証が重要になります。

企業側は「宿直は軽微な待機」「仮眠時間は労働ではない」と主張することが多いため、実際に業務が発生していた事実を示す証拠が必要です。もっとも、労働時間の証拠は、会社側が管理していることも多く、労働者側に完全な記録が残っていないケースも少なくありません。その場合でも、以下のような複数の資料を組み合わせることで勤務実態を立証できることがあります。 宿直残業代を請求するために重要な証拠とは

労働時間を裏付ける証拠の具体例

宿直残業代請求で有効とされる主な証拠は次のとおりです。

①タイムカード・勤怠記録

もっとも基本となる証拠です。

・出退勤記録 ・宿直入り・明け時間 ・シフト表 ・勤務管理システム記録

②宿直日誌・業務記録

宿直中の業務内容を示す重要資料です。

・宿直日誌 ・巡回記録 ・対応記録 ・医療・介護記録 ・警備記録

対応回数や業務量を示すことで、「軽微ではない宿直」であることを立証できます。

③呼び出し履歴・メール・LINEなどの通信記録

宿直中の対応頻度を示す証拠として有効です。

・ナースコール記録
・内線・電話履歴
・連絡アプリ履歴
・業務指示メール
・夜間報告メッセージ

仮眠中の呼び出しや頻繁な対応を示す重要資料になります。

④その他有効になり得る資料

以下のような資料も勤務実態の補強証拠になります。

・防犯カメラ記録 ・入退館記録 ・電子カルテログ ・PCログイン履歴 ・同僚の証言 ・手書きメモ

残業代請求では、複数の間接証拠を組み合わせることで、労働時間を立証することができます。そのため、証拠を集める際は、一つの証拠で満足するのではなく、できるかぎり多くの証拠を集めるようにしてください。

証拠が不十分でも諦めずに弁護士に相談を

「宿直中の証拠がほとんど残っていない」「自分では労働時間を証明できない」と感じ、残業代請求を諦めてしまう方は少なくありません。

しかし実務では、労働者ご本人が証拠が乏しいと思っていても、弁護士が関与することで勤務実態を立証できるケースは多くあります。

たとえば、

・会社側が保有する勤怠・宿直資料の開示を求められる
・同種業務の勤務実態から労働時間を推認できる
・宿直体制や業務内容から拘束性を立証できる
・断片的な記録を組み合わせて勤務状況を再現できる

といった方法により、残業代請求が可能になることがあります。

実際にグラディアトル法律事務所でも、「証拠がほとんどない」と相談された宿直案件であっても、勤務体制や業務内容を精査することで労働時間性を立証し、未払い残業代の回収に至ったケースがあります。

宿直残業代の証拠は、退職後や紛争化後には入手が難しくなることが多いです。残業代を請求しようとお考えの方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

※関連コラム「残業代請求に必要な証拠一覧:より有利になりやすいものや収集の方法」

【判例紹介】宿直の残業代請求については裁判所はどう判断している?

以下では、宿直の残業代判断で引用されることの多い裁判例を2つ紹介します。

ビル管理会社の従業員の残業代が認められた判例|最高裁平成14年2月28日判決

【事案の概要】

ビル管理会社の設備管理員らが、泊まり勤務の中で設定されていた連続7〜9時間の仮眠時間について、「実際は待機義務があり労働時間に当たるのに、泊まり勤務手当と実作業時間分しか支払われていない」として、割増賃金等を請求した事案です。

仮眠時間中も、従業員は、

・ビルからの外出が原則禁止 ・仮眠室での待機、電話の受電、警報対応が義務 ・警報等があれば直ちに現場対応 ・飲酒禁止

といった強い拘束を受けていました。

【裁判所の判断】

裁判所は、労基法上の労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」であり、実作業をしていない不活動の仮眠時間であっても、労働からの解放が保障されていないなら労働時間に当たると判示しました。

本件では、仮眠中も待機・即応が義務付けられていたため、仮眠時間全体が労働時間に当たると判断しています。

【弁護士のコメント】

会社側はしばしば「仮眠があるから休憩」「実作業が少ないから宿直は軽い勤務」と説明しますが、裁判所は、外出禁止、呼び出し即応義務、施設内待機義務といった拘束がある以上、宿直中は労働からの解放が保障されていないと評価しました。

