「売春(買春)は、買う側も犯罪?」
「男性が売春(買春)で逮捕されることはある?」
援助交際・パパ活などの、いわゆる売春(買春)について、このような疑問や不安を持っている人は多いだろう。
結論、買春は「違法」だが罰則規定がない。つまり、お金を払って性的関係をもっても、それだけで逮捕されることはない。
ただし、買春の相手が未成年だったり、売春を助長する行為に関わったりすると、逮捕リスクがある。SNSやマッチングアプリを利用し、後日、相手が未成年だったことが発覚して逮捕されるケースも珍しくはないのだ。
本記事では、売春防止法の基本知識と「買う側(男性)」のリスク、実際の逮捕事例、買春当事者になったときの対処法について取り上げた。
売春で男(買う側)が抱えるリスクを理解するために、ぜひ最後まで読み進めてほしい。
※女性側の売春防止法違反については、以下の記事で詳しく解説している。
本記事で分かること
・売春防止法における男性(買う側)の罰則規定
・買春相手が未成年の場合の逮捕リスク
・パパ活やSNS利用時の注意点
・売春関連で成立しうる各種犯罪
・逮捕回避のための具体的な対処法
売春防止法では、「売春・買春」行為が禁止されている。
つまり、男性(買う側)の買春行為も、「合法・違法」の二択で言えば「違法」だと考えられる。
◉売春防止法
(定義)
第二条 この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
(売春の禁止)
第三条 何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。
ただし、単純な買春行為には、罰則が設けられていない。
これは、売春防止法が、「売春を行う女性」や「買春をした男性」を処罰するための法律ではなく、「売春を助長する行為」を取り締まるための法律だからだ。
◉売春防止法の目的
(目的)
第一条 この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることに鑑み、売春を助長する行為等を処罰することによつて、売春の防止を図ることを目的とする。
したがって、買春行為は「違法」だが、罰則規定がないため「逮捕されない」というのが正しい認識となる。
単なる買春には罰則がないが、売春を助長する行為に関われば、男性側も処罰対象だ。具体的には、次のような行為が挙げられる。
行為 | 具体例 | 罰則 |
---|---|---|
売春の勧誘 | 路上で売春相手を誘う (立ちんぼ) | 六月以下の懲役又は一万円以下の罰金 |
売春の周旋 | 売春相手の紹介、あっせん | 二年以下の懲役又は五万円以下の罰金 |
困惑等による売春 | 知人女性を脅迫して、売春させる | 三年以下の懲役又は十万円以下の罰金 |
売春の場所の提供 | 売春目的で部屋を貸す | 三年以下の懲役又は十万円以下の罰金 |
管理売春 | アパートに住み込みさせて、売春をさせる | 十年以下の懲役及び三十万円以下の罰金 |
例えば、友人に売春相手を紹介して紹介料を得るなどの行為をすると、「周旋」にあたり逮捕されるリスクがある。
ここまで、単にお金を払って性的行為をするだけでは逮捕されないことを説明した。
ただし、上記はあくまでも買春相手が成人しているケースだ。相手が18歳未満なら、話は大きく変わってくる。
未成年を買春すると、「売春防止法」では処罰されないが、「児童買春・児童ポルノ禁止法」によって、逮捕リスクが生じるのだ。
◉児童買春・児童ポルノ禁止法
(児童買春)
第四条 児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
SNSやマッチングアプリなどでは、未成年が年齢を偽って援助交際・パパ活などの相手を探しているケースが珍しくない。売春相手が未成年なら、自分が18歳未満だと知らなくても、逮捕されるリスクがある。
◉実際の逮捕事例
「SNSで知り合った16歳の女子生徒のわいせつな画像を撮影した疑いで、県職員の24歳の男が逮捕されました。児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで19日逮捕されたのは、上田市に住む県職員の男(24)です。
