「売春防止法違反で逮捕されると実刑になる?」
「売春防止法違反で実刑になったときの量刑はどのくらい?」
「売春防止法違反で実刑を回避するためのポイントを知りたい」
売春防止法は、お金をもらって性交する行為を「売春」と定義し、売春を助長するおそれのある行為を処罰対象としている。売春防止法に違反する行為をすると逮捕・起訴されて、刑罰が科される可能性がある。
その際に気になるのが実刑になるかどうかという点である。売春防止法違反事件のすべてが実刑になるわけではないため、不起訴や執行猶予付き判決を獲得できれば実刑を回避することができる。また、罰金刑も実刑ではあるものの、懲役刑とは異なり刑務所に収監されることはないため、実刑が免れられない状況なら罰金刑を求めていくことも一つの手段である。
本記事では、
・売春防止法違反で実刑になる可能性はある?
・売春防止法違反で実刑になったときの量刑は?
・売春防止法違反で実刑を回避するための5つのポイント
などについて詳しく解説する。
売春防止法違反で実刑を回避するなら、経験豊富な弁護士によるサポートが不可欠であるため、早めに弁護士に相談するようにしてもらいたい。
結論として、売春防止法違反で起訴されたとしても実刑になる可能性は低い。
売春の勧誘や周旋であれば罰金刑で住むケースが多く、組織的な周旋や場所提供であっても初犯であれば実行猶予が付くケースがほとんどだからである
ただし、前科があるようなケースでは、売春防止法違反で実刑になる可能性もある点に注意が必要である。
売春防止法では、行為ごとに異なる法定刑が定められているため、売春防止法違反で実刑になったときの量刑も行為ごとに異なる。そこで、以下では、売春防止法違反となる主な行為ごとの法定刑をまとめたので参考にしてもらいたい。
違反行為 | 内容 | 法定刑 |
---|---|---|
売春行為の勧誘 | 公衆の目に触れる方法で売春の勧誘をする | 6月以下の懲役または1万円(※2万円)以下の罰金 |
売春行為の周旋 | 売春の周旋をする | 2年以下の懲役または5万円以下の罰金 |
困惑等による売春 | 正常な判断ができない状態を利用して売春をさせる | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金(暴行・脅迫がある場合は両方) |
対償の収受 | 売春の対償を収受・要求・約束する | 5年以下の懲役および20万円以下の罰金 |
前貸 | 売春目的で財産的利益を供与する | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
売春をさせる契約 | 売春を内容とする契約を結ぶ | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
場所の提供 | 事情を知りながら売春場所を提供する | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金(業とした場合は7年以下の懲役または30万円以下の罰金) |
売春をさせる業 | 管理する場所で人を住まわせて売春を業とする | 10年以下の懲役および30万円以下の罰金 |
資金等の提供 | 売春場所提供・管理売春に資金・建物等を提供 | 5年以下の懲役および20万円以下の罰金(管理売春への提供は7年以下の懲役および30万円以下の罰金) |
売春防止法違反となる行為のうち売春の勧誘や周旋などは比較的軽い犯罪であるため、起訴されて有罪になったとしても罰金刑で済む可能性が高い。
他方、管理売春や業としての場所提供、資金等の提供は、売春防止法の中でも特に重い行為類型にあたるため、起訴されて有罪になれば実刑判決になる可能性もある。
売春防止法違反で実刑を回避するなら、以下の7つのポイントを押さえておくべきである。
売春防止法違反で実刑を回避するポイントの1つ目は、初犯であることである。
売春防止法違反となる行為をしても比較的軽微な罪(売春の勧誘や周旋など)の場合、初犯であることが考慮されて不起訴処分となり実刑を回避できる可能性がある。また、起訴が避けられない事件であっても初犯であれば執行猶予付き判決により実刑を回避できる可能性が高い。
売春防止法違反で実刑を回避するポイントの2つ目は、組織的な犯行ではないことである。
管理売春や業としての場所提供、資金提供などの罪は、組織的な犯行として行われるケースが多く、非常に悪質な犯罪であると評価されてしまう。このような組織的な犯行に関しては、厳しい処罰が下される傾向があるため、起訴されてしまえば実刑になる可能性もある。
そのため、実刑を回避するなら組織的な犯行に関与していないという点も重要なポイントである。
売春防止法違反で実刑を回避するポイントの3つ目は、組織的な犯行であっても末端の役割に過ぎないということである。
組織的な犯行に関与すると実刑になる可能性が高くなるが、量刑を決める際には犯行への関与の程度や役割などが考慮される。組織的な犯行であっても末端の役割に過ぎないという事情があるときは、それを主張立証していくことで実刑を回避できる可能性もある。
売春防止法違反で実刑を回避するポイントの4つ目は、継続的な犯行ではないことである。
継続的な犯行の場合、単発の犯行と比べて犯人の犯罪傾向や社会に対する危険性が高いと考えられているため、一般的に量刑は重くなる傾向がある
売春防止法違反事件でも同様で、違反行為を繰り返している場合、実刑の可能性が高まるため、継続的な犯行ではないことを主張立証していくことで実刑を回避できる可能性がある。
売春防止法違反で実刑を回避するポイントの5つ目は、不利な供述調書を取られないことである。
警察の取り調べで供述した内容は供述調書にまとめられて、裁判の証拠として扱われることになる。供述調書に不利な内容が記載されていると、裁判でも不利な結果になる可能性が高いため、実刑を回避するなら不利な供述調書を取られないようにしなければならない。