つまり、宿直では「寝られるか」ではなく「自由に離れられるか」が判断基準になります。

実務上も、警備・設備管理・福祉施設などの宿直では、この判例と同様に仮眠時間を含めた宿直全体が労働時間と認定される余地があります。

産婦人科に勤務する医師の残業代が認められた裁判例|奈良地裁平成21年4月22日判決

【事案の概要】

奈良県立奈良病院の産婦人科医師2名が、病院から命じられた宿日直勤務(宿直・日直)について、時間外・休日勤務に当たるのに割増賃金が支払われていないとして、労基法37条に基づく割増賃金を請求した事案です。

所定時間外に、宿直(17:15〜翌8:30)・日直(休日8:30〜17:15)を担当し、産婦人科の性質上、宿日直中も

・分娩対応(異常分娩・帝王切開を含む) ・入院患者の急変対応 ・救急外来対応

などの本来業務が発生し得る運用でした。

なお、医師らが自主的に運用していた「宅直(オンコール)」についても争点となりました。

【裁判所の判断】

裁判所は、医師の宿日直を「断続的勤務」として適用除外と扱うには、一般に「常態としてほとんど労働を要しない」「睡眠が十分に取れる」等の要件を満たす必要があるという前提に立ったうえで、産婦人科医師の宿日直の実態を検討しました。

その結果、宿日直中に分娩対応等の本来業務が当然に予想され、実際の業務負担も小さくないことから、当該宿日直は「常態としてほとんど労働する必要がない勤務」とはいえず、断続的勤務として扱うのは適用除外の範囲を超えると判断しました。

さらに、割増賃金の対象となる労働時間について、病院側が「実診療時間に限るべき」と主張したのに対し、裁判所は、宿日直の開始から終了まで場所的拘束と即応義務があり、待機中も労働から離れることが保障されていないとして、宿日直の時間帯全体が労働時間に当たると判断しました。

結論として、未払いの割増賃金として

原告A:736万8598円

原告B:802万8137円

の支払いが命じられました(既払いの宿日直手当を控除したうえでの金額)。

一方、宅直(オンコール)については、病院が命じた勤務といえる証拠が乏しい等を理由に、労働時間とは認められないとして割増賃金の対象から外しました。

【弁護士のコメント】

この裁判例は、医療現場の宿直でも「断続的勤務」とは限らず、通常業務が発生する宿直は労働時間になることを示した点で重要です。

労基法上の宿直(断続的勤務)は本来、

・巡視や連絡待機など軽度業務 ・常態としてほとんど作業なし ・十分な睡眠確保

といった前提が必要です。

しかし本件では、宿直中に分娩・救急・急変対応といった本来業務が相当程度発生しており、裁判所は「常態としてほとんど労働がない宿直ではない」と判断しました。

さらに重要なのは、医師が実際に処置している時間だけでなく、宿直時間帯全体が労働時間と認定された点です。

これは、宿直中は病院に拘束され、呼び出しに即応する義務がある以上、待機中も労働から解放されていないと評価されたためです。

医療・介護・福祉などの現場では、「宿直は軽い勤務」「当直手当で対応済み」と扱われがちですが、実態として通常業務が発生している宿直は、名称にかかわらず労働時間と判断され得ます。宿直の業務内容や呼び出し頻度を整理すれば、残業代請求の対象となる可能性は十分にあります。

【解決事例】宿直の残業代請求が認められたケース

当事務所では、宿直をはじめとしたさまざまな業種・職種の残業代請求事案を扱っており、豊富な実績と経験があります。以下では、宿直の残業代請求が認められた当事務所の解決事例の一つを紹介します。

【事案の概要】

ご依頼者は相手方の会社に入社してから26年間、知的障碍者のグループホームにおいて介護士として働いていました。実際の勤務内容としては、16時から21時まで勤務したのち、21時から6時までの「休憩時間」を経て、6時から9時まで働くというものでした。

しかし、契約上は休憩時間という名目でしたが、外出が禁止されており、休憩時間中でも見回りが義務付けられていたり、入所者からの呼び出しがあれば対応しなければなりませんでした。