警視庁によりますと、おととし12月、県内で、当時16歳の女子生徒のわいせつな画像を車の中で撮影し、児童ポルノを製造した疑いが持たれています。
女子生徒とはSNSで知り合い、待ち合わせをして会っていたということです。
スマートフォンからは複数のわいせつな画像や映像が見つかっていて、警視庁は余罪を含めて捜査しています。
男は『18歳未満とは知りませんでした』と容疑を一部否認しています。」
(引用:長野朝日放送)
児童買春・児童ポルノ禁止法が成立するかどうかは、「相手が18歳未満であること」を認識していたか、あるいは少なくとも「18歳未満かもしれない」と疑うべき状況にあったかが重要なポイントとなる。
相手が18歳未満だと告げなくても、客観的に見て「18歳未満である可能性を認識できたはずだ」と判断されれば、逮捕リスクがあるのだ。
児童買春が発覚するきっかけとしてよくあるのが、SNSへの書き込みだ。
例えば、未成年の女性が「パパ活相手募集」といった内容をSNSに投稿し、それを見た第三者からの通報で事件が発覚するケースがある。両親が娘のスマホを見て援助交際・パパ活に気づき、警察に相談するといったケースも多い。
さらに、警察のサイバーパトロールから発覚することもある。
警察は、インターネット上で児童買春や斡旋が行われていないか、常に監視をしている。怪しい投稿を発見すると、投稿者を特定し、捜査を開始するのだ。
◉サイバーパトロールから児童買春が発覚した逮捕事例
「女子中学生に現金を渡す約束をしていかがわしい行為をしたなどとして、48歳の会社員の男が逮捕されました。
北海道旭川市に住む48歳の会社員の男は、1月22日に札幌市内で北区に住む当時中学生の少女に現金を渡す約束をして、いかがわしい行為をしたとして児童買春と不同意わいせつの疑いで逮捕されました。
〜〜(中略)〜〜
事件が発覚したのは警察がサイバーパトロールをしたことがきっかけでした。
Xの書き込みを調べていたところ、被害者の少女が書き込んだ児童買春をうかがわせる隠語などを使った書き込みが見つかりました。少女を特定し話を聞いたところ、男と会って被害を受けていたことが分かり男が逮捕されました。
調べに男は『私のしたことに間違いありません。18歳未満と知っていました』などと話しているということです。警察で経緯を詳しく調べています。」
(引用:北海道ニュースUHB)
パパ活がきっかけで、男性側が逮捕されるケースもある。
パパ活とは、若い女性が「パパ」と呼ばれる経済力のある男性から金銭的な援助を受ける代わりに、食事やデート等をすることだ。
パパ活自体は法律で禁止されていないが、女性の年齢やパパ活の態様、双方の認識ズレがきっかけとなり、様々な犯罪に該当するリスクがある。
★パパ活の犯罪リスクの例
行為 | 成立しうる犯罪 |
---|---|
同意を得ないでわいせつ行為(キス等)をする | 不同意わいせつ罪 |
同意を得ないで性行為をする | 不同意性交等罪 |
家出をした未成年者を自宅に匿う | 未成年者誘拐罪 |
未成年者との淫行する | 青少年健全育成条例違反 |
未成年者に対価を渡して性行為をする | 児童買春・児童ポルノ禁止法違反 |
支配関係のある児童との淫行する | 児童福祉法違反 |
特に注意すべきは、パパ活相手との認識にズレがあるケースだ。
男性側が、「金銭を支払うなら性的関係も当然」と考えており、女性側が「お金はもらうが性的関係は望まない」と考えているケースは少なくない。
食事やデートだけのつもりでお金を受け取った女性に、わいせつ行為・性行為を強要すると、不同意わいせつ・不同意性交等罪が成立しうるのだ。
男性がパパ活で逮捕されるケースは、以下で詳しく解説した。併せて確認して欲しい。
ここまで説明したとおり、買春に関連して男性側が問われる可能性がある犯罪は複数ある。
以下で、買春で男性(買う側)に成立しうる主な犯罪をまとめた。
1章で説明したように、単に買春するだけでは「売春防止法違反」で逮捕されることはない。しかし、売春を助長する次のような行為を行えば、男性も売春防止法違反で逮捕される可能性がある。
行為 | 具体例 | 罰則 |
---|---|---|
売春の勧誘 | 女性に「売春しないか」と持ちかける | 六月以下の懲役又は一万円以下の罰金 |
売春の周旋 | 売春相手を紹介・あっせんする | 二年以下の懲役又は五万円以下の罰金 |
