「風営法の3号営業とは何のこと?」
「風営法の3号営業の許可をとるための条件とは?」
「風営法の3号営業の許可申請の手続きを知りたい」
風営法では、客に飲食や遊興をさせて接待する営業または射幸心をそそる遊戯をさせる営業を「風俗営業」といい、風俗営業は、1号営業から5号営業まで区分されている。
そのうち、「3号営業」(区画席飲食店営業)とは、喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食させる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営むものをいう。たとえば、個室居酒屋やカップル喫茶、相席バーなどがこれに該当する。
一般的な個室居酒屋では、客席の広さなどを工夫することで風営法の3号許可ではなく、深夜酒類提供飲食店営業の届出により深夜営業を可能にしているところが多い。3号営業の適用は、全国的にも珍しいケースであるため、その要件をしっかりと理解しておくことが大切である。
本記事では、
・風営法の3号営業とは?
・風営法における3号営業の許可条件
・風営法における3号営業の許可申請手続き
などについて詳しく解説する。
風営法の3号営業を開業しようと考えている方は、ぜひ本記事を参考にしてみてほしい。
風営法では、客に飲食や遊興をさせて接待する営業または射幸心をそそる遊戯をさせる営業を「風俗営業」といい、風俗営業はさらに「接待飲食等営業」と「遊技場営業」の2種類に分けられる。
接待飲食等営業は、1号営業から3号営業まで区分されていて、喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食させる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営むものを風営法の「3号営業」という。
3号営業にあたる業種としては、居酒屋やカップル喫茶、相席バーなどが挙げられる。
このような風営法の3号営業を開業するには、風営法の許可が必要であるため、所定の手続きに従って許可申請をしなければならない。
ただし、風営法の3号営業は全国的にも珍しく、警察庁の統計によると令和5年の接待飲食等営業(1号営業から3号営業)の許可数は5万9490件であり、そのうち3号営業の許可数はわずか1件であった。
以下のような構造上の特徴を有する飲食店については、風営法の3号営業の許可が必要である。
風営法の3号営業の構造上の特徴の1つ目は、客席の床面積が1室5㎡以下である。
ボックス席をカーテンで仕切る場合やパーテーションで半個室的な空間を作る場合も、その広さが5㎡以下になると規制対象となる。
風営法の3号営業の構造上の特徴の2つ目は、客席の内部が外部から容易に見通すことができないものであることである。
これは各室内に高さ1m以上の仕切りや壁の死角などの配置を設けないことを意味する。これは、居室内に設置するテーブルやイス、カウンター、観葉植物、ラックなどのすべての物品が含まれる。
風営法の3号営業の構造上の特徴の3つ目は、店内の照度が10ルクス超である。
店内の照度が10ルクス以下になると風営法の1号営業または2号営業の対象となり、営業時間が午前0時までになってしまうため注意が必要である。
また、照明器具には、「スライダックス」と呼ばれる調光器が付いているものもあるが、調光器の設置は基本的には認められていない。調光器を使って照度が10ルクス以下になるようだと3号営業の許可を受けることはできない。
風営法の3号営業の定義からは、インターネットカフェも3号営業の許可が必要になる用にも思えるが、実際には3号営業の許可を得ずに営業している店舗がほとんどである。
それは、インターネットカフェでは、以下のような工夫をして風営法の3号営業の規制を回避しているからである。
・各客室の床面積が5㎡を超えるようにする
・客室扉は撤去または透明にする(小窓を設ける)
・客室の高さを下げて見通せる構造にする
・鍵付き個室では飲食を提供しない
他方、これは裏を返せばインターネットカフェでも店の構造によっては風営法の3号営業に該当する可能性があるということである。「インターネットカフェ」だから風営法の対象外になるわけではなく、風営法の適用対象にならないような工夫をしているというのがポイントである。
風営法における3号営業の許可を得るには、「人的要件」「場所的要件」「構造的要件」を満たす必要がある。以下では、それぞれの詳しい内容をみていこう。
以下のいずれかの条件に該当する人は、風俗営業の許可を受けることはできない。
①破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
②1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
③集団的に、又は常習的に暴力的不法行為等を行うおそれのある者
④アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
⑤精神機能の障害により風俗営業の業務を適正に実施するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
⑥風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
⑦風俗営業の取消処分に係る聴聞の期日等の公示日から取消し等の決定をする日までの間に、許可証を返納した者で、当該返納の日から起算して5年を経過しないもの