それには、早期に弁護士と面会して、取り調べに対するアドバイスをしてもらうことが有効である。
売春防止法違反で実刑を回避するポイントの6つ目は、反省の態度を示すことである。
早い段階から罪を認めて捜査に協力する姿勢を示すことで、量刑上有利な事情として考慮してもらうことができる。それにより不起訴処分や執行猶予付き判決を獲得することができ、実刑を回避できる可能性がある。
売春防止法違反で実刑を回避するポイントの7つ目は、再犯の可能性が低いことを示すことである。
再犯の可能性の有無・程度は、量刑判断において重要な要素の一つであるため、犯行後以下のような対策を行うことで実刑を回避できる可能性を高めることができる。
・家族による監督
・関係者との関わりを断つ
・新しい仕事を始める
以下では、売春防止法違反で実刑になった裁判例を紹介する。
【事案の概要】
被告人は、売春婦を自宅に居住させて売春をさせることを業としたという管理売春の罪で起訴された。
【裁判所の判断】
被告人は、平成27年9月に異種前科により懲役6月3年間執行猶予に処せられ、更生を強く期待される立場にありながら、その執行猶予期間中である平成27年の年末頃から、自宅に女性を居住させ、被告人が出会い系サイトで見つけた客の下にその女性を派遣する形で売春をさせていたものであり、そのような中、本件犯行に及んでいる。
本件売春婦は、売春により得た金を搾取され続けていた当時の生活環境から逃れるために、被告人に引き抜かれる形で、平成31年2月ないし同年3月頃から被告人方で生活するようになったにすぎず、強制の要素こそないものの、被告人方に住むようになってからもほぼ毎日売春をしていたと供述していることに照らせば、売春行為の助長性は当初から高かったといえる。
被告人は、ある時期以降、本件売春婦に対し、家にいるときは、仕事のありなしにかかわらず、ずっと2階の部屋にいるようにさせ、一日千円ないし二千円しか渡さなくなっていたものであり、これらの事情は、本件売春婦に対して、被告人の支配下での生活を余儀なくさせていたことの現れといえる。組織性はないものの、約3か月弱の判示期間において本件売春婦が取得した対償は合計約129万円と多額であり、本件犯行は十分悪質である。 被告人が犯行を認めていることや、今後は農業で生計を立てると述べていること等の事情を踏まえても、以上に指摘した本件犯情に照らせば、被告人の刑事責任は相応に重く、本件が刑の執行を猶予するのが相当な事案であるとは認められない。被告人に対しては、主文の懲役刑及び罰金刑に処し、犯した罪の重さを自覚させるのが相当である。
以下では、売春防止法違反で実刑を回避して執行猶予が付いた裁判例を紹介する。
【事案の概要】
被告人は、A社が公衆浴場建物内の個室で売春場所を業として提供することを知りながら、営業資金として2000万円を貸し付け、所有する公衆浴場建物の賃貸借契約を締結し、同建物をA社に提供したという売春の場所提供を業とする者に対する資金および建物の提供の罪で起訴された。
【裁判所の判断】
売春の場所提供を業とする者に対する資金及び建物の提供は、売春を助長する行為である。特に、売春の場所提供を業とする者が資金又は建物を保有しない場合には、資金又は建物の確保は、売春の場所提供を業とする上で不可欠のものであり、本件各行為は、売春を助長する程度の大きいものである。
他方、被告人には前科がなく、事実を認めているなどの酌むべき事情もあることから、懲役2年・罰金20万円として、懲役刑については刑の全部の執行を4年間猶予することとした。
【事案の概要】
被告人両名は、共謀して知人女性であるAを自宅に居住させて同女に売春行為をさせることを業としたという管理売春の罪で起訴された。
【裁判所の判断】
裁判では、被告人両名が行わせた売春行為は合計300回余りと多数回に及び、その売上金は合計500万円余りに上るなど非常に悪質な犯行であると評価されたものの、以下のような事情を考慮して、執行猶予付き判決となった。
・被告人両名がそれぞれ事実を認めている
・本件犯行によりAを傷つけたことについて謝罪し、今後は二度としない旨誓うなど反省の態度を示している
・Aに売春をさせる意図でAとの同居を始めたわけではなかったこと
・受取りを拒否されたとはいえAに対して100万円を用意して被害弁償の申入れをしたこと
・被告人両名に監督者がいること
・被告人両名に前科がないこと
売春防止法に違反する行為をして逮捕されたとしても不起訴処分を獲得できれば実刑を回避することができる。また、起訴されてしまうとほとんどの事件が有罪になるが執行猶予付き判決を獲得できれば実刑を回避することができる。
このような有利な処分を獲得するには、売春防止法の知識や弁護経験豊富な弁護士によるサポートが不可欠であるため、売春防止法違反で逮捕されてしまったときはすぐに弁護士を依頼するべきである。
グラディアトル法律事務所は、東京と大阪の2拠点を中心に活動しており、ナイトビジネス業界で全国1000件以上の解決実績がある。売春防止法違反に関する刑事弁護の経験も豊富であるため、早期釈放や不起訴処分を獲得するためのポイントを熟知している。
また、当事務所では、24時間365日相談受付をしているため、深夜に売春防止法違反で逮捕されてしまったという場合でもすぐに対応することが可能である。逮捕後すぐに対応できるかどうかによって、今後の処分内容が大きく左右されることから、逮捕されたときはすぐに当事務所まで連絡してもらいたい。
売春防止法では、売春を助長するおそれのある行為を処罰対象としており、行為によって罪の重さが異なっている。売春の勧誘や周旋などの軽い罪であれば不起訴処分により実刑判決を回避できる可能性があるが、管理売春などの重い罪なれば実刑判決になる可能性も否定できない。
売春防止法違反で実刑判決を回避するには、経験と実績豊富な弁護士によるサポートが必要になるため、すぐにグラディアトル法律事務所まで相談してもらいたい。