困惑等による売春 | 知人女性を脅迫して、売春させる | 三年以下の懲役又は十万円以下の罰金 |
売春場所の提供 | 売春目的で自宅やホテルを提供する | 三年以下の懲役又は十万円以下の罰金 |
管理売春 | 女性をアパートに住まわせて売春させる | 十年以下の懲役及び三十万円以下の罰金 |
2章でも触れたが、買春行為の相手が18歳未満なら「児童買春・児童ポルノ禁止法」により、処罰される。
◉児童買春・児童ポルノ禁止法
(定義)
第二条 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
(児童買春)
第四条 児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
児童買春とは、18歳未満の者に対して「対償を供与または約束して」性交等を行うことを指す。
「18歳未満だと知らなかった」からといって、犯罪が成立しないとは限らない。
アルバイト感覚で「パパ活」や「援助交際」をしている未成年もいるため、年齢確認を怠ると児童買春に該当してしまうリスクがある。
出会い系サイトやマッチングアプリなどを利用して、18歳未満の児童と知り合い、買春行為に及んだ場合、児童買春罪に加えて「出会い系サイト規制法」違反にも問われる可能性がある。
出会い系サイト規制法では、18歳未満の児童に対して、性交・わいせつな行為の相手方となるよう誘い出す行為(誘引行為)が禁止されている。
性的な行為に及んでいなくても、誘引するメッセージを送った時点で処罰対象となるため注意して欲しい。出会い系サイトやSNSで18歳未満の女子高生を募集すると、実際に援助交際に至らなかったとしても処罰されうる。
◉出会い系サイト規制法
(禁止行為)
第六条 何人も、インターネット異性紹介事業を利用して、次に掲げる行為(以下「禁止誘引行為」という。)をしてはならない。
一 児童を性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、他人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは他人に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)の相手方となるように誘引すること。
二 人(児童を除く。第五号において同じ。)を児童との性交等の相手方となるように誘引すること。
三 対償を供与することを示して、児童を異性交際(性交等を除く。次号において同じ。)の相手方となるように誘引すること。
四 対償を受けることを示して、人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。
五 前各号に掲げるもののほか、児童を異性交際の相手方となるように誘引し、又は人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。
(罰則)
第三十三条 第六条(第五号を除く。)の規定に違反した者は、百万円以下の罰金に処する。
2023年の刑法改正により、「同意のない性的行為」が厳しく処罰されるようになった。
これまでは暴行・脅迫を伴う場合に限られていたが、改正によって、相手の同意がなければ(暴行・脅迫を伴わなくても)処罰対象になったのだ。
◉刑法
(不同意わいせつ)
第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
(不同意性交等)
第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
買春でトラブルになりやすいのは、両者の認識にズレがあるケースだ。
女性側は、「お金をもらうだけで、性行為はしない」と考えており、男性側は「金を払ったのだから性行為は当然」と考えていることは珍しくはない。
このような認識ズレがあるケースで性的行為に及ぶと、不同意性交等罪・不同意わいせつ罪に問われるリスクがある。
同様に、買春相手が16歳未満だった場合も、性交同意年齢に達していないため、同意の有効性が否定されて、不同意性交等・不同意わいせつ罪が成立する。
もし売春関連で警察から連絡があった場合、あるいはその可能性がある場合、どのように対処すべきだろうか?