⑧⑦の規定する期間内に合併により消滅した法人又は許可証を返納した法人
⑨⑦の規定する期間内に分割により、聴聞に係る風俗営業を継承させ、若しくは分割により、当該風俗営業以外の風俗営業を継承した法人
⑩営業に関して成年者と同一の能力を有しない未成年者
⑪法人の役員、法定代理人が上記①から⑤までに掲げる事項に該当するとき
なお、2025年3月7日に風営法の改正案が閣議決定され、風俗営業の欠格事由の範囲が拡大し、以下の欠格事由が追加されることになった。
・親会社等が許可を取り消された法人
・警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者
・暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者
これによりホストクラブのグループ店舗も欠格事由に該当し、グループ会社や関連会社の許可が取り消される可能性がある点に注意が必要である。
以下のいずれかの地域に該当する場所では、風俗営業の許可を受けることはできない。
・第1種低層住居専用地域
・第2種低層住居専用地域
・第1種中高層住居専用地域
・第2種中高層住居専用地域
・第1種住居地域
・第2種住居地域
・田園住居地域
・準住居地域
ただし、これらの地域に該当しない場所であっても、お店の場所から半径100m以内に「保護対象施設」(学校、図書館、児童福祉施設、病院、診療所)がある場合、その場所では風俗営業の許可は受けられない。
風営法の3号営業許可を受けるには、構造・設備に関して営業区分に応じた以下の要件を満たす必要がある。
・申請書や必要書類の準備
・営業所の所在地を管轄する警察署に許可申請
・公安委員会で許可条件の審査および調査の実施
・許可の場合は許可証が交付、不許可の場合は不許可通知書が交付
・客室の内部が店の外部から容易に見通すことができないこと
・善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと
・客室の出入口に施錠の設備を設けないこと
店舗内の照度(明るさ)が10ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
・騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
・ダンスをするための構造又は設備を有しないこと
・長いす等、専ら異性を同伴する客の休憩用に供する設備を設けないこと
風営法における3号営業の許可申請をするには、以下のような手続きが必要である。
風俗営業の許可申請に必要な書類は、以下のとおりである。
①許可申請書
②営業の方法を記載した書類
③営業所の使用について権原を有することを疎明する書類
④営業所の平面図及び営業所の周囲の略図
⑤住民票の写し
⑥人的欠格事由に該当しない旨の誓約書
⑦市町村の発行する身分証明書
⑧法人の場合は、定款・法人に係る登記事項証明書及び役員に係る上記⑤から⑦までの書面
⑨管理者を選任する場合は、選任する管理者の誓約書、上記⑤から⑦までの書面
⑩管理者の写真2枚
風営法の3号営業の許可申請手数料は、2万4000円である。
風俗営業の許可申請の窓口は、営業所の所在地を管轄する警察署である。
風俗営業の許可申請は、以下のような流れで行われる。
・申請書や必要書類の準備
・営業所の所在地を管轄する警察署に許可申請
・公安委員会で許可条件の審査および調査の実施
・許可の場合は許可証が交付、不許可の場合は不許可通知書が交付
風営法の3号営業は、実務では非常に珍しい営業形態であり、全国で年間1~2件程度しか許可がされていない。そのため、新規に3号営業を始めようとする人は少ないかもしれない。しかし、風営法の3号営業の構造上の特徴に該当するにもかかわらず、許可を得ずに営業をして検挙される可能性はあるため、風営法の3号営業の要件を正確に把握しておくことが重要である。それには、風営法の正確な知識と理解が必須となるが、一般の方では対応が難しいため、法令を遵守した健全な経営を行うためにも顧問弁護士が必要といえるだろう。
顧問弁護士がいれば風営法違反にならないよう経営上のアドバイスや指導をしてくれるため、それに従って経営状況を改善していけば風営法違反のリスクを最小限に抑えることができる。また、いつでも相談できる存在がいるというもの非常に心強いといえるだろう。
グラディアトル法律事務所では、500店舗以上の風俗店の顧問弁護士を担当しており、ナイトビジネス業界に特化した弁護士事務所といえるだろう。トラブル対応だけではなくトラブル予防にも力をいれているため、実際にトラブルが生じていなくても気軽に相談してもらいたい。
風営法に違反する行為であるかどうかの判断は、風営法に詳しい弁護士でなければ難しいため、継続的なサポートが可能である顧問契約を是非とも検討してもらいたい。
風営法の3号営業は、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営む個室居酒屋やカップル喫茶、相席バーなどを行う際に必須の許可である。実際に風営法の3号営業を開業する方は極めて少数であるが、3号営業の構造上の特徴に該当するのに許可を得ずに営業している店舗は一定数存在すると思われる。
これは風営法の無許可営業に該当するため、非常にリスクの高い営業方法といえるだろう。このようなリスクを回避するには、顧問弁護士による継続的なサポートが必要になるため、まずは、グラディアトル法律事務所まで相談してほしい。