「風営法違反の疑いをかけられたものの冤罪である場合、どのように対応するべき?」
「風営法違反で冤罪になりやすいケースとは?」
「風営法違反の冤罪を晴らすためのポイントを知りたい」
日本の刑事司法では起訴された事件の99%以上が有罪になるため、冤罪を争うのは難しいというイメージがあるかもしれない。しかし、実際には検察官が確実に有罪にできる事件を選別して起訴しているだけであり、捜査段階でしっかりと冤罪を争っていくことで風営法違反の疑いを晴らして不起訴処分を獲得できる可能性が十分にある。また、万が一起訴されてしまっても、風営法違反にはあたらないことを立証できれば無罪を獲得できる可能性も残されている。
風営法違反で有罪になってしまうと前科が付いてしまうため、冤罪であればしっかりと争っていくことが重要である。
本記事では、
・風営法で冤罪の疑いまたは逮捕されている場合の対処法
・風営法違反で冤罪が問題になりやすいケース
・風営法違反の冤罪を晴らすための3つのポイント
などについてわかりやすく解説する。
風営法違反事件は、風営法の解釈が非常に曖昧であることから冤罪が起こりやすい事件であるため、早い段階から風営法に強い弁護士に弁護士を依頼することをおすすめする。
風営法違反の冤罪で逮捕されている場合は、すぐに以下のような対処法を検討すべきである。
風営法違反の冤罪で逮捕されてしまったときは、一刻も早く弁護士に連絡すべきである。
なぜなら、警察に逮捕されるとすぐに取り調べがスタートするが、取り調べの対策や対応方法を知らなければ、不利な供述調書がとられてしまい冤罪を立証するのが困難になってしまうからである。
冤罪を立証するには弁護士のサポートが不可欠になるため、すぐに弁護士に依頼して今後のサポートを依頼するようにしてほしい。
逮捕された被疑者には、自己に不利な供述を強要されないという黙秘権が保障されている。警察での取り調べでも黙秘権を行使して、供述を拒否することが可能であるため、弁護士と面会するまでは不利な供述をしないようにするためにも黙秘権を行使した方がよいだろう。
警察官から「何もしゃべらないと不利になる」などと脅されることもあるかもしれないが、黙秘権の行使によって今後の処分に影響を与えることはないため安心してほしい。
取り調べで供述した内容は、警察官が作成する供述調書にまとめられ、最後に署名押印を求められる。署名押印した供述調書は、今後の裁判の証拠になるため、間違った内容や曖昧な内容の供述調書が作成されてしまうと冤罪を争うのが困難になってしまう。
被疑者には署名押印をする義務はないため、冤罪を争うなら署名押印を拒否することも有効な手段である。供述調書の微妙なニュアンスの違いについては被疑者自身では判断が難しいこともあるため、すべての供述調書について署名押印を拒否した方が安心である。
スマートフォンやPCには、営業に関する重要な情報が残されていることもあるため、冤罪を争うなら警察からパスコードを教えるよう求められたとしても応じるべきではない。
被疑者には黙秘権が保障されているためパスコードを教える法的義務はなく、拒否したとしても問題にはならない。
ただし、スマートフォンやPCに被疑事実を立証するための証拠が残されている場合、警察は令状を取得した上で強制的にロックを解除することもあるため注意が必要である。
項目 | 内容 |
---|---|
風俗営業該当が微妙なケース | ガールズバー等でキャストの丁寧な対応が「接待」と誤解され 無許可営業で摘発されるケース。 |
メンズエステで経営者が知らないケース | 経営者が知らないうちにセラピストが性的サービスを行い摘発されるケース。 |
経営者か否かが争われるケース | 名義貸しとされるが、実際には実態が不明瞭で冤罪となることがあるケース。 |
未成年者確認の困難なケース | 偽造身分証で年齢確認をすり抜けた場合、徹底した確認を証明できれば冤罪を争えるケース。 |
客引きで誘発されたケース | 捜査官の積極的な誘導で客引きが行われ、違法捜査として冤罪が争われるケース。 |