そこで、ご依頼者は会社に拘束されていた「休憩時間」等についての残業代を含む未払賃金を受け取ることができないかと考え、労働事件を多数取り扱っている弊所にご相談いただきました。

【結果】

担当弁護士は、ご依頼者の「休憩時間」が労働基準法上の労働時間に該当すると考え、その想定の下、会社から送られてきた資料に基づき2年分の未払賃金額を算出しました。 そして、ご依頼者の休憩時間が労働時間に該当することについての法的な説明を加えつつ、法的に認められ得る最大範囲の金額として約1800万円を請求しました。

そして、担当弁護士は会社の代理人弁護士と連絡をとり、会社側の言い分やご依頼者の意思を確認しながら交渉を進めていきました。

その結果、会社と合意書を締結することができ、ご依頼者は会社から約500万円の支払いを受けることができました。

【弁護士からのコメント】

今回の事例では、弁護士を介した交渉の末、ご依頼者は500万円を手にすることができました。このように、「休憩時間」と名付けられている時間についても、会社に拘束されている時間であれば、賃金を請求できる可能性があります。そして、「休憩時間」とされる時間が労働時間に該当するか否かについては法律的な判断が必要であるところ、法律の専門家の助けを得ることがとても重要です。

弊所弁護士は、労働事件についての多数の経験に基づき、法律についての広い知識を活用して、ご依頼者の利益の実現に向けて精力的に活動していきます。未払賃金の請求をしていきたいとお考えの方はぜひ一度、弊所にお問い合わせください。

【モデルケース】宿直で働く労働者の残業代計算の具体例

ここでは、宿直の残業代請求に関するモデルケースをもとに、どのような宿直が残業代対象となるのか、具体的な計算とともに紹介します。 【モデルケース】宿直で働く労働者の残業代計算の具体例

事案の概要

関東地方の医療法人病院に勤務していた看護師Aさん(30代女性)は、一般病棟で勤務しながら宿直業務も担当していました。

【宿直勤務の実態】
宿直時間:17時〜翌8時(15時間) 仮眠時間:23時〜翌3時(4時間) 宿直回数:月4〜5回 宿直手当:1回6500円 労基署の宿日直許可:あり

 

病院側からは「宿直なので残業代は出ない」と説明していましたが、実際の宿直は、以下のような状態でした。

・夜間のナースコール:平均7〜10回

・点滴管理・吸引・体位変換など看護処置あり

・急変対応:月数回

・仮眠中も呼び出しあり

・病棟から離れることは禁止

・実質的に連続睡眠はほぼ不可

Aさんは長年「宿直だから残業代は出ない」と説明されていましたが、そのような対応に疑問を抱いていたため、退職を機に弁護士に相談することにしました。

宿直全体が残業代対象になった理由

弁護士が勤務実態を整理した結果、次の点が明らかになりました。

・夜間に通常看護業務が発生している ・仮眠が連続して確保できていない ・呼び出し対応が常態化している ・病棟から離れられない拘束がある

このような宿直は、労基法上の「断続的労働」ではなく、通常の労働(夜勤)と同様の労働時間と評価されます。

そのため、宿直時間全体が労働時間として残業代対象となります。

残業代の具体的な計算

ここでは実際の残業代計算の方法をAさんのケースを前提に説明します。

①時間単価の算定

Aさんの給与(月額)は、以下のとおりでした。

Aさんの給与(月額)
・基本給:26万円 ・資格手当:2万円 ・職務手当:1万5000円 ・合計:29万5000円

看護師は月給制のため、時間単価は「月給÷月平均所定労働時間」で計算します。

病院の年間所定労働時間から算出された月平均所定労働時間:160時間

したがって、Aさんの時間単価は、29万5000円÷160時間=1843円となります。
②宿直1回あたりの時間外労働
 
宿直15時間−所定労働8時間=7時間
 
③宿直1回あたりの残業代 時間外割増率:1.25 1843円×1.25×7時間=1万6101円   ④月の未払残業代 宿直回数:月5回 1万6101円×5回=8万505円   ⑤年間未払残業代 8万505円×12か月=96万6060円

  ⑥請求期間(3年)