結論から言えば、すぐに売春・性犯罪を得意としている弁護士に相談するべきだ。
特に、未成年事件(児童買春や児童ポルノなど)の場合は、逮捕リスクが極めて高い。相手が未成年だと気づいた時点で、速やかに連絡すべきだろう。
以下では、男性(買う側)が売春防止法違反になったときの対処法を説明する。
基本的には弁護士へ相談しつつ進めることを推奨するが、その前提となる情報として参考にして欲しい。
まずは、事実関係を整理することが重要だ。具体的には、以下のような点を明確にしておこう。
✓ いつ、どこで買春したのか
✓ 相手の年齢をどのように確認したか(又は確認しなかったか)
✓ どのような行為をしたのか
✓ どのような条件で会ったのか
✓ 相手とのやり取りの記録はあるか(LINE、SNSの履歴など)
(※あればスクショしておく)
✓ お金を支払ったか
✓ 相手の同意は明確だったか、嫌がる素振りはなかったか
✓ 相手との連絡手段(LINE、メール、電話など)
これらの情報は、弁護活動を行うときも重要な手がかりとなる。
特に、相手が未成年の場合、「18歳未満と知らなかった」と主張できる根拠(身分証を見せてもらった等)があれば、必ずそれを記録しておくべきだ。
売春相手への謝罪・示談交渉も必要だ。
示談が成立すれば、売春相手が被害届を取り下げる可能性がある。逮捕を避けて、不起訴処分となる可能性が高まるだろう。
示談金は事案によってまったく異なるが、一般的には30万円〜100万円程度が目安だ。
もっとも、自分1人で示談交渉をすることは避けたほうがよい。
相手は強い被害感情をもっているので、スムーズに示談できる可能性は低い。むしろ、被害感情を逆なでするリスクがある。
買春相手が成人・未成年いずれのケースでも、弁護士に依頼して、弁護士を介して示談交渉を進めることが大切だ。
※示談交渉の一般的な流れ
①弁護士を通じて被害者側に謝罪し、示談の意向を伝える
↓
②示談金の金額や条件などを協議する
↓
③示談書を作成し、署名・捺印する
↓
④示談金を支払う
もしも「売春相手が未成年だった…」と気付いたなら、その時点で自首することも選択肢の1つだ。
「自首」とは、犯罪を行った後、まだ捜査機関に発覚していない状態で、自ら犯罪事実を申告することだ。自首が成立すると、刑は最大半分程度まで軽くなるし、逮捕を防げる可能性も高い。
ただし、自首すれば必ず逮捕や起訴を免れるわけではない。自首によって事件を警察が認知して、そのまま逮捕されるリスクもゼロではないのだ。
そのため、自首する前に、必ず一度弁護士に相談して欲しい。そして、自首当日も警察まで同行してもらい、取調中に近くで待機してもらうことを推奨する。
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最後に、この記事のポイントをまとめる。
1.買春行為は違法だが罰則がない
売春防止法では、単に買春するだけでは処罰されない。処罰対象は勧誘・周旋・場所の提供・管理売春など、売春を助長する行為だ。
2.買春の相手が18歳未満なら逮捕リスクがある
買春相手が18歳未満の場合、売春防止法ではなく児童買春・児童ポルノ禁止法違反となり、逮捕されるリスクがある。相手が年齢を偽っていても「知らなかった」では終わらない。SNSの書き込みやサイバーパトロールから発覚するケースも多い。
3.その他にも様々な犯罪が成立しうる
児童ポルノ禁止法違反、出会い系サイト規制法違反、不同意わいせつ・不同意性交等罪なども成立する可能性があり、重い罰則が科せられる。
4.買春が犯罪に該当した場合は早急に弁護士へ相談を
買春に関連する犯罪に関わってしまったら、速やかに専門の弁護士に相談すべきだ。
事実関係を整理し、必要に応じて示談交渉や自首を行うことで、逮捕を回避できる可能性がある。特に、相手が未成年の場合、すぐに弁護士のアドバイスを受けることが重要だ。
以上だ。
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