風営法違反で冤罪が問題になりやすいケースとしては、主に以下の5つが挙げられる。このようなケースで逮捕されたときは、冤罪である可能性もあるためすぐに弁護士に連絡すべきである。
風営法違反で冤罪が問題になりやすいケースの1つ目は、風営法上の風俗営業にあたるかが微妙なケースである。
たとえば、深夜営業のガールズバーは、風営法の深夜酒類飲食店営業の届出により営業をしているが、キャストによる「接待」が行われている場合、風俗営業に該当するため無許可営業で風営法違反になってしまう。
しかし、風営法の「接待」の定義は非常に抽象的であるため、キャストが単に丁寧な対応をしただけなのに「接待」があったと誤解され摘発されるケースも少なくない。
メンズエステは、本来リラクゼーションや美容を目的とするサービスを提供する店舗であるため、風営法の許可や届出は不要である。
しかし、メンズエステ店の中には表向きは健全な店として営業していながら、実際には裏オプションとして性的なサービスを行っているところもある。店舗を設けて性的なサービスを行うには、店舗型性風俗特殊営業の届出が必要であるため、性的なサービスを提供するメンズエステ店は風営法違反で摘発される可能性がある。
もっとも、経営者が知らないところでセラピストが風俗行為をしているケースもあるため、経営者が冤罪で摘発されることもある。
風営法の許可を取得している者が、実際には営業を行っておらず、他人にその名義を貸して営業をさせる行為は、「名義貸し」にあたり風営法違反となる。
風俗店の実態が不明瞭な事案だと形式上の経営者と実質的な経営者が異なるとして、名義貸しで摘発されるケースもあるが、実際には冤罪であるケースも少なくない。
風営法では、18歳未満の未成年者の立ち入りや酒・タバコの提供、18歳未満の未成年者に客の接待をさせることを禁止しており、これに違反すると風営法違反で摘発されることになる。
しかし、店側が客や従業員に対して身分証明書の提示を求めるなどして年齢確認を徹底していたにも関わらず、身分証明書の偽造により未成年者だと知るのが困難なケースもある。このようなケースは、年齢確認を徹底していたことなどを立証できれば冤罪を争うことができるだろう。
風営法では、客引き行為や客引きのための立ちふさがり、つきまといなどの行為が禁止されているため、従業員による客引き行為が発覚すると、従業員や経営者が風営法違反で摘発されることになる。
しかし、従業員による客引き行為が身分を隠して近づいてきた捜査官の積極的な行為により誘発された場合には冤罪になる可能性がある。
以下では、風営法違反となる無許可営業の罪で起訴されたものの、冤罪で無罪になった判例を紹介する。
被告人は、大阪市北区において、設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせるクラブ『A』を経営する者であるが、B、Cらと共謀の上、大阪府公安委員会から風俗営業(第3号営業)の許可を受けないで、平成24年4月4日午後9時43分頃、同店内において、ダンスフロア等の設備を設け、不特定の来店客であるDらにダンスをさせ、かつ、酒類等を提供して飲食させ、もって許可を受けないで風俗営業を営んだという無許可営業の罪で起訴された。
本件事案では、被告人が上記の日時・場所で風営法の3号営業を営んだといえるかどうかが主な争点になっている。
一審の大阪地裁では、以下のような事実認定および理由により、被告人に無罪の判決を言い渡した。
本件イベントにおいて客がしていたダンスは、流れていた音楽のリズムに合わせてステップを踏んだり、それに合わせて手や首を動かすというものが大半であり、比較的動きの激しいものでもボックスステップを踏んだり腰をひねったりするという程度で、客同士で体を触れ合わせて踊っていたこともない。したがって、客のしていたダンスそれ自体が性風俗秩序の乱れにつながるような態様のものであったとはいえない。