残業代の時効は3年ですので、過去3年まで遡って請求する場合の残業代は、以下のとおりです。 96万6060円×3年=289万8180円

弁護士によるポイント解説

この事例のポイントは、「宿日直許可があっても実態が軽度でなければ残業代は発生する」という点です。

本来、残業代が不要となる宿直(断続的労働)は、

・ほぼ待機のみ ・軽度業務 ・十分な睡眠確保

が前提です。

しかし医療現場では、看護処置や急変対応、ナースコールなど通常業務が発生する宿直が多く、実質的に夜勤と同じ労働になっているケースが少なくありません。

本件も、宿直手当や許可の有無に関係なく、勤務実態から宿直全体が労働時間と認定された典型例といえます。

宿直の残業代に関するよくある質問

以下では、宿直の残業代に関して相談者の方からよく聞かれる質問についてお答えします。

宿日直許可があっても残業代は請求できますか?

はい、請求できる場合があります。

宿日直許可は「軽度で断続的な勤務」に限って残業代を不要とする制度ですが、実際の宿直が次のような状態であれば許可の前提が崩れます。

・夜間業務が発生している ・仮眠が確保できない ・呼び出しが多い ・通常業務を行っている

このような場合、宿直は断続的労働ではなく通常労働と評価され、宿直時間全体が労働時間となります。

実務でも、宿日直許可がある職場で残業代請求が認められたケースは多数あります。許可の有無だけで判断するのは危険です。

仮眠時間も残業代が出ますか?

仮眠時間でも残業代が出ることがあります。

労働時間かどうかは「眠れるか」ではなく、労働から解放されているかで判断されます。

たとえば、以下のような場合、仮眠時間も労働時間と評価されます。

・呼び出しに即応義務がある ・施設から離れられない ・仮眠中も業務が発生する ・連続睡眠が確保されない

逆に、

・完全に自由に休める ・呼び出しがほぼない ・外出可能

などの場合は休憩と評価されることがあります。

宿直の仮眠は、「休憩扱い」と説明されることが多いですが、実態として拘束がある場合は労働時間になる可能性が高いです。

少し前の宿直分でも請求できますか?

はい、過去の宿直でも請求できます。

残業代請求の時効は、3年です。そのため、退職後であっても過去3年分の未払残業代を請求できます。

宿直の残業代でお悩みの方はグラディアトル法律事務所にご相談ください

宿直の残業代でお悩みの方はグラディアトル法律事務所にご相談ください

宿直勤務は「仮眠がある」「宿直手当が支払われている」「宿日直許可がある」といった理由から、残業代の対象外と説明されることが少なくありません。しかし実際には、宿直中に通常業務が発生していたり、仮眠が確保されていなかったりする場合には、宿直時間全体が労働時間と評価され、未払残業代が発生しているケースが多くあります。

グラディアトル法律事務所では、医療・介護・警備・設備管理など宿直を伴う職種の残業代請求について豊富な解決実績があります。実際に、宿直を担当していた看護師の方について約280万円の未払残業代を回収した事例をはじめ、宿直の実態を丁寧に分析することで数百万円規模の残業代請求が認められたケースも多数あります。

宿直の残業代請求では、「宿直の実態が軽度かどうか」「仮眠が確保されていたか」「夜間業務が発生していたか」といった専門的な判断が重要になります。当事務所では、勤務体制や業務内容、記録資料などをもとに宿直の労働時間性を法的に整理し、証拠収集から交渉・請求まで一貫してサポートしています。

宿直の残業代は過去3年分をまとめて請求できるため、状況によっては大きな金額になることも

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まとめ

宿直に残業代が出るかどうかは、「宿直という名称」や「宿日直許可の有無」ではなく、実際の勤務内容で判断されます。夜間に通常業務が発生していたり、仮眠が確保されていなかったり、強い拘束があったりする場合には、宿直時間全体が労働時間と評価され、未払残業代を請求できる可能性があります。

宿直の残業代は、過去3年分をまとめて請求できるため、状況によっては大きな金額になることもあります。「自分の宿直も対象かもしれない」と感じた方は、勤務実態を整理することで請求可能性が明らかになります。そのため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

 

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。 東京弁護士会所属(登録番号:50133) 男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力。数多くの夜のトラブルを解決に導いてきた経験から初の著書「歌舞伎町弁護士」を小学館より出版。 youtubeやTikTokなどでもトラブルに関する解説動画を配信している。

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