また、DJブースやモニターがあったフロアでは、DJが英国のロック音楽を大音量で流すとともにこれに合わせてモニターに映像が流され、客を盛り上げるような演出を行っていたこと、その結果、フロアにいた客はDJブースの側により多く集まり、近いところでは客同士が30cm程度の距離にあったことが認められるが、客同士が接触するような状態には至っておらず、フロアでもその時々によって椅子に座って音楽を聞いている客もいたというのであるから、単に音楽や映像によって盛り上がりを見せていたという域を超えていたとは認めることができない。
そのほか、本件イベントにおいて、来店する客に露出度の高い服装の着用を促すなど、殊更にわいせつな行為をあおるような演出がされていたなどの事実は認められない。
以上の事実を総合すると、酒類が提供されており、フロアが相当程度暗い状況にあったことを踏まえても、本件当日、本件店舗において、歓楽的、享楽的な雰囲気を過度に醸成し、わいせつな行為の発生を招くなど、性風俗秩序の乱れにつながるおそれが実質的に認められる営業が行われていたとは、証拠上認めることができない。
そうすると、被告人が、本件公訴事実記載の日時場所において、本件各規定の構成要件に該当する行為、すなわち3号営業を無許可で営んだということはできないというべきである。
検察官は一審の無罪判決に対して控訴をしたものの、二審の大阪高裁も以下の理由から控訴を棄却し、一審の判断を維持した。
①風営法2条1項3号の「ダンスの意義」について
風営法2条1項3号にいう「ダンス」とは、男女が組になり、かつ、身体を接触して踊るのが通常の形態とされているダンスを指し、風営法が3号営業として規制する営業は、設備を設け、このようなダンスを客にさせ、かつ、客に飲食をさせる営業であると解するのが相当である。
②本件営業の3号営業該当性について
被告人が本件店舗において、ステージ、フロア、DJブースなど、客にダンスをさせるための設備を設け、客に飲食をさせる営業を行っていたことは明らかである。
しかし、平成24年4月4日午後9時43分頃、警察官が本件店舗での営業を確認した際には、男女合計約20人の客が音楽に合わせて踊っていたが、客同士で身体を接触して踊る様子は見られず、平成23年3月26日及び平成24年3月30日に警察官が本件店舗の営業を確認した際にも、そのようなダンスが行われている様子は見られなかったのであり(原審証人D、同E、同F)、その他の機会においても、同様であったと認めてよい(原審被告人38、67頁)。
そうすると、本件の証拠関係からは、被告人が本件店舗において、男女が組になり、かつ、身体を接触して踊るのが通常の形態とされているダンスを客にさせる営業を行っていた事実を認定することはできない。
検察官は、二審の無罪判決に対して上告をしたものの、最高裁は以下のような理由から上告を棄却し、被告人の無罪判決が確定した。
検察官の上告趣意のうち、憲法の解釈の誤りをいう点は、原判決が所論のような憲法の解釈を示したものとはいえないから、前提を欠き、最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁を引用して判例違反をいう点は、同判例は事案を異にし、本件に適切でなく、福岡高裁宮崎支部昭和54年(う)第21号同年7月17日判決を引用して判例違反をいう点は、同判例が所論のような趣旨の法律判断まで示したものではないから、前提を欠き、その余は、単なる法令違反の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
風営法違反の冤罪を晴らすには、以下の3つのポイントを押さえておくべきである。
風営法違反の疑いをかけられると、被疑者として警察の取り調べを受けることになる。警察の取り調べで供述した内容は、供述調書にまとめられ、それが後日の裁判の証拠として提出される。
警察の取り調べでは、捜査機関が想定するストーリーに従って供述調書が作成されるため、被疑者にとって不利な内容の供述調書が作成されることも少なくない。このような不利な供述調書が作られてしまうと、後から内容の修正や撤回は困難であるため、冤罪を晴らすには取り調べで不利な供述調書を作らせないことが重要なポイントである。
警察は、風営法違反を立件するために被疑者に対して以下のような厳しい取り調べを行うことがある。
このような違法・不当な取り調べがなされると不慣れな環境で追い込まれた被疑者は、不利な供述や自白をしてしまうことがあるため、それを防ぐことが重要なポイントとなる。違法・不当な取り調べを防止するのは被疑者本人では困難であるため、早期に弁護士に依頼し、弁護士から捜査機関に対して苦情申し立てをしてもらうとよいだろう。
冤罪を晴らすには、被疑者側でも無実を裏付ける証拠を収集することが重要なポイントである。
風営法違反で逮捕されてしまうと被疑者自身では無実の証拠を集めることはできないため、早期に弁護士に依頼して証拠収集に向けて動いてもらうべきである。無実の証拠は時間とともに散逸してしまうため、一刻も早く弁護士に連絡した方がよいだろう。
なお、犯罪事実を立証するのは捜査機関側の役目であるため、被疑者側では積極的に冤罪を立証する必要はなく、グレーゾーンにまで持ち込めれば足りる。
冤罪なのに風営法違反の疑いをかけられてしまったときはすぐに弁護士に相談するようにしてもらいたい。
逮捕後に面会できるのは弁護士以外には存在しないため、逮捕されたときはすぐに弁護士に連絡するべきである。
連絡を受けた弁護士はすぐに警察署に面会に駆けつけてくれるため、取り調べに対する対応や対策などをアドバイスしてもらうことが可能だ。不利な調書がとられてしまうのを避けるには、取り調べ前に弁護士からアドバイスを受ける必要があるため、すぐに弁護士に連絡するようにしてほしい。
警察から長時間に及ぶ取り調べや威圧的な態度による取り調べなど違法・不当な取り調べを受けている場合、被疑者自身では対抗することが困難である。
弁護士に違法・不当な取り調べで困っていることを伝えれば、弁護士から捜査機関に対して苦情申し入れをしてくれるため、違法・不当な取り調べがなされている状況を改善することが可能である。違法・不当な取り調べは、冤罪の原因にもなるため早期に取り除くことが重要だ。
風営法違反の冤罪を晴らすためには、無実を裏付けるための証拠収集が必要である。
しかし、逮捕により身柄拘束されている被疑者自身では、証拠収集のために自由に動くことができないため弁護士によるサポートが不可欠である。風営法に詳しい弁護士であれば風営法違反の冤罪を晴らすために必要な証拠を熟知しているため、迅速に必要な証拠を立証し、冤罪を晴らすための活動に尽力してくれるだろう。
風営法は、法律の規定自体が非常に抽象的な内容になっているため、捜査機関が風営法違反を疑い摘発した事案の中には冤罪であるものも含まれていることがある。
風営法違反で逮捕されると早く解放されたいという一心で捜査機関の誘導に乗って事実と異なる自白をしてしまうケースもあるが、一度自白をしてしまうと後から撤回することは困難であるため絶対にしてはならない。冤罪の可能性があるときはすぐに風営法に詳しい弁護士に連絡して面会に来てもらうようにしてほしい。
グラディアトル法律事務所は、東京と大阪の2拠点を中心に活動しており、ナイトビジネス業界で全国1000件以上の解決実績がある。風営法違反に関する刑事弁護の経験も豊富であるため、逮捕の回避・早期釈放・不起訴処分の獲得などを希望するなら、すぐに当事務所まで相談してほしい。
また、グラディアトル法律事務所では、24時間365日受付をしているため、深夜に風営法違反で逮捕されたとしても、弁護士が起きていればすぐに駆けつけて対応することも可能である。
風営法違反で摘発された事例の中には、事実関係を争っていくことで冤罪を立証し、早期釈放、不起訴処分、無罪判決を獲得できるものも存在している。風営法違反で逮捕されるとすぐにあきらめて自白してしまうケースも多いが、冤罪の可能性があるならしっかりと争っていくべきである。
もっとも、自分だけでは冤罪の立証は困難であるため、風営法違反で逮捕されたときはすぐに風営法に詳しい弁護士に相談するようにしてもらいたい。その際は、風営法に関する弁護経験豊富なグラディアトル法律事務所にぜひ任せてほしい。